<城西大学裏庭 16:18PM>
深緑色の戦士が猛然とウツボカズラの怪人を殴り続ける。
その度にその怪人の血とも言うべき緑色の体液が飛び散り、深緑の戦士の体や顔に付着した。
よろけて倒れるウツボカズラの怪人を見て、深緑の戦士は雄叫びをあげながら走り出した。
「ウオオォォォォォォッ!!!」
ウツボカズラの怪人がふらふらと立ち上がる。
それを見ながら深緑の戦士は大きくジャンプし、右足を振り上げ、一気に振り下ろした!
踵に生えている鉤爪がウツボカズラの怪人の肩口に深く突き刺さる。
声にならない悲鳴を上げるウツボカズラの怪人。
その肩口に古代文字が浮かび上がり、そこから全身に光のひびが入る。
「りゃあぁぁっ!!」
地面についていた左足を跳ね上げ、そのままサマーソルトキックのような一撃を食らわせた戦士が空中で一回転して着地した。
その前方でウツボカズラの怪人は後ろへと倒れ、爆発した。
爆発の生み出した風邪と煙の中、戦士が振り向いた。その姿が戦士から折原浩平のものへと戻っていく。
爆風で乱れた髪をかき上げ、浩平はサングラスをかけた。
紫色に変化してしまった瞳を見られないためだ。
大きく息を吐き、その場から立ち去ろうと歩き出す。あまり長居して人に見られても困る。
と、その時、彼の胸に激しい痛みが走った。
「ぐはっ!!」
思わずその場に倒れてしまう浩平。
胸を右手で押さえて苦しそうに息を吐こうとするが・・・・それすら彼の体は出来なかった。息をすることすらままならず、浩平はその場でもがき続ける。開いている左手で地面をかきむしり、サングラスの下、瞳を大きく開いて、虚空を見る。
歪む視界の中、そこに彼は何かを見た。
それは・・・赤いカチューシャを付けた小学生くらいの少女。
浩平の意識はそこまでだった。
 
