<倉田重工第7研究所 14:53PM>
壁をぶち抜きながら表に飛び出してくるアインとオニヤンマ怪人。
よろけて地面に倒れるオニヤンマ怪人を見ながらアインは天を仰いで吼えた。
「ウオオオオオッ」
その野獣のような声と共に腰のベルトの右側にある赤い宝玉が光を放った。その光はベルトの中央部に移り、更にまばゆい光を放つ。
「激変身っ!!」
瞬間、アインの身体が赤い光に包まれる。光の中、アインの身体がさらなる姿へと変化する。赤を基調とした生体装甲に身を包み、上腕部には鉤爪の変わりに鋭いヒレのようなものが幾つかついている。足の鉤爪もただ尖っているだけでなく、より鋭くなっていた。何より一番の変化は右肩のショルダーアーマーが大きくなっている事であろうか。
「ウアアアアアアッ!!」
再び天に向かって吼え、赤くなったアインは身体を低くさせながら走り出す。その姿は地を駆け、獲物を狙う野獣そのもの。
よろよろと起きあがったオニヤンマ怪人は迫り来るアインを見ると、慌てて宙に舞い上がった。
「ガアアッ!!」
野獣の唸り声をあげ、オニヤンマ怪人を追ってジャンプするアイン。右手のヒレでオニヤンマ怪人に斬りつける。斬りつける瞬間、ヒレがより大きく、より堅くなっていた。
ヒレがオニヤンマ怪人の胴を薙ぐが、間一髪、オニヤンマ怪人はさらなる上昇に成功、その一撃が致命的な一撃となる事はなかった。だが、決してその傷は浅いものではない。
着地したアインはさっと上を見上げるが、オニヤンマ怪人はもう既にジャンプしても届かないところまで上昇しきっていた。
「クッ・・・あの野郎・・・」
アインがそう呟いた時だ。
シュッと言う音が後ろから聞こえてき、アインは慌てて前方に転がった。振り返ると、先程までアインがいた場所に緑色の鎌が突き刺さっている。
「シュシュシュ・・・お前は逃がさない」
不気味に笑う蟷螂怪人。
「・・遂に来たな。テメェがレベル5か?」
アインが蟷螂怪人を睨み付けながら問うと、蟷螂怪人は又不気味な笑い声をあげた。
「シュシュシュ・・・これから死ぬ貴様には関係のない事だと思い知れ」
言いながら地面に刺さった鎌を引き抜き、振り上げる蟷螂怪人。
すっと腰を落とし、身構えるアイン。
 
<大田区田園調布 同刻>
ロゲダ・ゴバルに投げ飛ばされ、地面を転がるブートライズカノン。
すぐに片膝をついて起きあがるが、そこにロゲダ・ゴバルが襲いかかってきた。腕の鎌を振り上げ、ブートライズカノンの首を切り落とそうとばかりに振り下ろすが、それを下から受け止めるブートライズカノン。だが、明らかに力不足で、押し負けている。
「くうう・・・」
「ジョルニシャ・カノン? ギマサモ・シィガダバ・ノヲシェリジョガ?」
腕に力を込めながら言うロゲダ・ゴバル。
徐々に下がっていくブートライズカノンの腕、そしてロゲダ・ゴバルの鎌がその身体に迫っていく。
苦しげに、だが必死に腕を支えるブートライズカノンのその背には戦士の紋章の形を成した黒いアザ。だが、それはカノンのものではない。フォールスカノンの背に浮かび上がった戦士の紋章である事が今となってははっきりとわかる。そして、それが今、ブートライズカノンを、相沢祐一を蝕んでいると言う事も、ただブートライズカノンとロゲダ・ゴバルの戦いを見ていることしかできない天沢郁未にもわかっていた。
(な、何とかしないと・・・このままじゃ彼が・・・)
郁未は素早く周囲を見回した。そんなに都合良く何かがあるわけはない。それでも早く何とかしないと、このままでは本当にカノンはやられてしまう。
もう一度周囲を見回してみる。視界にはいるのは青いポリバケツ・・・いわゆるゴミ箱だ・・・くらいしかない。
(・・!あれでなら!!)
郁未は素早くポリバケツの方に走った。
「ごめんなさい、緊急事態なの!!」
誰に言うともなく、そう言ってから郁未は蓋を開け、中身をその場にぶちまける。空になったポリバケツを持って今度はブートライズカノンとロゲダ・ゴバルの方へと駆け戻っていく。
ロゲダ・ゴバルの鎌が遂にカノンの首筋にまで押しつけられていた。押しつけられた部分からゆっくりと血が滲み出てくる。
「ゴモササ・ニメ・カノン」
更に力を込めるロゲダ・ゴバル。
と、その時だ、いきなりロゲダ・ゴバルの視界を青いものが奪ったのは。それは郁未がもってきた青いポリバケツ。
気付かれないよう背後から接近した郁未がロゲダ・ゴバルの頭からかぶせたのだ。更に背後から思い切り体重を込めてロゲダ・ゴバルを蹴り飛ばす。
視界を奪われた上、いきなり背後から蹴りを食らったロゲダ・ゴバルはたまらずその場につんのめり、倒れた。
ブートライズカノンは立ち上がると、傷の出来た首筋を片手で押さえながらもう片方の手を天に向かって伸ばした。そして指を鳴らすと、そこに物凄いスピードでとんでくる物体が一つ。
「あれは・・・聖鎧虫?」
驚きの声を上げる郁未。
その彼女の前で、聖鎧虫は自分の身体の一部を分解し、ブートライズカノンの身体に装着させる。
ブートライズカノンの目が鈍い赤からいつもの赤を取り戻す。
 
仮面ライダーカノン
Episode.35「救出」
 
<新東京国際空港 15:01PM>
国際線到着口からサングラスをかけた一人の女性が姿を見せた。短くまとめられた髪、着ているスーツのビシッと決まっており、いかにもキャリアウーマンぽい。
「・・馬鹿息子が迎えに来ているわけでもなく、不肖の妹が来ているわけでもない。連絡はやったはずなのに、こうなっていると言う事は・・・」
女性はそう呟くと、サングラスの下、目をそっと閉じた。そしてゆっくりと意識を集中させていく。
瞼の裏に浮かび上がるのは・・・誰かに支えられながらふらふらと歩いている祐一の姿、後ろ手に縛られ、目隠しまでされている水瀬秋子の姿、そしてその周囲に立つ奇怪な老婆と秋子によく似た娘の姿。
「やれやれ・・・何となくそう言う気がしたから帰ってきては見たけれどもここまで深刻とはね・・・」
やるせなさそうにため息をつく女性。
それから彼女はスーツケースを持って歩き出した。
「ゆっくりとする暇すらないじゃないのさ、あの馬鹿息子がだらしないから!」
女性が怒ったように呟き、そのまま都内へと続く列車の駅の方へと消えていく。
 
