「えーと、それじゃ今回も反省会を始めますか」

 開口一番そう言ったのは他でもなく私だった。

 ちなみに我らが総帥は何故かぐったりとした感じで机の上に突っ伏しており、もう一人の脳天気お馬鹿は頭に大きなたんこぶを作って気を失っている。ちなみに私はと言えばトレードマークである眼鏡に少しひびが入っている。

 で、何でこんな事になっているのかと言うと。

「……とりあえず今回は私が謝りますわ」

 机に突っ伏したまま総帥がそんな事を言った。

 ふむ、普段は自分のミスを絶対に認めない総帥なのに。どうやら今回のミスは彼女的にも痛恨のものだったに違いない。

「いやまぁなぁ……確かに今回の結託部活は総帥が選んだからなぁ」

 いくらなんでも将棋同好会はないだろう……と言う言葉は喉の奥に飲み込んだ。流石にフォローは仕切れないが、これ以上突っ込んで更にどん底に落とすのも何か悪いような気がしないでもない。

 ちなみに今回でもう六回目になる「結託部活作戦」だけども、見事なまでに六戦全敗中。まぁ、選ぶ部活のチョイスを恐ろしいくらいの勢いで失敗しているような気もするけど。

「いい加減そろそろまじめに考えないか、総帥。文化系部活じゃあいつを倒す事は多分出来ないぞ」

「ですが……まだまだ文化系部活は数多く残っていますわ。もしかしたらその中の一つぐらいはあの女をぎゃふんと言わせられるのではなくて?」

「それはまぁ、確かにそうかも知れないが……」

 以前総帥と話していた時に「まずはあの女をぎゃふんと言わせる」という点では同意してしまっているから、この辺あまり強く言えないのが困りものだ。

「一度ぎゃふんと言わせてから本格的にやるのですわっ! 体育系部活投入はそれからですわっ!」

 何と言うか、まったく……相変わらず変なところで頭が固いと言うか、プライド高いと言うか。。

 ちょっと頭を抱えながら大げさなくらいため息をついてみる。

「でもまぁ、流石に今回だけはあいつが怒るのもわかる気がするよ。いくら何でもヘボ将棋過ぎた」

「まさかあそこまでとは私も知りませんでしたわ……」

 今回の結託部活が将棋同好会だったというのは先にも述べた事だけど、そいつらがまぁ、とにかく下手くそすぎた。多分だけど、あいつら相手なら私とか総帥でも勝てるんじゃないだろうか。あんまり詳しくルールとかは知らないけど。

 それはともかく、そう言う連中が相手だった訳で例のあいつが最後にはブチギレて大暴れ。脳天気は身体を張ってあいつの暴走を止めようとしたけども、逆にのされてダウン。私は将棋同好会の連中を逃がそうとして、あいつの投げた将棋の駒を眼鏡に喰らったという訳。ちなみに総帥は例によってさっさと逃げてしまっていた訳だけど、今日は散々追いかけ回されてしまったらしい。それでも逃げ切ったと言う点では大したものだと思う。

「とりあえず次はもうちょっとぶつける連中の実力を見てからにしよう。でないと、また今日みたいにあいつがブチギレる可能性がある」

「そうですわね……にしても、普段から恐ろしいまでの自己中心的で自我自尊で天上天下唯我独尊だとは思っておりましたが、まさかあんな事でキレるなんて……」

「自己中だからこそキレたんじゃないか?」

 あいつは普段から「自分は世界の中心」だとか「自分を中心に世界が回っている」だとか「我こそが世界の要」だとか平気に口にする奴だからな。自分の思うようにならないと機嫌が悪くなるタイプなんだろう。

 しかし、本来なら私達にはあまり被害が出ないようにする為のこの結託部活作戦なのに、何故かやる度に私達のストレスとかが増えてきてるような気がする。特に今回は直接的被害も被ってるし。

