「ここがあたし達の家だよ!」

「…お店?」

「はい、喫茶店を経営してるんです」

蝙蝠男を撃退した祐輝は姫里、空に連れられて喫茶アミーヤに辿り着く。

武士は倒れた集団の為に警察と救急車を呼んで、一通り説明してから帰ると話した。

姫里と空は自分達も残ろうとしたが、武志は祐輝を家に送り届けるように言い聞かせた。

祐輝がその場に残れば警察の事情聴取に参加しなければならない。そうなると、色々面倒になると判断した故の処置だ。

それには倒れた人々の半数が死んでしまっていた事、その半数が溶けてしまった場所に二人の娘を長居させたくない親心も含まれていた。

祐輝はその場から離れる際、武志から注意を受けた事を思い出していた。

 

―部屋は二階にある空き部屋を使っていいからな? あと、鍵を閉めても気を緩めない方が良いぞ?―

 

冗談っぽく話していたが、その通りだと思う。

一旦敵を退けても、次も勝てるとは限らない。それに自分だけならまだしも、居候させてくれるというこの人達に迷惑は掛けたくはなかった。

いつ、何が起こっても対応出来るように気を張り詰める必要がある。

だが、祐輝は武志が危惧していた事、彼が発した言葉の本当の意味を次の日の朝、起きた直後に知る事になる。

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーSMASH

第三話「これが日常!? 新生活は波乱万丈!!」

 

 

 

 

チュンチュン…チチチ……。

「う…ん?」

祐輝は鳥のさえずりを聞きながら目を覚ました。

一瞬、ここが何処なのか疑問に思ったが、すぐにその理由を思い出す。

(そうか…泊まらせてもらったんだっけ……)

祐輝は起きあがろうかと思ったが、もう少しこの布団の温もりを感じていたかった。

少し迷ったが、眠気の方が勝った為に布団をかけ直そうと端をつかんで体を横に向ける。すると、目の前にスヤスヤと眠っている姫里の顔が現れた。

「………………うぇ!?」

寝ぼけていた頭が徐々に覚醒して自分の置かれている状況に気付き、布団がはだけない様に器用に後ろに下がって姫里と距離を取って驚きの声を上げる。

「ぇ? …ぇえ!?」

完全に目が覚めながらも、今の状況が掴めず困惑する祐輝。

目が覚めた瞬間、自分の布団に女性(しかも可愛い)が入っていれば驚くのは当然だろう。

「う…う〜ん」

「!!」

祐輝が未だ状況が掴めないでいると姫里が布団の中で、もさもさと動きながら目を覚ます。

「…おふぁよ〜」

「ぇ、あ…おはよう……」

挨拶を返すと、姫里は目を擦りながら首をかしげる。

「……」

「……」

 彼女も何かがおかしいと気付いたようだ。

 少しの沈黙の後、姫里が叫ぶ。

「夜這い!?」

「ち、違う!!」

「じゃあ…朝這い?」

「違うって!!」

必死に否定するが、祐輝も自分自身に言い訳が立たない。

ハッキリ言って祐輝は夜這いなどするつもりも、考えも毛頭ない。ついでに言うならその意味も知らない。

だが、普通の人間とは違う性質故に間違いを起こしてしまったのではないかという不安があった。

 

ガチャ。

 

二人が話していると、ノックも無しに扉が開いた。

「!?」

「あ、お父さん」

祐輝が異様に驚きながら音のした場所に顔を向ける。姫里も同じ場所に顔を向ける。

そこには、右手にハリセンを持った姫里の父親、麻宮武士が立っていた。

武士は心底呆れたといった表情をしながら二人に向かって歩いていく。

「あ、あの…その……これは」

必死に弁明しようと思うが、祐輝は困惑してまとまった考えが出来ない。

そして、武士はハリセンを持った右手をゆっくりと掲げ、思い切り振り下ろした。

 

スパァアーーーーーーーーーン!!

 

「ぃったぁあ〜〜〜〜い!!」

振り下ろされたハリセンが姫里の頭を思い切り叩き、大きな音が部屋に響いた。

「えっ?」

「なんであたしを叩くのよ、お父さん!!」

 叩かれた頭を押さえ、涙目になりながら抗議する姫里。

 その娘の様子に武士は更に呆れた表情になりながらハリセンを振る。

「おまえの部屋は向こうだろ」

ペシッ。

「にゃっ?」

「え?」

武士の指摘に二人はあたりを見渡す。

よく見るとそこはベッド以外これといった家具のない、祐輝が泊まるよう指示された空き部屋だった場所だ。

その事に気付いて祐輝は怪訝な顔をする。

 

ここは確かに自分に与えられた部屋だ。

姫里たちも姉妹一緒に別の部屋で寝ていた筈。そう話しているのが聞こえたから間違いないと思う。

なら、何故姫里が自分の布団の中に入っていたのか?

祐輝はその答えを求めるように武士に視線を送る。

 

「まったく…まぁだ寝ぼけて人の布団に潜り込む癖、直らないんだなぁ?」

(そうゆう事か)

 つまり、姫里が寝ぼけて祐輝の布団に入った。

それだけの事だが、友人関係ならまだしも居候の身分には色々と不味いんじゃないかと祐輝は思った。

同時に昨夜、武士が話していた事の本当の意味も理解した。また、という事は一度や二度ではないのだろう。

「あは、あはは…」

二人の呆れている様子に、姫里はバツが悪そうに笑った。

 

 

 

部屋から出た三人は着替えて朝食の準備に取りかかっていた。

(あの鞄…開ける度に感電するのか?)