<倉田重工第7研究所 同刻>
PSK−03”ベルセルガ”が再びブレイバーノヴァの引き金を引く。
その銃口から放たれるのは今までのもの・・・ブレイバーバルカンなどと違い、弾丸ではない。焦点温度数万度を誇る最強のレーザー兵器。
不可視の光が強敵、シオマネキ怪人を襲う。
だが、シオマネキ怪人は右手のハサミでそのレーザーの直撃を受けて見せた。物凄い光が研究室内を満たす。
「な、何だと!?」
PSK−03の装着員、北川潤は驚きの声を上げていた。
マスク内のモニターは素早くシェードが降り、物凄い光から潤の目を守っている。代わりの各種センサーがシオマネキ怪人の姿を捕らえているのだが、そこではシオマネキ怪人がレーザーの直撃をハサミで受け止めながらPSK−03の方に向かって歩いてきている事を指し示していた。
「ま、まさか!?」
「この身体を舐めてもらっては困る・・・ありとあらゆる状況に対応してこそ、新たな時代を導くものとなりうるのだ」
シオマネキ怪人がそう言うのと同時に潤は引き金から指を離した。限界の30秒が来たからだ。
「どうやらそれまでのようだな・・・死んで貰うぞ」
身体の前に置いてあったハサミをゆっくりと振り上げるシオマネキ怪人。だが、そのハサミは既に表面がぼろぼろとなっていた。
どうやら全くのノーダメージとは行かなかったらしい。それでも殺傷能力は充分すぎる程あるだろう。
振り下ろされたハサミをかわし、PSK−03は再びブレイバーノヴァの照準をシオマネキ怪人に合わせた。
「無駄な事を・・・」
「無駄かどうかは・・・これでわかるさ!!」
そう言って潤は素早く研究室内に目を走らせる。同時に搭載されている通常AIが潤の思考を読みとったかのようにある計算をはじめていた。
先程シオマネキ怪人達が研究室内の現れた時に砕いた壁、そこにしつらえてあった棚が倒れ、あちこちに割れたガラスや様々な実験道具が研究室内に転がっている。その中には良く磨かれ、鏡のようになった金属もあった。
潤が考えている事をほぼ同時に深山雪見も理解していた。元々ブレイバーノヴァは彼女の開発したものだ。その特性なども彼女が一番よくわかっている。
上着のポケットの中から化粧用のコンパクトを取りだし、蓋を開いてそっと床に置く。
潤の視線がそれを捕らえ、AIの計算が終了した。
「深山さん、伏せていてください!!」
そう言うのと同時にブレイバーノヴァの銃口を先程雪見が置いたコンパクトに向ける。
「喰らえっ!!」
ブレイバーノヴァの引き金を引く潤。
レーザーはまず雪見のコンパクトに反射、次いで、シオマネキ怪人が投げ捨てた時、壁に突き刺さっていたジャスティスブレードの刀身に反射、更にシオマネキ怪人の足下に落ちていた金属片に反射、下からシオマネキ怪人を襲う!
「何っ!?」
とっさにハサミで防御しようとするシオマネキ怪人だがほぼ真下から襲いかかってきたレーザーの方が遙かに早かった。
レーザーがシオマネキ怪人の右上を付け根から切断してしまう。
「ぎゃあああああっ!!!」
右腕を落とされ、絶叫するシオマネキ怪人。
「深山さん、外に逃げてください!!」
「北川君、これ以上それを・・・」
「良いから早くっ!!」
潤の剣幕に雪見は頷くしかなかった。
研究室から出て、一目散に走り去っていく。
「こいつで・・・とどめだっ!!」
PSK−03が未だ絶叫をあげているシオマネキ怪人に向かって走る。ブレイバーノヴァの引き金を引き、上から下へとその銃口を動かし、シオマネキ怪人の身体をレーザーで両断する。
「があ・・・ま、まさか・・・」
そんな声を残し、爆発するシオマネキ怪人。
同時にPSK−03の腕の中のブレイバーノヴァも爆発を起こしていた。吹っ飛ばされるPSK−03。
同じ頃、中庭ではアインが未だ蟷螂怪人と睨み合っていた。
いくらアインでも蟷螂怪人の鎌を喰らえばかなりのダメージを受ける事は間違いない。それに相手がレベル5の改造変異体ならこっちの予想を超えた力を持っているはずだ。
(だが・・・俺も前までの俺じゃない・・・奴らに未完成だの失敗作だの言われた俺じゃあな!!)
ダッと地を蹴って駆け出すアイン。ジグザグに走り、蟷螂怪人を惑わせる。
「おのれ、小癪な!」
蟷螂怪人が鎌を振り下ろすがアインには当たらない。
アインは蟷螂怪人とすれ違い様に蟷螂怪人の足を手で引っかけ、相手を転倒させていた。
「な、何だ、貴様の動きは!?」
転倒した蟷螂怪人がそう言って身を起こす。
「貴様はアイン・・・失敗作のアインではないのか?」
「残念だな・・お前らがレベル5となったように・・・俺も成長しているんだよ・・・」
アインはそう言うと蟷螂怪人を蹴り飛ばした。
のけぞって吹っ飛ぶ蟷螂怪人。
そこにアインが更に飛びかかっていく。
蟷螂怪人は素早く右手を突き出すが、アインの右腕のヒレがその鎌を、蟷螂怪人の右腕ごと切り落としていた。
「ぎゃあああっ!!!!」
悲鳴を上げる蟷螂怪人。
「な、何故だ!? 何故貴様のような失敗作に・・・レベル5の私が・・・何故だ!?」
「心配するな。俺が強くなりすぎたんだよ」
無感情に言い放ち、アインの右手が一閃する。
ブンッと宙に舞う蟷螂怪人の首。
その首が地面に落下するのを見届け、アインが蟷螂怪人に背を向ける。同時に起こる爆発。
爆発を背にアインは元の姿、折原浩平の姿に戻っていく。
「レベル5・・たいしたこと無かった・・・と言うか、俺が強くなったのか?」
浩平がそう呟いたが、誰も答えるものはなかった。
そして、アインとの戦いから逃走しようと宙に舞い上がったオニヤンマ怪人だが逃げ出す事も出来ず、空からアインと蟷螂怪人との戦いをずっと見ていた。
かつて、PSK−02強奪事件の際に仲間の改造変異体を見捨てて逃げ出した事のあるオニヤンマ怪人だ。ここで又逃げ出せば待っているのは粛正以外の何者でもない。
「おお・・・レベル5がああも簡単に・・・アイン・・・奴はもう・・・」
オニヤンマ怪人は赤くなったアインにあっさりとやられた蟷螂怪人を見て思わずそう呟いていた。
その姿を研究所の屋上から見上げている影が一つ。
「やっと見つけた・・・あの時は逃がしたが今度はもう逃がさない」
PSK−02である。
足下に置いてあるのはDS−01が使用していたロケットランチャー。まだ残弾がある事を確認してわざわざ拝借してきたのだ。
すっとロケットランチャーを担ぎ上げ、照準をオニヤンマ怪人につける。
「これであの時の事はチャラにしてあげますよ」
そう言って引き金を引くPSK−02。
軽い衝撃と共に発射されるロケット弾。
蟷螂怪人が倒された事に呆然としていたオニヤンマ怪人はそれに気付かなかった。そう、ロケット弾が身体に直撃するその瞬間まで。
「何!?」
ロケット弾が身体の直撃した時、オニヤンマ怪人ははっきりと見た。
倉田重工第7研究所の屋上から自分を見上げて、軽く手を振っている姿を。
「キリトかっ!!」
爆発。
その言葉を最後にオニヤンマ怪人の姿がこの世から消えた。そして、それは同時に倉田重工第7研究所を襲った改造変異体が全滅したと言う事も意味していた。
 
