とあるデパートの屋上遊園地。
そこで梟の怪物と仮面ライダータウロスが戦っている。だが、空中から襲いかかってくる梟の怪物に対してタウロスは苦戦を強いられていた。タウロスアックスと言う武器があるものの、空を飛ぶことが出来ないタウロスは空中からの攻撃と離脱を繰り返す梟の怪物をどうにも上手く捉えることが出来ていない。戦闘に対する経験不足と言うのもあるが、それ以上に仮面ライダータウロスには対空中、対高機動戦闘の能力が欠けているのだ。タウロスはパワー型、力押しで相手を打ち砕くのには適しているが、素早さを前面に押し出すような相手とは非常に相性が悪いのだ。
「くそっ、ちょこまかと!!」
タウロスが物凄い勢いでタウロスアックスを逆袈裟で振り上げるが、梟の怪物はそれを楽々とかわしてしまう。そして大振りの為に出来た隙を狙っては急降下攻撃をタウロスに加えていく。
何とか梟の怪物の足に生えた鋭い爪での攻撃をタウロスアックスで受け止めたタウロスは、そのまま両手を押し出し、梟の怪物を突き飛ばそうとした。だが、それよりも早く梟の怪物は空へと舞い戻っている。
タウロスが悔しそうに空にいる梟の怪物を見上げた。
「テメー、この野郎! 降りてきやがれっ!!」
起こったようにそう怒鳴りタウロスアックスを振り上げるタウロスだが、梟の怪物はそんなタウロスを一瞥しただけだった。
このままではあの仮面ライダーに邪魔されるだけでエネルギーの補給もままならない。ここは一旦退くことにしよう。そして邪魔の入らない場所でエネルギーの補給を行うのだ。そう考えたのか、梟の怪物は未だに怒鳴っているタウロスに背を向けるとそのまま彼方へと飛び去っていった。
「こらー!! 逃げてんじゃねぇぞ!!」
飛び去っていく梟の怪物に向かってそう叫ぶとタウロスは、手に持っていたタウロスアックスを降ろし、後ろを振り返った。
そこには自分をじっと見つめている卯月みことと敷島慎司、そして自分に向かって頭を下げている屋上遊園地の女性係員と興味深そうにこっちを見つめている子供達の姿があった。
「あー……大丈夫なようで何よりだ。それと髪の毛、悪い事したな」
ちょっと居心地悪そうにタウロスがそう言い、歩き出す。女性係員の肩に手を置き、軽く頭を下げる。助ける為に仕方なかったとは言え、髪の毛は女の命とも言う。それを切り飛ばしたのだから、何とも申し訳ない気がしていたのだ。
「あ、いえ、大丈夫ですから、これくらい」
女性係員が切られて不揃いになった髪の毛に手をやって答える。
「ねーねー」
不意に子供達の一人がタウロスに手を伸ばしてきた。
「おじさん、誰?」
「ん? おじさんはな……」
率直な質問をぶつけてきた子供にタウロスは少し前屈みになって答える。
「おじさんは、仮面ライダーさ」

仮面ライダーZodiacXU
Episode.07「第三のライダー―The third rider―」

デパートから出てきた北川 潤が路上に停めてあった大型バイクに歩み寄ろうとすると、後ろから彼を追いかけてきていたみことが彼の肩を掴んで引き留めた。
「ちょっと待って!」
「あん?」
振り返る北川。特に驚いている節はない。どうやら彼女が追いかけてくることを予想していた感じである。
「何か用か?」
「聞きたいことがあるの」
真剣な表情を浮かべてみことが言うと、北川はニヤリと笑みを浮かべてみせた。どうやらこれも彼の予想の範疇にあったようだ。
「ああ、いいぜ。こんな所じゃなんだから、何処か場所を変えるか」
北川はそう言って周囲を見回した。この辺りはあまり来ないのだが、探せば喫茶店の一つや二つあるだろう。そう思って歩き出そうとすると、みことが彼を引き留めた。
「美味しいコーヒー飲ませてくれるところ知ってるんだけど、どうかしら?」

そして北川が案内されたのは都内にあるとある雑居ビルの3階にある事務所だった。
おそらくは安物であろうソファに座って待つこと5分、淹れたてのコーヒーを持った敷島がそこにやってきた。どうも北川に苦手意識でも持っているらしく、その表情は何処かびくびくしているような感じである。
「え、えっと、砂糖とミルクは?」
「ああ、自分でやるから気にしないでくれ」
出されたコーヒーは湯気が立ち上り、いい匂いがしている。どうやら豆はそれなりのものを使っているようだ。インスタントではこの香りは出せないだろう。
「むむっ……なかなかやるな」
一口飲んでみて、思わず唸ってしまう。この味は下手な喫茶店のよりもかなり美味しい。これなら喫茶店開いて充分金が取れる。まさかこんな所でこんな美味いコーヒーが飲めるとは思わなかった。
「どう。敷島君のコーヒー、そんじょそこらの喫茶店なんか目じゃないでしょ?」
随分自慢げに言いながらみことが奧からやって来た。手にはラップトップのパソコンを持ちながら。
「何でお前さんがそう自慢げなのか俺には疑問だが、確かにこのコーヒーは美味い。それは認めよう」
コーヒーカップをテーブルの上に置きながら北川はそう言い、正面に座ったみことを見やる。よく見るとなかなか美人だ。しかも知的クール系の美女。北川的にはかなり好みの部類に入るだろう。だが、こう言うタイプは得てして他人をあまり近付けさせない。昔の知り合いに一人、こう言うタイプの美人がいたが結局アプローチしても軽くあしらわれただけだったので恋人になることは諦めた。ここ最近連絡は取っていないが、今でもいい友人として付き合いは続いている。そう言えばここしばらく連絡を取ってないが元気にしているだろうか。元気ではいるだろう。だが、今どこで何をしているかまでは彼にもわからない。最後に会った時には何処か海外に行くと言っていたような気がするのだが。
「どうかしましたか?」
じっと自分を見つめたまま固まってしまった北川を不審に思ったのか、みことは少し顔をしかめながら尋ねた。
「ああ、いや、ちょっとな」
誤魔化すようにそう言い、北川は手を振ってみせた。まさか彼女を見ていて昔の憧れの人を思いだしていたなどと言うわけにもいかない。それは何となく彼のプライドが許さなかった。
「それで――何を聞きたいんだ?」
「単刀直入に言うわ。どうしてあなたが変身出来るの?」
みことがそう切り出すのを北川は黙って聞いている。
「あれは――ゾディアックライダーシステムは門外不出のものよ。私が知っている限り完成していた分は獅堂君の分を合わせても4つ。その内の3つはあの時に失われたはず……それなのにどうして?」
少しの間北川は黙っていた。そう簡単に彼女たちを信じていいものかどうか。以前彼女たちに何度か助けられてはいるが、それはあの怪物共を倒す過程でのこと。別段あの怪物を倒しさえすればよかっただけで、彼らを助けてくれたのは偶然なのかも知れない。特にあの獅堂という男はそう言う匂いをぷんぷんさせている。
「まずはお前らが何者かを聞いてからだな。そうでないと信用出来ない」
考えた末に北川はそう言った。
「ちなみに俺はこう言うものだがな」
さっと上着の内ポケットから名刺を取り出し、テーブルの上に投げる。その名刺は回転しながらテーブルの上を滑っていき、みことの前で停止した。