仮面ライダーカノン
Episode.13「再動」
 
<N県内倉田重工第3研究所 17:29PM>
その日、倉田佐祐理は警視庁のある幹部からの電話を受けていた。
その内容は近頃東京都内に出現し、次々と殺人を繰り返している未確認生命体についてであり、数日前、東京で見せたPSK−01の対未確認生命体特捜班への参加を呼びかけるものであった。
しかしPSK−01は自衛隊との共同開発であり、その権利の半分は自衛隊のものだと言うことで佐祐理は回答を控えた。
自衛隊でも独自に対未確認生命体対策を練っており、その中核にPSK−01の存在があった。それも回答を控えた理由である。
「困りました・・・」
そう呟いて彼女は立ち上がり、今PSK−01が改修され、そのテストが行われている第3研究所へとやって来たのである。
PSK−01の装着者である北川潤やそのバックアップ要員の七瀬留美、斉藤と話をするためにだ。
第3研究所では丁度PSK−01のテストが終わったところであった。
汗だくの潤や、斉藤、留美のいる管制室に佐祐理は何の躊躇もなく入っていった。
「お久しぶりです、皆さん」
そう言って一礼する。
「お久しぶりです、倉田さん」
いち早く立ち上がった留美がそう言う。
続けて潤と斉藤も会釈する。
「お疲れさまです。すいません、いきなり来てしまって」
「こちらこそ・・・すいません、こんな格好で」
ランニングシャツ姿で首からタオルをかけている姿の潤。確かにあまり人に見せられた姿でもない。
「気にしないでください・・それより今日はお話があって来たんです」
そう言った佐祐理の目は真剣そのものだった。
普段のほほんとしたお嬢様然とした佐祐理を見ている人には驚きであるのかもしれない。
事実、斉藤はこんな佐祐理を見たことがなかったので驚いている。
「・・・とりあえずここじゃ何ですから場所を変えませんか?」
潤がそう言うが、佐祐理は首を左右に振った。
「この話は他の誰にも知られたくはありません。ここは幸いなことに完全防音がなされています。皆さんがいいなら、ここで・・」
「あたしは別に構いません」
いち早くそう言ったのは留美であった。
この三人の中で紅一点なのだが一番気の強いのも彼女で、いつの間にかこの三人のリーダー格になってしまっているのだ。
「七瀬チーフがいいなら俺も」
「俺にも依存はありません」
斉藤、潤が続けて言う。
佐祐理は頷くと、留美の勧めた椅子に腰掛けた。
「今、東京でどのようなことが起きているかはご存じですね?」
「あたし達が以前諏訪湖で遭遇した未確認生命体の仲間と思われる未確認生命体が次々と殺戮を繰り返していることならニュースでいつも確認しています」
「諏訪湖で見たのが第1号、第2号、そして第3号ですね?」
佐祐理の問いかけに留美、斉藤が答える。
頷く佐祐理。
「現在第6号までが確認されています。警察では未確認対策本部を警視庁に設置してその対応をしていますが、やはり、手に負えるような相手ではなさそうです」
「第4号の時は警察の方にもかなりの被害が出たと聞いています」
そう言う潤にまた頷く佐祐理。
「今日、警視庁からPSK−01に協力の要請がありました。ですが、PSK−01は自衛隊との共同開発で、自衛隊にも使用する権利があります」
「そう言えば俺たち、一応自衛隊ってことになっているんでしたよね?」
「少し黙ってなさい、斉藤君」
厳しい声でそう言う留美。
不服そうに留美を見る斉藤だが、それ以上何も言わなかった。
「自衛隊はおそらくPSK−01が警察側の未確認生命体対策班に参加することを許可しないでしょう。そして警察側も一度紹介した以上、PSK−01が自衛隊の未確認対策班にだけ参加することにいい顔はしないと思います」
佐祐理の言うことに留美が頷いた。
警察は自分達が一般市民を守るのだと思っているから自衛隊が出てくることを歓迎しないだろうし、自衛隊は自衛隊で警察如きに何が出来ると思っているだろう。事実、自衛隊の方が装備面では遙かに上だが、警察は自衛隊よりも一般市民にとって身近である。
「と言うことは・・・我々はどうすればいいんでしょうか?」
そう言ったのは潤である。
「・・・・・・」
無言で佐祐理は困ったような笑みを浮かべて潤を見た。
「馬鹿ねぇ・・・それを相談に倉田さんが来たんじゃない」
そう言って留美が本当に馬鹿にしたような目で潤を見た。
思わず視線をそらせてしまう潤。
「・・・倉田さん、何かお考えがありそうですね?」
留美は再び佐祐理に視線を向けてそう言った。
「あたし達は一応自衛隊の所属と言うことになっていますが倉田さんがもし・・・」
そこで一度言葉を切り、留美は周りの二人を見た。
斉藤はわかっていないようだったが、潤はしっかりと頷いた。
それを見て、留美は再度佐祐理を見る。
「もし倉田さんがあたし達を独自に動かしたいならそれに従います」
「ど、ど、どういうことですか、それは!?」
慌てて斉藤がそう言う。
「つまりこういうことだよ。自衛隊でもなく、警察でもなく、どちらにも属さない、独自に未確認を迎撃する部隊として我々を組織するって言うことだ」
潤がそう言って斉藤に説明する。
「それじゃ・・・その・・自衛隊に対して・・・」
「PSK−01を共同開発したと言っても資金、その他技術のほとんどは倉田重工からのものよ。自衛隊が関わったのは表向きの存在の理由づくりのためだけなの」
更に留美がそう言って斉藤を見た。
元々留美は倉田重工側の人間だ。
PSK−01開発計画に参加していた彼女が今のポジションにいるのは不思議でも何でもない。
斉藤は倉田重工と自衛隊をつなぐパイプ役のようなものであった。意外とパソコンなどの電子機器に明るいことからこのPSK−01チームに編入されたのである。
そして潤は自衛隊の人間である。彼は物凄い努力と強くなることへの執念を買われて、そして、佐祐理の強い推薦もあってこのPSK−01の装着員として選ばれたのである。もっともどうして佐祐理が彼を強く推薦したのかは謎であるが。
一方佐祐理はこの倉田重工の重役の一人である。
PSK−01開発計画を強く推し進めた人物でもあり、このプロジェクトの総責任者でもある。
「表向きの理由って・・・」
「まさか一企業がこういうものを開発して所持するわけにはいかないだろう?」
先ほどから驚いてばかりの斉藤に潤が言う。
「表向き、自衛隊のものとすればある程度の問題は回避出来る」
「そうですかぁ?」
疑問を隠さずに斉藤が言う。
「そう言うことにしておきなさい!とにかく・・どうしますか、倉田さん?」
留美がじっと佐祐理を見た。
まるで決断を迫るように。
佐祐理は少し困ったような微笑みを浮かべて留美を見返した。
潤、斉藤の二人も黙って佐祐理の回答を待っている。
やがて・・・佐祐理は何も言わずに立ち上がった。
「倉田さん?」
「PSK−01は・・・先に東京の倉田重工第7研究所に向かってください。追って決定事項を伝えるものとします」
そう言った佐祐理にいつもののほほんとした様子はなかった。
この話を始めた時と同じ、真剣な目をして三人を見ている。
「わかりました。我々は第7研究所に向かいます!」
留美がそう言って立ち上がり、佐祐理に向かって敬礼した。
慌てて斉藤、潤もそれにならう。
佐祐理は立ち上がって三人に一礼すると管制室を出ていった。
 
<廃ビル 09:49AM>
都内にこんな場所があったのか・・・今浩平はとある廃ビルの中の一室に置かれたベッドの上で眠っていた。
その額には濡れたタオルが置かれ、寝息も苦しそうではない。
そんな浩平をじっと見ている姿があった。
赤いカチューシャを付け、黒いタートルネックのセーターを着た小学生くらいの少女である。
浩平を見つめるその視線は・・・何処か哀しげな・・・しかし、心配している様子はなかった。
まるで彼が大丈夫だと確信しているかのように。
そして、浩平は眠り続ける・・・。
 
