仕事相手である戒堂郁美と別れた北川 潤が大型バイクを走らせている。走らせながら考えているのは少し前に郁美と共に見た謎のビル倒壊現場でのこと。あの場にはひどく不似合いな黒塗りの高級車の中にいたひどく疲れた表情をした若い男のことだ。
 何処かで見たことのあるような感じがするのだが、それを思い出すことが出来ない。それが妙に胸に引っかかっている。
(何なんだろうな、一体……)
 何故、そんなに気になるのか自分でもわからない。それが余計に胸のモヤモヤを強めていた。
 何か釈然としないままバイクを走らせていると、何かがぴょんぴょん跳ねながら彼を追い越していった。同時にポケットの中に入っている水晶玉が震動を彼に伝える。
「……奴か!」
 つい数時間前に逃がしてしまった蚤怪人。それが再び現れたのだ。今度こそ奴を逃がすわけにはいかない。
 アクセルを回してバイクの速度を上げる北川。更に片方の手でゾディアックガードルを取りだし、腰にあてがう。ゾディアックガードルが腰に固定されると、北川はハンドルから手を放して素早く一枚のカードとカードリーダーを取り出して、そのカードリーダーの中にカードを挿入した。
『Zodiac Rider System Preparation Start』
 聞こえてくる機械的な合成音。それを聞きながら北川はカードリーダーをゾディアックガードルに差し込んだ。
「変身っ!!」
『Completion of an Setup Code ”Taurus”』
 カードリーダーがゾディアックガードルにはめ込まれると同時にそんな機械的な音声が流れ、ゾディアックガードルから光が放たれる。その光は北川の運転するバイクの前に光の幕を作り出した。そこに輝く牡牛座を象った光点。バイクごとその光の幕を突き抜けた北川の姿が仮面ライダータウロスへと変わる。
「今度っつー今度は逃がさねぇっ!!」
 吠えるようにそう言い、タウロスがアクセルを更に回す。それに伴って大型バイクが更にスピードを上げた。しかし、それでも前方少し斜めをぴょんぴょんと跳びながら走る蚤怪人に追いつくことが出来ない。
「チィッ! 何だよ、あの速さはっ!!」
 忌々しげに蚤怪人の後ろ姿を見ながら吐き捨てるように呟く。今、彼の意識は前方を郁蚤怪人にだけ向けられていた。それに先ほどまでの胸のモヤモヤが彼の思考を鈍らせていたのだろう。だから気付けなかった。蚤怪人がタウロスを何処かに誘導しているという事実に。
 蚤怪人はぴょんぴょんと跳ねながら時折チラリと後方を伺っていた。目的である仮面ライダーはついてきている。もう少しの間このまま追いつかれず、そして奴にも気付かれず事を運ばなければならない。下手をすれば始末されるのは自分の方だからだ。せっかく封印を解かれて自由になったと言うのに、まだまだ楽しみ足らない。こんなところで始末されたくはなかった。だから、言うことを聞いてこんな厄介なことをしているのだ。でなければ仮面ライダーなどに関わりたくはない。自分たちを倒そうとしている奴らになど自分から関わりたいはずがない。しかし、力の差は歴然だ。あの白いコートの男は今の自分には決して倒せる相手ではない。だから、始末されない為にも言うことを聞くしかないのだ。
 ぴょんぴょん跳ねながら蚤怪人はタウロスをとあるビルの工事現場へと誘い込んでいく。タウロスがそれに気付いたのは工事現場にたどり着いた時だった。ひときわ大きく跳ね上がった蚤怪人が建設途中のビルの中へと消えていくのを見、バイクを止めて、そこでようやく周辺に漂う異様な気配に気付いたのだ。
「……やれやれ、誘い込まれちまったか」
 相手の蚤怪人はぴょんぴょんと跳ね回ってなかなか一つところに落ち着こうとはしない。それがこういうビルの建設現場のようなところに来れば、どのような攻撃をしてくるか。予想するのは容易いが、実際に予測するとなると難しいだろう。
「こりゃあ、厄介なことになった、か?」
 周囲を油断なく見回しながらタウロスが呟く。ここに誘い込んだところを見ると、ここはあの蚤怪人のテリトリーだと見ていいだろう。だとすればますます事は厄介だ。向こうに有利にフィールドで戦うとなると苦戦は必至。ただでさえ厄介な相手がますます厄介な相手になってしまう。
「どっちにしろさっさと倒さなきゃいけないのには違いない」
 背中にあるタウロスアックスを取り、構えながらビルの方へと一歩踏み出したその時だった。突如真上から降ってきた衝撃波がタウロスを吹っ飛ばしたのは。
「ぬおおっ!」
 大きく吹っ飛ばされたタウロスが何とか身を起こして衝撃波の降ってきた方向を見上げると白いコートを着た男がニヤニヤとした笑みを浮かべてタウロスを見下ろしているのが見えた。吹き抜ける風にコートの裾をはためかせながら、建設途中のビルの端に立ち、悠然とタウロスを見下ろしている男。それはつい数時間前、仮面ライダースコルピスをあっさりと叩きのめしたペガサス怪人だった。だが、そのことをタウロスは知らない。
「何だか知らないが……どうやら敵って事だよな?」
 ゆっくりと立ち上がり、白いコートの男を睨み付けるタウロス。
「面白い、やってやろうじゃねぇか!!」

仮面ライダーZodiacXU
Episode.11「砕けない闇―The dark that cannot be broken―」

 唖然としている一同の前で相沢一雪はヘルメットのバイザーをあげてみせた。
「お待たせ……ってあれ? どうかした?」
 友人達の反応にちょっと首を傾げる一雪。果たして自分は何か間違ったことをしたのだろうか。
「……あのな、一雪」
 何かを堪えるようにしながら腐れ縁と言うか親友と言うか、とにかくそう言う存在の天海 守が一雪に声をかける。
「何で迎えにくるのにバイクに乗ってくるんですか! あなた、常識ありますの!?」
 明らかに怒ったようにそう言ったのは白鳥真白。正確に言うならば言った、と言うよりも怒鳴ったと言うべきだが。
 その真白の横でうんうんと頷いているのは磯谷 桜と初野華子。この三人は一雪とは双子の祐名の方の友人だ。まぁ、一雪も別段仲が悪いわけではない。
「あ〜、いや、ほら、その、早く迎えに行った方がいいかなって思ったんだけど」
 少し視線を泳がせながら答える一雪。ちなみに彼は真白に対して苦手意識を少なからず持っている。何かことあるごとに彼女から説教されている所為だろう。何でこうも頻繁に説教されなければならないのか少々疑問ではあったが、その辺を祐名に尋ねてみると「一雪が不甲斐ないからじゃない?」と一蹴されてしまった。不甲斐ないと言うか頼りないと言うか、そう言うところは自分でもちょっと思うところがあるので何も言い返せないのが悔しいところではあるが。
「だからと言ってバイクはないと思うよ、一雪君」
「そうそう。一体どうやってそれで案内するつもりだったんですか?」
 桜、華子の連続攻撃にタジタジになってしまう一雪。
「い、いや、それは、その……」