なかなか器用なことをする、と思いながら名刺を拾い上げるとそこにはただ「北川 潤」と言う名前だけが書かれており、その横には彼の携帯であろう電話番号が書いてあるだけだった。
「北川 潤……職業は一応ルポライター。他にも色々とやっているようだけど、ここでは割愛させて貰うわ」
「なんだ、知ってるんじゃないか」
「そっちの業界じゃそこそこ有名なようだからね。調べたらわかるわ」
名刺をテーブルの上に置き、みことはラップトップパソコンを開いた。モニターに北川のプロフィールの乗った画面を表示させてから、パソコンを彼の方に向ける。
モニターに映し出された自分のプロフィールを見て北川は思わず「ヒュー」と口笛を鳴らしてしまった。
「何ともまぁ便利で怖い時代になったもんだねぇ」
こうもあっさりと自分の情報を相手に知られてしまう。知りたい方は便利でいいのだが、知られる方としてはたまったものではない。だから北川は複雑な笑みを浮かべて答えるのだった。
「こっちのことを知っているなら話は早いよな。じゃ、次はそっちの番だ」
手を伸ばして名刺を取りながら北川はそう言う。
「っと、先に言っておくがだんまりは無しにして貰うぜ。そっちが素性を明かさないんだったら話はこれでお仕舞い、俺は帰らせて貰うぜ」
「……わかったわ」
みことはそう言うと北川の方に向けていたパソコンを自分の元へと引き寄せた。そして素早くキーボードを操作し、今度は自分のプロフィールの乗った画面をモニター上に映し出す。
「私は卯月みこと。このUSSリサーチの一応所長よ」
みことはそう言ってまたモニターを北川に向ける。
「彼は敷島慎司。ここの調査員兼雑用係」
ちらりと後ろを見てみことがそう言うと、そこに所在なげに立っていた敷島がぺこりと頭を下げた。
「本当なら後一人いるんだけどね。獅堂 凱。やっぱりここの調査員。今はちょっといないけど」
「……それが今のお前らの立場って奴か?」
あからさまに不審そうな顔をして北川がそう言うと、みことは無言で頷いた。どうやらこの男、自分達について何かを知っているらしい。これは隠しても無駄だと判断したのだ。
「本当はとある研究所の職員だったんだけどね。ちょっとした事故で」
「隠すなよ。あの化け物共に襲われたんだろ?」
みことの言葉を遮るようにそう言い、北川はじっと彼女を見つめる。本当のことを話せ。そうでないなら協力はしない。その視線がそう語っている。
「……あんまり思い出したくない記憶なんだけど」
「確認だよ。どうせ知っているんだろうが、俺は今友人の子供を二人預かっている。その二人は、あの日お前らと同じ研究所にいて命からがら逃げ出してきた」
彼女が思い出したくないと言う気持ちは北川にもわかる。彼が預かっていると言う友人の子供達もあの研究所で恐ろしい目にあってきたのだ。話を聞いただけの北川だが、二人の、特に少女の怯えようは異常なほどだった。そして、それから彼女はあの時の話を一切口にしなくなっている。おそらくはみことも同様の経験をしたのだろう。
「俺が知りたいことは幾つかあるが、とりあえずまず一つ目。あの日、一体何が起こってああ言うことになったんだ?」
「……それは」
「それは僕達が知りたいぐらいですよ! もう何が何だか解らないまま、怪物に襲われて、僕も卯月さんも逃げるの必死でしたし」
みことを遮るように敷島がそう言った。彼は駐車場にいただけだが、何体もの怪物の姿を目撃している。よくあの場で襲われなかったものだ。そう考えるともしかしたら彼は物凄く運がいいのかも知れない。
「次はお前さんだ。お互い聞きたいことがあるんだ。俺が一方的ってのも悪いからな」
そう言って北川はコーヒーカップを手に取った。少し冷めてしまっているが、まだ充分に美味しい。
「始めに聞いたのと同じ質問をするわ。どうしてあなたはゾディアックガードルを持っているの?」
「あっさりと答えるとこうなる。送りつけられた。以上」
みことは本当にあっさりとした北川の返答に思わず面食らっていた。送りつけられた? 一体誰に? しかもなんの関係もない一般人である彼にどうして? 頭の中に疑問が次々と沸き上がる。
「ちょ、ちょっと待って! それはどう言う」
思わず腰を浮かしかけるみことをすっと手を突き出して制止する北川。
「質問は一つずつ、交互にだ。さて、俺が聞きたいことその二はあの怪物達は一体何なんだって事だが」
「それは……私達も詳しいことはわからないわ」
浮かしかけた腰を改めてソファの上に下ろし、みことはそう答えた。
「もっと上の人なら知っていたんでしょうけど……それにあの火事で資料もほとんど焼けちゃって」
「わかる範囲でいい」
「私が知っているのはあの怪物達は全部で108体いるって事。それぞれ水滸伝に出てくる108の星の名前で呼ばれていて、人間を襲って活動エネルギーの補給をするって事ぐらい」
「なるほど」
思ったほどの情報は手に入らなかったがそれでも相手の総数がわかっただけでも充分マシだというものだ。しかし、これだけではどうしてあの怪物同士が戦っていたかわからない。その辺のことを聞いてみようとする北川だが、それよりも先にみことがすっと人差し指を立てた手を突き出してきた。
「今度はこっちの質問、ですよね?」
「ああ、そう言えばそうだったな」
ニコッと笑うみことに北川は苦笑を返した。
「あなたにゾディアックガードルを送ってきた人物は誰ですか?」
「その質問から考えるにどうやら送ってきたこと自体、独断のようだな、あいつの」
「そりゃまぁ、ゾディアックガードルはまだ4つしか完成してなかったわけですし、その内の一つを意味もなくあなたに送ったわけでもないでしょうし」
「送ってきた理由はわかってるんだ。で、誰が送ってきたかだったな。だいたい見当ついているんじゃないか?」
探るように相手の目を見ながら北川は言う。段々とこのやりとりが面白くなってきた。まるでポーカーでもやっているような気分だ。
「……相沢主任研究員……違いますか?」
少し考えた上で、みことは言った。
北川が預かっている子供二人、相沢祐名と相沢一雪。あの日研究所に来ていたかどうかまでは知らないが、あの二人と北川が繋がっている以上、考えられるのは彼しかいない。それに彼ならばゾディアックガードルを持ち出すことも不可能ではない。何せ開発者の一人なのだから。
「へぇ、あいつ主任研究員だったんだ。そりゃ結構いい暮らししてるわけだ」
北川はそう言いながら親友の住んでいた家を思い出していた。何度か遊びに行ったことがあるが、結構広い家だったことを覚えている。子供達二人の部屋に自分の書斎まで完備していたのだから。
「それは肯定と受け取ってもいいんですか?」
「おお、悪い悪い。まっ、そう言うことだな」
ちょっと曖昧な返答をした北川にみことが少しムッとしたような顔を向けると、彼は我に返ったように頷いた。
「さて次は俺の方の質問だが……」
そこまで言って北川はポケットの中で携帯電話が震えていることに気がついた。