<都内某所(つぶれたクラブ風の場所) 10:28AM>
かつては大勢の若者で賑わったのだろう、しかし、今は人の姿もなく荒れ放題になっている。
そこに・・・そいつらはいた。
カウンターには美しいドレス姿の女性、DJが景気よくレコードを回していた場所には黒い服装に身を包んだ男、床にはどっしりと腰を下ろした体格のいい男、入り口のそばには腕を組んで爪を噛んでいる男、階段に腰掛けている蛇を思わせる容貌の女、そして前はきちんと飾られていたであろう水槽のそばにはピエロのような服装の男が水槽をのぞき込んでいる。
「ソヌギザ・ニヲジャ・ノルジャ」
ドレス姿の女性がそう言って他のものを見回した。
「ソヌギバ・・・ゴジャバヂ・ヌジジャ・カノンミ」
そう言ったのは水槽越しにドレス姿の女性を見ている男。
「しかし、カノンバ我々のゼースにとってカサジャ」
入り口のそばに立っていた男がそう言って前へと足を進める。
その男が少しであるけれども日本語を使ったことに仲間達が驚き、その男を見た。
「ゴモ・イジャリモ・ゴショタン・ロトレシャボルザ・ギャヂギャヌリ」
そう言ってその男がドレス姿の女性を見る。
頷くドレス姿の女性。
「ビサンモ・ゴショタソ・ビシュギョルジャ」
「リサバ・シュジモ・ツデリギャーン・ギセヅボル・ザナギジャ」
そう言ったのは蛇のような容貌の女である。
「シュジバ・・・ロサレジャ」
ドレス姿の女性がリング状の装飾品を水槽のそばにいる男に向かって投げつける。
それをぱしっと受け取り、にやりと笑うピエロ姿の男。
「マリヲガネツヲ・イガヲジェ・マリヲガブリツ・シャブリツミヲ」
ドレス姿の女性の言葉に頷くピエロ姿の男。
その姿が・・・赤い蛸のような怪人のものへと変わっていく。
「シウテモ・ゴドニギャ・シャーゴ・ガカパモ・シィガダン・シネシェギャヅ!」
そう言ってその蛸の怪人・シャーゴ・ガカパはまたピエロ姿の男へと戻り、そこから出ていった。
何処か不機嫌そうに他のものがその後ろ姿を見送る。
そのうち、蛇を思わせる女性が足早にそこから出ていった。
「リリモガ?」
ドレス姿の女性にそう言ったのは黒い服の男だった。
「ラモササ・ヌメグン・リガネシェ?」
「ロサレガ・ギミヌヅ・ゴショジェバマリ」
素っ気なくドレス姿の女性がそう言う。
黒い服の男は恨めしそうにドレス姿の女性を見、そしてドアの方を見やった。
「ゴモササ・カロヴァデマリ・・・・」
小さい声で呟く黒い服の男。
 
<城西大学考古学研究室 11:03AM>
コーヒーカップを片手に美坂香里はいつもと同じようにパソコンの前に座っていた。
いつもと全く同じように古代文字の碑文の検索を行っているのだ。
「さすがに何のヒントもないと・・・なかなか出ないわねぇ・・・」
そう呟いて、彼女がカップに口を付ける。
すっかり冷めてしまったコーヒーを流し込みながら彼女は緑に変化したカノンのことを思い出していた。
直接見たわけではなく、それを見た人間から聞いただけの話だが手にした拳銃を緑色のボウガンへと変化させたという。
「撃ち落とせ・・・が実は撃ち抜けだったってことは別に言わなくても良いと思うけど・・・」
そう呟いて香里はマウスを操作して別のウインドウを開く。
「緑の戦士の手に撃ち抜きしもの在りし時、大いなる力現れ疾風の弓とならん」
画面に表示された文字を口に出す。
「つまりはそう言うことなんだろうけど・・・」
「で、今度は一体何色なんでしょうね?」
いきなり耳元でそんな声がしたので、香里はどきっとしてその声のした方を見た。
そこには祐がいつもと同じくにこにこして立っている。
「おはようございます」
「・・・祐さん、どうして何も言わずに入ってくるの?」
こめかみをぴくぴくさせながら香里は祐を睨み付けた。
それを聞いた祐は意外そうな顔をし、香里を見た。
「あれ?入ってくる時に声かけましたよ?」
祐にそう言われて香里はえっと言う顔になった。
「なんか考え事していたみたいで返事無かったんですけど・・・」
「・・・ああ、そうなの。ゴメン、ちょっと考え事していたのよ。ほら、緑色の戦士のこと」
香里はそう言うと、手に持っていたコーヒーカップを置き、パソコンに向き直った。
「あの戦士は祐さんが言っていた通り、超感覚を駆使して戦う戦士のようね。だから長時間は戦えない。しかも接近戦なんかは全くと言っていい程ダメ」
また別のウインドウを開く香里。
「これは警告文のような感じね。『緑の戦士、長き時を置かず、風の如く素早く射抜け』『緑の戦士、敵をそばに寄せず、彼方より射抜け』とか・・・青の戦士の時にはなかったんだけど、緑の戦士にはこういう記述があったの。だから緑になった時は気をつけて戦った方がいいわね」
それを聞いて頷く祐。
「とりあえず緑の時は離れて戦うようにします・・・で、他には何かありませんでした?」
「他にはって?」
「青や緑以外の色についてです。なんかまだありそうな気がするんですよ」
「色・・ね・・・」
香里は呟くようにそう言うと、キーボードを軽やかにたたき始めた。
検索条件に複数の色の名前を入れていく。
「どれかに引っかかるといいけどね」
そう言って香里は微笑んだ。
 