台所に連れられた祐輝は荷物の入った鞄、もしくはその開発者に文句の一つも言いたくなった。着替えを取り出そうとした際、防犯の為か分からないが静電気にも似た現象が起きるのは勘弁してもらいたい。一、二回ならまだしも、開けようとする度に極小とはいえ痛みを伴うことにいい気分はしない。

「ねぇねぇ。これ持ってくれる?」

口に出したくなる思いを抑えていると、何処かの学校の制服に着替えた姫里が缶ジュースを祐輝に差し出す。

「え、ああ」

少し戸惑いながらも、缶を受け取る。

「…ふーっ」

「うわぁ!!?」

ブシャァ!!

武志に背後から突然首筋に息を吹きかけられ、思わず缶を握りつぶしてしまった祐輝。

缶は開けていない状態だったので、中身が飛び出して周りが水浸しになってしまう。

「なにするんですか!?」

「握力測定」

「ぇえ?」

「普段どれくらいの力で生活してるか、知りたかったんだ」

「はぁ…」

 なら最初からそう言ってほしいと思いながらも頷く。

「驚いたろうけど、突然やった方が自然な力が出ると思ったんでな」

「はぁ」

「取りあえず、着替えた方が良いんじゃない?」

 姫里に言われ、自分の服が濡れていることに気付いた祐輝は部屋に戻る。

 途中、今まで姿を見せなかった空が自分の隣の部屋から出てきていた。

 その腕の中には大きなウサギのぬいぐるみを抱いて、今起きたところなのか寝ぼけ眼でフラフラ歩きながら祐輝に近づいていく。

「おはよう」

「ふにゅ…」

祐輝が挨拶すると空は一端立ち止まり、眠たそうな目を祐輝に向ける。

そして、お辞儀をするように頭を下げたり上げたりという動作をしながら、パジャマ姿のまま台所に向かっていく。

(大丈夫かな?)

端から見ても怪しい足取りで移動する空を見ながら祐輝は自分の部屋に入った。

 

 

 

パキッ…バキッ…グシャッ…バリッ…

 

服を着替え終えた祐輝はダイニングで卵を指の力だけで割る特訓をしていた。別に料理の特訓をしているわけではない。

そういったことも必要になるだろうが、今行っている作業は彼が自分の力をコントロールする為の特別メニューだ。

普通の人以上の握力は意識しなくても人を傷つけてしまいかねない。

それを押さえる方法は考えといた方が良いと武士が話し、姫里が卵の特訓を思いついた。

祐輝も自分が日常生活でどれくらい力加減ができるのか知るのにも丁度よかったので、その提案に素直に従った。実際に始めてみると力加減が異様に難しく、すでに一パック分の卵を駄目にしてしまっている。

「ベトベトだ」

 一回ごとに手がベトベトになる事に顔をしかめながら手を洗う祐輝。ふと、隣を見てみると姫里がまな板に魚を乗せて捌こうとしている。

卵を駄目にしてしまって申し訳ないと思うが、その姿に何か懐かしさを感じる祐輝。

自分もこんな風に家族と過ごしたことがあるのだろうか?

そう考えていると、姫里が魚を調理し始めた。

 

ゴトン! ゴリッ ギッギッ…ザリ! プシュー…ダン!! ダン!! ゴリ! ガッ…ガリ!…シューコー……

「あ、間違えちゃった」

 

「……」

なんて言うか、調理する音じゃなかった。

もし、今この家の前を通る人がいたら呪いの儀式か何かの最中だと勘違いしそうな音だ。

どんな調理の仕方をしているのか気になったが、横から感じられる妙な気配の為にそれは憚られた。

これ以上不安を感じないように祐輝は卵を割る作業に集中することに決めた。

「せーんろはつーづく〜よー♪ どーこま〜で〜も〜♪」

調理しながら歌を歌いだす姫里。

だが、歌の音程と調理の音が全く噛み合わないという妙なコラボレーションが奇妙な空気を作り出す。

「野〜を超え山こ〜え〜♪ 仔牛をの〜せ〜て〜♪」

「え?」

「ドナドナドーナ〜ドーナ〜♪」

ズルッ! グシャ!!

突然歌をドナドナに切り替えられ、頭から突っ伏しそうになり卵を握りつぶしてしまった祐輝。

「どうしたの?」

「いや…なんでも…」

昨夜といい今といい。この人が変なのか自分が変なのか判断に困る。けれど、悪い気はしない。むしろ楽しい。

この人といると悩む暇も無いのかもしれない。そう思えてしまう。

だけど…やっぱり変な人だと思う。

 

ガチャ。

悪戦苦闘? しながら調理をしていると扉が開き、そこから眠そうな顔をした空が顔を出す。

「おふぁよぅ、おねぇちゃん」

「おはよ! 空ちゃん」

「ふぃんどうさんも、おはょうございま…ふ」

「おはよう」

頭をフラフラさせながら空は移動していく。

祐輝はその様子を少し心配そうに見ていたが、姫里は特に心配した様子もなく調理に取りかかっている。

武士は喫茶店開店の為の準備を行っているところだ。

祐輝は最初にそちらを手伝おうとしたが、武志が「仕事は逃げやしないから安心しろ」と言って祐輝に卵の特訓をするように言い聞かせた。

(はやく思い出さないと…)

自分に良くしてくれる人たちに甘えてばかりいる訳にはいかない。

自分のことを早く思い出して出て行かないと迷惑がかかる。思い出せなくても、姫里たちの役に立ちたかった。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