「ちょっと失礼」
ポケットから携帯電話を取りだしてみると、どうやら同居人からの電話のようである。無視すると後々五月蠅そうだ。そう思って通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『おじさん! ちょっと聞いて!!』
いきなり物凄く不機嫌そうな少女の声が飛び込んできた。何か物凄く怒っているような気がしないでもない。勿論北川には心当たりはないのだが、何となく焦ってしまう。
「ど、どうしたんだ、祐名?」
何となく焦ってしまったせいか、少しどもってしまった。
『もう信じられないの! 一雪ったらね……』
少女の説明は彼女自身怒りのあまり興奮しているせいか、あんまり要領を掴めなかったが要は受け取らないでもいいようなお金を受け取ってしまった双子の片割れに対して怒っているらしい。それについて北川の方から諭してやって欲しいというものだった。
「わかったわかった。もうちょっとしたら帰るから待っててくれ」
そう言って電話を切ると北川は自分の方を見ているみことに向き直った。
「すまんな、急用が出来た」
「みたいね」
「まぁ、何て言うか、一応あいつらの親が出てくるまでは俺が親代わりなんでな」
「結構お似合いじゃないかしら?」
笑顔のみことに北川は苦笑を浮かべる。
「嫌味かよ。まぁ、とりあえず続きはまた今度って事で」
「そうね。あ、最後に一つだけいいかしら?」
立ち上がりかけた北川にみことが思い出したかのようにそう言って彼を引き留めた。そうしておいて、でも、みことはちょっとだけ躊躇ってしまう。果たしてこの事を言ってもいいのかどうか、判断が今一つだったからだ。
「俺の電話番号ならホレ、名刺に書いてあるぜ」
北川が一度仕舞った名刺を再び取りだし、テーブルの上に置く。だが、みことは首を左右に振った。
「……やっぱり話しておくわ。うちの獅堂君、あなたも知っていると思うけど」
更に少しだけ間をおいてから彼女が切り出した。
「ああ、あのやな野郎だな」
何時もつっけどんな獅堂の顔を思い出しながら北川が頷く。
「その獅堂君が何日か前から行方不明なの」
「……おい」
「何かしら?」
「何でそんな重要なこと黙っていたんだよ!!」
一瞬みことが言ったことの意味がわからなかった北川だが、その意味を理解すると思わず怒鳴ってしまっていた。
獅堂が行方不明と言うことは、今現在あの怪物達と戦えるのは北川一人だけと言うことになる。デパートの屋上遊園地に現れたあの梟の怪物に北川の変身する仮面ライダータウロスはかなりの苦戦を強いられた。これがもし、獅堂の変身する仮面ライダーレオならもっと別の戦いようがあったはずで、彼なら案外あっさりと勝てていたかも知れないのだ。そう思っていただけに獅堂が行方不明などと言うことはまさしく青天の霹靂とでも言うしかない。
北川は思わず呆然としたままその場に立ち尽くしてしまうのであった。

新東京国際空港から都内へと至る高速道路を一台の高級車が走っている。
運転しているのは品の良さそうな年輩の男、高見沢。後部座席には彼が使えるべき主人である倉田佐祐理とその子供達が座っている。
「それで母上、ヨーロッパ視察の方はいかがでした?」
「なかなか楽しかったですよ、一馬さん」
息子である一馬の問いに微笑みながら答える佐祐理。
一馬が覚えている限り、この母親の顔から笑みが消えたところを見たことがない。常に優しげな微笑みを浮かべている。何時いかなる時も。その顔から微笑みが消えたことなど一度もない。
「舞耶さんもよくしてくれましたし」
佐祐理はそう言って隣に座っている無表情な美少女の方を見やった。
母である佐祐理が常に微笑みを浮かべているのと同じように、この美少女は何時いかなる時も眉一つ動かしたことがないほどの無表情だ。一馬もかなり長い付き合いになるが彼女が笑ったところなど見たことがない。
「本当ならば私よりもお兄様が行くべきだったと思いますわ。K&Kの次期社長はお兄様でしょう?」
「たまには気晴らしになっていいと思ったんだがな。余計だったか、俺の気遣いは?」
「私にそのような気遣いは無用と何時も申し上げているはずですが」
あくまで無表情のまま美少女が言う。
「それに今回のヨーロッパ視察、あのスケジュールは一体なんですか。あれでは視察という名目のただの観光旅行ではないですか」
ほんの少しだけ眉を寄せ、責めるように一馬を見る美少女。
「だから気晴らしと言っただろう。これは母上も承知のことだ。だいたいお前は何時も気張りすぎだ。少しは力を抜いてもいいだろう」
呆れたように肩を竦める一馬だが、美少女はそれでも不服そうにそっぽを向いてしまった。
「舞耶さん、一馬さんを責めるのはその辺にしておいてあげましょう。一馬さんもあなたのことを思ってしてくれたことなのよ。少しは感謝してあげないと」
「お母様はお兄様に甘いですわ。だいたい私達を日本から追い出している間に何をしていたやら」
佐祐理が美少女の肩に手を置いてそう言うが、美少女はそっぽを向いたままそう答える。もっとも彼女の視線は顔を向けている窓越しに兄である一馬の方に向けられていたが。
彼女はこの兄である一馬のことが余り好きではないようだ。何を考えているかわからないところが彼にはある。彼は笑顔を浮かべたまま平気で人を陥れるような、そんな不気味なところがあるのだ。だからどうにも信頼が置けない。
「ああ、そう言えば。例の研究所の件ですが」
急に思い出したかのように一馬がそう言い、横に置いてあった鞄の中から一冊のファイルを取りだした。
「この間ようやくサンプルを入手することが出来ました。今解析と開発をやらせています」
そう言った一馬の口調は部下が上司に報告をする時のものになっている。今、この時は一馬は佐祐理の息子ではなく、佐祐理は一馬の母ではない。佐祐理はK&Kインダストリーの社長であり、一馬はまだ高校生ながらその一部門を任されているエリート社員なのだ。
「……ご苦労様です」
やはり微笑んだまま佐祐理は答え、一馬の手からファイルを受け取った。
一瞬だけ佐祐理の微笑みが翳りを帯びたのを一馬は見逃さなかったが、何も言おうとはしない。否、何も言えなかったのだ。あの研究所に母は何故か妙に入れ込んでいたのを知っているからだ。
使えるかどうかもわからない得体の知れない技術の研究、一馬からすれば馬鹿馬鹿しいことこの上ないが、母は何故かその研究所に対する資金の投入を止めなかった。まるで何かに取り憑かれていたかのように。
母には悪いのだが、あの研究所が壊滅してくれて一馬は清々している。いずれ自分がK&Kインダストリーの社長になったらあの研究所に対する資金投入はすぐに止めさせ、あの研究所も閉鎖させるつもりだったのだ。何処の誰、いや、一体何者かは知らないがあの研究所を襲撃してくれたことに内心感謝すらしている。もっとも研究所壊滅後はすぐに人をやり、その研究データの流出を防ぐための措置を執ってあったが。