 しどろもどろになる一雪を天海は少し醒めた視線で見つめている。
(多分何も考えてなかったんだろうなぁ)
 とか思いながら。とりあえず助け船を出す気はないらしい。一応助けを求めるような一雪の視線を感じないでもなかったが。
 女三人に散々文句言われてから一雪はすっかりしょげかえったように肩を落として、バイクを押し始めた。その後に続く四人。
「なぁ、一雪。そのマンションまでここから遠いのか?」
「……いや、それほどでもないよ。歩いたら十分もかからないくらい」
 見事なまでの落ち込んだオーラを放っている一雪の背中に声をかけてみると、想像以上に落ち込んで声で返事が返ってきた。そのことに天海は少し驚いてみる。
(うーん、一雪的には悪気がなかっただけにあれは相当堪えたみたいだな……)
 そう思った天海は少し歩みを早めると、一雪に並んでその肩に腕を回した。
「まぁまぁ、そう落ち込むなよ。今度俺の秘蔵の奴貸してやるから」
 ぼそぼそと後ろに続く女性陣に聞こえないような声で落ち込みまくっている親友の耳に囁く天海。一応これでも彼なりに気を遣っているようだ。
「な、元気出せって」
「……その秘蔵の奴云々は遠慮しておくけど、まぁ、何とか頑張ってみる」
 そう言って一雪はため息をついた。
 天海とすれば一雪に早く復活して貰わないことには女三人、後で祐名も加わるだろうから女四人を前にして一人バカをするわけには行かないのだ。それに祐名に気のある彼にしたら是非とも彼女の前ではいいところを見せたいと言うところもある。それには一雪のフォローが欠かせないのだ。
 そんな天海の打算に気がついているのかいないのか、結構お人好しの一雪はまた一つため息をついて住んでいるマンションへと急ぐのであった。
 一雪の、と言うか北川が住んでいるマンションを見てその想像以上の高級さに初めてここに来た四人が思わず言葉を失ったりもしつつ、ようやく部屋にやってきた四人を出迎えたのは当然ながら祐名である。
「いらっしゃ〜い。あんまり片付いてないのは勘弁してね」
 満面の笑顔を浮かべてやってきた四人と一雪を出迎える祐名。
 何か機嫌が良さそうだ。確か出ていく時にはそれほどでもなかったのにな、と思いつつ一雪は四人の友人達と一緒に中に入っていく。そして、すぐに祐名の機嫌がいい理由がわかった。テーブルの上にはいつ用意したのか大きなケーキがおかれていた。多分祐名が作ったものだろう。このケーキの試食をさせることが出来るのが嬉しいのだ、きっと。
「わ〜、さっすが祐名ちゃん!!」
 歓声を上げる桜。
「へへ〜、丁度よかったでしょ。レポートやる前に先におやつってのもどうかと思うけど、せっかくだから食べてみてくれる?」
「よろしいんですの? 今日は誰かの誕生日とかそう言うのでは?」
 ちょっと照れたような顔をしている祐名に真白が尋ねる。
「大丈夫。ただ何となく作ってみただけだから気にしないで」
「ただ何となくってレベルで作るような代物じゃ無さそうな感じだけど」
 しげしげとテーブルの上に乗っているケーキを見ながら華子が呟く。確かに彼女の言う通り、テーブルの上のケーキは妙なくらいに手の込んだもののように見える。
「まぁまぁ、せっかく祐名ちゃんが用意してくれていたんだ。食べなきゃ罰が当たるってもんだぜ。なぁ、一雪」
 天海がそう言って一雪に同意を求めたが、一雪はただ曖昧に頷いただけだった。しかし、天海はそれを肯定と受け取ったのか、満足げに頷いてみせる。
「それじゃとりあえず座って。すぐに取り分けるから。あ、一雪はお茶の準備してね」
「ああ、わかったよ」
 何かとても嬉しそうな祐名に言われるままに一雪は台所の方に向かう。しかしやることはほとんどない。しっかりとお茶の準備は為されている。後は持っていけばいいだけという状態だ。どうやら一雪が四人を迎えに行っている短い時間のうちにここまで完全に準備を終えていたらしい。きっとケーキの方は朝から焼いていたに違いない。
(そうなるとみんなが来たのはよかったって事だよなぁ。もし誰も来なかったら僕とおじさんが試食させられる羽目になっていたんだろうし)
 そんなことを考えながら人数分のカップとティーポットをお盆の上に載せ、落とさないように注意しながらみんなのいるテーブルの方に持っていく。カップを並べてポットの中から紅茶を注ぎ込んでいく。
「はい」
「ありがと〜。一雪君てそう言うことも出来るんだね〜」
 紅茶の入ったカップを手渡してくる一雪に感心したように言う桜。
「散々やらされてるからね。これくらいはお手の物だよ」
 少し苦笑するようにして一雪が答える。
「それに祐名にばかりやらせるのも悪いしね」
「流石ですわ。これからの男の人はこうでなくてはね」
 こちらも感心したと言う風に真白が言う。それからチラリと天海の方を見た。
「何だよ、似非お嬢」
 真白の視線に気がついた天海がちょっとムッとしたようにそう言うと、真白は彼から視線をそらせてため息をついた。
「はぁ〜、同じ男の人でもやはり違うものですわね」
「本当ね。守も少しは相沢君を見習って家の手伝いしたら?」
 真白に便乗したかのように華子もそう言って天海の方を見る。天海と華子は幼馴染みなだけあって互いの家の事情はよく知っているのだ。
「フッ、何を言うか。俺は俺、一雪は一雪。それに俺が下手に手伝いなんかしようものなら皿は割れる、コップは割れると大惨事が待っているぞ」
 何故か自信たっぷりに言う天海を見て、今度は華子がため息をついた。
「何とも情けない……やはりあなたは類人猿以下ですわね」
 嫌悪感を隠そうともせずに真白が言う。
「天海君さーいてー」
 桜もひどく呆れたような視線を彼に向けた。
「少しは家の手伝いはした方がいいと思うな、私も」
 苦笑を浮かべながら祐名がそう言うと、天海は流石にショックを受けたようにうなだれてしまった。
「まぁまぁ、別にいいじゃないか。それよりさっさと食べてレポートを始めようよ」
 助け船を出すように一雪がそう言って空いている椅子に腰を下ろす。
「それもそうですわね。今日はその為に来たのですから」
「それじゃどうぞ〜」
 切り分けたケーキを嬉しそうに更に取り分けて皆の前に並べていく祐名。その様子は何とも嬉しそうな感じである。
 そんな双子の兄姉を見ながら何となく不安なものを感じる一雪。彼女が料理好きだと言うことはよく知っている。母親や祖母に散々手解きされているからかなりの実力を持っていることも知っている。ただ、母親や祖母に比べて少し冒険好きなところがある。使ったことのない食材とかを色々と組み合わせて新しい料理を作るのが好きなのだ。その試食をさせられていたのが主に一雪と最近では北川である。かなりおいしい時もあるが、その逆の時も多々ある。最近では何か怪しげなものを混ぜ込んだクッキーを焼いてみて、北川と二人試食させられて悶絶した記憶がある。そう言うことがあるから何となく今回の妙な機嫌の良さと目の前のやたら豪勢に見えるケーキに何とも言えない不安を感じてしまうのだ。
