<東京都内某警察病院 07:56AM>
都内にあるとある警察病院の5階。
そこがPSKチームと警視庁未確認生命体対策本部の立てた未確認生命体第29号殲滅囮作戦の実行場所に選ばれていた。
作戦開始時刻まで残り数分。
既にこの作戦に参加しているものは所定の位置に着き、緊張した面持ちで作戦の開始の時を待っている。
「……本当に来ると思いますか?」
小さい声でそう言ったのは斉藤だった。
「……実際の所五分五分って言う所じゃないかしら」
モニターを見ながら答える七瀬留美。
「第29号があの二人を狙ってくるのかどうかわからないし、それにあの二人がここにいることを知っているかもわからないし」
「……良くそれであんな大見得きりましたね……」
「でも可能性は高いと思うわよ。当てもなく探すよりはね」
留美はそう言うと側に置いてあったインカムを手に取った。
「北川君、そろそろ時間よ。準備はいい?」
『いつでも構いません』
インカム越しに聞こえてきたのはやや緊張し、強張った声。
今この場にいないPSK−03装着員、北川潤である。
「北川君、あなたならやれるわ。そう信じてる」
『……ありがとうございます。期待にこたえられるよう頑張ります』
「七瀬さん、30秒前です」
斉藤が緊張した表情でそう言った。
頷く留美。
「作戦開始よ、北川君」

仮面ライダーカノン
Episode.47「期限」


<都内某所・廃工場内 08:03AM>
祭壇を前に老婆が一心不乱に何事かを祈り始めていた。
その老婆に付き従うように双子の少女が両膝をついて手を合わせて祈っている。少し後方にもう一人、同じような巫女服を着た女性が虚ろな目をして立っていた。
そこに一台のアメリカンバイクが入ってきた。
「……おっと、もう始まっていたんですか」
アメリカンバイクに乗っていた男はエンジンを止めながら呟くようにそう言い、バイクから降りた。
「と言うことは……後24時間ぐらいですか」
男はそう呟くと上着の胸ポケットからサングラスを取り出し、それをかけた。
「後24時間……それまでに相沢祐一を始末しないといけないのか……フフフ、少しは楽しめそうだ」
ニヤリと笑うキリト。
果たして彼の言う後24時間というのはどう言うことなのか。
その場で答える者は誰もいない。

<東京都内某警察病院 09:34AM>
囮作戦が開始されて1時間半が経過した。
しかし、何も起こらない。
完全に閉鎖され、人の気配が全くしない5階。
とあるドアの前に警官が二人程立っているだけ。
そう言う光景がずっと続いている。
「……けぇへんな……」
そう呟いたのは神尾晴子だった。
「まぁ、必ず来るという確信は元々ありませんしね」
晴子にそう返したのは住井護。
二人とも未確認生命体対策本部の刑事である。
二人ともこの囮作戦が始まってから息を殺して未確認生命体第29号の出現を待っているのだ。
「とりあえず他の所に出たと言う報告もありませんし……」
「そう言う問題か?」
住井の言葉に苦笑を浮かべる晴子。
丁度その頃、その警察病院の外で一人の男が苛立たしげに爪を噛みながら病院の建物を見上げていた。
「ゴヲマ・ショゴドミ・ガグデシェ・リシャガ」
男はそう呟くと病院の裏手の方へと歩きだした。
「ロデミ・ニッタリバ・マリ」
唇を舌で嘗め、にたりと笑う男。