物思いにふけっていると突然大きな音と振動が響く。

「な、なに!?」

祐輝が驚きながら後ろを振り返ると、どうやら空がコーヒーを入れようとポットからお湯を注いでいたようだ。

彼女がコーヒーを入れている時も音と振動は続き、入れ終わると同時にその現象はピタッと収まった。

その様子を見て、祐輝の頭の中に普通コーヒーを入れるのにこんな異様な音と振動が響くだろうか? という疑問が浮かび上がる。

だが、実際に目の前でそういう現象が起こったのは事実だ。

少しの間、祐輝が疑問を感じながら呆然としていると姫里と空がハッとした表情になる。

「気にしないでね。いつもの事だから」

「いつも…なんだ?」

「…はい」

祐輝の言葉に空が恥ずかしそうに俯きながらコーヒーを四人分注いで机に並べる。

「ユーくん、もうすぐ朝ごはん出来るから空ちゃんと一緒にお皿出してくれない?」

「じゃぁ神銅さん、これをテーブルに置いてもらえますか」

「あ、はい」

姫里が先に二人に指示を出し、空がコーヒーをお盆に乗せて祐輝に渡そうと手を伸ばす。

言われて祐輝は手を洗って、空からお盆を受け取ってテーブルに並べていく。

「神銅さん、これをそっちに置いてもらえますか?」

「あ、はい」

空は棚から食器類を取り出し、時折祐輝にも食器を置くように頼んだりもして朝食の準備をしていく。

そして、朝食が目の前に並べられた時、祐輝は思わず顔が引きつってしまった。

なぜなら…

「は〜い! 姫里特性、サケの丸焼きだよー!!」

そう言いながら姫里が皿に載せていく料理は魚の原形を留めておらず、何か色々なものが混ざったかのような物質Aと化していた。

大まかな特徴を挙げれば真っ黒の潰れかけのイクラが集まり、その中から何かの触覚らしき物と黒い物質Aの一部がヒクヒク動いている。もっと大まかに言うなら、モザイクを掛けた山形の物体Aという表現がピッタリ当てはまると思う。その物質Aから放たれる匂いは、何故か消臭剤の匂いが漂ってくる。

その容貌、臭いはどれをとっても見る人の食欲を減退させる異様さを放ち、この世に二つと無いであろう絶品だった。

(これを、食べるのか?)

別に贅沢を言うつもりは始めから無かった。けれど、自分の知識の中にある食べ物の概念と著しくかけ離れているこの食材を口にするにはそれなりの勇気が必要だろう。と言うか、丸焼きにするなら包丁で切る必要はなかったんじゃないだろうか?

一体どんな料理の仕方だったのだろうと思わずにいられない。

そう考えていると、姫里が炊飯器からご飯を、空が味噌汁をよそっていた。

しかし、その二つの食料も謎の物質B・Cとなっているのが目に見える。

「おとーさーん! ご飯だよ〜!」

「ぉ〜う」

姫里が呼ぶと、返事をしながら武志が台所に入ってくる。どうやら店の準備は終わったようだ。

「じゃぁ、ユーくんはお父さんの隣でも良いかな?」

「はい、大丈夫です」

そう答えると姫里は頬を膨らまして、少しムスッとした表情を作る。

「もー、そんな他人行儀にしないでもっと楽にして良いんだよ?」

「え、いや…でも」

「そんなんじゃ、疲れちゃうよ?」

彼女なりに祐輝のことを気遣っているのだろう。

まるで弟に説教するように話す姫里。まるで本当の家族を心配しているように見える。

「まぁ〜、いきなり慣れろってのも、無理があるだろ。自然で良いんだよ、こうゆうのは」

「そうだとも思うけど〜」

「それじゃぁ、食べよう」

納得いかないといった姫里を制するように空が話しかけ、武志の隣に座った祐輝は苦笑いを噛み殺しながら目の前の物質を凝視する。

「いただきま〜す」

「頂きます」

「い…いただきます…」

そう言ってから姫里達の様子を見てみると、全員が何事も無く自然に食事を取っていた。

様子を見てからも少しの間箸を動かせなかったが、覚悟を決めてゴクリと生唾を飲み込んでから一気に物質A(元魚)を口に入れる。

 

 

 

 

・・・

 

食事も終わり、それぞれのペースで食器を片付けていく。ちなみに、見た目とは裏腹に味のほうは普通だった。

不味くは無かったが特別美味しいという訳でもない。そのことは確かに意外だったが、逆にそれが中途半端に気になってしまう。居候の身なので文句は言わないが、慣れるまでにはそれなりに時間が掛かりそうだ。そんな事を考えながら、祐輝も食器を片付けようと流し台に向かう。

そこでは先に姫里と武志が食器を洗っているところだった。

「洗いますよ」

「ほんと? じゃぁよろしくね」

姫里は遠慮する素振りなど全く見せずに洗い物を祐輝に任せて台所から出て行く。

「悪いな」

「いえ、これくらいはしないと…」

祐輝は出来る事が少ない分、最低限出来る事は積極的に手伝うつもりだった。

皿も割らないかと自分でも少しだけ不安があるが、先程の練習で自分の力加減というものが少しだけ掴めてきたから皿洗いくらいは大丈夫だろうと考えていた。

「空、お前も急がないと遅刻しちまうぞ?」

「大丈夫だよ、お父さん」

笑顔で答えながら食事を取る空。どうやら家族の中では食べる速さが一番遅いようだ。

それから少しして空も食事を終えて食器を片そうとする。

「やりますよ」

「えっと…有り難うございます」

ややぎこちないやり取りだが、それは嫌悪しているというより、空は申し訳ないと感じているようだ。

食器を祐輝に手渡して空も部屋から出て行く。その様子を見送り、祐輝は食器を洗い始めた。

「空ちゃん、早くしないと遅刻しちゃうよ〜!」

「ちょ…ちょっとまって」

食器を洗っていると部屋の外からドタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。どうやら二人は今日学校があるようだ。