「それじゃいただきま〜す」
 桜がそう言って切り分けられたケーキを口に運ぶ。その顔はこのケーキが絶品だと信じ切っている顔だ。普段の祐名が普通に作ればかなりおいしいものが出来上がるだろう。だが、今回は一体何を材料にしたのか、知っているのは祐名だけである。
 他の皆もそれぞれケーキを口に運ぶのを見ながら、一雪だけはケーキには手を出さずにいた。とりあえず皆には悪いが少し様子を見させて貰おうと言うつもりらしい。
「……!!」
「……ぐあっ!?」
 ケーキを口に入れた瞬間、皆が硬直した。
「ね、ね、どう?」
 一人ニコニコしている祐名がそう尋ねる。どう言った評価が下されるか興味津々と言った感じだ。
「あ、いや、何とも独創的なお味で」
「う、うん、初めて食べるかなぁ、こう言うの」
 天海、華子が何とかという感じで言葉を紡ぎ出すのを見て一雪は食べなくてよかった、と言う風にホッと胸を撫で下ろしていた。
「あの、相沢さん、一つお伺いしてよろしいかしら?」
 必死に愛想笑いを浮かべながら真白が祐名の方を見て片手をあげる。
「何々? 何でも聞いて?」
「一体材料には何をお使いになったんです?」
「あ、僕もそれ気になってたんだ」
 ただし、僕は食べてないけどね、と心の中で付け加えながら真白に便乗する一雪。何となく天海や華子の反応でだいたいの見当はつかないでもなかったが、とりあえず確認しておく必要はある。
「ごく普通の材料だよ。ただ、隠し味としてお婆ちゃんから貰ったあのジャムを入れてみただけだけど」
「お婆ちゃんのジャムって、もしかしてあのオレンジ色の?」
「そうだけど?」
「……あれがここにあったなんて……」
 呟くようにそう言った一雪の顔は青ざめていた。だが、想像通りであったことも事実である。何とも独創的な、一度食べたら二度と忘れられない、何と言うか壮絶な味のオレンジ色の甘くないジャム。それがこの家にあったとは。実家では父と母によって厳重に封印されていたはずなのに。
「ところで一雪君。君の前のケーキ、少しも減ってないようだが」
 そう言いながら天海が一雪の手元を覗き込んでくる。
「な、何を……」
 明らかに焦りの表情を浮かべる一雪に祐名も気付いたようだ。じっと彼の方を見つめてくる。しかも半眼で。
「じ〜〜〜〜っ」
 わざとらしく口に出しながら一雪をじっと見ているのは桜のようだ。何となくその視線が「裏切り者」と言っているような気がしてならない。
「い、いや、あの、その……」
「相沢君」
「は、はい?」
「食べないわけないわよね?」
「い、委員長?」
「ないわよね?」
 華子がそう言ってギロリと一雪を睨み付ける。その眼光で騒がしい教室を黙らせることも決して不可能ではない華子だ。これには一雪も頷くしかなかった。
 一度食べれば二度と食べたいとは決して思えないあのジャムの入ったケーキ。フォークで切り分けて口に運ぶのにもかなりの精神力が必要だ。口に運ぼうとすると何故か手が震えてしまう。
「さぁさぁ、男らしく一気にがぶっと」
「う、うん……」
 天海に促され、一雪は目をつぶってケーキを口に入れた。次の瞬間、口の中に広がる何とも言えない味。
「ぐあ……」
 思わず目眩すら感じ、一雪はテーブルの上に突っ伏してしまうのだった。

 コンクリートの壁を突き破って吹っ飛ばされる仮面ライダータウロス。彼が突き破って出来た穴の向こう側にはペガサス怪人が悠然と立っている。
「フフフ……まさかこれでお終いとか言うんじゃないだろうね?」
 余裕たっぷりに言うペガサス怪人を何とか身を起こしながら睨み付けるタウロス。
「少しは楽しませてくれよ。それが君たちの役目なんだからさぁ」
「巫山戯るなよ、この馬野郎!」
 ゆっくりと立ち上がり、タウロスはタウロスアックスを構えた。まだまだやる気は十分にある。だが、何か勝てそうな気はしない。はっきり言ってしまえば実力の桁が違う。今の自分ではどう足掻いても勝てる相手ではない。しかし、それでもここで退くわけにはいかなかった。自分から負けを認めることだけは出来ないのだ。何と言っても自分は人々を守る為に、弱き抗う力無き人々を守る為に仮面ライダーになった、仮面ライダーとなる道を選んだのだから。
「楽しみてぇって言うなら存分に楽しませてやるぜ! 命がけでなぁっ!!」
 タウロスアックスを振り上げながらペガサス怪人に向かってタウロスは突っ込んでいった。
「ハッハッハッハッ!! さぁ、来るがいい! 命がけでなぁっ!!」
 笑いながら突っ込んでくるタウロスを楽しそうに見つめるペガサス怪人。その姿には何処までも余裕が伺える。まるで弱者をいたぶることに喜びを見出している強者の如く。圧倒的な力の差を自覚しているかの如く。

「……!?」
「どうかしましたか、獅堂さん?」
 今までシートにもたれかかってまるで眠っているかのようだった獅堂 凱が不意に身を起こしたのでハンドルを握っている敷島慎司が声をかけてみた。
「……いや、何でもない。多分気のせいだ」
 そう言って獅堂は再びシートにもたれ込んで目を瞑った。何か胸騒ぎのようなものがする。だが、その正体が見極めきれない。あの怪物どものような感じもするが違う、何か異質なもののような感じもする。何ともはっきりしない胸騒ぎ、それが妙に神経を苛立たせる。
「そう言えばあの蚤の怪物、何処消えたんでしょうね?」
「……さぁな」
 ずっと黙ったままだと気まずいとでも思ったのか敷島が話しかけてくるが、獅堂は素っ気なくそう答えただけだった。
「卯月さんの作ったシステムにも反応ありませんしね」
「そうだな」
「案外北川さんが倒していたりして」
「それはないな」
「何でそう言えるんです?」
「あのおっさんには無理だ」
「わかりませんよ、そんなことは。ほら、あのゴリラの怪物だってあの人が倒したんだし」
「あのおっさんはパワー型だからな。だがあの蚤野郎はパワー一辺倒じゃダメだ。むしろパワーよりも速さが必要だ」
「なら獅堂さんなら出来るって事ですか?」
「俺はどっちかと言うとテクニカル系だ。スピード型は……あの野郎とかだな」
「あの野郎?」
「……何にせよ、あの怪物どもは俺が倒す。お前は黙って運転していろ」
 少し喋りすぎたな、と思いながら獅堂は先ほど脳裏に思い浮かんだ男の顔を振り払うように首を左右に振った。まだあの研究所が無事だった頃、一度として勝てなかったあの男。こっちのパンチもキックも何一つ当たりもしなかったあの男。もし生きていればもっとも優秀な仮面ライダーとして存在していたであろう男。
 今、彼のことを思い出すのは自分が焦っているからだろうか。これがあの男なら、と考えてしまうからだろうか。あの男なら力で上回る相手にも勝てるだろうか。あの男なら北川とも上手く力を合わせて戦えるだろうか。そう考えてしまうからか。
「……チッ」
 嫌な感じだ。これもこのわけのわからない胸騒ぎの所為か。苛立たしげに舌打ちする獅堂。
 そんな彼の隣で敷島は少し不服そうにハンドルを握っていた。