<城西大学考古学研究室 09:42AM>
コンコンとドアがノックされる。
「どうぞ、開いていますよ」
答えたのはこの考古学研究室の学生、エドワード=ビンセント=バリモア、通称エディであった。
「失礼します……美坂香里さんは……?」
ドアを開けて入ってきたのは水瀬秋子だった。
「香里さんなら今の時間なら喫茶ホワイトだと思いますよ。もうそろそろ帰ってきてもいい頃だけど」
エディは秋子に対して会釈しながらそう答えた。そして立ち上がると応接用のソファを勧める。
「すぐ帰ってくると思いますから」
ニコニコ笑みを浮かべてエディがそう言うので秋子も笑みを返してソファに腰掛けた。
この研究室に何故か備え付けられているコーヒーメーカーから来客用のコップにコーヒーをいれ、傍らに置いてあったスティックシュガーとミルクの入った籠を持ち、エディが秋子の前にまで戻ってくる。
「どうぞ。余りおいしくないと思いますけど」
「ありがとうございます」
秋子はそう言ってコーヒーカップを手に取り、口を付けた。ちょっと煮詰まっており、苦い。だが、それを顔には全く出さない。
そこに半キャップのヘルメットを持った美坂香里が入ってきた。その顔色は余りいいとはいえない。何か悩んでいるようだ。
「香里さん、お帰り。お客さんだよ」
エディが入ってきた香里にそう言うと、香里は俯きがちだった顔を上げた。ソファに座っている秋子と目が合い、慌てて頭を下げる。
「お、お早う御座います、秋子さん」
「お早う、香里ちゃん」
秋子も香里の様子が何かおかしいことに気付いていたが、その事には触れず、いつものように笑みを向けた。
香里は持っていたヘルメットを自分のデスクの上に置くと、秋子の正面に腰を下ろす。
「どうかしたんですか?」
わざわざ自分を訪ねてここに来たのだ。何かあったに違いない。香里は半ばそう確信していた。
「いえ、そろそろ家に帰ろうかと思って……香里ちゃんには随分お世話になったから挨拶を」
「……秋子さん」
秋子に最後まで言わせないかのように言葉を重ねる香里。
「それだけじゃないですよね? 只、それだけの為にここに来たとは私にはどうしても思えません」
そう言って香里は秋子の目をじっと見た。
帰る挨拶だけならわざわざここに出向く必要はない。電話でも充分のはずだ。それにまだ秋子がN県に戻るとは到底思えない。娘の名雪の消息が全くつかめていないのだから。
「………」
秋子は少しの間黙っていたが、やがてちらっとエディの方を伺った。それに気付いた香里も彼の方を見る。エディは自分のデスクの前にいながらも二人の会話を聞いているようだった。まぁ、それほど広いわけでもないのでどうしても会話は聞こえてしまうのだが。
「彼なら大丈夫です」
香里がそう言って秋子を見る。
秋子は小さく頷くと、先程までとはうってかわって真剣な表情を浮かべた。
「香里ちゃんには前にも話したと思うけど……」
「……水瀬一族のことですね?」
少し緊張した面持ちで問う香里に秋子はまた小さく頷いて見せる。
「名雪が次期宗主になるとか言ってましたよね。余り想像出来ないけど」
「……普段のあの子を香里ちゃんは良く知っているから……でもそれも……」
そう言って秋子は表情を曇らせた。
果たしてこの先を口に出していいものなのかどうか、まだ迷っている。そう言う感じだ。
だから香里は何も言わずに秋子の口が開くのを待った。少々のことなら驚くことはない。祐一がカノンになってから今まで驚くようなことの連続なのだ。多少のことなら動じることすらないだろう。そう言った自信みたいなものが香里にはあった。
しばらくの沈黙の後、秋子は意を決したように顔を上げた。
「以前にも話したことですが、名雪はもう昔の、あなたの知っている名雪ではありません。水瀬一族の宗主になってしまえば全ては手遅れです」
「名雪自身の記憶は失われるんでしたっけ?」
「失われるわけではありませんが……それより前の人の記憶の方がより強く出るだけで」
そう言って秋子はため息をついた。
「人類に対して酷く恨みを持つ一族の記憶が……」
秋子の話を聞きながら香里は首を傾げていた。
どうにも腑に落ちないことがある。秋子の言うことと前に祐一から聞いた名雪の語ったことが微妙に違うのだ。
(一体どう言うことなのかしら……?)
そう思っている香里の前で秋子は真剣な顔をして香里を見つめている。
「もう時間がありません。おそらくこれから約24時間……いえ、もっと少ないでしょう……これが最後のチャンスです」
「最後のチャンス?」
問い返す香里に秋子はしっかりと頷いた。

<東京都内某警察病院 10:14AM>
緊張感漂う人気のない廊下。
未確認生命体第29号は未だに現れない。
この囮作戦が開始されて2時間以上経過している。流石に緊張感を持続させ続けるには厳しくなってきていた。
ある病室の前に立っている二人の警官も思わず欠伸をしてしまっている。
「全く……全然来ないじゃないか」
「失敗かね、この作戦」
隠れて様子をうかがっている刑事達が口々に愚痴を言い始めていたその頃、病院の屋上に一人の男が壁をよじ登り辿り着いていた。
男は唇をぺろりと嘗めると中に繋がるドアへと歩いていく。その姿が徐々に人間のものから未確認生命体第29号ガセデ・ババルのものへと変わっていき、そして周囲の風景に溶け込むかのように消えていく。ドアを開け病院の中に入ったガセデ・ババルはニヤニヤ笑いながら階段を下りていった。