「お姉ちゃん、お待たせ」

「うん、じゃぁ行ってきま〜す」

「行ってきます」

その声の後、扉を開閉する音が聞こえたかと思うと、二つの足音が台所に向かってくる。

「ユーくん。行ってくるけど、寂しくても泣かないでね」

「泣かないでって…」

「じゃ、行ってきまーす!」

「行ってきます」

「…行ってらっしゃい」

どうやら姫里は祐輝に挨拶をするために一旦戻ってきたらしい。

慌てている割に、その活発さから余裕があるようにも感じられる。けれど髪を真っ直ぐ伸ばしている事から本当に時間が無いのかもしれない。

朝っぱらから活発な姫里に振り回されているような祐輝と空は、同じ様に苦笑している。

祐輝は姫里の高いテンションに呆れながらも、皿を洗いながら挨拶を返して二人を見送った。

その後、食器を洗い終えた祐輝は武志から店の仕事の事を色々実践を通して教わる事になった。

 

 

 

仕事をこなしていく内に昼も過ぎ、昼食も取り終えるくらい時間が経過した。

祐輝はこういった手伝いをしたことが無かったのか、幾らか悪戦苦闘したが、それほど客足が多いわけではなかったので取り敢えずは乗り切れた。

今は店内に客がいない状態になっており、その事にほっとして椅子に座っていると武志が紅茶を差し出してきた。

「お疲れさん」

「どうも」

お礼を言って差し出された紅茶を受け取って口に運び、口に触れた途端テーブルに置いてしまう。

祐輝はテーブルの上にある袋入りの砂糖を二つ取り出し、紅茶に入れてかき混ぜる。

「猫舌か?」

「いえ…そういう訳じゃないんですけど…」

「甘党か?」

「…苦いよりは」

苦笑交じりに答える祐輝。

武志のほうは「そうか、甘党か」と呟いて何やらぶつぶつ呟いている。

「ん?」

その時、電話が鳴り響き二人は同時に受話器をとりに行こうとする。だが、武志が片手を上げて自分が出ると知らせ、祐輝もそれに従う。

まだ仕事を理解しきっていないで出ると、ややこしい事になるかもしれないと思ったのも理由の一つだ。

「はいはい、どうも! 怪しい笑顔と楽しい笑顔を提供する、喫茶・アミーヤです」

ガクッ…

中盤の武志の言葉に肩を落とす祐輝。

この家の住人は何か笑いを狙うネタをやらずにはいられないのだろうかと思う。

「あ、どーもいつもウチの娘達がお世話になっております。えっ? 空が?」

空の名前が出された事で武志はもとより、特に気にしないで聞いていた祐輝も驚いた。

「はい…はい……分かりました。わざわざ有り難うございます」

二、三言話を交わした後、受話器を置く武志。

「どうかしたんですか?」

「ああ、どうやら空が学校で倒れたらしい」

「えぇ!?」

武志から聞かされた内容に驚く祐輝。

「大丈夫なんですか?」

それほど話をした訳ではないが、居候させてくれている家族の異変に心配になる。

「ああ、これが初めてって訳じゃないからな」

心配して話す祐輝とは対照的に、武志はいたって冷静に話す。

「何処か悪いんですか?」

「まぁな…空は昔から体が弱くてな」

 そう言って大きな溜息をつく。

「そうなんですか…」

「なぁ、お前さん…バイクで空を迎えに行って、ついでに病院に連れてってくれねえか?」

「ぼくが…ですか?」

その言葉と数瞬前の溜息を付く様子を見て、祐輝は武志が呆れているのかと思った。

だから、武志の言う事に少し抵抗を感じてしまう。そんな祐輝に対して武志は、少し寂しげな表情になる。

「それで…空が今の状況をどう思ってるか……聞いてみちゃぁくれねぇか?」

「え?」

言ってる意味が分からず聞き返してしまう祐輝。武志はその事を気にした様子もなく話を続ける。

「空は昔から体が弱くて…ちょっと変わった物持ってるから周りから少し浮いてる時期もあったんだよ。でもな、あいつは優しいから辛くても俺達に心配掛けないように何時も明るく振舞ってな」

「…いい娘さんですね」

「ああ。俺達も空が気を使わなくても良い様に何時もバカやったり笑わそうとしたりするんだが…やっぱりどっかで無理してるんだよな」

その言葉を聞いて祐輝は先程の自分の考えが間違いだったと気付く。

祐輝は今、目の前に子供の事を第一に考える父親というものを目にしているのだと思い、胸の奥が少し熱くなってくる。けれど、彼が何故自分にそんな事を話すのかが分からなかった。