 横に一閃されたタウロスアックスが鉄骨製の柱をあっさりと両断する。
「どうしたどうした。こっちだよ」
 背後からバカにしたような声が聞こえてくるので、タウロスがすぐさま振り返り、同時にタウロスアックスをその声のする方へと叩き込んでいった。だが、その時にはもう声の主であるペガサス怪人はその場にはおらず、タウロスアックスはコンクリート製の床に穴を穿つだけ。
「フフフ……いくらパワーが凄くても当たらなければどうというものでもない。わかるかい?」
「ああ、嫌味だって事はな!」
「威勢はまだまだいいみたいだね」
 聞こえてくる声は変に反響していてペガサス怪人が何処にいるのかを掴ませない。先ほどのようにはっきりと後ろから聞こえてくるのなら問題はないのだが、これでは手の出しようがない。
「でもこっちはそろそろ飽きてきたよ。君はその大斧をただ振り回すだけだからね」
 周囲を見回しながらタウロスは相手の居場所を何とか掴もうとする。
「これならまだ彼の方がマシだったかもね。フフフ」
「彼だと?」
「そう、君とは別の仮面ライダーのことさ」
「獅堂の野郎のことか?」
「さて、ね。おしゃべりはそろそろ終わりにしようか」
 そう言いながらペガサス怪人がタウロスの背後に姿を現した。
「そこかよっ!!」
「……っ!?」
 いきなり振り返り、そして振り返り様にアックスを突き出してくるタウロスにペガサス怪人は一瞬反応が遅れた。突き出されてきたタウロスアックスをまともに腹に喰らってしまう。
「くっ……!!」
「へっ、捕まえたぜ、この馬野郎。油断して姿見せるのを待っていたんだ」
 タウロスはそう言うとタウロスアックスをペガサス怪人の腹に食い込ませたまま振り上げ、一気に振り下ろした。その勢いで床面に叩きつけられるペガサス怪人。
「あたらなけりゃどうと言うことはないんだったよな。ならぶち当ててやるぜ!」
 その仮面の下でニヤリと笑いながらタウロスがタウロスアックスを振り上げる。どれだけ素早い動きの出来るペガサス怪人だとしても倒れている姿勢からでは逃げることは出来ない。
「喰らいやがれぇっ!!」
 一気に振り下ろされるタウロスアックス。その鋭い刃がペガサス怪人を切り裂こうと迫る。だが、その刃がペガサス怪人に触れる直前、何かにぶつかったようにその刃は止まった。
「何っ!?」
「な、舐めないでもらいたいな……こう見えても」
 ペガサス怪人がタウロスアックスの鋭い刃の下でニヤリと笑う。その刃が叩き込まれる寸前、両手でその刃を受け止めたのだ。ただでさえパワーのあるタウロスが思い切り振り下ろした上にタウロスアックス自体の重さ、それに加えて重力。その破壊力は甚大なもののはずなのに、それを両手で受け止めてしまうペガサス怪人。その力は並大抵のものではないらしい。
「上位32星に列席するものなのだからね!!」
 そう言うと無理矢理タウロスアックスをタウロスの手から奪い取り、そして倒れたままの状態からタウロスの胸を蹴り上げる。
「ぬおっ!!」
 大きく吹っ飛ばされるタウロス。そのまま何メートルか宙を舞い、コンクリートの床に叩きつけられる。
 倒れたタウロスを見やりながらゆっくりと身を起こしたペガサス怪人はその手に持ったタウロスアックスを投げ捨てると、背の翼を大きく開いた。そしてゆっくりと宙に舞い上がる。
「なかなかやってくれるじゃないか」
 タウロスを見下ろしながら言うペガサス怪人。その目には心なしか怒りの炎のようなものが見えている。先ほどタウロスに一撃加えられたのがどうやら腹に据えかねているらしい。
「さっきのお礼をするよ。さぁ、ここで、死ね」
 ペガサス怪人がそう言って腕を一降りした。するとそこに物凄い衝撃波が発生し、それが倒れたままのタウロスを直撃していく。
「うおおおっ!!!」
 物凄い衝撃波の直撃を受け、タウロスが叫び声をあげる。余りにも強烈な衝撃波の為にか、タウロスの身体がコンクリートの床にめり込んでいく。更にタウロスの周囲の床にひびが入っていき、崩れ始めた。
「うわあああっ!!」
 床が完全に崩れ、それに合わせるかのように建設途中のビルも崩れ落ちていく。その崩落に巻き込まれる前にペガサス怪人はビルの中から飛び出していた。眼下に崩れていくビルを見下ろしながらペガサス怪人は高らかに笑い声をあげる。
「ハッハッハッハッハ! これで二人! 後一人だ!!」

 とある病院の廊下。いくつもの病室が並ぶその内の一つのドアが開き、一人の男が出てくる。倉田一馬の私設秘書、黒崎だ。
 彼は中に向かって一礼すると静かにドアを閉じる。
「お兄さまの具合はいかがなのかしら?」
 黒崎がドアを閉じるタイミングを見計らっていたかのように、声がかけられた。振り返るとそこには一人の美少女が立っている。
「これは舞耶様。驚かさないでください」
 そう言って美少女――川澄舞耶に向かって頭を下げる黒崎。
「あのお兄さまが緊急入院と聞いて飛んで参りましたの。それほど驚くようなことでもないでしょう?」
 舞耶は至って無表情のままそう言うと黒崎から視線をドアの方に移した。
「少しお遊びが過ぎたのかしら?」
「さぁ。そこまでは」
「モニターしていなかったとは言わせないわ。まぁ、どうでもいいことだけど」
 何を考えているのか、全く読みとらせない。口調から感じるのは、本当にどうでもよさそうな響きだった。
 すっと髪をなびかせて舞耶が歩き出したので黒崎はその後に続いた。
「それにしても一体何を考えているのかしら?」
「私が思いますに、やはりご自分でモニターして、よりよいものを」
「お兄さまの事じゃないわ。あなたの事よ、黒崎」
「私、ですか?」
「ええ。ヨーロッパで私と出会い、私にK&Kインダストリーに入れるよう協力を頼んでおいて、実際には倉田家の運転手になって、お兄さまに自分の有能さを見せつけ、その私設秘書にまで短期間で成り上がった……何を企んでいるか気になって当然ではないかしら?」
 舞耶はそこまで一息に言うと、足を止めて黒崎の方を振り返った。そして少し目を細める。
「あなたが何を企もうとそれはあなたの勝手。口を出す気もなければ止めようとも思わない。でも一つだけ覚えておきなさい」
 そう言った時の舞耶の顔を見て、黒崎は冷や汗が背を伝うのを感じていた。いつもと変わらぬ無表情のはずなのに、そこから物凄く冷たいものが感じ取れてしまったのだ。
「あなたがお兄さまに何をしようとそれは構わない。でも、この私の敵になるのなら私は全力で叩き潰す。私は自分を裏切るもの、裏切ろうとしているものは絶対に許さない」
 舞耶のその宣言を受けて、黒崎は思わず一歩後ずさっていた。自分よりも年下の少女に彼は圧倒されてしまっている。恐ろしいとさえ思ってしまっている。この少女は自分が言ったことを、必ず、確実に実行するであろう。それを理解させるだけの迫力がある。
「……心に刻みつけておきます」
 辛うじてそう言うのが今の黒崎にとって精一杯だった。