<江東区若洲 11:25AM>
海辺に沿うような形にあるサイクリングロード。
この日はいい天気のせいもあり、そして休日と言うこともあってか結構大勢の人がサイクリングを楽しんでいた。
一組のカップルが自転車を止めて海の方を向きながら和やかに談笑している。
その足下に静かに忍び寄る影があった。
それはすっと触手を伸ばし、少しずつ海上へと姿を現そうとしているが、その姿にカップルは気付かない。
上からもその姿がはっきりと確認出来る頃になって、カップルは海中に巨大な何かが居ることに気付く。
「何だ、あれ?」
そう言って男がのぞき込もうとすると、いきなり海中から触手が伸び、男の首に巻き付いて彼を海の中へと引きずり込んだ。
「きゃああああ!!!!」
女性が悲鳴を上げる。
そこに別の触手が伸び、彼女も海へと引きずり込んだ。
その間、ほんの一瞬である。
女性の悲鳴に気付いた人々が駆けつけてきたが、そこには二台の自転車以外何も残されていなかった。
集まった人々がざわめきながらもその場から離れていく。
その時、海の上に先ほどのカップルの死体が浮き上がっていた・・・。
 
<廃ビル 12:26PM>
眠り続ける浩平の額に濡れたタオルを乗せる少女。
と、いきなり浩平の目が開き、少女の手をぐっと掴んだ。
どうやらいつの間にか目を覚ましていたらしい。
「・・・ここは・・何処だ?」
低い声で脅すかのように浩平が言う。
だが少女は怯えた様子を少しも見せなかった。それどころか浩平が目を覚ましたことに安心したような笑みさえ浮かべていた。
「・・・お前は・・・誰だ?」
警戒の色を濃くして浩平が言う。
少女は笑みを浮かべたままで何も答えない。
浩平は不服そうな顔をして少女の手を掴んでいた自分の手を放した。
「・・・・聞かせてくれ・・・俺は・・・どのくらい眠っていたんだ?」
そう言って浩平は少女を見る。
少女は少し微笑むとくるりと浩平に背を向けて歩き出した。
浩平は寝かされていたベッドに体を倒し、天井を見上げた。
しばらくそうしていたが、やがて横になっているのに飽きたのか浩平はベッドを降りて窓のそばに歩み寄った。
窓はどうやら中庭に面しているようで薄汚れた中庭に少女の姿を見ることが出来た。
少女はこちらに背を向けてじっと空を見上げている。
何をしているのだろうと浩平が窓を開けようとした時、少女の姿が光に包まれた。
「な、何だ!?」
その物凄い光に思わず浩平は手で顔を覆ってしまう。
光はすぐに収まった。
顔を覆っていた手をどけ、窓の下を見た浩平は信じられないと言った表情を浮かべる。
今さっきまでいた小学生程の少女の姿はそこにはなく、高校生程の身長の少女が先ほどの少女と全く同じ服装でそこに立っていたのだ。
その少女が窓を見上げ、にこっと微笑んだ。
浩平はその微笑みを見た瞬間、全身に悪寒のようなものが走るのを感じた。
訳もわからず浩平はその場から走り出していた。
少女は自分のいる場所に何かが近づいていることを敏感に感じ取っていたが微笑みを浮かべたまま、じっと来るのを待っていた。
中庭への出口をぶち破って深緑色の戦士が飛び出してきた。
「来たね・・・アイン・・・」
少女は微笑みながらそう言った。
そして両手を広げる。
「さぁ・・・君の力を見せて・・・」
「ウオォォォォォォォッ!!!」
深緑色の戦士が雄叫びをあげながら少女に向かって走り出す。
少女は逃げるどころか未だに微笑みを浮かべたまま、じっとしている。
戦士が間合いをとってジャンプし大きく右足を振り上げる。ウツボカズラの怪人を倒した必殺の技だ。
それを見ても少女は動揺一つ見せなかった。
「ウオォォォォォォォッ!!」
深緑の戦士が振り上げた右足を振り下ろした。
その一撃が少女の肩に打ち落とされる。
だが、少女はその一撃を食らっても表情一つ変えなかった。
「・・・まだまだ・・・君は強くなるよ・・・ねぇ、アイン・・・」
少女がそう言った時、またまばゆい光が辺りを包み込んだ。
「くっ!!」
その光に戦士は顔を手で覆ってしまう。
光が消えた後、そこには少女の姿はなかった。
「・・・・?」
戦士から浩平の姿に戻りながら、彼は少女の姿を探すように左右を見回した。
「アイン・・・だと?」
そう呟いて、浩平は空を見上げた。
少女がそうしていたように。
 
<江東区夢の島 12:53PM>
夢の島マリーナで数人の男がヨットの掃除を行っていた。
「全くどうしてこんな寒い時に海に来てんだよ」
一人の男がそう言って仲間を見る。
「仕方ないだろ・・・先輩が言うんだから」
そう言って別の男が一人ヨットの上でふんぞり返っている男を見る。
その男が先輩らしい。
「ほらそこ、ぶつぶつ言わないでちゃんと仕事する!バイト代出すっていっただろ」
先輩がそう言ってデッキを掃除している後輩達を指さした。
後輩達がまた掃除を始めたのを見てから先輩が椅子に腰を下ろす。
その時、彼の首に後ろから触手が巻き付いた!
そのまま彼は海中へと引きずり込まれてしまう。
バシャーンと言う音がして、その音に気がついた後輩達が音のした方へと集まってくる。
「何だ?」
「誰か落ちたのか?」
口々にそんなことを言っていると、海面に先輩が変わり果てた姿で浮かび上がってきた。
異常な程首が細くなっており、一見して締め上げられたとわかる。
「ヒイイイイイイッ!!!」
誰かが悲鳴を上げた。
それを皮切りに皆が一斉に逃げ出そうとする。
だが、その前にピエロのような服装の男が立ちはだかった。
「ミザナマリ」
そう言うと、ピエロのような服装の男はシャーゴ・ガカパへと姿を変えた。
「うわぁぁあぁっ!!!」
「み、未確認生命体っ!!」
悲鳴が上がる。
数分後・・・そこには数名の若者の死体が転がるだけとなっていた。
 