「普段は姫里が空の負担を大分和らげてくれてるんだが…俺は何も出来ない駄目な父親だからな……」

「そんな事は無いと思います。だって…それだけあの娘の事を考えて……行動してるじゃないですか」

「…そ〜かなぁ〜」

「そうですよ」

苦い顔をしながら呻る武志に、祐輝は小さく微笑みながら肯定する。

その事に武志はむず痒い気持ちになりそっぽを向く。

「こう言っちゃ何だが…お前さんなら空の心情ってのが聞けるかもしれないと思ったんだ」

「どうして直接聞かないですか?」

「それは〜…まあ、あれだ……話し聞ければ分かる」

「ハァ…そうですか」

何故か言葉を濁す武志。その様子に引っかかるものを感じながらも祐輝は頷いておく。

もとより、深く入り込んで欲しくないのなら無理に聞き出そうという気は持っていない。

「まぁ良いや。それで? 行ってくれるか?」

「話しを聞けるか…分かりませんよ?」

「あ〜…構わねぇ構わねぇ。適当に話して帰ってくればそれで良い」

「分かりました」

手を振りながら話す武志に祐輝は肯きながら空を迎えにいく準備を始めた。

 

・・・

 

空は学校の手前にある駄菓子屋のベンチに座って迎えを待っていた。

この駄菓子屋は学校の近くにある為に空の学校の生徒、主に男子が昼休みなどによく学校を抜け出して菓子を買いにくるある種有名な店だ。

今は授業がまだ残っている時間帯なので、空以外に客はいない。

「良い天気…」

自分を照らす暖かい日差しが気持ち良く、空はベンチに座ったまま目を閉じた。

その時、見計らったかのようにバイクが近づいてくる音が聞こえてくる。

やがて、遠くからやってきたバイクが駄菓子屋の目の前で止まった。

バイクの主、祐輝はヘルメットを脱ぎ、バイクから降りて空に近づいて声をかける。

「お待たせ」

「神胴さん?」

少し眠気の混じった瞳を擦りながら、空は迎えに来たのが祐輝だという事に少し驚いた。

いつもは父親である武志が店を途中で閉めてまで迎えにきてくれるのだが、彼女はその好意に対しても少し罪悪感を感じている。

「良くここが分かりましたね」

「何度か世間話してるおばさん達や交番の人に道を聞いたけどね」

苦笑しながら話す。

少し笑うと、祐輝は空が眠たそうにしていることに気づき、このままバイクに乗せても良いのか考える。

「このまま…帰る?」

「あ、いえ。一応近くの病院によってもらえませんか?」

「分かった」

返事を返すと祐輝はバイクに戻ってもう一つのヘルメットを取って空に差し出す。

空はゆっくりベンチから立ち上がってヘルメットを受け取り、二人はバイクに跨る。

そして、空は少し躊躇しながらも祐輝の背中に抱きつく。その際、柔らかい感触が祐輝の背中に感じられる。

「…出来る限り安全運転を心がけるよ」

「お願いします」

出来る限り冷静に、平静を装って話す。

祐輝は意識を総動員し、背中に意識が集中しないようにハンドルを握る手に力を込めてバイクを発進させた。

 

・・・

 

そして、病院に着き、少し時間が経っていた。

「すみません。診療が終わるまで待っていてもらえませんか?」

病院に着いて医師に呼ばれた空にそう言われたので、祐輝は今、病院の中庭で時間を潰していた。

暫らく中庭をうろついていたが、暇を潰せるようなものは無く、何時終わるか分からないので他の場所に行って時間を潰す事もできない。それ以前に近所の事も知らないので何所にも行くことは出来ないのだが。

「ふぅー」

手持ちぶたさなのを誤魔化すように大きく息を吐いて空いてるベンチに座る。

不意に座りながら空を眺めてみる。空は所々小さな雲が浮かんでいるが、気持ちの良い晴々とした天気だった。

一瞬、暫らく雲の動きでも見て退屈を紛らわそうかという考えが浮かんだ。

「ピヨ!」

「ん?」

ボーっとしていると、どこからかヒヨコの鳴き声が聞こえる。

そのことに気付いて目の前に顔を向けると、そこには真ん丸の白い羽毛に覆われた鳥らしき動物がチョコンと存在していた。

ハッキリ鳥と断言できないのは、あまりに丸すぎるフォルムと声に合わないその大きさの所為だ。

ドッヂボール程の丸さと大きさのヒヨコなんているのだろうか?

「ピヨピヨ!」

「…」

ヒヨコらしき鳥は祐輝に挨拶するように片手(羽?)を上げる。

人に飼われているのだろうか。全く怖がる様子も無く丸い鳥は祐輝にテンテンと飛びながら祐輝に近づいていく。

その仕草が少し愛らしくて祐輝は手を差し出し、人差し指を伸ばして鳥の喉らしき部分を撫でる。

「ピヨ〜」

撫でられて気持ち良いのか、丸い鳥は幸せそうに目を細めて鳴く。

その時、誰かが何かを呼んでるようなこえが聞こえてきた。

「クロー! クロー!」

「ピヨ!」

「わっ!?」

その声が聞こえた途端、丸い鳥はいきなり体を伸ばして愛らしい姿から一気に鷹の様な鋭い容貌をした姿になる。

例えるなら、幼稚園児が背伸びしたらハードボイルドなヤングメンに変化したような感じだ。

そして、その鳥は翼を広げて飛び立ち、自分の居場所を知らせるように祐輝の頭上をクルクル回る。すると、この鳥の飼い主だろうか。一人の少年が祐輝のいる場所に小走りで近寄ってくる。

「クロ、こんな所にいたのかい?」

 少年は顔を上げて祐輝の頭上で飛んでいる鳥に話しかける。どうやらクロとはこの鳥の名前らしい。

年は祐輝と同じくらいだろうか? ここの患者なのか、少年は病院の寝巻き姿のままだった。

「あれ…キミの?」

祐輝は自分でも気付かないうちに、何故か少年に対して話しかけていた。

「あ、はい。友達から預かった…大事な友達です」

「…そう」

「隣り、良いですか?」

「どうぞ」

少年が座ると頭上を飛んでいたクロは飛び回るのをやめて少年の頭の上に降り立った。

すると、クロは最初の真ん丸とした愛らしい姿に戻る。

「重くない?」

「少しね」

そう言いながら苦笑する少年。

それから祐輝は少しの間、少年と他愛の無い話をして過ごした。

 