<大田区田園調布 15:07PM>
聖鎧虫から分離した鎧を身にまとったブートライズカノンは未だ苦しげな息をしながらもロゲダ・ゴバルの方をじっと見つめていた。
ようやく青いポリバケツから脱したロゲダ・ゴバルがブートライズカノンの方を振り返り、ぎょっとなる。そこにいたのが今さっきまでのブートライズカノンとは別物のように見えたのだ。
「ギ、ギナサバ!?」
驚いたような声を上げるロゲダ・ゴバル。
だがブートライズカノンは答えず、ロゲダ・ゴバルに向かって突っ込んでいく。
「おおりゃああっ!!」
ブートライズカノンの大振りのパンチをかわし、ロゲダ・ゴバルは慌てて逃げ出そうとした。
元々臆病者なのだ、このロゲダ・ゴバルは。それ故に事件の発覚を恐れて自分が殺したものを地面に引きずり込み、証拠を隠滅しようとしていたのだから。
だが、それを許さないと言わんばかりに聖鎧虫がロゲダ・ゴバルの前にすっと降りてくる。自身のパーツをブートライズカノンに渡したとはいえ、まだまだ戦闘能力はある聖鎧虫である。それがロゲダ・ゴバルの行く手を遮るように地面すれすれで滞空している。
「クッ・・・クク・・・」
逃げ場を失ったロゲダ・ゴバルはさっと振り返り、郁未の姿を見つけると、彼女に飛びかかっていった。
「きゃあっ!!」
思わず悲鳴を上げる郁未。
だが、その前にブートライズカノンが割り込み、物凄いアッパーカットをロゲダ・ゴバルに叩き込んだ。
その一撃で吹っ飛ばされるロゲダ・ゴバル。
倒れたロゲダ・ゴバルを見て走り出すブートライズカノン。その上にやってくる聖鎧虫。
聖鎧虫がブートライズカノンを持ち上げた。そしてそのまま加速していく。
「喰らえぇぇっ!!!」
ブートライズカノンが両腕を前に突き出し、まるで一本の槍のようになる。同時に聖鎧虫がブートライズカノンの身体から手を離し、ブートライズカノンはその勢いのままロゲダ・ゴバルへと突っ込んでいく。更に身体を回転させて攻撃力を増し、ようやく起きあがったロゲダ・ゴバルに直撃!!
大きく吹っ飛ばされるロゲダ・ゴバルを背に、ダッと着地するブートライズカノン。その身体から鎧が離れ、聖鎧虫の元へと戻っていく。
ロゲダ・ゴバルは体の大きな古代文字を焼き付けられ、立ち上がる事すら出来なかった。古代文字から光のひびが全身に走り、それがある一点に達すると、ロゲダ・ゴバルの身体は爆発四散した。
その爆発から自分を腕でかばっていた郁未だったが、爆発が治まると、その場に倒れている祐一の姿に気付き、慌てて駆け寄った。
「祐さん!祐さんっ!!」
声をかけるが祐一はぴくりとも反応しない。
その顔色は今まで以上に悪く、そして大量の汗をかいている。
「祐さん、しっかりして!!」
悲痛な声で呼びかける郁未。
彼女はその時、一台の車が近くに停車した事にすら気がついていなかった。
 
<倉田重工第7研究所 15:34PM>
完全に敵の気配が無くなったと確信した七瀬留美は斉藤を引き連れて研究所内を歩き回っていた。
「随分と派手にやってくれたわね・・・」
数体の改造変異体をロケットランチャー、バズーカ、そしてブレイバーバルカン・グレネードモードで吹っ飛ばした玄関ロビーを見回して留美が呟く。
「おまけにここまでやってくれたら敵の死体も何もあったもんじゃないわね。大事な研究資料が全て台無しよ」
「それに未確認亜種は倒したら爆発しますしね」
そう言ったのは斉藤だ。
立ちこめる臭いに顔をしかめている。
「何言ってんの。未確認も同じよ。怪人ってものは倒されたら爆発するかどろどろに解けて無くなるかのどっちかなのよ!」
やけに自信たっぷりに言う留美。
「そう言うもんですか?」
「そう言うもんなの!」
思わず聞き返した斉藤にぴしゃりとそう言いきり、留美は歩き出した。
同じ頃、この第7研究所の所長である倉田佐祐理は所長室に戻ってきていた。
今回の戦闘はよりにもよってこの第7研究で行われた。施設等の被害総額を考えると頭が痛くなる。だが、人的被害がなかった事だけが幸いだった。
正門の側にいた警備員も幸い軽傷で済んだし、他の研究員などは全てシェルターに避難が完了していた。それに隔壁封鎖で重要な施設には敵も近づけなかったようであり、一番ひどい被害を受けたのが玄関ロビーと第9研究室であった。特に第9研究室は使用不可能な程ひどい状況である。
「所長、よろしいでしょうか?」
そう言ってドアがノックされた。
声からしてドアの向こうにいるのは雪見である。
「構いませんよ」
佐祐理がそう言うと、ドアを開けて雪見が中に入ってきた。
彼女は所長室に入るなり、まず頭を下げた。
「すいません、所長の通達を無視して、そのあげく第9研究室をめちゃくちゃにしてしまって」
「何を言っているんですか。七瀬さん達から話は聞いています。第9研究室の新兵器がなければ敵を倒しきる事は出来なかったって。だから気にしないで下さい。結果的にはああなっちゃいましたけど」
佐祐理はそう言って笑顔を見せた。
雪見は頭を上げて、気まずいような、そんな顔をする。
「何か私、謝ってばかりですね」
「気にしないで下さい。深山さんは立派な方だとわかっています。これからも頼りにしていますから」
佐祐理がそう言って雪見の側までやって来て、彼女の肩に手を置いた。
そこに留美と斉藤が入ってくる。
「ご苦労様です。で、どうでした?」
先に口を開いたのは佐祐理。
留美は黙って首を左右に振った。
「駄目ですね、手がかりになりそうなものはない一つ残っちゃいません」
「七瀬さん、一体何を?」
雪見が口を挟むと留美は彼女をの方を見た。
「今回ここに侵入してきた敵の正体を見極めるものが何か無いか調べていたんです。で、その結果は見事に無し。綺麗さっぱり、全て灰となっています」
「そうですか、それでは仕方ありませんね」
少し残念そうに言ったのは佐祐理だった。
「又後手に回るしかないようですね、佐祐理達は」
「・・・そう言えば、PSK−02と、又別の未確認みたいなものが現れたんですが・・・」
不意に雪見がそう言い、その言葉にその場にいた全員が彼女を注目した。
「噂で聞く第3号とも違いますし・・・でも未確認亜種を倒していたから敵じゃないと思うんですが?」
「第19号を倒した奴じゃないですか? あの頃第3号はN県にいたって話ですから、多分間違いないと思うんですが」
斉藤が言う。
「カノンじゃ・・無い・・・?」
佐祐理が小さな声で呟く。
「直接姿を見たのは深山さんと北川君だけでしょう? でもって深山さんは第3号を見た事がない。だったらわからないじゃない」
「七瀬さん、第3号は白いって言う話よね? だったら違うわ。あれは・・・紫っぽかったし」
留美と雪見が話している横で未だ佐祐理は何やら考えているようだった。
(カノン以外にも戦士はいると言うんでしょうか・・・それじゃ・・・今のカノンと呼ばれている第3号は祐一さんじゃない・・・?)
考え込んでいる佐祐理に気付いた留美と雪見は話をやめ、じっと佐祐理を見つめていた。
「・・・所長?」
恐る恐る声をかける雪見。
「・・・あ、すいません」
我に返った佐祐理が自分を見ている留美と雪見の方を振り返った。
「何でしょうか?」
苦笑を浮かべて佐祐理が聞く。
留美と雪見の二人は互いの顔を見合わせ、やはり苦笑を浮かべた。
「・・・そう言えば久瀬さん達はどうしました?」
「大破したらしいDS−01を持って大慌てで出ていったようですよ」
佐祐理の質問に答えたのは斉藤であった。
「詳しい事は教えてくれませんでしたけど、あの慌てようだとDS−01、かなりダメージを受けたようです」
「フン、ざまぁないわね。しょせんはコピーの紛い物、やっぱりPSK−03の方が・・・」
留美がそう言いかけたのを佐祐理が厳しい目を向けて止める。
「七瀬さん、そう言う言い方はやめましょう。仮にもDS−01はここを一緒に守ってくれて、その上でやられたんです。私達は感謝するべきですよ?」
「確かにそうかも知れませんが・・・」
まだ不服そうな留美。
「DS−01はN県で私が盗まれたPSK−01や02のデータを流用されて完成したものです!私は・・・」
「わかっています。ですが、装着員の方に罪はないと思いますよ?」
諭すように言う佐祐理。
渋々だが留美は頷いた。そして斉藤を振り返ると、鋭い声でこう言う。
「斉藤君、大至急全モニターのチェックを始めて!重要なポイントは二つ!PSK−02と第3号に似た奴よ!良いわね!!」
「は、はいっ!!」
留美の剣幕に驚いたらしい斉藤が慌てて所長室から出ていく。
その後ろ姿を見送りながら雪見は苦笑を浮かべた。
「私もこれで失礼します。PSK−03の被害状況を調べないといけませんので」
留美がそう言って一礼して所長室から出ていく。
「・・・斉藤君も大変ね〜」
雪見がそう言って佐祐理を振り返った。
「ブレイバーノヴァの試作品は見事におじゃんになりましたが、ちゃんとした正式版をすぐに開発します。所長の期待、答えて見せますから」
「期待しています。・・・そう言えば北川さんは?」
今思い出したかのように潤の事を聞く佐祐理。
所長室を出ていこうとしていた雪見はまたも苦笑して、
「毎度おなじみの場所で寝ています。我らが英雄は今回は軽傷ですから安心してください」
ウインクするとそのまま出ていってしまった。
それを聞いて佐祐理は顔を真っ赤にする。何やら勘違いされたような気もするが。
しかし、爆発はすぐ側で起こったはずなのに、それでも軽傷で済んだというのは・・・だんだん彼がなれてきたのか、それともPSK−03の特殊装甲がそれだけ凄いと言う事なのか。どちらであるか、佐祐理には今ひとつわからなかった。
 