先程佐祐理に渡したファイルは研究所壊滅後に集められるだけ集めた例の研究所で研究されていたものについてのデータである。勿論全てではない。かなりの量が焼失、または紛失しているだろう。だが、そんな事は構わない。こんなファイルよりも、今はもっと重要なサンプルが一つ手に入っているのだから。
「……それで、あの研究所の人員の生き残りの方は?」
ファイルを読みながら佐祐理が問う。
「残念ながら」
短くそう答える一馬。
だが、これは嘘である。研究所が襲撃された時、あそこにどれだけの人員がいたのかは不明だし、中には上手く脱出した者だっているだろう。それ以上に、一馬にとってそんな事などどうでも良かったのだ。
「そう、ですか」
珍しく佐祐理が落胆したような声を出した。そしてファイルを閉じる。
「一馬さんは……このファイルを見てどう思いましたか?」
「初めは冗談だと思いましたが、実際に例の怪物を見て考えを改めました。出来るならば量産して……」
「軍事転用、ですか、お兄様?」
今まで黙っていた美少女が不意に口を挟んだ。相変わらず無表情のままだが、こちらをからかっていることがその口振りからわかる。
「黙っていろ、舞耶。今は母上と大事な話をしているんだ」
美少女を睨み付ける一馬。
だが、そんな事で美少女はひるみはしない。
「ならば私のいないところでそのお話をするべきでしたわね。こんな狭い車の中ではなく」
より挑発的に美少女はそう言い、兄を見やる。実際のところ車内は普通の車よりも遙かに広いのだが、美少女はそれをあえて狭いと言い放った。一体普段どんな車に乗っているというのだろうか。
「舞耶さん、よしなさい」
佐祐理がやんわりと娘をたしなめる。
「申し訳ありません、お母様。出しゃばりすぎましたわ」
やはり無表情のまま美少女はそう言い、またそっぽを向いてしまう。
「一馬さん、後は屋敷に帰ってからお伺いすることにしますわ。それでよろしいかしら?」
「わかりました」
母であり上司でもある佐祐理にそう言われては一馬も従うしかなかった。だが、余計な茶々を入れた妹を睨み付けることは忘れない。

マンションまで帰ってきた北川がドアを開けると中から言い争う声が聞こえてきた。その口調は互いにかなり激しく、ついには「殺してやる!!」という声まで聞こえてきた。
慌ててリビングに飛び込んでいく北川。
「ま、待て! 早まるな、お前ら!!」
そう言ってドアを開けると、そこにはテーブルに肘をついた姿勢でぼんやりとしている一雪とテレビの前に置いてあるソファにもたれかかってクッションを抱きしめている祐名の姿があった。別段二人が言い争っている風ではない。
「……あら?」
思わず目が点になってしまう北川を一雪と祐名が疲れ切った表情で見やる。
「あ、お帰り、おじさん」
「お帰りなさい」
二人が口々にそう言ったので北川は訳がわからないといった顔をしながらも頷いた。
「お、おう、ただいま」
何か釈然としないものを感じながら北川が自分の書斎兼寝室に向かおうとすると後ろからまた言い争う声が聞こえてきた。はっとなって振り返ってみると、どうやら声は祐名が見ているテレビからのようだった。再放送のサスペンスものらしい。男女の仲のもつれからどうのこうのと言う作品のようだ。
「……紛らわしい事しないでくれよ……」
思わずガックリと肩を落としてしまう北川。安心したようなそうでないような複雑な心境のまま、とりあえず自室に入り、室内着に着替える。あの二人にゾディアックガードルを見つかってはならないため、ベルトから外し、ベッドの下に放り込んでからリビングに戻った。
「さて、それじゃ話を聞かせて貰おうか」
一雪が肘をついてぼんやりしているテーブルにまでやって来た北川がそう言うと、二人が同時に彼の方を見た。二人して何を言っているのだろうと言う顔をしていたが、先に祐名の方が思い出したらしく、ポンと手を打った。
「ああ、あの話だね」
「あの話?」
どうやら一雪はまだ思い当たらないらしい。一人首を傾げている。
「ほら、おじさんが帰ってくる前まで話してたでしょ」
「……ああ、あれか。あれは話してたって言うんじゃなくって祐名が一方的に僕を責め立てていたって言わない?」
「一雪が聞き分けないからでしょ」
「……もう蒸し返さないで」
ようやく話の内容を思いだしたらしい一雪はそう言うとテーブルの上に突っ伏した。どうやら相当凹んでいるらしい。一体北川が帰ってくるまでにどう言った感じの話し合いが二人の間に持たれたのだろうか。何にせよ、勝者は祐名のようだ。
「何だ、もう終わってたのか?」
「一応ね」
すっかり拍子抜けと言う感じの北川に一雪が短くそう答えた。
「もう二度と祐名とは口喧嘩はしないことに決めた」
ボソリと呟く一雪。幸いと言うか、祐名はテレビに夢中だったのでその声は届いていない。
「まぁ、口で女に勝てる男ってそうはいないからな」
一雪を慰めるように北川がそう言う。
「俺も昔はなぁ……」
何か昔を懐かしむように目を閉じて語り出す北川。
祐名との口喧嘩に疲れ切っていた一雪はテーブルに突っ伏したままだったし、祐名もテレビに夢中だったので誰一人として北川の語りを聞いていなかったが。

それから数日は何事もない日が続いた。
祐名に連れられた一雪が例のお金を返そうと一馬に会いに行ったが彼は登校しておらず会えなかったとか、北川が例の雑居ビルにある事務所に入り浸り色々と情報交換に勤しんでいたり獅堂探しに付き合っていたりと言うことはあったのだが、例の怪物達もまったく現れず、平和な日が続いている。
一雪と祐名が会いに行った倉田一馬は学校にも登校せず、何時か獅堂を運び込んだ病院のような建物に母親であり上司でもある佐祐理を伴って訪れていた。
前にここを訪れたのがだいたい1週間前。あの時、獅堂のゾディアックガードルをとある研究員に預け、1週間以内に解析し、これを越えるものを作っておけと命じておいた。今日がその約束の日なのだ。もし出来ていなければあの研究員は即刻クビにする。役に立たないものは必要ない。一馬は本気でそう考えている。
佐祐理が座っている車イスを押しながら一馬は無言で例の研究室へと向かっていく。正直な話、彼は母をあの研究室には連れて行きたくはなかった。あの汚い研究室に母を連れて入るのも嫌だし、あのおべっか使いの研究員に会わせるのも嫌だった。だが、佐祐理の方から同行を申し渡された以上、断ることは出来なかったのだ。
「ここです」
ようやく目的の研究室に辿り着き、一馬は車イスから手を離した。そしてドアをトントンとノックする。中から返事はない。もう一度ノックしてみるが、やはり中から返答は返ってこなかった。
今日が約束の日だと言うことは向こうもわかっているはず。にも関わらずこの態度、なかなかいい度胸をしていることは認めてやろう。内心ムッとしながら一馬は電子ロックを外し、ドアを開けた。その状態では室内の照明は消えてしまうらしく、中に人がいるのかどうかは定かではない。そっと中を覗いてみても薄暗くて何もわからなかった。
「……母上、少々お待ち下さい」