<城西大学考古学研究室 15:12PM>
香里はパソコンに向かいながらうつらうつらしていた。
ここ最近、彼女は古代文字の碑文解読に全力を注いでおり、かなり私生活を削っていた。
その疲れが出たのだろうか、ついついうたた寝をしてしまっている。
お昼前に来ていた祐は「店の手伝いがあるから」と言って帰ってしまっていた。
今日はエディの姿も見えない。
この研究室には彼女一人だけしかいなかった。
気持ちよさそうに前後に船をこいでいる彼女をたたき起こしたのは携帯電話の呼び出し音だった。
はっと目を覚ました香里が慌てて携帯電話を手にし、通話ボタンを押す。
『よう、元気か?』
聞こえてきたのは国崎往人の声だった。
警視庁対未確認生命体対策班の刑事である。
『あんたに頼みがあるんだが聞いてくれるよな。この前あんたの言うこと聞いてやったんだから』
いつものことだがえらそうな口調である。
「いったい何の用?」
ついつい不機嫌そうな声になってしまう香里。
国崎往人とはいつもこんな調子だった。
『祐の字を呼び出したいんだが何処にいるか知っているか?』
「祐さん?・・・・祐さんなら喫茶ホワイトでしょ?」
『その喫茶店の電話番号を俺は知らないんだよ。今、手元に書くものがないからすぐに夢の島マリーナまで来るように言ってくれ!』
「・・わかったわ。あんたには前の時の借りがあるものね・・・夢の島マリーナで良いのね?」
『ああ、また未確認が動き出したようなんだ。あいつの力を借りて、一気に倒したい!』
「少しは自分達で頑張りなさいよ・・・」
『文句は後で聞くから!じゃ、頼んだぞ!』
電話はそれで一方的に切られてしまった。
香里はため息をつくと、上着を片手に立ち上がろうとして、ふと、画面に何かが検索されているのを見つけた。
「紫・・・?」
そう呟いて、きちんとした検索結果を表示しようとする。
「・・紫の戦士は・・・大地の戦士。怒れる大地の牙を手に・・・」
そこまでしか表示されていなかった。
香里は再び検索を始めるようにセットしておいてから研究室を出、喫茶ホワイトに向かった。
 
<喫茶ホワイト 15:31PM>
香里が喫茶ホワイトにやってきた時、喫茶ホワイトでは一人の客の姿もなく、店員達が暇そうにしているだけであった。
「いらっしゃいませ・・・って香里さんだぁ」
そう言ったのはアルバイトのウエイトレス・霧島佳乃である。
「祐さん、いる?」
香里が佳乃に向かって手を振りながらそう言う。
「祐さん?」
佳乃が首を傾げた。
「祐さんなら・・ほら、そこ」
そう言ったのはもう一人のウエイトレス・長森瑞佳だ。
彼女と香里は馬が合うのかとても仲がいい。
その瑞佳が指さしたのはカウンターの方で、そこでは祐が鍋を前に何かを作っていた。
「何してるの?」
「この店自慢のカレーの下ごしらえですよ」
振り返りもせずに祐は香里の疑問に答える。
それを聞いた香里は目を丸くして瑞佳を見た。
この喫茶ホワイトでは調理全般をマスターと瑞佳が取り仕切っている。祐はコーヒーを入れたりするぐらいの仕事しかしているところを香里は見たことがなかった。
「マスターが祐さんにやらせろって」
何処かあきらめにも似た表情の瑞佳。
「ここ最近店終わってから教えてもらっていたんですよ〜。だから大丈夫」
そう言って初めて祐は振り返り、自分を見ている三人に向かって右手の親指を立てて見せた。
「ところで、香里さん、祐さんに用じゃなかったの?」
そう言って瑞佳が香里を見た。
「ああ、そうだったわ。祐さん、国崎が夢の島マリーナまで来てくれって」
「ええ!?今は行けませんよ〜」
困ったような顔をする祐。
「見ての通り、今はカレーの下ごしらえの最中ですから」
「でも急ぎみたいだったわよ」
「困りましたね・・・」
祐はそう言って瑞佳を見た。
瑞佳は苦笑を浮かべると立ち上がり、カウンターの中へと入ってくる。
「私がやっておいてあげるよ」
「すいません・・お願いします」
祐は瑞佳に頭を下げるとカウンターの中から出、つけていたエプロンをはずした。
「佳乃ちゃん、後よろしくね」
そう言って店を出ていく。
「何か知らないけど、頑張ってね」
佳乃がそう言って祐の後ろ姿に手を振って見送っている。
それを見て、香里は慌てて店の外に出て、祐のそばに駆け寄った。
祐は自身が名付けたバイク・ロードツイスターに乗ってエンジンをかけようとしているところだった。
「祐さん!」
「・・・どうかしました?」
「解読の結果、一部だけど出ていたの。今度は紫。大地の戦士」
「今度は紫、ですか?」
「そう・・・怒れる大地の牙を持って何かをする戦士。そこまでしか検索出来ていなかったけど・・・」
「怒れる大地の牙・・・何なんですか?」
「まだわからない。でも検索結果が出たらすぐに伝えるわ」
「・・・わかりました。とにかく、俺、行きます!」
祐はそう言うとロードツイスターのエンジンをかけ、一気に走り出した。
香里はその後ろ姿を見送るとすぐに城西大学に戻っていった。
 