<都内某所・廃倉庫? 15:43PM>
古びた倉庫の中、秋子は椅子に座らされていた。
勿論両腕は後ろで縛られたままであるし、目隠しも取り払われてはいない。勿論これは秋子の抵抗を防ぐ為である。
秋子のすぐ後ろには指無し手袋をした皆瀬真奈美。
「本当に良いの?」
不安げな顔をして振り返ると、そこには皆瀬葵が立っている。
「やらないとあんたの方がやばくなると思うけど?」
素っ気なく言う葵。
「でもでも・・秋子ねーさんは・・」
「仕方ないじゃない。大婆様には逆らえないのよ」
何処か諦めきったような感じの葵の表情。
「そ、それはそうだけど・・・」
「そりゃ私もね、実の娘の前でその親を殺そうとか言う大婆様の考え方にはちょっとは疑問を持つけどね、かといって逆らえば今度は自分が殺されるのよ」
葵はそう言って真奈美から顔を背けた。
「・・・お姫様が宗主になったら・・・きっとこんな事しなくても良くなるわよ」
呟くようにそう言い、葵は真奈美の顔を見た。
「さぁ、話はお終い。早くやらないと大婆様に怒られるわよ」
そう言って手を叩く葵。
不承不承と言った感じで真奈美が頷く。
そっと秋子の後頭部に手を添える。
「ゴメンね、秋子ねーさん・・・」
そう呟いてから目を閉じる真奈美。
 
<都内某所 15:45PM>
「本当に大丈夫なんだろうな?」
国崎往人がそう言って後部座席を振り返った。
そこには未だ顔色の悪い祐一が郁未の膝を借りて横になっていた。
「さっきに比べたら顔色が良くなったわ。と言ってもまだまだ悪いけどね」
郁未がそう答えるが国崎は首を左右に振った。
「祐の字の事は心配してない。そいつは殺したって死なないような奴だと信じているからな。俺はあんたが信頼出来るのかどうかが疑問なんだよ」
「私の事、信じてくれていないの?」
「そうそう信じられるかよ。自分の事は一切話さない奴の事なんかな」
国崎の口調は素っ気ない。
田園調布の街中で倒れている祐一とその側に踞っている郁未を見つけたのは彼であった。
その近くには聖鎧虫がおり、更には爆発の跡と思われるもの。それだけで彼は何がここで起こったか理解出来た。未確認生命体第25号だ。第25号が出現し、ここで祐一、いや、未確認生命体第3号ことカノンと戦闘になった。そして聖鎧虫の力を借り、カノンは第25号を倒したのであろう。しかしわからないのは勝ったはずの祐一が今にも死にそうな感じで苦しんでいると言う事であった。
側にいた郁未は国崎に気がつくと、警戒するように祐一をかばったのだが、国崎が自分の身分を明かし、更に祐一が唯一自分の正体を明かしている人物だと言う事を知ると態度を一変、彼を病院に連れて行くよう懇願したのだった。その際、彼女は自分の事を一切国崎には話さなかったのだが、ちゃっかり自分も国崎の乗ってきた覆面車に乗り込んでいた。
「始めに言ったじゃない。私は敵じゃないって」
むっとしたように言う郁未。
「敵じゃないだけで味方だと入ってないだろ、お前。だいたい何者なんだ、お前は?」
「・・・郁未さんは敵じゃない・・・」
弱々しい声を出しながら祐一が身を起こした。
「祐さん・・・大丈夫なの?」
心配げに祐一を見る郁未。
「大丈夫・・・俺なら。それより国崎さん、何処向かっているんだ?」
祐一は郁未から離れ、ぐったりと身体を背もたれに預けながら聞いた。
「・・・関東医大病院だ。あそこぐらいしかお前を連れていける病院はないからな」
国崎はやや素っ気ない口調でそう言ったが、その顔はどうやら安堵したようだ。落ち着いた笑みを浮かべている。
「・・・待ってくれ。先に行って欲しい場所があるんだ・・・」
「祐さん、そんな身体じゃ無理よ!それに何処に行けばいいかわからないでしょ!?」
郁未が声を上げるが、祐一は構わずに続けた。
「声が・・・聞こえた・・・場所は・・・」
祐一は言いながら目を閉じる。
国崎は祐一が目を閉じながら言った場所をすぐにナビゲーションシステムで検索した。今走っている場所からはそう遠くはない。30分もあれば着くような場所だった。
「・・・本当に大丈夫なのか、祐の字?」
「行かなきゃ・・いけないんだよ・・・」
祐一はそう言って薄く笑みを浮かべ、そして又意識を失ってしまった。
それを見た郁未が倒れ込んでくる祐一の身体を支え、そして運転席の国崎を見る。
「あんた・・・まさか行くつもりじゃないでしょうね?」
郁未の質問に国崎は何も答えなかった。
それが郁未のかんに障ったのだろうか、彼女は声を荒げた。
「黙ってないで何とか言いなさいよ!今の祐さんの状態見たらわかるでしょ!!一刻も早く病院に連れて行かないと、死んじゃうかも知れないのよ!!」
「死なねぇよ、そいつは」
声を荒げた郁未とは対照的に国崎が冷静な口調で言い返す。
「そいつにはやらなきゃならない事がある。大事なものを、その手に取り戻すって言うな。その為には命も賭けるだろうが、絶対に死にはしない」
彼は何時か美坂香里から秋子の捜索を頼まれた時に聞いていたのだ。祐一と名雪の関係を。従兄弟同士であり、幼なじみであり、そして互いに思い合う関係である事を。
『相沢君はきっと名雪を取り返すつもりよ。彼には名雪を殺せるわけがないもの』
『しかし、今の話を聞く限りじゃ無理っぽいと思うが?』
『それでも、よ。きっと相沢君なら何とかする。そう、命をかけてもね』
『命をかけるのは勝手だが死んでもらったら困る。こっちには未だ未確認に対する有効な手段が・・』
『死なないわよ、相沢君は。絶対にね』
ふと甦るあの時の会話。
それを聞いて国崎も思いだしてた。ある、約束を。ずっと、遠い昔に交わした約束・・・それは自分の交わしたものかどうかさえわからないが。それでも、果たさなければならない約束の事を。
(未確認の一件が終わったら又昔のように・・風来坊に戻るかな?)
そう思って口元をゆるませる。
「それに、そいつの言う事を聞かないと後で怖いしな」
国崎はそう言ってバックミラー越しに郁未を見やった。
郁未はそれで納得したのかしないのかむっとしたまま黙り込んでいるだけだった。
 