一馬は佐祐理にそう言うと、そっと室内に足を踏み入れた。彼の後ろでドアが自動的に閉まり、次いで室内の照明がつく。相変わらず乱雑に置かれた様々な機械。床にはコードが這い回り、これでは佐祐理の車イスを中に入れることは出来ないように思われる。
「矢野! いたら返事をしろ!!」
不機嫌さを隠しもせずに中に向かって怒鳴る一馬。すると、奥の方からがさごそと物音が聞こえてきた。機械の影から少しやつれた顔の男が姿を見せる。髪はぼさぼさ、ヒゲも伸び放題、着ている白衣もよれよれで薄汚れている。どうやら1週間と期限を切った所為で、この男はずっとここに詰めっきりだったのだろう。これだけボロボロになりながらも、男は一馬の姿を見るとニヤリと笑ってみせた。
「これはこれは若様、この様な薄汚い場所へようこそ御出くださいました」
慇懃無礼な口調でそう言い、恭しくお辞儀する白衣の男。
「……ずっとここにいたのか?」
「若様から与えられた使命を果たすのがこの私の役割ですからね」
「フン……それで、出来たのか?」
「もちろんでございます。ささ、どうぞこちらへ」
白衣の男がそう言って一馬を手招いたので、そっちへ行ってみると作業机の上にアタッシュケースが二つ並べられていた。片方はこの男に一馬が渡したアタッシュケース、もう片方は見覚えのないアタッシュケース。
「こちらにございます」
白衣の男が一馬にとって見覚えのない方のアタッシュケースを取り上げ、開いてみせた。そこに納められていたのはゾディアックガードル。獅堂や北川の持つものとは少しデザインが違うがまさしくゾディアックガードルであった。
「……使えるのか?」
少しの間ゾディアックガードルを見つめていた一馬が鋭い視線を白衣の男に向ける。外側などどうでもいい。問題は中身だ。このゾディアックガードルが使えなければ何の意味もない。
「実験はまだでございますが、大丈夫だと思っております。何せオリジナルのものを完全にコピーし、より洗練させたものがこれですから」
白衣の男が自信たっぷりに笑みを浮かべる。
この白衣の男、人間としてはとても好きにはなれないし、どっちかと言えば付き合いたくないタイプだが、その才能だけは本物だ。だからこそ、こうして個人で研究室を与えられている。だからおそらく大丈夫なのだろう。一馬は頷くと白衣の男にそのアタッシュケースをこちらに渡しように手を出した。
開いていたアタッシュケースを閉じ、白衣の男はその自信作を彼に渡す。
「……これの量産は出来るか?」
「すぐに、と言われますとちょっと困りますが。それを作るにはかなり特殊なものが幾つも必要となりますので」
「……わかった。オリジナルの方は引き続きお前に預けておく。更に改良、そして量産が最終的な目的だ」
「わかりました、若様」
一馬の言葉にわざわざ大仰に頭を下げてみせる白衣の男。だが、一馬は既に彼には興味が無いと言う風に研究室から出ていってしまっていた。
「フン、若僧が……いい気になるなよ」
頭を上げつつ白衣の男がキラリと目を光らせた。何時までもこんな屈辱――自分よりも若く、そして才能もないのに家柄だけで自分よりも偉い立場にいる奴に使われる屈辱に甘んじている自分ではない。このゾディアックガードル、通常のものよりも、そして彼に渡した奴よりももっと性能のいいものをこの手で作り上げ、それで思い知らせてやる。本当に凄いのは一体誰であるかと言うことを。人の上に立つべき人物が一体誰であるのかと言うことを。
一方研究室の外に出た一馬はそこでじっと彼の出てくるのを待っていた佐祐理に深々と頭を下げていた。
「申し訳ありません、母上」
「それほど待ったわけでもありませんから気にしないでも良いですよ。ここでの用は終わりました?」
「はい。次は」
「例の人の所に行くのですね?」
「はい」
佐祐理の質問に答えながら一馬は車イスを押し始めた。
K&Kインダストリーの技術力ならば手押しではなく電動の車イスを、しかもかなり性能のいいものを作ることなど容易であった。まさに赤子の手を捻るよりも簡単なこと。にも関わらず佐祐理は電動車イスを使うことをかたくなに拒み続けている。その理由を一馬は今まで一度も聞かされたことがなかったし聞こうともしなかった。ただ、佐祐理の親友――今はもう故人らしいのだが――が彼女のために用意してくれたものを未だに使っているのだと言う話をちらりと耳にしたことがある。その真偽のほどは不明だが、確かに彼女が使っている車イスは古いもので、屋敷にはそれ専門の修理工がいるぐらいだ。
無言で車イスを押し続ける一馬。
長い廊下を抜けるといかにも分厚そうな鉄製のシャッターがあり、その前に二人の人間が立っていた。どうやら一馬と佐祐理が来るのを待っていたらしい。
「お待ちしておりました、社長、若様」
二人が一馬と佐祐理の二人に向かってまったく同時にお辞儀するのを見て、佐祐理は微笑みを浮かべて軽く手を振ってみせた。
「事前にお知らせ頂ければ人をやりましたのに」
そう言ったのは二人のうちの年輩の方、この施設を任されている人物だった。一馬も何度か会ったこと事がある人物だ。K&Kインダストリーの本社ビルや倉田家の屋敷でも何度か顔をあわせている。
「院長、今日は……」
「今日は半分お忍びのようなものですからね。それに一馬さんが良くしてくれていますから大丈夫ですよ」
一馬を遮るかのように佐祐理が快活にそう言う。
「お代わり致します、若様」
もう一人、ナース服を着た女性が一馬に代わって佐祐理の車イスを押し始めた。あっさりと役目を譲った一馬は先程「院長」と呼んだ人物に並んでシャッターの前に立つ。
鉄製のシャッターがゆっくりと左右に開いていく。見た目通りかなりの重量があるらしく完全に開ききるまで少し時間が掛かる。開いたシャッターの向こう側にも廊下は続いているが、先程までと違い、かなり清潔感が漂っている。
実はこの建物、見た目通り病院としても機能しているのだ。K&Kインダストリー系列の私立病院。敷地面積はかなり広く、病院の建物と長い渡り廊下を通じて研究施設が隣接している。初めに一馬が訪れたのが研究施設の方で、このシャッターが丁度研究施設と病院施設とを仕切る敷居の役割を果たしているのだ。
「例の男はどうしている?」
渡り廊下を歩きながら一馬が院長に尋ねる。
「はい。ここに運ばれてきた時点でかなりあちこちダメージがありましたが今は回復しております。とりあえず麻酔を続けておりますので逃げ出すような心配はありません」
院長の言葉を聞き、一馬は頷いた。
ここに例の男、獅堂を運び込んだのは彼の持っているゾディアックガードルを解析し、新たに開発させる事もあったが、重傷と言っても良いほどダメージを受けていた彼を治療するためでもあった。彼には色々と聞きたいことがあるのだ。だから回復してもらわなければ困る。あの研究所の壊滅の真実、研究所での研究の成果がどうなっていたかなど知りたい情報は山のようにあるのだ。
それから4人はまったく無言のまま、獅堂が半ば監禁されている病室へと向かうのだった。

丁度お昼休み、一雪は教室で一人、机の上に突っ伏している。