<東京都内倉田重工第7研究所 15:45PM>
N県を出発したのが今日の朝10時頃、この倉田重工第7研究所に到着したのが13時過ぎ。
装備の点検や昼食をとっている間に新たな未確認生命体出現の情報が飛び込んできた。
「未確認生命体第7号ですか・・・」
「はい、極秘裏に警察の無線を傍受したところ、未確認生命体第7号が若洲から夢の島に出現し、次々と人を殺害しているそうです」
研究所のスタッフからそれを聞いた留美達に緊張が走る。
すぐさま、彼女たちはPSK−01運用専用のトレーラー、通称Kトレーラーへと向かい、出動準備に入った。
「でもまだ倉田さんからは何も・・・」
おずおずと斉藤が言うが、それを取り合う留美ではなかった。
「そんなこと言っていたらまた被害者が出るわ!私達は少しでも被害者を減らし、かつ未確認生命体を駆逐することが一番大事じゃないの?」
そう言って斉藤を睨み付け、いつでも出動出来るよう準備を開始する。
その様子を横目で見ながら潤はこれから起こるであろう戦いに闘志を燃やしていた。
「今度こそ・・・!!」
初めての戦いの時は為す術も無くやられてしまったが今度はそうも行かない。その時の戦いを参考に改修されたPSK−01ならば未確認生命体とも互角以上に戦えるはず。いや、今度は確実に倒さなければならないのだ。
「出動するわよ!北川君!」
「はいっ!!」
留美に声をかけられた潤がそう言ってしっかりと頷いた。
Kトレーラーが倉田重工第7研究所から発進していく。
 