<都内某所・廃倉庫? 15:53PM>
秋子への精神干渉を真奈美が始めていると、そこに一台のバイクが入ってきた。
「お帰り、正輝君。首尾はどうだった?」
葵が入ってきたバイクに気がつき、振り返って聞く。
バイクに乗っていた山田正輝はヘルメットを脱ぐとにやりと笑って見せた。
「敵じゃなかったな。あれがカノンだとは・・・どうやらあの程度の奴にやられているヌヴァラグもたいしたことはないらしい」
正輝がそう言って秋子の側に立っている恋人の真奈美を見やる。
「始めたのか?」
「大婆様が怖いからね」
そう言って肩をすくめる葵。
「毎度のことながら・・・お前は何処までも詰めが甘いようじゃの、正輝よ」
不気味な声と共に一人の老婆が姿を見せた。
そのすぐ後ろには名雪がいる。
「詰めが甘い? どういうことだ?」
むっとしたように顔をしかめる正輝。
「奴はまだ死んではおらんと言う事だ。折原浩平の時もそう。奴が完全に死んだかどうかを確認せず、結果、奴は完全体になってしまった。今回も同じよ」
老婆はそう言って険しい顔をして正輝を見た。
「相沢祐一は生きている。そしてここに向かっている。今度こそ、奴を始末しろ」
「・・生きていた、か。良いだろう。何度でもやってやるさ。あの程度の奴、俺の敵じゃない」
自信満々にそう言いながら正輝はヘルメットを手に取った。
その様子を名雪は無感情に見ているだけである。
「失敗はゆるさん。今度こそ、確実に殺せ!」
老婆の命を受け、正輝がバイクを発進させる。
今、再び祐一へ最強の刺客が送られた・・・。
 
<都内某所・廃倉庫近く 16:35PM>
ビシッとスーツを着込み、サングラスをかけたショートカットの女性がじっと廃倉庫を見ている。
30分程前、一台のバイクが出ていってから廃倉庫の方に動きはなかった。もっとも中で何が行われているかはわかったものではないが。
「まぁ、もう少しくらいは保ってくれるでしょ、あの子も。それにしても遅いわねぇ、馬鹿息子は」
そう呟いて廃倉庫に続く道路を見る。
まだ国崎の覆面車の姿は見えなかった。
その頃、その国崎の覆面車は突然現れた正輝のバイクの襲撃を受けていた。いや、既に正輝は変身を遂げていたのでフォールスカノンの、と言った方が正確だろう。
「何なんだよ、あいつは!?」
ハンドルを切りながら国崎が怒鳴る。
「あいつが祐さんをこういう風にした張本人だって言ったじゃない、さっき!!」
怒鳴り返す郁未。
祐一は未だ気を失ったままだ。
「でもな、ありゃ・・・カノンじゃないのか? まやかしの力に捕らわれたカノンってああいう感じだろ?」
「祐さんはここにいるでしょ!!」
フォールスカノンは覆面車の中での騒ぎを気にすることなく、バイクをウィリーさせて、前輪で覆面車の後部を攻撃してきている。
「この野郎・・見てやがれっ!!」
国崎は思いきりブレーキを踏んだ。
タイヤを路面に擦らせ、白い煙を上げながら急停止する覆面車。
と、フォールスカノンは一瞬早くそれに気付いたのか、ジャンプして覆面車の前方に着地していた。キキッと後輪を滑らせ、こちらも停車する。
「今度こそ、確実に死んで貰うぞ」
そう言いながらバイクから降りるフォールスカノン。
国崎は懐から拳銃を取り出すと、素早くシートベルトを外した。
「あいつは俺が引き受けた。お前は祐の字を連れて逃げろ」
「無茶よ!あいつはカノンを簡単に倒した程強いのよ!あんたじゃ・・・」
「時間ぐらいは稼げる。それに・・・今、祐の字を殺させるわけには行かないんだよ」
「あんた・・・」
まだ何か言いたそうな郁未をその場に残し、表に飛び出す国崎。拳銃を構え、フォールスカノンと向き合う。
「悪いな、お前が何者か知らないが・・・少なくても味方じゃ無さそうだってことだけはわかる」
覆面車から飛び出してきた国崎を見て、足を止めるフォールスカノン。
「邪魔をするなら貴様も殺す。良いのか?」
「生憎ただで殺されるわけには行かないんでな」
国崎はそう言うと引き金を引いた。彼が手にしている拳銃は対未確認用に支給されたコルトパイソン357マグナム。未確認生命体相手に成果は全く上がっていないが牽制ぐらいなら充分役に立つ。
だが、フォールスカノンはすっと手を動かし、その銃弾を受け止めてしまった。
「ただの人間が・・・この俺を殺せるわけがない」
そう言って手の中の弾丸を地面に落とすフォールスカノン。
「どけ・・・どかないなら・・・本当にお前も殺す」
すっと腰を落とし、身構えるフォールスカノン。
カノンすら倒した必殺のキックの体勢。国崎が喰らえば確実に死に至るであろう、まさに必殺の一撃。
それでも国崎は動かない。拳銃を構えたまま、フォールスカノンを睨み付けている。
「・・・死ね、愚かな人間・・・」
フォールスカノンの背中に浮かび上がる戦士の紋章を思わせるオーラ。
「やめろ!!」
そんな声が国崎の後ろから聞こえてきた。
振り返ると、覆面車のすぐ側に郁未に支えられて祐一が立っていた。
「・・・祐の字っ!?」
驚きの声を上げる国崎。
「何で、何で逃げなかったんだよ、お前!?」
「あんた一人を置いていけるわけがないでしょうにっ!!」
答えたのは郁未。
祐一も頷いている。
「それに・・祐さんがあんたを助けたいって言うから・・・」
「・・馬鹿野郎・・・そんな身体で何が・・・」
国崎はそう言って顔を背けた。
祐一の気持ちは嬉しかったが、今の祐一で目の前にいるフォールスカノンと戦うのは無謀であった。いや、無謀を通り越して、無茶である。
そんな国崎の気持ちを知ってか知らずか、祐一は郁未から離れて一歩前に出る。
「あんたが殺したいのは俺だろう・・・俺はこっちだぜ?」
そう言って自分を指さし、にやりと笑う。
「フッ・・・良いだろう。ではご期待通りお前を殺してやる!」
走り出すフォールスカノン。
国崎が慌ててフォールスカノンに銃口を向けるが、その時にはもうフォールスカノンは彼の側を通り過ぎていた。
「死ねぇ、相沢祐一!!」
拳を振り上げるフォールスカノン。
だが、その拳をが振り下ろされる直前、祐一は右手を前に突き出していた。それがカウンターのようになり、フォールスカノンの胸を直撃、吹っ飛ばしてしまう。
「くはっ!!」
倒れるフォールスカノンを尻目に祐一は突き出した右腕で十字を描く。その手を顔の横まで引き寄せ、一気に振り払う。
「変身っ!!」
腰に浮かび上がるベルト、その中央が光を放つ。だが、それは普段と違い、幾分弱まった光。そしてその光の中、祐一はブートライズカノンへと変身する。
「・・・貴様、その姿は!?」
驚きの声を上げるフォールスカノン。
目の前にいるカノン、前に戦った時は白い姿だったのが、今はそれが自分とそっくりの姿になっている。
ブートライズカノンは答えず、身体を低くし、肩を大きく上下させ、身構えた。その背に浮かぶ戦士の紋章のような黒いアザはよりはっきりとした形を成している。
「ゆ、祐の字・・・」
「祐さん・・・」
国崎、そして郁未の見守る中、フォールスカノンとカノン、いやブートライズカノンの第2回戦が始まった。
 