「それで次は何処にするんだ? 一応交渉ついでに実力計りに行ってくるから決めてくれ」

「……それでは次はチェス同好会など」

「却下だ、却下! 大体コンセプトが今回と同じだろ、それじゃ!!」

 普段は総帥の決めた事に反対など一切しないようにしている私だったが、今度ばかりはそうも言っていられない。もし仮に総帥の言う通りチェス同好会に次の作戦実行を依頼しに行って、その実力が将棋同好会レベルだったら、間違いなくその被害は私達に来る。それに将棋とチェス、この西洋と東洋でちょっとした違いはあるもののその根底が何処か似ているゲームを連続でぶつけるなど、面白味がないどころかかえって馬鹿にされかねない。

「め、珍しいですわね、参謀が反対なさるなんて」

「眼鏡の修理費だって馬鹿にならないんだ。必死にもなる」

 今日の帰りに眼鏡屋さんに寄って修理に出して、帰ってくるのは何時になるやら。その間は予備としておいておいた前の眼鏡を使わざるを得ないし、それに修理費だってどれくらいになると言うか、レンズ新しいのにしなきゃならないしなぁ……。ああ、ついでに視力も計って貰うか。落ちてたら嫌だなぁ……。

「そ、その辺は一応活動費で落とせますけど?」

「そうしてくれると助かる」

「そ、それでは次はチェス同好会で」

「それは却下だ」

「ええっ!?」

「さっきも言った通り、今回のとコンセプトが同じすぎる。やる前からあいつがブチギレるか、例によっての超上から目線で「芸がない」とか言われるのがオチだ」

 どうしてそれがわからないかな、総帥は。決して頭が悪い訳ではないはずなのに、変なところで変な具合に変なこだわりを持つから、いつもややこしい事になって、最終的に私や脳天気に被害がでてしまう。まぁ、無駄に頑丈なのが取り柄の脳天気がどうなろうと私の知ったことではないけれど。ああ、別にあいつが嫌いとかそう言うのじゃない。心配するだけ無駄だって事だ。

「それでは……ボードゲーム同好会など」

「あまり変わらないだろ、それっ!! て言うか、そんな部活あったのかよっ!」

 一応今回の結託部活作戦に使えそうな部活を調べたのは私だけども、あまりにも数が多かったのでいちいち覚えていない。と言うか、うちの学校、正規非正規あわせての部活の数が多すぎだ。もはや群雄割拠とか言うレベルの問題じゃないぞ。

 まぁ……私達も非正規中の非正規な訳だけど。つか、表沙汰に出来る訳がない。その割にはこうやって他の部活に積極的に接触とかしたりしているけどな。

「ではTRPG同好会」

「同じだ、同じ! と言うか、テーブルゲーム系から少しは離れろよっ!!」

「参謀は私にどうしろと言うのですかっ!」

「もうちょっと別系統にしろって言ってるだけだっ!!」

 二人して怒鳴りあい、ぜーはーぜーはーと息を荒くして睨み合う。

 このまま二人して睨み合っていても仕方ない。とりあえず息を整え、二人でほぼ同時に椅子に腰を下ろす。

「冷静になったか?」

「ええ、落ち着きましたわ」

「それじゃ改めて問う。次は何処の部活にする?」

「そうですわねぇ……」

 そう言いながら総帥が机の上に置いてあったメモを手に取った。あれには私が直接交渉した例のあいつに何かしらの恨みを持っている部活の名前が書かれている。と言うか、あいつ、恨み買いすぎだ。この学校のアホみたいにある部活の半分以上、ほとんど全部に何かしらの恨みを買えるなんて別の意味で凄すぎる。