<中央区築地 15:58PM>
ロードツイスターを夢の島マリーナへと向けて走らせていた祐の頭にピキーンと何かが走った。
「・・・・・!!」
祐は何かを察知したのかロードツイスターを夢の島マリーナでは無く、別の方向へと向けた。中央卸売市場へと向かう。
そこでは・・・海上からあがってきたシャーゴ・ガカパが次々と卸売市場で働いている人をその魔の手にかけていた。
逃げまどう人々を嬉々として追いかけ、触手で捕まえては絞め殺していく。
「ミゼド・ミゼド・ソッショ・ロデン・シャモニサネド!」
また一人、触手で捕まえ、自分の方に引き寄せ、その首を自らの手で締め上げる。
「ぐあ・・・」
苦しそうにもがく作業員。
そこに一台のバイクが突っ込んできた。祐の操るロードツイスターである。
ロードツイスターはシャーゴ・ガカパを跳ね飛ばすと、急ブレーキをかけて停車した。
ヘルメットを脱ぎながら祐はぶつかった時に投げ出された作業員に駆け寄っていく。
「大丈夫ですか?」
声もなく頷く作業員。
「早く逃げて!」
そう言った祐に背後からシャーゴ・ガカパの触手が襲いかかった。
彼の首に触手が巻き付き、彼を大きく後方へと投げ飛ばす。
コンクリートで固められた地面に叩きつけられる祐。
「ゼースモ・カサン・ヌヅマ!」
シャーゴ・ガカパが不機嫌そうに言う。
祐はそれを聞いて素早く立ち上がると、いつもの変身ポーズをとった。
両手を前に突き出し、左手だけを腰まで引く。残った右手で十字を書き、一言。
「変身!!」
それから右手と左手を素早く入れ替える。
次の瞬間、彼の腰にベルトが浮かび上がり、その中央がまばゆい光を放った。
ベルトから全身に向かって白い第二の皮膚が覆い、その上を筋肉を模したような生体装甲がまるでボディアーマーの様に包み込む。左右の手には手甲とナックルガード、手首に当たる部分には赤い宝玉がはめ込まれたブレスレットが。足首には手首と同じ赤い宝玉をはめ込んだアンクレット。膝には同じく赤い宝玉がはめ込まれたサポーター。頭には赤い大きな目、牙のような意匠の口、金色に輝く左右に開いた大きな角を持つ仮面。
戦士・カノンである。
カノンは身構えると、シャーゴ・ガカパと睨み合った。
「カノン・・・・シィルジョリリ・ゴゴジェ・ニサシュニ・シェギャヅ!」
そう言ってシャーゴ・ガカパが触手を伸ばした。
本物の蛸と同じく8本の触手全てがカノンめがけて一斉に襲いかかる。
大きくジャンプして触手を交わすカノン。
だが、その足に触手の一本が巻き付き、彼を地面へと叩きつけた。
そこにまるで鞭のように触手をうならせてシャーゴ・ガカパが襲いかかる。
地面を転がってその一撃を交わしたカノンは素早く起きあがるとジャンプしてシャーゴ・ガカパに飛びかかった。
一気に間合いを詰め、接近戦に持ち込む。
鋭いパンチ、エルボーがシャーゴ・ガカパに叩き込まれるが、シャーゴ・ガカパはダメージを受けた様子はなかった。
「何・・・効かないのか!?」
驚きの声を上げるカノン。
どうやらシャーゴ・ガカパの体はかなりの軟体性があり、それがパンチなどのダメージを吸収してしまっているようだ。
「ノヲサ・タヲシィマジョ・ギグガ!」
シャーゴ・ガカパはそう言うと、逆にカノンにパンチを叩き込んだ。
思わずよろけるカノン。
そこに左右から触手が襲いかかる。
鞭のようにしなやかになった触手が左右からカノンを打ち据え、カノンを吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたカノンが市場の中にまで転がって来、積み重ねられていた木箱を崩してようやく止まる。
「く・・・あの体にはパンチは効かないのか・・・?」
カノンは起きあがると追ってくるようにゆっくりと中に入ってきたシャーゴ・ガカパを見た。
「なら・・・」
すっと変身ポーズをとるように身構えるカノン。
そして意識を集中させ、青い身体へと変化する!
それを見たシャーゴ・ガカパが一瞬怯んだ。
カノンは素早くジャンプすると、鉤付きの棒を手に取った。
その棒がカノンの力によって専用の武器へと変化する。
青いロッドを構え、カノンがシャーゴ・ガカパと正対した。
シャーゴ・ガカパは8本の触手を鞭のように回転させながら油断無くカノンの方を見ている。
カノンの手の中で青いロッドの左右がしゃきんと伸びた。全長2メートル程になったロッドを頭上で回転させ、相手の出方をうかがうカノン。
先に動いたのはシャーゴ・ガカパだった。
8本のうち、4本を右から、残り4本を左から交互に振り下ろす。
カノンは素早い動きでその攻撃を交わし、ロッドを突き出した。しかし、シャーゴ・ガカパは触手の一本でロッドを受け止めてしまう。更にそこを軸にしてカノンを投げ飛ばしてしまった。
またも宙を舞うカノン。
地面に倒れたカノンに触手が襲いかかる。
カノンは何とか起きあがると、手に持って放さなかったロッドでその触手をうち払った。
「あの触手を何とかしないと・・・」
忌々しげに触手を見るカノン。
その時、いきなりシャーゴ・ガカパが口から何かをはき出した。
それは墨。
蛸が吐くのと同じ墨だったが、シャーゴ・ガカパの吐く墨は少し違った。
カノンの体に当たるとその墨が爆発したのだ!
「ぐわっ!!」
自分の体で起こった爆発に吹っ飛ばされるカノン。
青いボディアーマーが黒く変色し、焦げ付いている。しかし、それほどダメージは大きくないようだ。
立ち上がったカノンは青いロッドを構えると、シャーゴ・ガカパを見た。
また墨を吐き出すシャーゴ・ガカパ。
その墨をロッドで打ち落とし、カノンはジャンプした。
墨を吐いた直後のシャーゴ・ガカパは動きが鈍っている。今まで墨を吐いて攻撃をしなかったのはそれに気付かれたくなかったからであろう。
カノンはそれを二度の攻撃で完全に見切っていた。
「うおおりゃぁぁっ!!」
青いロッドを振り下ろそうとするカノン。
だが、そこに横から飛びかかってきた影があった。
その影はカノンに体当たりを食らわせると、シャーゴ・ガカパの前に着地した。
「マヲモ・シュソヂジャ?」
「カノンン・ゴドニ・ゼースモゲヲヂン・ルタル!」
そう言ったのは蛇のような怪人・ヌメグ・バカパであった。
シャーシャーと不気味な呼吸音を響かせながらヌメグ・バカパはカノンの方を見る。
カノンは既に立ち上がっており、新たに現れた未確認生命体を見て、驚いていた。
「また別の奴か!?」
シャーゴ・ガカパだけでも苦戦を強いられているのにここで新たな敵・ヌメグ・バカパまで現れた。
一気に形勢は不利になったと言わざるを得ない。
「く・・・」
流石に後ずさりしながらカノンは油断無く相手の出方を見守る。
と、いきなりシャーゴ・ガカパの触手がカノンの背後から襲いかかり、その両手を封じてしまった。
「何っ!?いつの間に!?」
驚くカノン。その手からロッドが落ち、元の棒へと戻ってしまう。
更にそこにヌメグ・バカパが飛びかかり、カノンにパンチを食らわせてきた。
両腕を封じられているカノンは為す術もない。
ただ一方的に殴られるだけである。
そこに一台のバイクが飛び込んできた。
大型のスクーターのようなバイク。
それに乗っているのは銀色の騎士、PSK−01であった。
大型スクーター・Kディフェンサーのハンドル部分にあるボタンを操作し、内蔵されている装備の一つ、エレクトリックガンを出す。
暴徒鎮圧用に開発されたスタンガンの強力版で、今回は対未確認生命体用に更に電圧が上げられていた。
「エレクトリックガン、スタンバイOK!発射!!」
Kディフェンサーの前部から伸びた発射口から物凄い電光が走る。
その電光はカノンに殴りかかっているヌメグ・バカパに直撃し、ヌメグ・バカパは大きく吹っ飛ばされていた。
それを見たPSK−01はKディフェンサーを停車させると、すっと降り立ち、その後部から専用装備の一つ・高周波ブレードを取り出し、右手に装備した。
それは高周波により、何でも切り裂いてしまうと言う一応災害救助用の装備である。だが、使い方を誤れば立派な武器にもなるのであった。
『北川君、気をつけて、未確認生命体は3体よ!』
「第3号、第7号、第8号か・・・相手にとって不足はない!」
無線で聞こえてきた留美の声にそう答え、PSK−01・北川潤は右手の高周波ブレードを構えて走り出した。
新たに現れたPSK−01を見たシャーゴ・ガカパはカノンと同じく彼を敵と見なし、カノンを押さえていた触手を放してPSK−01に向かって攻撃を始めた。
うなりをあげて襲いかかる触手をPSK−01は高周波ブレードで切り裂きながらシャーゴ・ガカパに一気に接近する。
それを見たシャーゴ・ガカパが口を開いた。
また墨を吐き出そうというのだろう。その墨の一撃の威力を知らないPSK−01が無防備に接近する。
そこにカノンが横から飛びかかっていた。
もつれ合って倒れる二人。
「何をする!」
そう言ったPSK−01の頭上をシャーゴ・ガカパが口から吐いた墨が通り過ぎ、地面に着地して爆発した。
「・・・何だ!?」
いきなり起こった爆発に驚きの声を上げるPSK−01。
その間にも立ち上がったカノンは元の白い姿に戻り、今度はヌメグ・バカパに飛びかかっていた。
パンチを食らわせ、更にパンチ、エルボー。怯んだ所に膝蹴りを叩き込む。のけぞったヌメグ・バカパの胸に鋭い蹴りを叩き込んでから、後ろのシャーゴ・ガカパに振り返る。
『あれが・・・同じ未確認を倒しているという第3号・・・?』
何処か呆然とした留美の声が聞こえてくる。
「・・・第3号・・・あれは・・カノン、か・・・?」
PSK−01は立ち上がると左手に専用の銃・オートマグナムを持った。
彼、潤にはカノンの姿に見覚えがあった。
そう、それは5年前のこと。
自分達を守って必死に戦い炎の中へ消えていった友人。
その戦士としての姿の名こそ、カノン。
体の色こそ違えど、その姿は確かにあの時見たカノンと全く同じであった。
「あれがもし・・・本当にカノンなら・・・生きていたというのか、相沢は・・・?」
呆然と呟きながら潤はシャーゴ・ガカパと向かい合っているカノンを見た。
『北川君、今は戦いなさい!』
留美の声が飛び込んできた。
「・・すいません、どうしても確認したいことがあるんです!第3号を標的から除外します!」
潤はそう言うと、オートマグナムをシャーゴ・ガカパに向けて発射した。
通常より遙かに強力な弾丸が次々とシャーゴ・ガカパの体に横から叩き込まれる。
その衝撃に流石にシャーゴ・ガカパも立っていられず、吹っ飛ばされてしまった。しかし、軟体性抜群の体にほとんどダメージはない。
すぐに起きあがるとシャーゴ・ガカパは触手を振り上げた。
そこにカノンが現れ、シャーゴ・ガカパの体にキックを叩き込む。
それを食らったシャーゴ・ガカパはたまらずその場から逃げ出した。
そして海中へと飛び込んでいく。
カノンとPSK−01が追いかけるが、既にシャーゴ・ガカパの姿は海中に消えて見えなくなっていた。
振り返るともう一体の未確認生命体・ヌメグ・バカパの姿も消えている。
「逃がしたか・・・」
そう呟いたのはどちらだったのだろうか?
カノンがその場を去ろうとすると、すっとその前にPSK−01が立ちふさがった。
オートマグナムの銃口をカノンに向ける。
「・・・お前は・・一体何者だ?」
PSK−01・潤がそう尋ねる。
カノンは・・・・。
 