<都内某所 16:53PM>
折原浩平がブラックファントムを走らせていると、その横に一台のオープンカーが並んできた。
乗っているのは巳間晴香。
浩平に倉田重工第7研究所の危機を伝え、救出を依頼した人物である。
「その様子だと間に合ったようね?」
浩平は黙って頷いた。
「で、どう? レベル5,いた?」
それには答えない。
「・・話をする気、無さそうね?」
今度は頷いてみせる。
「私から話を聞くんじゃなかったの?」
「気が変わった」
晴香の質問に素っ気なく答える浩平。
「俺に関わるな。今回はお前らの手に乗ってやったが次はこうは行かない。そう覚えておけ」
浩平はそう言うとアクセルを回し、一気にスピードを上げて晴香を振りきった。
残された晴香の方はしばらく呆然と浩平の後ろ姿を見送っていたが、やがてにやりと笑った。
「まぁ、良いわ。とりあえず倉田重工に投入された改造変異体は全滅したようだし、今回はこれで」
そう呟いて、晴香は車を街の雑踏の中へと走らせていく。
 
<都内某所・廃倉庫近く 16:59PM>
バッと投げ飛ばされ、地面を転がるブートライズカノン。
だがすぐに起きあがると猛然と投げ飛ばしたフォールスカノンに飛びかかっていく。それを腕を開いて受け止め、がら空きのボディに蹴りを叩き込むフォールスカノン。
後方によろけながら下がったブートライズカノンにローリングソバットをお見舞いし、吹っ飛ばす。
またも地面を転がるブートライズカノンだが、回転の勢いを利用してすぐに起きあがっていく。
「何だ、こいつは・・・?」
フォールスカノンは驚きを隠しきれなかった。
前に戦った時とは明らかに違う、このブートライズカノンの攻撃。それはまるで野獣が本能的に敵を倒すかのような荒っぽいもの。しかも何度受け流し、吹っ飛ばしてもすぐに立ち上がってくる。
「お前は・・・何だ?」
そう言って今度はフォールスカノンが動いた。前にカノンを叩きのめしたあの疾風のような動き。
「これで!!」
フォールスカノンが拳を握りしめる。そこにブートライズカノンは体当たりを食らわせてきた。
決してフォールスカノンの動きを読んだわけではない。まさに本能的に身体が動いたとしか思えない、その動き。もつれ合って倒れる両者。
先に起きあがったのはブートライズカノン。倒れているフォールスカノンの上にのしかかるように、飛びかかっていく。
フォールスカノンは素早く膝を折り、飛びかかってきたブートライズカノンを蹴り飛ばすと、後方に一回転して起きあがった。蹴り飛ばされたブートライズカノンもさっと素早い動きで起きあがってきている。
「フーッ、フーッ」
荒い息をしながら威嚇するように相手を見るブートライズカノン。
それを見ながらフォールスカノンはすっと足を前後に開いて、腰を落とした。右手の平を上に向けやや前に出し、左手は腰の前で構える。
「ハアアアアアアア・・・」
気合いを溜めるかのように息を吐くフォールスカノンの背中に戦士の紋章を思わせるオーラが浮かび上がった。必殺のキックの体勢。
と、ブートライズカノンも似たような体勢を取り始めた。右手の平を上にして前に出し、左手は腰に構え、腰を低く落として身構える。その前に出して右手をゆっくりと水平方向に動かし、ある一点で止め、そこで手の平を返す。
同時に両者がジャンプした。
空中で右足を突き出すブートライズカノン、左足を突き出すフォールスカノン。
二人の足が空中で激突、それは物凄い反発力を生みだし、両者を大きく吹っ飛ばしてしまう。
吹っ飛ばされ、地面に倒れた二人の姿が、それぞれ祐一、正輝のものへと戻っていく。
「ク・・な、何なんだ、奴は・・・?」
正輝はよろよろと起きあがると、止めてあったバイクに駆け寄った。そしてそのままバイクに乗ると、逃げるかのように走り去っていく。
「あ、あいつを追ってくれ!!」
そう言って祐一が身を起こした。変身が解けた事により、理性が戻ったのだろう。ブートライズカノンでいる間は彼の理性は戦闘本能に取って代わられる。冷静な判断など出来ないからだ。
「あいつの行く先に、いるんだ!!」
「わかった!」
国崎はそう言って覆面車に飛び込んだ。
エンジンをかけ祐一の側まで車を移動させる。
助手席側のドアを中から開ける国崎。そこに乗り込む祐一。更に後部座席には郁未がいつの間にやら乗り込んでいた。
「ついてくる気か?」
国崎がそう言うと、郁未は黙って頷いた。
「危険ですよ・・・俺が守りきれるかどうかは自信がない」
祐一はまたもぐったりと背もたれに身体を預け、それでも後部座席を振り返って言う。
「乗りかかった船よ。それに・・・ここまで来たら何がどうなっているのか説明して欲しいからね」
郁未はそう言って祐一に向かってウインクして見せた。
 