「とりあえずテーブル系は避けた方がいいのでしたわね」

「出来ればだけどね。他にどうしてもないって言うなら私も諦める」

 一応、本当に一応だけど、総帥の意思を尊重してみる。ある程度はそうしておかないと、いじけて拗ねる可能性があるから。

「そうですわね……これなんていかがでしょう?」

 そう言って総帥がメモの一点を指差した。

 そこに書かれてある部活の名前を見て、私はちょっと考える。

 例のあいつ、天下無敵の天上天下唯我独尊娘、その性格は限りなく自分中心主義の最悪な奴こと天道 要。悪い事に奴のスペックは本気で無駄にハイスペックだ。私としては頭脳の面であいつに決して劣っているとは思わないが、それ以外の部分が負けすぎている。決して同じ土俵に立って勝負をしたくないタイプ。おそらくだが、奴に苦手なものなどない。

 多分だが、今総帥が選んだ部活もあいつには敵わないだろう。しかし、こちらの受ける被害は決して多くはないと言うか、本来あっちゃいけないのだが。その為の結託部活作戦なのだから。

「まぁ……いいんじゃないか、それで」

 とりあえず後で行って、その実力を一応確認しておこう。あまりにもそこの実力がヘボ過ぎて、またあいつに暴れられると洒落にならない気がする。特に今度総帥が選んだ部活が活動拠点としている場所的に。

「それでは次の結託部活は”調理研究会”と言う事でよろしいですわね?」

「ああ、わかった。それじゃ後でその”料理研究会”に行って交渉してくる」

「……参謀、何を言ってるんですか?」

「何って、何が?」

 唐突に総帥がちょっと険しい表情を浮かべてそう言ってきたので、私は首を傾げた。はて、何か間違った事を言ったのだろうか。そんな覚えは微塵もないのだけど。

「私の言ったのは”調理研究会”ですわよ?」

「だから”料理研究会”だろ?」

「”調理研究会”ですわっ!」

「”料理研究会”だろ?」

「違いますっ! 何でわからないのですかっ、参謀!」

 正直総帥が何を怒っているのか私にはまったくわからない。

「ここをよくご覧になりなさいっ! 私が選んだのは”調理研究会”であって”料理研究会”ではありませんわっ!」

「どっちも同じだろ? 何をそんなに目くじら立てる必要が」

「だから違うと言ってるでしょう! この学校にはちゃんと”調理研究会”と”料理研究会”の二つが存在しているんですっ!」

「はぁ?」

 語気荒くしてそう言う総帥。

 私はちょっとウンザリした気分になりながらも総帥が持っているメモを返して貰い、改めてそこに書かれてある部活の名称を見ていった。すると……総帥の言う通り”料理研究会”とは別に”調理研究会”の名前がしっかりと記入されているじゃないか。

「なんじゃ、こりゃ!?」

 思わずそう言ってしまう。

 いや、確かにこのメモを作ったのは私自身な訳だけど、さっきも言った通り、この学校やたらめったら部活が多すぎていちいち覚えていられなかったのだ。だからこそメモに一覧表として書いておいたんだけど、何でこんなコンセプトの被りまくる部活が存在しているんだか。

「ちなみに”料理研究会”は料理に関する事を色々と研究したり自分たちで作ったり、たまに創作したりしている部活ですけれども、”調理研究会”は調理方法に関する研究を主にやっている部活ですわ。如何にして手早く、そして美味しい料理を如何にして魅せつつ調理するかを日夜研究しているのですわ」

「……何でそんなに詳しいんだ、総帥?」

 思いも寄らないところからのフォローに私は驚きを禁じ得ない。

「こう見えても私、料理をするのが好きなのですわ」

「と言う事はここを発足する前に覗きに行ったんだな?」

「……ええ、まぁ」

 ジトッとした目で私が総帥を睨み付けると、総帥はすぐさまその視線を逸らした。何やら後ろめたいらしい。いや、理由はわかっているのだが。

「私やそこの脳天気にはここに入る事以外を一切許さなかったのに、あんたは自分だけ別の部活に見学に行って、あわよくばそこに入ろうとか考えた訳だ」

「……えっと、その……まぁ、結局どちらも私の眼鏡にかなう事はありませんでしたわ。だからこの件はもうよろし」

「……つまり、総帥は自分だけ他のクラブと掛け持ちをしようと一瞬でも思った訳だね?」

 総帥の台詞を遮るようにそう言ったのは私でも勿論、総帥でもない。ついさっきまで気絶しているものとばかり思っていた脳天気娘のものだ。どうやらいつの間にか復活していたらしい。あいつも私と同じくジトッとした目で総帥を見つめている。