 それを聞いて舞耶は小さく頷いた。これで満足したのかどうかはその鉄面皮からはわからないが、とりあえずは納得したような感じだ。そして、彼女は再び彼に背を向けると、そのまま歩き出した。
 無言でその背を見送るだけの黒崎。味方にするにしろ敵にするにしろ、川澄舞耶という少女は危険な存在だ。扱いを間違えれば爆発するニトログリセリンのようなもの。これからは彼女も警戒する対象に入れた方がよさそうだ。そう思いながら、黒崎はネクタイをゆるめてため息をつくのだった。

 完全に倒壊してしまった建設途中のビル。もはや瓦礫の山と化したその現場に野次馬と警察が集まってきている。幸いなことに建設作業員などはいなかったようで怪我人は出ていないらしい。ある一人を除いて、だが。
 そのたった一人の怪我人はボロボロになりながらも自分がそこまで乗ってきた大型バイクを押して、その現場から少し離れたところにいた。
「全く……ついてねぇな」
 そう呟くとバイクから手を放して、その場に座り込んでしまう。よく見ると額からは今も血が流れ落ちている。その血を手で拭いながらその男は後ろにある塀にもたれかかった。
「クソ……強かったな、あの馬野郎……一体何なんだ、あいつは」
 ポケットの中から携帯電話を取りだし、オフにしていた電源を入れる。自宅にかけようとして、その手を止めて少し考える。あの連中に心配をかけさせるわけにはいかない。少なくてもまだあの二人は自分がこんな事をしているとは知らないはずなのだから。考えた末に、最近登録したばかりの電話番号を呼び出した。
「……あー、悪い。ちょっと出て来れないかな?」
 電話の向こうの相手は少し躊躇っていたが、どうやら彼の頼み事を了承したようだ。
「本当に悪い。悪いついでにもう一つお願いがあるんだけど。ああ、いや、そんな無茶なことは言わないさ。ちょっと救急用の道具が欲しいだけ。それじゃ頼んだぜ」
 それだけ言うと男は携帯電話の通話を切り、ため息をついた。まだ知り合ってそれほど間が経っているわけでもないと言うのにこっちの無茶を随分と聞いてくれたものだ。この次に会うことがあればちゃんとお礼をしなければな、と思いつつ携帯電話をポケットに戻す。後は彼女が来るのをこの場でじっと待つだけ。と言うかもう一歩も動けそうにないのだが。
「全く……ついてねぇな、今日は」
 もう一度そう呟き、北川は辛うじて保っていた意識を手放した。

 都内某所にあるとある雑居ビルの三階。獅堂達が表向き「USSリサーチ」と言う調査会社を運営し、その事務所があるのがここである。もっとも実際は例の怪物達を倒すことが目的でその情報集めの為にあるダミー会社でしかないのだが。
「やれやれ、今日は全くの収穫なしね」
 敷島の淹れたコーヒーを飲みながら卯月みことがそう呟いた。
「午前中に一度あの蚤怪人を見つけただけですからねぇ。しかも逃がしちゃうし」
 そう言ったのはエプロンをつけた敷島だ。どうやら今、彼は奥にある台所で皆の夕食の準備を行っている真っ最中らしい。獅堂は勿論、みことも料理など全く出来ないので自然と彼がその担当になってしまったらしい。
「うるさい、あいつを逃がしたのは俺の所為じゃない」
 ムスッとしたままそう言ったのは獅堂だ。相変わらず応接用のソファに足を伸ばして寝っ転がっている。
「あのおっさんが邪魔をしなければ奴はもう倒していたはずだ」
「どっちかと言うと邪魔をしていたのは獅堂君の方かも知れないけどね」
 みことがそう言うと、獅堂はギロリと彼女を睨み付けた。
「何にせよ、もうちょっとぐらい仲良くやれないものかしらね。あいつらは一応共通の敵なんだから、互いに争ってる場合じゃないって事わかるでしょ」
 獅堂の視線をあっさりと受け流して、みことは少し呆れたような口調で彼に言う。せっかく仮面ライダーが二人もいるのに、その二人の仲が険悪で互いに協力しようとはしない。これでは宝の持ち腐れだ。この先今まで以上に強力な敵が現れた時に二人のライダーが力を合わせることが出来なければ勝つことは出来ないだろう。
「ふん、戦闘の素人がいたって何の役にも立つものか」
「そう言う問題じゃないでしょうに」
 あくまで獅堂は一人で戦うつもりのようだ。このことに関してはどうしても譲る気はないらしい。意外と獅堂は頑固者だ。一度こうと決めたらなかなか覆そうとはしない。それをみことも敷島も嫌と言う程知らされている。まだそれほど付き合いは長くないと言うのに、である。
「それよりも……他にカードはないのか?」
「カード?」
 少し驚いたようにみことが獅堂の顔を見る。一瞬彼が何を言っているのかわからなかったからだ。
「ああ。ガードルは全部で四つしか完成してなかったというのは俺も知っている。だがカードは全部あったはずだ」
「ゾディアックライダーシステムに対応しているカードは全部で十二枚、それ以外のカードのこと?」
「そうだ。今のところ俺が二枚、あのおっさんが二枚……まだまだあったはずだ」
「他のカードかぁ……あれの管轄はセクション2だから」
 少し思い出すような仕草をしながら言うみこと。彼女たちがいた研究所はいくつかのセクションに別れていた。ゾディアックガードルを開発し、仮面ライダーそのものの研究をしていたセクション1、ライダー達が使うカードの研究開発を行っていたセクション2、ライダー達のバックアップなどを主とするセクション3など。みことや敷島はセクション3に一応在籍していたので、他のセクションで何をしていたかなどとはほとんど知らないのだ。
「……あの子なら知ってるんじゃないかしら?」
「あの子?」
「忘れたの? 獅堂君の持ってるカードの片方を譲ってくれたあの子」
「ああ、例の彼ですね」
 二人が一体誰のことを言っているのかまるで思い出せない獅堂は訝しげな顔をしながら身を起こした。
「元気にしてますかね〜、彼?」
「多分元気は元気でしょうね。北川さんもいることだし、とりあえず無事のはずよ」
「だから誰のことを言ってるんだ?」
 みことと敷島は誰のことかわかっているからいいが、獅堂だけがわからない。何となく仲間はずれにされたような感じで気分が良くない。
「本気で忘れてるようね」
「みたいですね」
 二人揃って獅堂を見て、揃ってため息をつく。
「私たちよりもあなたの方が彼のことよく知っているはずなのよ?」
「そう言われてもな。全く見当もつかないが」
「……相沢一雪君よ。アンドロメダ座のカードは彼が譲ってくれたのよ。それに彼は」
「……ああ、あいつか。あいつなら覚えているぞ。鮫島の奴によくくっついていた小僧だな。確かセクション1の相沢主任の息子のはずだ」
 みことの言葉を遮るようにそう言い、獅堂はまたソファの上に倒れ込んだ。もう興味を無くした、と言う感じだ。
「よく覚えているじゃない」
「鮫島の奴がかわいがっていたからな。俺たちが訓練しているところにもよく顔を見せていた。俺はそれほど親しい訳じゃないがな」
「まぁ、獅堂君はそうでしょうね」