<N県倉田重工支社ビル 17:02PM>
佐祐理は不安そうな表情で窓の外、落ちる夕日を眺めていた。
「佐祐理は・・間違っていたのでしょうか?」
誰に聞かせるわけでもない呟きが漏れる。
「舞・・・何処にいるの?」
今は何処にいるともしれない親友のことを考え、彼女はため息をついた。
彼女の後ろ、執務用のデスクの上に載せられた書類。
その一枚目にはこう書かれてあった。
『PSK計画の見直しと破棄に関する事項』
潤達の知らないところでまた何かが動き始めていた・・・・。
 
Episode.13「再動」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderKanon
 
次回予告
対峙するカノンとPSK−01。
互いの正義は相容れないものなのか?
潤「あれがもしあいつなら・・・美坂が知らないはずはない」
瑞佳「それぞれにはそれぞれの役割があって、それで良いんじゃないかな?」
襲い来る未確認生命体第7号と第8号。
PSK−01に迫るピンチ!
久瀬「PSK計画、まだ利用出来ますよ」
国崎「一気に敵をやっつける!それがお前の使命だ!」
ついに現れる紫の力!
怒れる大地の牙がうなりをあげる!
カノン「おおりゃぁぁぁぁっ!!」
次回、仮面ライダーカノン「激突」
運命の輪は回り始めた・・・!!


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