「そ、そういう訳では」

「あーあ、私、運動系の部活に誘われまくったの全部断ったのになぁ」

「私も色々と声をかけて貰ってたんだがな。生徒会とかにも入らないかって話も全部ちゃんと断ったのに」

「そ、そうなのですか?」

「脳天気なら充分有り得る話だろう。頭の方は限りなく残念だが、それを補うように運動神経だけは素晴らしいものを持っているからな」

「参謀もそうだよね。運動音痴なのはともかく頭はいいし、意外と交渉能力もあるから。生徒会とかでも十分やっていけるんじゃないかな」

 珍しく、本当に珍しく脳天気と私が互いを誉めあっている。普段から口喧嘩の多い私達にしてみたら非常に珍しい光景だろう。

 まぁ、こう言う状態になって、追い込まれたのは総帥だ。

 実のところ、総帥はこの学校に入学する前から私達に「自分が作る部活に参加するように。反論は一切認めませんわっ! それから他の部活掛け持ちなんて以ての外ですわよっ!」とか言っていたのだ。にも関わらず自分だけ何処か他の部活と掛け持ちしようなどとは。

「まぁ……それでも一応諦めたんだから、この辺で許してやるか」

「そうだね。もっとも今日の帰りは総帥の奢りは決定的だけど」

「だな」

「あうう〜」

 部下二人にやりこめられて総帥が軽く半泣きになっているが、これははっきり言って総帥が悪い。それでもそれだけで許してあげるんだから感謝して貰わないと。

「あなた達の忠誠心はその程度ですの!?」

「いや、忠誠してるからこそその程度で済ましているんじゃないか」

「そうだよ。もっと忠誠心が低かったら裏切ってるよ、総帥」

「忠誠しているならもっと私を敬いなさいっ!」

「敬ってるよ、ちゃんと。なぁ?」

「うんうん。総帥はえらいなぁ。流石だよ。今日の帰りに奢ってくれるんだもん。敬わないわけないよ」

「あなた達という人はぁ〜っ!!」

「それじゃ今日はこの辺で、だな」

「そうだね〜。今日は疲れたし、いつものあれは抜きにして早く行こう」

「ちょ、ちょっと! 待ちなさいっ! いつものあれが無しだなんて、そんな勝手な事!」

「沙耶佳、早くしないといておくぞ」

「沙耶ちゃん、早く早く〜」

 既に私と小夜は部活モードから普段のモードへと切り替えている。沙耶佳だけがいつものあれをやってない、やらない事に憤慨している。

「凪っ! 小夜っ! 二人とも勝手な事は!」

「小夜、先に行って注文始めておくか」

「そうだね、凪ちゃん。今日は何にしよっかな〜」

 小夜と二人、そんな事を話ながら我らが世界征服同好会の拠点となっている空き教室を後にする。

「ちょ、ちょっと! お待ちなさい、二人とも!!」

 後ろから沙耶佳の慌てたような声が聞こえてくる。実はああ見えて沙耶佳は結構寂しがり屋だ。だから私と小夜が結託すると、結構押し切れたりする。今回のように。

「スポンサーである私をおいていくなんて、どう言う了見ですのっ!」

 そう言いながら追いかけてくる沙耶佳を私と小夜は笑いながら待つのであった。


それ行け!世界征服同好会その5 ――とりあえず完

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