 普段から必要以上にムスッと押し黙っていることが多い上になかなか取っ付きにくい獅堂だ。彼が子供を相手にニコニコしている姿など想像出来そうにもない。
「でもその彼が今となっては唯一の手がかりになるんじゃないかしら?」
 みことはそう言うと、手に持っていたコーヒーカップを愛用のパソコンがおいてある机の上に置いた。そして、キーボードを叩いてある画面を呼び出す。
「今は北川さんと一緒に住んでいるから連絡取るなら簡単よ」
「あのおっさんと顔を合わせたくはないな」
「彼だけを呼び出すのって難しくありませんか? 北川さんの家の電話番号は聞いてますけど、あの子の携帯の番号って知りませんしね」
「そもそも携帯持っているかどうかもわからないしな」
「それぐらいは持っているでしょうけど、どっちにしろ番号がわからないのはダメね。とりあえず北川さんの家にかけてみましょう。彼が出ればよし、双子の妹さんが出ればそれもよし。北川さんが出たらその時だけアウト」
 そう言いながらみことが自分の携帯電話を取り出した。
「今からか?」
「早いほうがいいんじゃないの?」
「いや。こんな時間から呼び出すのは得策じゃない。明日にしよう。明日の夕方ぐらいにな」
 獅堂がそう言ったのでみことと敷島は互いの顔を見合わせた。彼が他人に対して気を遣うところなど初めて見たからだ。
「どうした、何か変なことを言ったか?」
「いや、ちょっと驚いていただけです」
 キョトンとした表情で尋ねてくる獅堂に少し戸惑うように敷島が答える。
「獅堂君でもそう言う気遣いぐらい出来るのね〜って」
 本気で感心したかのように言うみこと。
「失礼な連中だな。俺だってそれくらい出来るさ」
 あからさまにムッとしたようにそう言うと獅堂はまた目を閉じるのであった。

 マンションの入り口まで友人達を見送りに行き、その帰りのエレベータの中、一雪ははっと自意識を取り戻した。
「ど、何処だ、ここ?」
 思わず自分が何処にいるかわからずにキョロキョロと左右を見回してしまう。その途中で祐名と視線がぶつかった。
「ゆ、祐名!?」
「ここはエレベータの中。今戻っている真っ最中」
 呆れた、と言う感じで祐名が言う。
「まさか今の今までずっと呆けていたわけ?」
「あ、いや、どうなんだろ?」
 少し戸惑ったように答える一雪。はっきり言ってしまえば意識が飛んでいたから全く記憶がない。だがそれを祐名に言おうという気にはなれない。
「どうなんだろってずっと一緒にレポートとかやってたのよ。ちゃんと受け答えもしていたし」
「あ、そうなんだ」
「その様子だと本気で呆けていたんだ。相変わらずお婆ちゃんのあのジャムに物凄い反応をするね」 
「なんか苦手なんだよ、あれ。お婆ちゃんには悪いけど。祐名は平気なんだ?」
「平気じゃないよ。一雪みたいに極端な反応はしないけど。だから何とか食べられないかと色々しているんだよ」
「じゃ、せめて僕たちに出す前に試食してよ。いきなりやられちゃたまらないよ」
 恨みがましい目をして一雪がそう言うと、祐名はとぼけるように視線をそらせるのであった。一応試食してないことを悪いと思っているらしい。だが、やはり彼女も人の子、あの超独創的で一度食べたら二度と食べたくなくなるあのジャムが入っているとわかっているものを試食しようと言う気にはならないようだ。
「つ、次からは気をつけるよ」
「次って……」
 どうやらあのジャムを使った料理づくりを止めるという選択肢は彼女の中にはないらしい。それを知った一雪はため息をつくのであった。
「ところでおじさんは?」
「今日はどうなんだろう? 聞いてないよ」
「遅くなるなら遅くなるで連絡ぐらい欲しいよね」
「色々と忙しいんじゃないの? 今日は確か何処かの編集長さんと会うって言ってたし」
「聞いてるじゃないか」
「いつ帰ってくるかは聞いてないって言ったの」
「まぁ、とにかく晩ご飯の準備でもしようか」
「それもそうだね」
 丁度そう言った時にエレベータが止まった。 二人がエレベータから降りて部屋に向かって歩き出す。

 あるビルの屋上にある給水塔の上に腰を下ろし、白いコートの男は夜の帳の降りた街を見下ろしていた。
「後一人……」
 そう呟き、右手を開いたり閉じたりしてみる。
「大丈夫だろうけど……一応やっておくかな」
 すっと立ち上がり、白いコートをはためかせながら軽やかに空中へと飛び出していった。そしてそのまま重力に従って地上へと落下していく。
 地上ではいきなりビルの上から身を躍らせた白いコートの男を見つけた人たちが悲鳴やら何やら声をあげている。だが、そんなことはお構いなしに白いコートの男は地面目掛けて落下していった。次にその場で起こるであろう惨状に誰もが目を瞑ったその時、白いコートの男は身体を丸めて一回転し、まるで体操選手の如く華麗に着地した。すくっと立ち上がると未だに目を瞑っている人や恐る恐る目を開けている人たちをぐるりと見回す。
「さて、と……まずはお前からだ」
 適当に一人指差すと、白いコートの男はニヤリと笑った。指を指された方の男は何が何だかわからないと言った感じだったが、そんなことは白いコートの男には一切関係ない。無造作に歩み寄ると男の胸に手をついた。そして、その手をギュッと握り込むと同時に男の顔が一気に青ざめ、その場に崩れ落ちる。
 倒れた男を無感動に見下ろしながら、白いコートの男が握りしめていた手を開くと、そこには青白い光を放つ玉のようなものがあった。その玉を白いコートの男は大きく口を開けて一気に飲み込む。それから少しだけ顔をしかめた。
「あまり美味くはないな。だが、無いよりはマシ、か」
 そう呟いてまた周囲をぐるりと見回した。それは次なる獲物を物色しているかのようでもある。
 周囲にいた人々は白いコートの男とその前でいきなり倒れた男とを見比べていたが、やがて白いコートの男の足下に倒れている男が灰化していくのを見て、誰ともなしに悲鳴を上げてその場から三々五々逃げ出していく。
 少しの間白いコートの男は逃げまどう人々を眺めていたが、その内の一人に目をつけるとまたニヤリと笑みを浮かべた。次の獲物を見定めたようだ。今度は先ほどと違って女性。それも結構若く見える。軽く地を蹴って一気にその女性の側まで移動すると、逃げようとしている女性の背に手を押し当てた。
「君の生体エネルギーは美味しいといいなぁ」
 そう言いながら白いコートの男がギュッと拳を握りしめると、女性は急に全身の力を失ったかのようにその場に崩れ落ちる。その身体が急速に灰化していき、その灰を踏みつけながら白いコートの男はその手に現れた青白い光を放つ玉を飲み込んだ。
「フフフ……やっぱり男よりも女の方がいいか。生体エネルギーは女の方が強いしね」
 今度は満足げに頷き、白いコートの男は更なる獲物を求めてまた周囲を見回すのであった。

 結局一晩経っても北川は戻ってこなかった。何の連絡もなしにずっと帰ってこないことなど今まで一度もなかっただけに祐名も一雪も彼の身に何かあったのではないかと心配していたのだが、それでも学校がある以上二人は家で北川の帰ってくる待っているわけにもいかず、仕方なしに出掛けることにした。