 

 

「で―だったんですよ」

「それは、変な子だな…ん?」

少年と話していると、病院の門で一人で立っている空の後ろ姿が見えた。だが、空なら何故祐輝の所に直接来ないのだろうかと思った。空本人なのか少し迷ったが、取り合えず迎えに行く事にする。

「ごめん、そろそろ行かないと…」

「あ、うん。有り難う」

「ぇ?」

経ち上がろうとした所に突然礼を言われて首を傾げる祐輝。

「あんまり長く話をした事とか…無いから……楽しかった」

「…じゃぁ、行くから」

「うん、気を付けて」

そう言って二人は別れた。

 

「どうも」

「え? あ…」

他人に挨拶するように祐輝は空に話しかける。

その事に空は一瞬誰かと思って驚いて振り向いたが、祐輝の姿を確認するとホッとしたように肩をおろす

「診察はもう終わったんですか?」

「はい、すみません。待たせてしまって…」

「それくらい構わないけど…終わったんなら呼んでくれれば良かったのに」

「ごめんなさい」

「あ、いや…別に責めてる訳じゃ」

「はい。でも、神胴さんが滝一くんと楽しそうに話してたから、言い出せなくて…ごめんなさい」

滝一と言われて祐輝は一瞬誰の事か分からなかったが、すぐに先程話しをしていた人物だと分かった。

名前を知っていて、遠くから見ても分かるという事は、友人、もしくはかなり親しい間柄なのかもしれない

「ただの居候に気を使わなくても良いよ。用があったら遠慮なく言ってください」

祐輝はそう言うが、空は申し訳なさそうにしていて表情が暗くなる。

(これは…確かに心配するな)

本当にすまなそうにして謝る空の姿を見て、武志の話していた事が理解できた。多分、家族ではない自分に手間を掛けさせてしまった事に罪悪感が出ているのだろう。

この子は他人の事を必要以上に気に掛けている。けれど、これだけ他人に気を使っていては持たないのではないかと心配になる。

「取り合えず…今日は帰りますか?」

「はい」

そう言うと二人はバイクを置いてある駐車場まで歩いていく。

 

 

(どうすれば良いんだろうな…)

バイクを走らせながら祐輝は悩んでいた。病院を出てからはずっと空気が重たく感じられる。これでは悩みを聞くどころか、むしろ余計に気を使わせただけではないか。それが申し訳なく思えて祐輝は気が重くなる。

「あの…神胴さん」

「?」

気を落ち込ませている祐輝に空が話し掛け、祐輝は首を一瞬横に向けることで聞こえた事を伝えた。

「また、ちょっと寄り道してもらっても良いですか?」

「あ、大丈夫です。何所に行くんですか?」

「ゆっくり、話しが出来る所が良いです」

「案内…お願いします」

「はい」

 

・・・

 

しばらく空の指示通りにバイクを走らせていくと、木々の生い茂っている神社に辿り着いた。

「ここで止めてください」

空がそう言ったのでバイクを止める。

二人はバイクから降り、少し歩いて神社の空が縁側に座ったので祐輝もそれに続いて座る。

「あの、さっきはごめんなさい…悪気は無かったんです」

「あぁ、いや、そんな謝る事じゃないと思います」

「でも…迷惑じゃないですか?」

空が本当に申し訳なさそうに祐輝に問いかける。その時、不意に祐輝は武志との話しを思い出す。

武志は空が今の自分の状況をどう思っているのか聞いて欲しいと頼んでいた。

もしかしたら、あれは自分が泊まっている事をどう思っているのかと言う意味だったのかもしれない。

そう考えた祐輝は空の顔をまともに見ることが出来ず、横目で見ながら話し始める。

「いや、こっちは良いんだけど…キミは僕を泊めた事を後悔してない?」

「え?」

「本当は嫌だったけど…二人が泊めるって言ったから……仕方なく一緒にいてくれたなら…」

「そんな事はありません。私は…嫌な事なんて無いです」

祐輝の言葉に空は反論するが質問の意図が分からず口篭る。空の思いを汲んでか、祐輝は話しを続ける。

「ありがとう…それにしても、キミ達は本当に仲が良いね」

「え?」

「家族皆が他人の事を心配するのに自分の事は後回しにして…キミの場合は優しすぎると思うけど」

「そ…そんな事は…ないかと……」

空は少し戸惑いながら頬を赤くして俯いている。

「周りを気にし過ぎると、いつか自分が壊れるよ?」

「でも…私は皆に迷惑を掛けてるから…」

「別に良いんじゃないか? 望んで迷惑を掛けてる訳じゃないんだから…さ」

「…そうでしょうか?」

「そうだよ、少なくてもこんな力を持ってるヤツよりは…ね」

そう言って祐輝は顔を曇らせながら握り拳を作る。

「僕の場合、この力は多分迷惑で済む事じゃない。これは…ただの凶器でしかないから」

「そんな」

 祐輝の言葉に身を乗り出す空。それを気にせず祐輝は話しを続ける。

「この力は回りにとって何の役にも立たないから…ただ…壊す事しか出来ない…迷惑でしかない力だから」

祐輝がそう言って空に顔を向けようとする。

「神胴さ」

 

ピキッ!!