「う〜〜〜」
突っ伏したまま何やら唸っていると、同じクラスの天海 守が近寄ってきた。
「一雪、頼みがあるんだけどさ」
ニコニコ笑顔を振りまきながらそう言う天海だが、一雪は突っ伏したまま。顔を上げることもなく、何か唸り続けている。
「う〜〜〜〜」
「……おーい、一雪くーん」
ちょっと笑顔を引きつらせながら天海が一雪を呼ぶが、やっぱり彼は顔を上げようとはしない。無視していると言うのではなく、どっちかと言うとまったく聞こえていないと言うのが正しそうだ。何かが彼を相当悩ませているのだろう。
とりあえず天海は持っていたノートを丸めるとすこんとそれで一雪の頭を叩く。
頭を叩かれた一雪はようやく我に返り、がばっと勢い良く身を起こした。キョロキョロと周囲を見回し、自分の頭を殴ったのが天海だと知ると、ムッとしたような顔を彼に向けた。
「何するんだよ?」
「いくら呼んでも返事がなかったから仕方なくだ。別に許せとは言わないぞ」
呆れたようにそう言って天海はため息をつく。
「で、何か用なの?」
人を殴ったことに対して反省する素振りも見せない天海に対してちょっと不服そうな一雪だが、自分も考え事に没頭していて返事しなかったので、それで同罪だろう。だから文句を言おうとは思わなかった。
「実は次の時間なんだが」
「……確か数学だったね」
「その通りだ。ここまで言えばもうだいたいわかって貰えたと思うが」
「自分の力でやらないと意味無いってこの前も言ったと思うけど」
「まぁ、そう言うな。と言うことで……」
天海が嬉しそうな顔をしてノートを開こうとすると、少し離れたところでバンッと机を叩く音が聞こえてきた。その音に思わず首を竦めてしまう一雪と天海。二人してゆっくりと音の聞こえてきた方を向くと、向かい合わせた二つの机を囲んでいる4人の女子生徒のうちの一人が物凄い視線でこちらを睨み付けている。
「……まただよ」
ガックリと肩を落とす天海。
「何かあいつから恨みでも買ってるのか?」
「買ってるんじゃないかな、天海は。何時も似非お嬢様とか言ってるし」
「あの気性の激しさを知ってるだろう、お前も。普通お嬢様って言えばもっとお淑やかで、物静かで、ちょっと病弱入っていたりしたらもう最高ってな感じ……」
「悪うございましたわね、お淑やかでなければ物静かでもなく、更に病弱でもなくって」
恐ろしいまでの不機嫌な声がすぐ側で聞こえてきた。振り返るまでもなく、そこには先程二人を思いきり睨み付けてきた女生徒、白鳥真白が立っている。それもこれ以上無いと言うほどの不機嫌顔で。いや、どっちかと言うならば必死で怒りを押し殺しているとでも言うべきか。
「相変わらずでございますわね、このお猿さんは。少しは自分の力で物事を解決しようと言う気はございませんの?」
じろっと天海を睨み付ける真白。その視線は思い切り天海を馬鹿にしている。
受けて立つ天海も真白を小馬鹿にしたような目で見返していた。
「何を言うか、似非お嬢。俺はわからないところを一雪に確認しようと思っただけだ」
「あ〜ら、本当かしら? 実のところ、宿題忘れて写させてもらおうとでも思っていたんではなくって?」
真白の言ったことは、実は図星だった。
ものの見事に宿題を忘れていた天海は一雪に見せてもらおうと思って声をかけてきたのだ。何と言っても一雪はお人好しだから、決して親友である自分の窮地を見捨てはしないだろう。そう言う打算も多分に含んでいたのだが。それをあっさりと見破られて、思わずその動揺が顔に出てしまう。
「あら、図星でしたかしら?」
勝ち誇ったように真白がそう言う。
悔しそうに歯を噛み締める天海だが、その肩に苦笑を浮かべた一雪が手を置いた。
「まぁまぁ、落ち着きなよ、天海。宿題なら見せてあげるから」
「オオッ、流石は親友!!」
「何ですって!?」
喜びの声をあげる天海と一雪の意外とも言える判断に驚きの声をあげる真白。
真白はすぐ側で喜んでいる天海を突き飛ばすと一雪に詰め寄った。
「何を言っているんですか、あなたは!」
「い、いや、何って……」
「あのような輩は甘やかしてはいけないとこの間も申しましたでしょう! それはあなたの為にならないとも!」
「そ、それは確かにそうだけど」
「あのお猿さんは自分でやらなければならないこともせずに人に頼ってばかり! そのような人が生きていけるほどこの世は甘くありません! もっと世間の冷たい風に晒すべきです!」
一方的に捲し立てる真白の迫力に一雪はもはやタジタジである。助けを求めようと天海の方を見るが思いきり知らんぷりされた。この状態の真白に関わるのが嫌らしい。もっとも普段から相性の悪い二人ではあるが。
更に助けを求めるように先程まで真白がいた場所を見る。そこには彼女と仲のいい祐名、初野華子、磯谷 桜の3人がいたが一雪がこっちを見たのを知るとすぐにぷいっと別の方向を向いた。彼女たちも関わり合いたくないようだ。
(みんな、覚えていろよ……)
「ちょっと! 聞いてますの!?」
「き、聞いてるよ!」
どうやら真白の説教はまだ続くらしい。何で僕がこんな目にあうんだ、などと思いながら一雪は真白の説教が終わるまでガマンするしかなかった。
結局それから10分ぐらい真白に説教され続け、ぐったりとなった一雪は天海に連れられて学食にやってきていた。流石に昼休みの半ばを過ぎ、学食に人の数はそう多くはない。しかし、自動販売機などがあるためかそこでお喋りとかしている生徒は結構いるのだ。
「はい、ノート。白鳥さんとかが来る前に写しちゃえよ」
「サンキュー、相棒」
一雪からノートを受け取ってテーブルの上に広げる天海。シャカシャカとシャーペンをノートに走らせる天海を見ながら一雪は頬杖をつき、ハァとため息をついた。
「……災難だったよなぁ、一雪」
せっせと宿題を写しながら天海がそう言ったので一雪はじろっと彼を睨み付ける。
「誰の所為だと思っているんだよ。天海が宿題写させてくれなんて言わなかったら、ああ言う目にあわないで済んだんだ」
「あー……まぁ、そう言うな、親友よ」
ノートから目を離すことなくそう言う天海。
一雪はわざとらしく盛大なため息をついてみせた。
「やっぱり友達は選ぶべきだよなぁ」
「酷いこと言うね、お前。ホレ、終わったぜ」
パタンとノートを閉じて一雪に手渡す。
「ところで、何悩んでたんだ?」
「例のお金、返すことになったの知ってるだろ。だからバイクの修理代が……」
「ああ、そう言えばそうだったな。元々バイトしようか悩んでいたもんな」
「と言うことでノートを見せてあげた分と白鳥さんに怒られた分、返せ」
すっと手を差し出す一雪を天海は苦笑を浮かべて見返した。とりあえず本気ではないものの結構不機嫌っぽい。ここは少し彼の御機嫌を取っておいた方が後々のためにいいだろう。そう思って立ち上がり自動販売機の方に向かった。
「コーヒーでいいか?」
「出来ればジュースが希望」
「オレンジ?」
「炭酸はやだよ」
「注文多いな」
硬貨を三枚自動販売機に入れて、ボタンを押す。とりあえず一雪が希望したオレンジジュースと自分用にコーヒーを買って一雪の元へと戻る。