「どうしたのかな、おじさん?」
 心配そうに言う祐名。
「大丈夫だとは思うんだけど……きっと仕事だろうし、そんなに心配しなくても」
「うん……どっちかと言うと何処かの女の人にのぼせあげて追いかけ回したあげくストーカーと間違われて警察の厄介になってないかと言うことの方が心配だったり」
「……う〜ん……」
 祐名の言葉に思わず何を言っていいのかわからなくなる一雪。
「冗談、だよね?」
「冗談だよ」
 念のためにそう尋ねてみたら彼女は即答してくれた。だが、その顔からはまだ先ほど言った事がある程度本心であるような感じが伺い知れてしまう。
「……もう少し信用してあげようよ、おじさんの事」
「そう言う一雪だって同じ事考えないでもなかったでしょ?」
 祐名のその質問に一雪は沈黙でもって答えた。どうやら祐名と同じ事を考えないでもなかったようだ。相変わらず信頼されているのかいないのか、微妙な感じである。
 エレベータで一階まで降り、玄関から外に出るとマンションの前に見覚えのある黒いバンが止まっていた。
「よぉ」
 二人が出てくるのを待ってバンから獅堂が降りてくる。いつもと変わらない仏頂面で出てきた二人に声をかけてきた。
「俺の事、覚えているよな?」
 一応彼なりに友好的に話しかけているようだが、二人は揃ってあからさまなまでに警戒した表情で彼を見返していた。
「何か用ですか?」
 先に口を開いたのは祐名の方だった。じっと獅堂の方を見ている視線は、警戒はしているものの決して怯えていたり怯んでいたりはしない。それは一雪も同様だった。全く物怖じしていない目で獅堂を見返している。
「別にお前らに危害を加えようとか言う気はない」
「当たり前ですよ。仮面ライダーが一般市民を襲ってどうするって言うんですか」
 そう言ったのは一雪の方だ。
「ふん、相変わらず小生意気な小僧だな」
 まるで睨み付けるように一雪を見る獅堂。どうやら一晩経つうちに彼の事を色々と思いだしているようだ。
「獅堂さんこそ、相変わらずですよね」
 少しだけ昔を懐かしむような顔をする一雪だが、すぐに顔をしかめた。どうやら獅堂に対してはあまりいい思い出がないらしい。それからぎこちない笑みを浮かべて肩を竦めてみせる。
「それで、何の用ですか?」
 再び祐名が同じ質問を獅堂にした。彼女は獅堂とはほとんど初対面に近い。前に一度助けて貰った事があるが、あの時はほとんど口を聞く間もないまま彼は仲間と共に去っていってしまった。それからもう一度、病院で遭遇した事もあるが、あの時の彼の印象は最悪のものだった。だから警戒を解く事はない。
「お前に用はない。用があるのは小僧の方だ」
 容赦なく言い放つ獅堂。相手に対する気遣いと言うものが全く感じられないその言いように祐名がムッとしたように頬を膨らませる。
「何でそんなにケンカ腰なのよ」
 獅堂の後ろからそんな声がかけられた。何時の間にバンから降りてきたのか、そこにはみことが苦笑を浮かべながら立っている。彼女は獅堂を押しのけるようにして前に出るとまだ警戒の表情を浮かべている二人に向かって微笑みかけた。
「こんにちわ。私の事、覚えてるかしら?」
「あなたは確か……あのビルの時に手当てしてくれた」
 祐名がそう言うと、みことは満足げに頷いた。
「よかった、覚えていてくれたのね」
「それと病院でも一度会ってますよね」
 今度は一雪がそう言う。
「あの時はお世話になりました。お礼、言ってませんでしたよね。もっとも言う前に何処かに行っちゃってましたけど」
 少し毒を含んだ彼の言いようにみことは思わず苦笑を浮かべてしまう。確かに一雪がイナゴ人間に襲われた時にみこと達は彼を助けて応急処置まで施している。だが、イナゴ人間を倒した後、すぐにいなくなってしまっていたのだ。入れ違いで救急車が来たのでその時点で気を失っていた一雪はすぐに病院に運ばれ、大事になる事はなかったのだが。
「もう一人の方には一応お礼、言っておきましたけどね」
 チラリとバンのハンドルを握っている敷島の方を見て言う一雪。
「で、私たち……いいえ、一雪に何の用ですか?」
「うん、ちょっと時間が欲しいから詳しい事は今日の夕方頃にまた来るからその時にね。君、と言うよりも君のお父さんお母さんの研究について聞きたい事があるの」
 祐名の問いにそう答えたみことは自分の後ろで仏頂面をして立っている獅堂を振り返った。無言で頷く獅堂。それを確認してからみことは一雪と祐名の方に向き直る。
「勿論ただとは言わない。私たちが知っている事は全部教えてあげるわ。あなたたちのお父さんとお母さんに多分私は会っているはずだし」
 みことのその発言は二人を驚愕させるに充分な威力を持っていた。そして、この日の夕方、二人の学校が終わった後また会うと言う事を約束させるに充分な拘束力も。

 双子と別れた後、バンを何処へともなく敷島が走らせていると、後部座席に座っているみことが小さく呟くのが聞こえてきた。
「本当によかったのかしらね、これで」
「どう言う事ですか?」
 いつものように助手席のシートにもたれかかり目をじっと閉じている獅堂に変わって敷島が尋ねる。
「敷島君も覚えているでしょう、あの時の事。あれだけの爆発があった中で助かったとは思えない」
「その事実をあの二人に伝えるのはちょっと辛い、ですね」
「だが事実は事実だ。ちゃんと教えてやった方がいいと俺は思う」
 ぼそりと獅堂が言う。
「いつまでも”生きているかもしれない”という変な希望を持つよりははっきりとした事実を教えてやった方がいい。その方があいつらの為だ」
「あら、獅堂君にしたら随分とまともな意見じゃない」
「茶化すな」
「誉めてるのよ。でも、そうね、獅堂君の言う通りだわ。悲しい事実だけど、それをはっきりと伝えて、受け止めて貰わなきゃ。これからはあの二人で生きて行かなきゃならないものね」
 そう言ったみことの声は少し悲しげだった。
 重苦しい沈黙が車内を満たす。しばらくの間、誰も一言も喋りもしなかったが、その重苦しい沈黙を打ち破ったのは敷島がいきなりかけた急ブレーキだった。
「な、何!?」
 いきなりの急ブレーキに思い切りつんのめったみことがそう言った。だが、それに敷島が答えるよりも先に獅堂がシートベルトを外して車外に飛び出していく。
「ちょっと! どうしたのよ、獅堂君っ!!」
 獅堂が飛び出したのを見てすぐさまサーチシステムを確認するみことだが、何の反応も示していない。だが、何もないのに獅堂が飛び出していく事など有り得ない。あるとすれば例の怪物を見つけた時ぐらいだ。
 慌てて身を乗り出して前を見てみると獅堂は白いコートを着た一人の男と対峙していた。まるでネガとポジであるかのように、獅堂の黒いコートに対する白いコートの男。その顔には何やら楽しそうな笑みが浮かべられている。
「さぁ、君が最後の仮面ライダーだ」