 

「!?」

その時、何かが欠けるような音がする。

同時に祐輝は異様な気配を感じて縁側から立ち上がって周囲を見渡す。

(なんだ!? この変な感じ…は!?)

一通り見渡すと祐輝の左方面にある石垣の上の空間が奇妙に歪んでいた。

その歪みは段々人の形を作り出し、やがて何処かの民族衣装の仮面を付けたような顔をした奇妙な生命体が其処に現れる。

奇妙な生命体、イデア・ン・ドロは腰に妙な装飾品を付けていて肌は妙な黒さを持っている。

「何なんだ? アレは!?」

訳が分からないが、祐輝はすぐに両手を前に出して変身ポーズを取る。

イデア・ン・ドロは餓えた獣の様な目で二人の事を見ている。祐輝でもその生命体が明らかに二人に殺意を抱いている事が伺えた。

「変身!!」

一気に変身動作を終えたスマッシュは生命体に対して構える。

「コラケヤ・カゲウ? キワ、ハヒロホラ・コラケヤ」

(喋ってるのか?)

イデア・ン・ドロはスマッシュに指を刺しながら何かを話しているようだ。

だが、素振りから自分に対して何かを尋ねているくらいしかスマッシュには分からない。

「ノアンツ・リーナーヤ・トホ・コンハサ」

イデア・ン・ドロはその目で空を見つけると一気に駆け出した。

スマッシュは空の前に立って、イデア・ン・ドロと対峙する。

「ジャララ! ロセ!!」

「くっ!!」

バッ! ガッ!! バッ!!

イデア・ン・ドロは立ち塞がったスマッシュを振り払う為に腕を振るう。

それを腕で受け止め、イデア・ン・ドロの進行を止める。

動きを止められたイデア・ン・ドロは一旦離れたと思うとすぐにスマッシュに飛び掛って蹴りつける。

「グッ!」

一瞬反応が遅れてしまい、蹴りをもろに喰らって吹き飛ばされて地面を転がるスマッシュ。

「くそ!!」

 すぐに立ち上がるとスマッシュはベルトのレバーを下げる。

ガキン!!

『チャージ!』

ピュィィィィイイイイイイイイ―――――――!!

ベルトから白いラインを伝って白い輝きが右足に到達し、力強い赤い輝きを放つ!

「ガサメ・スシラアセラ!!」

「はっ!?」

スマッシュがキックの体制をとっていると、その隙を突いてイデア・ン・ドロが飛び掛る。

ガッ! バキ!! ゴッ! ガキィ!!

「グッア!!」

咄嗟に防御したが、二、三発殴られてから蹴り飛ばされるスマッシュ。

イデア・ン・ドロはその隙に空に狙いを付ける。

「シネロアクド・ノアンツ・リーナー」

 そう言いながら空に近づくイデア・ン・ドロ。

「!?」

空は怪物の狙いが自分である事に身を震わせる。

「くっ! やらせるか!!」

叫びながら立ち上がるスマッシュ。その時、彼は足が異様に厚いことに気づく。

ピィィィィイイイイイイイイイイイイ――――――――――――――!!

見てみると右足に到達したエネルギーが、行き場を無くしたかの様に音が鳴り響き激しく輝く。

放出する機会を失ったことにより、一箇所に留まったエネルギーが身体に負担を強いていたのだ。

(マズイ!!)

スマッシュは本能的な思考で右足をグッと踏みしめ、溜まったエネルギーを地面に放出して跳躍する!!

バシュッ!! ドガァン!!

「ハァアアアアアア!!」

「グゴッ!?」

爆発するような音を出して地面を吹き飛ばし、イデア・ン・ドロを殴り飛ばすスマッシュ。

かなり勢いの付いた攻撃にイデア・ン・ドロは大きく吹き飛び地面を転がる。

だが、すぐにゆっくりとした動きで立ち上がる。逆にエネルギーを込めていない状態で殴った為、スマッシュも少し手が痺れたのかパッパと手を振るう。

(長い間エネルギーは止めて置けない…けど……普通の攻撃は通じない…どうすれば良いんだ!?)

スマッシュの必殺キックは若干溜めに時間が掛かる。

しかも、溜まったエネルギーはすぐに放出しないとその箇所がエネルギーに耐えられなくなり暴発してしまうようだ。

「ヂャラユ・ツウハア・シタラサア・ソオツ!!」

そう言い放つとイデア・ン・ドロはスマッシュに狙いを変えて飛び掛かっていく。

「くっ!!」

飛び掛ってくるイデア・ン・ドロをかわして、再びレバーを下げる。

ガキッ!

『チャージ!』

ピュィィィィイイイイイイイイ―――――――!!

チャージの間も間髪入れずにイデア・ン・ドロが腕を振るう。スマッシュはそれをチャージが終わるまで懸命に左腕で防ぐ。

防御の合間にエネルギーはベルトから白いラインを伝い、今度は白い輝きが右腕に到達して力強い赤い輝きを放つ!

「ウオオオオオオ!!!」

バキィイイイイイン!!

チャージが終わった瞬間、スマッシュはすぐに拳をイデア・ン・ドロに叩き込んだ!!

突き出された拳はイデア・ン・ドロの腹部の装飾品を捉えて砕いていた。

「ガァアアアアアアアアア!?」

吹き飛ばされながらイデア・ン・ドロは初めて激痛の叫びを上げながら腹部を押さえる。

すると、イデア・ン・ドロの腹部から青い輪のような光が浮かび上がった。

「ガ…ガァァァァァ……〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

身体をくの字に曲げて腹部を押さえながら呻きながら、地面に膝を付いた時イデア・ン・ドロは爆発四散した。

『コード:SMASH・COMPLET』

イデア・ン・ドロの最期を見取ると荒い息を抑えながら変身を解いて祐輝の姿に戻る。

(何だったんだ、こいつは?)