5階。
現れない未確認生命体第29号に皆苛つきを憶え始めていた。
「失敗……ですか?」
不安げな顔をして斉藤が隣の留美を見る。
「…………」
ムッとしたような不機嫌顔の留美は何も答えない。
と、その時だ。階段口に設置してあったセンサーが反応を示したのは。このセンサーは見えない未確認生命体第29号が現れたときのために設置されたもので、姿が見えなくても体温などを消すことの出来ない第29号には充分有効なのだ。
「……来たわ!」
留美がそう言うと、斉藤は顔中に緊張の色を走らせ、大きく頷いた。すぐにインカムのマイクに向かって呼びかける。
「第29号が現れました! 皆さん、準備の方、お願いします!」
それはこの5階に詰めている全ての警官達に伝わった。皆にそれぞれ緊張が走る。
「北川君、準備はいいわね?」
『いつでもOKです』
留美がつけているインカムはPSK−03とのみ交信可能に設定されている。同じ5階で息を潜めて第29号を待っているPSK−03,北川潤の声には緊張の色が隠せない。
「いい、第29号が姿を見せるのは5分だけよ。5分経ったらあの細胞はまた変化してこの作戦が通用しなくなるわ。一気にケリをつけてしまいなさい!」
『了解です!!』
潤の返事を聞き、留美が頷いた。

姿を消したままガセデ・ババルは二人の警官がガードしているドアの前までやって来ていた。姿を消せると言っても保護色に過ぎない。決してドアを通り抜けたりすることは出来ないのだ。だから中に入るには普通にドアを開けなければならない。
小さく舌を鳴らし、ガセデ・ババルは立ち止まった。しばしドアの両隣に立っている警官を見、それからニヤリと笑う。何て言うことはない。邪魔なものは殺してしまえばいいだけのことだ。
すっと警官に向かって手を伸ばし、一気にその首を掴んで力を込める。音もなく、二人の警官の首の骨が折れ、その場に二人の警官が崩れ落ちた。
それを見たガセデ・ババルは再びニヤリと笑い、ドアに手をかけた。
その様子を廊下に設置されている監視用のカメラがしっかりと捉えていた。映像を見て斉藤が配置されている警官達に作戦の決行準備を要請する。
「いよいよよ……」
留美がモニターを食い入るように見つめて呟いた。
「作戦決行準備!!」
「は、はいっ!!」
一気に緊張感が高まる。
病室のドアが開かれた。勿論ガセデ・ババルは姿を消したままだ。
「ゴヲジョ・ゴノ・ゴドヌギョ」
ガセデ・ババルがそう呟いて二つ並んだベッドに向かって手を伸ばそうとしたその時だった。いきなりベッドの上に寝ていた人影がばっとシーツを跳ね上げて起きあがり手に持った拳銃を発砲してきた。
突然のことにガセデ・ババルは何の反応も出来ず、銃弾の直撃を浴びてしまう。更に銃弾を受けたことで集中が途切れたのかその姿が元に戻ってしまっていた。
「グッ……マヲジャ?」
「よっしゃぁっ!!」
そう言ったのは何と晴子だった。隣のベッドの上には住井がいて拳銃を構えている。どうやらこの二人がずっとベッドの上にいたらしい。ガセデ・ババルが狙っていた二人の女子大生はこの囮作戦が始まる前により安全な場所へと移送されていたのだ。
「ヴァマガ!?」
さっと踵を返し、廊下に飛び出すガセデ・ババル。そこに横合いから真っ赤な重装甲を身につけたPSK−03が突っ込んできた。
「うおおおおっ!!」
追加装甲の為にやたら盛り上がった肩から体当たりを敢行していくPSK−03に、ガセデ・ババルは為す術もなく吹っ飛ばされ廊下の壁に激突する。廊下の床に倒れ込んだガセデ・ババルは頭を左右に振りながら上げるとPSK−03を睨み付けた。
「ギャヅマ・ビサンモ・ネヲニ」
PSK−03はその場でゆっくりと起きあがろうとしているガセデ・ババルに、左腕の追加装甲に内蔵されている小型ガトリングガンを向けた。
「これ以上お前らの好き勝手にはさせない……」
そう言うのと同時に小型ガトリングガンが火を噴いた。だが、ガセデ・ババルは両手で床をついて後方へとジャンプし、小型ガトリングガンから発射された弾丸をかわしてしまう。着地すると同時にニヤリと笑い、姿を周囲の風景と同化させていく。
「消えたか……七瀬さん!」
周囲を見回し、相手の姿が完全に見えなくなっていることを確認したPSK−03が内蔵マイクで別の部屋にいる留美に呼びかける。
『いいわね、今から5分が勝負よ!』
留美の返事に黙って頷く潤。
それと同時に5階の廊下に臨時に設置されていたスピーカーから一斉に何かが割れるような音が鳴り響いた。