「……ノート見せてあげた分と白鳥さんに怒られた分とを合わせて120円……随分と安いんだね、僕って」
天海からオレンジジュースを受け取りながら、とりあえず嫌味を言う一雪。
「まーまー、そう言うな。俺だってそれほど余裕があるわけでもねーんだし」
コーヒーのプルタブを開けながら苦笑する天海。
二人が食堂でジュースを飲みながら話をしている頃、祐名、真白、華子、桜の4人組も教室から食堂へと向かっていた。
「それにしても真白ちゃんって一雪君に対してはキッツイよね〜」
先頭を歩く真白の背中を見ながら桜が言う。
「もしかしてあれかな、ここ最近流行りのツンデレって奴?」
「何、ツンデレって?」
そう尋ねたのは華子だ。
「んーとね、普段はツンツンしているんだけど、二人っきりとかになると途端にデレデレしちゃうような人のこと?」
答えながらも何故か疑問形の桜に一番後ろを歩いている祐名が苦笑する。おそらくは桜もその言葉の意味をちゃんと理解していないに違いない。だからちょっと自信がないんだろう。それが言葉尻を疑問形にしているのだ。
「……つまり、白鳥さんは一雪君のことが好きだって事?」
「な、何を言うんですか、あなた達!!」
真白が振り返って怒鳴る。その顔はまるで完熟トマトか茹で蛸かという具合に真っ赤だったが。
「わ、私は彼の、その、お人好し加減に腹が立つというか、ああ言う甘さは何時か自分を痛い目にあわせると言うことですね」
「まーまー、照れない照れない」
言わなくても解ってるよ、と言う風に桜がうんうんと頷いた。
「て、照れてなどありませんわっ!!」
余計にムキになって言う真白。これでは桜の言っていることを肯定しているみたいだと言うことに自分でも気がついてないのだろう。
「だいたい急に何を言い出すんですか、このちびっ子は!」
「あー、またちびっ子って言う!!」
「ちびっ子をちびっ子と言って何が悪いんですか!?」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
仲裁に入ったのは祐名である。睨み合っている二人の間に苦笑しながら割って入り、二人の顔を交互に見た。
「とりあえず今日のは桜ちゃんが悪いと思うよ」
「え〜〜〜〜」
「ほら、一雪って白鳥さんの言う通りお人好しだし、かなり甘いから。白鳥さんは心配してくれてるんだよ、一雪のこと」
不服そうな桜に言い聞かせるようにそう言う祐名。その後ろでは真白がその通りという感じでうんうんと頷いている。だが、その横にいる華子はちょっと呆れたような顔をしていた。
(どう考えても他人の相沢君を白鳥さんが心配する理由はないと思うんだけどね……やっぱり磯谷さんの言う通りじゃないかしらね……)
などと言うことを考えながら。
「ほらほら、謝りなさい、ちびっ子」
「う〜〜〜〜〜」
勝ち誇ったように真白がそう言い、悔しそうに真白を見上げる桜。
と、その時だ。4人の頭上で何かがばさばさと羽ばたくような音が聞こえてきたのは。
学食は校舎から少し離れた場所にあり、そこに行くには渡り廊下を通っていく必要がある。丁度4人はその渡り廊下にいたのだが、そこでそんな何かが羽ばたくような音が聞こえてくるわけがない。
嫌な予感を覚えた祐名がさっと上を見上げると天井に張り付くように巨大な梟がぶら下がっていた。その巨大梟がまるでこちらを威嚇するかのようにその翼を広げたり閉じたりしている。
「……何でこんな所に梟が?」
そう言ったのは華子だ。
「裏山から迷い込んできたのかな?」
桜がそう言って巨大梟に向かって手を伸ばそうとするが、その手を祐名が掴んで止めた。そして、足早にその場から遠ざかろうとする。
「ちょっと、どうしたのよ」
華子が怪訝そうに言いながら祐名についてくる。真白も無言ではあったが一緒にやってきていた。
「何かわからないけど物凄く嫌な予感がするの」
そう言って祐名が追いついてきた二人を振り返り、そして顔を引きつらせた。まるで彼女たちを追いかけてくるかのように巨大梟が翼を広げて彼女たちの方へと滑空してくるのが見えたからだ。
「ひいっ!?」
祐名が悲鳴を上げる。
その声に華子と真白が振り返ろうとするが、それよりも早く、巨大梟は彼女たちの頭上を通り過ぎていた。そしてゆっくりと廊下に降り立った。
「……ま、まさか、また?」
そう言ったのは一体誰だったのか、4人の視線は自分達の前に降り立った巨大梟に注がれている。
巨大梟はゆっくりと、まるで恐怖をあおるかのようにゆっくりと立ち上がり4人の方へと振り返った。それは梟などではない。梟の姿を模した、人型の怪物。以前に4人が遭遇したあのゴリラのような怪物とおそらく同類と思われる梟の怪物であった。
梟特有の大きな目で4人を見据え、梟の怪物はその背中にある翼を広げる。自分の姿をより大きく見せ、相手を威嚇しようと言うつもりなのか。そうしなくても4人は恐怖のあまり動けなくなっていたが。
背中で広げていた翼をはためかせて、軽くジャンプする梟の怪物。そしてその足に生えた鋭い爪を4人に向けた。
恐怖のあまり声もなく震えているだけの4人に、梟の怪物の足の爪が迫る。
「このぉっ!!」
「おおおっ!!」
梟の怪物の向こう側からそんな声が聞こえてきた。次いで何か衝撃を受けたかのように梟の怪物が吹っ飛ばされる。
一体何が起こったのかわからず4人は呆然としたまま、それを見つめていた。
「大丈夫か!?」
そう言って4人の側に駆け寄ってきたのは天海である。
「ま、守!?」
華子が駆け寄ってきた天海を見て声をあげた。そんな彼女にウインクしてみせた天海は吹っ飛ばされ、倒れた梟の怪物の様子を見ている一雪に声をかける。
「一雪、こっちは大丈夫っぽいぜ!」
「ならみんなを連れて早く逃げるんだ!」
「お前はどうするんだよ!」
「こいつを引き付ける!」
「馬鹿!! 死んじゃうよ、そんな事したら!!」
そう叫んだのは祐名だ。
「そ、そうですわ! ここはみんなで逃げるべきです!」
続けて真白が大声を上げる。
一雪はそんな二人に答えず、梟の怪物に駆け寄り、起きあがろうとしている梟の怪物の頭部を思い切り蹴り飛ばした。そして、すぐに祐名達のいるのとは別の方向へと走り出す。どうやら本気で彼は彼女たちを逃がすための囮になるつもりのようだ。
頭部を思い切り蹴飛ばされた梟の怪物は起きあがると、翼を広げて、そして廊下を蹴って宙を滑空し始めた。勿論一雪を追って、である。久し振りのお楽しみの邪魔をした彼を許すことが出来なかったのだ。
「あの馬鹿、本気かよ!!」
天海が毒づく中、華子が慌てたようにポケットの中をまさぐった。取り出したのは彼女の携帯電話。これで助けを呼ぶつもりなのか。
「何処電話する気なんだよ!!」
「警察! 早くしないと相沢君が!!」
「来るわけ無いだろ、警察なんか! あんな化け物のこと、信じてくれるわけねぇよ!!」
「ならどうしろって言うのよ!!」
二人が言い争っている間に、祐名はその場から駆け出していた。一雪と梟の怪物の消えた方へと向かって。