<都内某所・廃倉庫? 17:08PM>
「あああああっ・・・・」
悲痛そうな声が聞こえてくる。
声の主は秋子。
全身を痙攣させながら、しかし、椅子に縛られて身動きがとれず、苦しんでいる。
その声を聞きながら、つらそうに顔を背けている葵。
声を上げさせている本人の真奈美もかなりつらそうだ。
そんな中、ただ一人、老婆だけがニヤニヤと笑っている。
「つらいか、秋子よ? これは一族を裏切ったお前へのお仕置きじゃ」
老婆の声を聞きながら、その後ろに立っている名雪は何の表情も見せない。
秋子は目隠しの下、閉じられた瞳から涙を止めどなく流していた。真奈美による精神干渉、それが秋子を地獄にいるよりもつらい思いをさせている。
「あああっ・・・お願い、もう、もう、許して・・・」
涙ながらに訴える秋子。
だが、老婆はそれを聞いてもニヤニヤ笑っているだけだ。
「お願いです、あなた、もうこれ以上責めないで!!」
秋子の絶叫。
今、彼女は名雪の父親、かつて自身が愛した男に口汚く罵られていた。それは決してあり得ない事であったのだが、今の秋子にはそれすらわからない。
『君が・・・名雪を、娘を殺そうとするから!!』
『君はそう言う人間だったのか!!見損なったよ!』
『君を愛した俺が間違っていたよ、もううんざりだ!!』
「やめて!お願い、もう止めてぇっ!!!」
他の者には聞こえない、秋子を罵る男の声。
「フフフ・・・そろそろ限界のようじゃな」
老婆がそう言って真奈美を見た。
真奈美は大きく息を吐き、秋子の後頭部から手を離す。だが、それでも秋子を襲う幻聴は治まらないようだ。
「お願い・・・許して・・・お願い・・・」
秋子はぐったりと項垂れ、ぶつぶつ同じ言葉を繰り返している。
「許してあげよう、秋子よ。さぁ・・・」
老婆はそう言って名雪を振り返った。
名雪は頷くと、秋子の側に歩み寄る。
「もう・・お終いだね、こうなっちゃうと」
名雪は自分の母親を見下ろしながらそう呟いた。その声には感情など一切込められていない。まるで物を見るかのように、秋子を見下ろしている。
その目が金の光を帯びていき、秋子の周囲に力が渦巻いた。それは圧倒的な力。今の、精神を壊された秋子には決して防ぐ事に出来ない物凄い力。
「サヨナラだよ、お母さん」
「まぁ、そう簡単に終わっちゃうと伯母さん的には面白くないのよね、名雪ちゃん」
突如そんな声が倉庫内に響き渡った。
はっとなり、顔を上げる名雪。
素早く周囲を見渡す葵と真奈美。
老婆だけが悠然と声をした方を視線だけで探っている。
「探しても無駄よ。みんなの精神に働きかけて見られないようにしているから」
「その声・・・冬美か!?」
「ご名答、流石は大婆様」
そう言って女性が彼女たちの前に姿を現した。だが、誰も女性の方を見つけられないでいる。それは先程女性が言った通りであった。
その場にいる全員の精神に自分の姿が見えないよう、暗示をかけているのだ。
「まさか・・冬美ねーさん!?」
「そ、そんな・・どうして今頃・・?」
驚きの声を上げる葵と真奈美。
冬美と呼ばれた女性はにっこりと笑うと、秋子の側まで歩み寄り、彼女を縛り付けている縄をほどいてやった。その間も彼女は老婆達の方から目を離さない。
「何をしに来たのだ、冬美?」
老婆が問う。今、その老婆の目の前で冬美は秋子の身体を縛り付けている縄をほどいているにも関わらず、その姿をどうしても捕らえる事が出来ないらしい。
「何しに来たって・・・決まっているじゃない。この子を助けに来たのよ」
冬美がそう言って秋子を抱きかかえる。
見た目は細い冬美だが、意外と腕力はあるようであっさりと秋子を抱き上げてしまう。
「それと馬鹿息子に会いに、かな?」
「息子・・・?」
老婆が意外そうな顔をする。
「そう、息子よ。そこの名雪ちゃんと同じ歳の。もし、あの時大婆様にあの子の事が知られていたら今頃は存在しなかったでしょうけどね」
冬美は秋子を抱きかかえたまま、老婆達から離れていく。やはり老婆達から目を離さず、ゆっくりと後退していく。
「冬美ねーさん、息子って・・・」
葵が明後日の方向に呼びかける。
冬美はそれを見て苦笑を浮かべたが、
「そう、不肖の馬鹿息子。立派な男の子よ」
そう言って物陰に秋子を降ろした。
「まさか!!水瀬の一族に男の子が授かるなんてこと!!」
困惑したような真奈美の声に、冬美は冷静に返す。
「私は水瀬じゃないわ。相沢冬美よ」
冬美がそう言った時、一台のバイクが倉庫の中に入ってきた。
そのバイクは倉庫の中程まで来ると、そのまま横滑りに倒れてしまう。
「正輝!!どうしたの!?」
慌ててバイクから投げ出された正輝に駆け寄る真奈美。
「あ、あいつは何なんだ・・・」
正輝がそう言って真奈美に縋り付く。
その表情は恐怖の為か青ざめている。
「何度倒しても何度倒しても起きあがってくる・・・奴は一体・・・?」
と、そこに倉庫のドアを突き破って一台の車が飛び込んできた。
それと同時に冬美のかけた精神暗示が解けてしまう。
老婆が素早く冬美の姿を見つけ、目を細めた。
「冬美、小癪な!!」
老婆の目が金色の光を帯びる。
「絶対に、絶対にやらせるかよぉっ!!」
そう言いながら、冬美の前に飛び出してくる一人の青年。
老婆の放った衝撃波が青年、相沢祐一とその母、相沢冬美に襲いかかる。
「ウオオオオオッ」
猛然と両手を前に突き出す祐一。そこで、衝撃波が弾かれた。
弾かれた衝撃波が倉庫内に拡散し、あちこちにぶつかっていく。
「な、何と!?」
驚きの声を上げたのは老婆だった。
今の衝撃波は間違いなく二人と吹っ飛ばし、壁に叩きつけるだけの威力を持っていたはずだった。それを、両手ではじき返す事が出来るとは。
祐一は両手から上がる煙のようなもの越しに老婆を睨み付ける。
「これ以上・・・お前らの好きにはさせない。秋子さんも、名雪も、みんな、取り戻す!俺の手で守ってみせる!!」
冬美は自分の前でそう言った息子の姿に感心したのか、その肩にそっと手を乗せていた。
「よく言ったわ、祐一。あんたも立派になったもんね」
その声に祐一が振り返る。
「・・・お袋?」
「誰だと思った?」
「秋子さん」
「あんたね・・・久し振りに会った母親を叔母と間違う?」
冬美はそう言って苦笑した。
それから祐一の目をじっと覗き込む。
「正直言ってここまであんたが大人になっているとは思わなかったわよ、この馬鹿息子」
優しい笑みを浮かべて冬美がそう言うのを祐一は驚いたように見ている。
「お袋・・・?」
「さぁ、お手並み拝見と行かせてもらおうじゃない。さっき言った事、違えるなよ、祐一」