 白いコートの男がそう言ってゆっくりと手を挙げる。
「他の二人と同じく楽しませてくれよ」
「俺を他の奴らと同じだと思うな。怪我をする事になる」
 獅堂は白いコートの男を睨み付けながら、コートの下に隠していた大型ナイフを取り出した。そのナイフを逆手に構え、少しずつ白いコートの男との距離を詰めていく。彼の顔にはいつになく緊張の色が滲み出ていた。
 この白いコートの男には一度会っている。一雪や祐名の学校にゴリラの怪物が現れた時の事だ。あの時、この男から感じたのは圧倒的な力の差。今もそれを感じているが、ここで退くわけにはいかなかった。
 それに先ほどこの男が口にした言葉も気にかかる。自分が最後の仮面ライダーとか他の二人とか。少なくても一人は誰の事かわかっている。だが、他にもう一人仮面ライダーがいると言う事を彼は知らない。もしかしたらあの時の生き残りの仮面ライダーがいるというのか。それを問うたところで答えてはもらえないだろう。それにあの口振りからすればその二人のライダーを倒してきたと言う事になる。そしてこれから自分をも倒すつもりなのだろう。
(そう簡単にやられてたまるか……)
 ナイフを構え、相手の隙をうかがう獅堂。その頬を汗が伝い落ちていく。極度の緊張による汗だ。
 それに対して白いコートの男は涼しい顔をして立っているだけ。片手を獅堂の方に向けながら、ただ、立っている。まるで彼が向かってくるのを待っているかの如く。
「さぁ、来るがいい。楽しもうじゃないか、お互いに」
 挑発的に笑い、そう言う白いコートの男。
 それを見た獅堂が地面を蹴って駆け出した。一気に距離を詰めると右の回し蹴りを放つ。白いコートの男が半歩だけ足を引いてその回し蹴りをかわすが、獅堂としてもそれは織り込み済みだった。かわされた足が地面につくと同時にもう片方の足が跳ね上がっていく。後ろ回し蹴り。更にそれもかわされるが、今度は右手に持ったナイフで白いコートの男に斬りかかっていく。
 これは流石にかわしきれないと思ったのか白いコートの男はさっと手を伸ばして獅堂がナイフを持っている右手の拳を受け止めた。白いコートの男がその手をくるりと回すと獅堂の身体が宙を舞う。それほど力を入れていたようには見えなかったが、それでも獅堂の身体は軽々と宙を舞ってしまう。
「ぬおっ!?」
「フフフッ!」
 楽しそうに笑いながら白いコートの男が宙を舞った獅堂を追いかけるようにジャンプした。まるで空中に浮かんだボールを蹴り飛ばすかのように獅堂の身体を蹴り飛ばす。
「ぐおっ!!」
 身体を九の字に折り曲げながら吹っ飛ばされる獅堂。バンのすぐ側まで吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。だが、すぐに起きあがり着地したばかりの白いコートの男に向かって駆け出した。そして、白いコートの男に向かって跳び蹴りを放つ。
 コートの裾を翻しながら獅堂の跳び蹴りを受け流す白いコートの男。そのままの勢いを利用して獅堂の後頭部に向かって後ろ回し蹴りを叩き込もうとする。
 すぐさまその場にしゃがみ込み、その蹴りをかわした獅堂が立ち上がりながら裏拳を白いコートの男に叩き込もうとした。だが、その一撃は白いコートの男に受け止められてしまう。すかさず白いコートの男がその手を掴もうとしてきたのを、腕を上に挙げる事でかわした獅堂は残るもう片方の拳を握り込んで相手の顔面に叩き込んでいった。が、そのパンチも白いコートの男は受け止めてしまった。そしてその手を放すと同時に獅堂の胸に蹴りを喰らわせてくる。
 白いコートの男の蹴りを受けて思わずよろめきながら後退してしまう獅堂。そこにコートの裾を翻しながら叩き込まれる白いコートの男の左腕。吹っ飛ばされながらも何とか踏みとどまった獅堂はすぐさま手に持ったナイフを一閃させて、白いコートの男が近付いてくるのを阻止した。
 右手に持ったナイフを突きだし、余裕綽々と言う感じの白いコートの男と対峙する獅堂。口内にたまった血を吐き出し、相手の隙をうかがってみるが何処にもそのようなものは見当たらない。
「フフフ……どうした、変身しないのか?」
 白いコートの男がそう言ってニヤリと笑った。この様子から変身したところで獅堂など相手ではないと思っているのだろう。事実、獅堂とこの白いコートの男との実力差はかなりのものだ。変身したところでそれが埋まると言う事はない。
「変身せずに嬲り殺される方がいいのか?」
 そう言いながら一歩前に踏み出してくる白いコートの男。
「くっ……」
 獅堂は思わず一歩後ずさってしまっていた。知らず知らずのうちに白いコートの男が発する気に圧倒されてしまっているのだ。彼の頬を冷や汗が伝い落ちる。
 そんな獅堂の様子を見て、白いコートの男はまたもニヤリと笑い、指をパチンと鳴らした。次の瞬間、衝撃波が巻き起こり、獅堂の身体を吹っ飛ばしてしまう。
「うおおっ!!」
 大きく吹っ飛ばされ、またしても地面に叩きつけられてしまう獅堂。
「フフフ……さぁ、早く変身しなよ。そうでないと面白く無いじゃないか」
 白いコートの男はそう言って悠然とした態度で倒れた獅堂を見下ろしている。
 獅堂はゆっくりと身を起こすと手に持っていたナイフを地面に突き立てた。そして、やはりゆっくりと立ち上がっていく。ベルトに引っかけているゾディアックガードルを取り出した。それを腰にあてがうとゾディアックガードルの左右からベルトが伸び、固定される。続いて取り出したのはカードリーダーと一枚のカード。そのカードをカードリーダーに挿入する。
『Zodiac Rider System Preparation Start』
 聞こえてくる機械的な合成音。
「変身っ!!」
 そう言って獅堂はゾディアックガードルにカードリーダーを差し込んだ。
『Completion of an Setup Code ”Leo”』
 カードリーダーが差し込まれると同時に機械的な音声が流れ、ゾディアックガードルから光が放たれる。その光は獅堂の前に光の幕を作り出した。そこに輝く獅子座を象った光点。その光の幕に向かって獅堂は駆け出し、そこを通り抜けた彼の姿は仮面ライダーレオへと変わっていた。
 仮面ライダーレオが白いコートの男に向かって突っ込んでいく。
 自分に向かって一直線に突っ込んでくるレオを見ながら白いコートの男は心底楽しそうな笑みを浮かべ、その本当の姿を現していく。白き翼を持つ白馬の怪人、ペガサス怪人へとその姿を変えていく。
「死んで貰うぞ、仮面ライダー!!」
 ペガサス怪人がそう言って背中の翼を広げて宙に舞い上がる。
「ウオオオオッ!!」
 そのペガサス怪人に向かってジャンプするレオ。

This Story was Completed!
To be Continues Next Episode!

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