「祐名ちゃん!!」
駆け出した祐名に気付いた桜が叫ぶが、祐名は足を止めなかった。何とかして、この世にたった一人しかいない双子の片割れを助けないと。その事しか彼女の頭の中にはない。どうやって助けるかなどはまったく考えることなく、とにかく駆け出していた。

渡り廊下から外に飛び出した一雪の頭上を梟の怪物がかすめていく。
「うわっ!?」
その衝撃に思わず足をもつれさせ、一雪は豪快に転がってしまった。地面を二、三回転してようやく身体が止まる。
「イタタタ……」
全身に走る痛みに顔をしかめながら身を起こそうとする彼に向かって梟の怪物は容赦無く襲いかかってきた。頭上からその鋭い足の爪で彼を引き裂こうとしてくる。
慌てて横に転がってその爪をかわす一雪だが、梟の怪物はそんな彼を逃がすまいと次々と襲ってくる。必死に地面を転がる一雪だが、かわすのが精一杯でどうすることも出来ない。と、焼け付くような痛みが彼の左肩を襲った。かわしきれなかった怪物の爪が彼の左肩を地面に縫いつけてしまったのだ。
「くうっ!!」
左肩の激痛に顔をしかめながら、一雪は自分を見下ろしている梟の怪物を見上げる。梟の怪物の大きな目からは何の感情も読みとれなかった。実家から持ち出したファイルによればこの怪物達は自分達の活動エネルギーとして人間を襲うのだと書いてあったが、こうして怒りにまかせて襲いかかってきたところを見るとそれだけではないような気もする。人を殺すという行為を楽しんでいるのではないだろうか、と言う気もする。
「一雪ッ!!」
流石にもうダメだろう、今回ばかりは前みたいに仮面ライダーが助けに来てくれることはない、と半ば諦めかけていた彼の耳に飛び込んできたのは双子の片割れの声だった。声の聞こえてきた方を見ると、何処から持ってきたのか消火器片手の祐名が少し離れたところに立っている。
「か、一雪を離しなさい!」
言いながら消火器のノズルを梟の怪物に向ける。まさかそんなものでこの怪物をどうにか出来ると思っているのだろうか。いや、それは有り得ないだろう。こんなもので何とか出来るほどこの怪物は甘くないと言うことを、彼女も良く知っているはずだ。
「祐名、ダメだ! 早く逃げて!!」
「か、一雪を見捨てていけるわけないでしょう!!」
一雪にそう答える祐名の声は震えている。見ると、その足も細かく震えている。本当は恐怖のためにこの場から逃げ出したいはずだ。だが、それをぐっと抑えて、双子の片割れを助けに来ている。嬉しかったが、迷惑でもあった。折角自分が囮になったと言うのに。
「何で……」
そう呟く一雪から梟の怪物は祐名の方に視線を移していた。どうやら獲物が自分から来てくれたようである。まずはこの二人。次はここにいる大勢。これだけの人間から生体エネルギーを補給出来たら、かなり長期間補給無しでもいけるだろう。とりあえずはまず足下にいるこいつから。先程自分の頭を蹴り飛ばしてくれたこいつから。
梟の怪物がすっともう片方の足をあげる。これを降ろせば一雪の胸に風穴が開く。次は祐名。恐怖のあまり身体が固くなっている彼女などどうとでも出来る。そう思って持ち上げた足を一気に降ろそうとしたが、それは出来なかった。
突如背中に連続で強烈な衝撃を受け、梟の怪物は片足を上げていると言う不安定な状態もあってあっさりと吹っ飛ばされてしまったからだ。
吹っ飛んだ梟の怪物を見て、慌てて祐名が倒れている一雪の側に駆け寄った。そして彼を抱き起こすとその左肩の傷にポケットから取り出したハンカチを押し当てる。勿論その程度で血が止まるとは彼女も思っていないが、今はそれしか出来なかった。
「な、何だ……?」
一方の一雪は何が起こったのかわからないまま、祐名のされるがままになっていた。ただ、何者かが自分を窮地から救ってくれたのであろう事だけが辛うじてわかる。だが、一体誰が?
その答えはすぐにわかった。少し離れたところから、そいつが姿を見せたのだ。
「……仮面……ライダー!?」
それは見たこともない仮面ライダーだった。仮面ライダーレオでもなく、彼の知っているもう一人のライダーでもない、まったく見覚えのないライダー。
その仮面ライダーは一雪と祐名を一瞥してから、先程自分が吹っ飛ばした梟の怪物を見やった。手に持っていた銃のようなものをベルトのホルスターに戻すとその仮面ライダーは起きあがろうとしている梟の怪物に向かって走り出した。少し手前で軽くジャンプして、身体を捻りつつ、その勢いを利用した鋭い回し蹴りを叩き込む。
その一撃だけで大きく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる梟の怪物。
さっと着地した仮面ライダーは再びホルスターから銃のようなものを取り出した。そして、それを組み替えて棒状のものに変形させる。更に腰のベルト、ゾディアックガードルの中央に納められていたカードを取り出すと、それをすっと前に投げた。するとそこに光のカードが現れる。そこに描かれているのは蠍座の星座図。
それを見た仮面ライダーが満足そうに頷き、手に持った棒を構えた。するとその先に光の刃が形成されていく。ただの棒ではない、その正体は光の刃を持った薙刀だったのだ。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
気合いの声と共に仮面ライダーが走り出した。等身大の光のカードをくぐり抜けると共に仮面ライダーの身体が光に包まれる。
それを見た梟の怪物が空に逃げようとジャンプした。だが、仮面ライダーはそれを追いかけるように大きくジャンプすると手に持った薙刀を左右に二回振るう。すると、梟の怪物の背にあった翼が綺麗に切断されていた。
自分を空へと逃がす術を失い、急降下していく梟の怪物。
その腹に向かって仮面ライダーが薙刀を突き刺し、そのまま一緒になって地面へと落下する。
下になっている梟の怪物が地面に触れると同時に爆発が起こった。
それほど離れていないところで起こった爆発に一雪と祐名は吹っ飛ばされてしまう。そんな二人を構うことなく、無事に着地した仮面ライダーは足下に転がっている小さな水晶玉を拾い上げた。
「これがそうか……」
その水晶玉をしげしげと見つめながら仮面ライダーが変身を解く。
「ふむ……なかなか使えるな、これは」
水晶玉をポケットに突っ込み、腰から新型のゾディアックガードルを外しながら倉田一馬はそう呟いた。そして、側で気を失ってしまっている二人を見下ろすと、ニヤリと笑う。
「まったく……運命とは面白いものだな」
そう言って一馬は歩き出した。
監視班の連絡を受けてテストを兼ねてここに来てみたが、まさか襲われているのがこの二人だったとは。どうやらこの二人、自分とは切り離せない運命にあるようだ。

This Story was Completed!
To be Continues Next Episode!

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