蜘蛛男とも蝙蝠男とも根本的に何かが違う。

祐輝がその違和感が何かも分からず、大きな不安に苛まれていると、空がすぐ隣まで駆け寄ってくる。

「神胴さん、大丈夫ですか!?」

「あ、ああ大丈夫…」

その時、祐輝が一瞬沈んだ表情をしたのを空は見逃さなかった。

「…? どこか痛むんですか?」

「いや、全然…それより、早く帰ろう……二人とも心配するだろうし」

「神胴さん」

空はさっさと帰ろうとする祐輝に駆け寄って腕を掴んで歩みを止める。

「ぇ?」

「神胴さんさっき言ってましたよね? 自分の力は壊すしか出来ない迷惑な力だって」

「実際…ここも少し荒らしちゃったしね」

そう言って周囲を見渡すと、エネルギーを放出した跡が明らかに不振な傷跡を作っていた。

「…それは間違いです」

「え?」

どういうことか分からないという祐輝に対して、空は微笑みながら話す。

「だって、神胴さんは私を守ってくれたじゃないですか」

「だけど…」

祐輝が納得できないでいると空は微笑んで答える。

「神胴さんは凶器なんかじゃありません。だって、凶器は優しさなんて持ってませんから」

気がつくと空はさっきまでの暗い表情が晴れている。少し位は気を紛らわす事ができたのだろうか?

それは分からないが空が自分を元気付けてくれた事が嬉しくて、自然と顔が綻んでいくのを感じる。

「…ありがとう」

正直にそう返すと空も頷いて答えた。

「じゃ、帰ろうか」

「はい…でも、この痕このままにして良いんでしょうか?」

「それは…御免なさいって事で」

バイクに戻る前に二人は神社の前でお祈りするように拍手を打ってから岐路に着いた。

 

(明日あたり何か背負うもの買っとこう)

背中に意識を集中しないように二人乗りしながら、祐輝は硬く心に誓いを立てる。

その為、祐輝は空が背中で呟いた言葉を聞き逃していた。

「有り難う…祐輝さん」

 

 

・・・

 

「く〜〜〜〜う〜〜〜〜ちゃ〜〜〜〜〜ん!!」

「うきゃぁ!?」

帰ってきてバイクから降りた途端、空に向かって突進して抱きつく姫里。

「もー、遅かったから心配しちゃったよ〜。てっきりユー君が犯罪者になっちゃったかと」

「信用無いな」

「あはは、冗談冗談! ご苦労様ユー君!」

「お姉ちゃん…苦しい〜」

空は姫里の胸に顔を抑えられて息が出来ずに苦しんでいた。

「あ、ゴメンね空ちゃん」

そこでようやく空を開放する姫里。

そのやり取りは見ていて少し面白かった。

「お帰り、空ちゃん、ユー君」

「うん、ただいまお姉ちゃん」

そこで二人は一緒に祐輝に顔を向ける。

「ユー君」

「ん?」

「家に帰った時は、ただいま。ですよ? 祐輝さん」

家に帰った時。

その言葉に祐輝は胸が熱くなるような感じがするのを感じ取り、思わず笑みがこぼれそうになる。

それが何となく恥ずかしく思えて、その想いを精一杯顔に出さないように気を付けてこう返した。

「…ただいま」

 

 

 

 

 

 

<つづく>

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

後書き?

 

姫里「はい、こんにちは! もしくはこんばんは! 司会の麻宮姫里でーす☆」

空 「同じく司会の麻宮空です」

姫里「今回は最後の方に出てきた変な怪人について解説しちゃいまーす!! では、早速行きましょう! 」

作者:ページかなり使ってるしね!! この下に乗せます!!

 

 

怪人イデア・ン・ドロ

イデアは真の実態という意味があるらしい。

こいつの名前はイデアとアンドロ(ギリシア語で男性という意味)を混ぜただけです。

 

姫里「結局これって何?」

作者:これはハッキリ言ってアンノウン的な役割です。

空 「役割?」

作者:詳しい事は今は言えないけど、こいつは組織とは違う所からの尖兵ですね。

姫里「どこからの尖兵なの?」

作者:異次元、これ以上は面倒臭いから今回は省きますが、今後のストーリーに多大な影響与える予定。

空 「大丈夫なんですか?」

作者;うん、予定ぶっちゃければ、10話近く行かないと絡まないんだけどね。

   そこら辺キツイわ。

姫里「相変わらず計画性無〜い」

作者:言うな! 

  本当ならこの話はギャグで落ちるはずだったんだ!! ページ都合上已む無く断念したんだ!!

  てか、これでもギャグ抜かしたのとは別に結構減らしたんだ! 4ページくらい。

  (でもよー分からん風に終わってるんだよなぁ…泣)

空 「本当はどう終わったんですか?」

作者:よし、ギャグだけ下にオマケ劇場としてやってみようか?

姫里「え〜…やるのぉ?」

作者:ギャグ好きだからねぇ

  けど爽やかに終わった方が良いという人は見ない方が良いです。

姫里「どうして?」

作者:ギャグだからさ

 

 

 

それでも見るという人は

オマケへGО!

 

 

 

これ以上付き合いきれんという人は、又のお越しをお待ちしております。

 

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