冬美はそう言って祐一の肩を叩き、地面に寝かせてある秋子を再び抱き上げた。
祐一は二人を背中側にかばうように前に出ている。
「貴様が・・・・冬美の息子だと・・・?」
老婆が憎らしげに祐一を見やって言う。
「カノンであるのみならず、冬美の息子・・・水瀬に生まれるはずのない男・・・」
「そ、それがどうした。まさか俺が怖い訳じゃないだろうに!」
老婆に向かってそう言い、祐一は腰の前で両手を交差させた。すると、腰にベルトが浮かび上がってくる。交差させた腕をそのまま胸の前まで上げ、左手を腰まで引く。残った右手で十字を描き、すっと顔の横にまで引き寄せる。
「変身っ!!」
そう言って右手を振り下ろす。同時にベルトの中央から光が放たれ、祐一はブートライズカノンへと変身を遂げた。
「小癪なっ!!」
老婆が手に持っていた杖を横に一閃させた。そこから生み出される衝撃波がブートライズカノンを吹っ飛ばす。
その間に冬美は秋子を抱きかかえて、祐一が飛び出してきた車に駆け込んでいた。後部座席に秋子を座らせ、運転席を見る。
「早く出して!!」
運転席にいた国崎は突然入ってきた冬美を見て驚いたような顔をしていたが、すぐに頷き、覆面車を発進させた。
「ちょっと!祐さんはどうするのよ!?」
一緒に後部座席に乗っていた郁未がそう言うと、冬美が彼女を見、こう言った。
「祐一なら大丈夫よ、多分ね」
「多分って・・・今の祐さんは立っているのもやっとなのに!!」
「それなら余計に大丈夫。あの子の中にある力が、目覚めるかも知れないわ」
冬美が自信ありげに言ったので郁未は黙り込むしかなかった。
「死ねっ!死ねっ!貴様は存在してはならないもの!!ここで死ねっ!!」
老婆が次々と衝撃波を生み出してはブートライズカノンに叩き込んでいく。
衝撃波に為す術のないブートライズカノンは、木の葉のように、圧倒的な力の前に翻弄されるしかなかった。
「名雪!!手を貸すのじゃ!!ここで奴を始末して置かねば後々災いとなるっ!!」
老婆にそう言われて、名雪が老婆と並び、すっと手を挙げた。
「祐一・・・死んで」
一切の感情のない声でそう言い、名雪が手を振り下ろす。そこから生み出された衝撃波がよろよろと起きあがっていたブートライズカノンを吹っ飛ばした。
地面に叩きつけられるブートライズカノン。
その姿が祐一のものに戻っていく。
「くうっ・・・」
地面に手をつき、何とか起きあがろうとする祐一。
額からは血を流し、口の端からも一筋の血が流れ落ちている。満身創痍と言っても過言ではない祐一の姿。それでも彼は立ち上がろうとしている。
「祐・・・・一・・・・?」
名雪の手が止まった。再び衝撃波を放とうと上に挙げていた手が止まり、口元に添えられる。
「何で・・・祐一が・・・?」
名雪の全身ががたがたと震え出す。
老婆はそんな名雪を見て、舌打ちをする。
「ちいっ、こんな時にっ!!」
老婆は手に持っていた杖で名雪の胸を思い切り突いた。
うっと呻き声を上げて名雪の身体が崩れ落ちる。
「こ、このクソババァッ!!」
名雪がその場に崩れ落ちるのを見た祐一がぎゅっと拳を握りしめ、老婆に向かって駆け出した。
「貴様がいては邪魔になるだけ!!ここで死ぬがいいっ!!」
老婆は自分の方に向かってくる祐一を見、そちらの方へと杖をつきだした。一際強い衝撃波がそこに生み出される。いや、ただの衝撃波ではない。かなり高密度に凝縮された力の固まり。そこだけ空間が歪んで見える程の、物凄い力の球体。それが祐一に向かっていく。
「肉塊と化し、朽ち果てるがいいわっ!!」
老婆が奇声を上げる。
「ウオオオオオオオォォォォォォォッ!!」
祐一が雄叫びをあげ、右手を突き出した。同時にその姿がブートライズカノンへと変わる。
そして、力の球体とブートライズカノンの拳が接触した、次の瞬間、物凄い衝撃波が周囲に飛び散った。
「な、何っ!?」
とっさに防御の衝撃波を放ち、老婆は自分の身を守る。
周囲にいた葵、真奈美と正輝は衝撃波により、吹っ飛ばされていた。
更に衝撃波が床面につもっていた埃を巻き上げ、周囲の視界を奪っている。老婆は警戒するようにブートライズカノンのいる方を睨み付けていた。
やがて、巻き上げられていた埃が地面へと降り、視界が晴れていく。
「なっ・・・・!?」
老婆の顔が驚愕に彩られた。
空気が歪んでいる。いや、より正確に言うならば空間が歪んで見える。
その向こう側にはカノンが立っている。白いカノン、ブートライズではない、あの、真っ白のボディのカノン。その身体のあちこちに黒いラインが走っていた。
歪む空間の向こう側にそのカノンがゆらめくような、陽炎のように、立っている。
そのカノンの足下、周囲3メートル程の空間がまるでクレーターのように陥没していた。
不思議な事に、その陥没部分は何か鋭利な刃物で切断されたかのように綺麗になっている。
「・・・引くぞ!」
老婆が慌てたようにそう言った。
先程の衝撃波に吹っ飛ばされていた葵、真奈美、正輝が立ち上がり、老婆の側に寄っていく。気を失って倒れている名雪の身体を正輝が抱え上げ、油断ならない視線でカノンの方をじっと見つめた。
「この程度で終わったと思うな、相沢祐一!貴様は必ず殺してやる!一族の総力を挙げてな!!」
老婆が最後にそう言い放ち、そしてすぐに消えていく。
瞬間移動。
廃倉庫の中に残されたのはカノン、いや、変身の解けた祐一のみ。
満身創痍の彼は完全に気を失っていた。
そのまま、ばたりとその場に倒れてしまった彼を、戻ってきた国崎達が発見したのはそれから1時間後の事であった。
 
Episode.35「救出」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderKanon
 
次回予告
秋子を助け出したものの、名雪を奪い返せず、更に祐一は深手を負って倒れてしまう。
意識不明のまま昏睡状態に陥る祐一。
栞「このまま・・・目覚めなければ・・・」
潤「こんな時だからこそ、やらなきゃいけないと思うんです」
暗躍する未確認生命体第2号ガダヌ・シィカパ。
その邪悪な魔の手が狙うのは一体誰か?
ガダヌ「ギナサン・ゴドヌ」
老婆「お主の敵は・・・こいつじゃ」
水瀬の大婆様がカノン抹殺の罠をかける!
運命の矢が指し示す新たな犠牲者、その名は・・・。
浩平「瑞佳ぁぁぁぁぁぁっ!!!」
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それは悪夢の序章・・・!!

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