音とは空気の振動である。空気が振動し、相手に伝わることによりそれは音となり、相手に伝わるのだ。
ガセデ・ババルの身体の細胞はその何かが割れるような音が生み出した空気の振動を受けると、その特殊効果――透明化――を一時的になくしてしまうのだった。

突如鳴り響いた音に思わず周囲を見回すガセデ・ババル。まだ自分の姿が透明化から解除されていることを知らない。
「ウオオオッ!!」
PSK−03が背中や脚部に取り付けられたブースターを点火させ、更に足の裏に取り付けられているローラーをも駆使して物凄いスピードでガセデ・ババルに突っ込んでいく。そしてそのまま物凄い勢いでのパンチを叩き込む。
それは通常のPSK−03のパンチよりも遙かに威力を増していた。壮絶に吹っ飛ばされるガセデ・ババル。
PSK−03は足首に設置されたピックを床に突き立て強引にターンすると左手に内蔵されているガトリングガンを向け、倒れたガセデ・ババルに向けて発射する。よろよろと起きあがろうとしていたガセデ・ババルは特殊弾丸の洗礼を浴び、またも無様に吹っ飛ばされてしまう。
(良し、やれる……やれるぞ!!)
潤がそう思って右腕を振り上げた。再びブースターを点火、一気に加速して壁にもたれて起きあがったガセデ・ババルに向かっていく。右腕の追加装甲に装備されているのはPSK−03モードAのメインウエポンであるガトリングステーク。杭打ち機の要領で射出される特殊合金製ステークは厚さ30センチの鋼版ですら容易く貫く。
「喰らえぇっ!!」
雄叫びを上げながら右腕を突き出すPSK−03。しかし、ガセデ・ババルは天井に向けて舌を伸ばしPSK−03の右腕が、ガトリングステークが叩き込まれる寸前にジャンプ、天井に張り付いてその一撃をかわしてしまった。
「ヌウウウ……」
唸り声を上げてPSK−03を睨み付けるガセデ・ババル。どうやら自分の姿が相手に見えていることに気付いたらしい。その表情には怒りの色がありありと見て取れる。
「どうやら貴様らビサンを甘く見すぎていたらしい。これからは本気でいく……」
はっきりとそう宣言しガセデ・ババルは天井から床へと降りた。
『北川君、気をつけなさい。そいつは消えるだけじゃない。力もかなりのものよ』
「わかってます!」
聞こえてくる留美の声にそう返し、潤はごくりと唾を飲み込んだ。
第29号はこれから本気を出すと言っている。今までは本気ではなかったと言うことだろう。どうやらそう簡単に勝たせてはくれそうにもない。それに残り時間も少なくなっている。
PSK−03のマスク内のモニターの端に表示されているタイムカウンターは残り2分43秒を刺している。一瞬の判断が勝敗を分ける。
(やるしかないんだ……やるしか……この俺が!!)
意を決したPSK−03がガセデ・ババルに向かって突っ込んでいく。
「マヲジョソ・ロマヂ・ゴション」
そう呟いてひらりとジャンプしてPSK−03の突進をかわすガセデ・ババル。だが、そのすぐ後ろでPSK−03は足首に設置されているピックを床に突き立て強引にその場でターンしていた。
「こいつを喰らいやがれっ!!」
盛り上がった両肩の装甲板が開き、その中から数千発にも及ぶベアリング弾が発射される。PSK−03モードA最強の武器、クレイモアランチャーである。その威力は絶大で、人間なら跡形もなく消し去ってしまう程だ。
それが着地したばかりのガセデ・ババルを襲ったのである。着地したことにより体勢が不十分だったガセデ・ババルは数千発にも及ぶベアリング弾から逃れることは出来なかった。
「ギャアアアアッ!!」
悲鳴を上げて吹っ飛ぶガセデ・ババル。
「やったか?」
期待を込めて吹っ飛んだガセデ・ババルを見るPSK−03だが、もとより人間以上のタフネスさを持つ未確認生命体だ、かなりのダメージを受けてはいるがまだ倒すには至っていない。よろよろ、ふらふらと起きあがってきている。
「クッ……なら……七瀬さん、モードBを!!」
『了解、PSK−03モードB,プロテクト解除!!』
留美の言葉と共にPSK−03のマスク内のモニターが赤く染まる。相手を完全に殲滅する為に存在するバーサーカーモード。これがあるが故にPSK−03はコードネーム”ベルセルガ”と呼ばれるのである。
このモードBが起動するとPSK−03の専用AIの反応速度や各パーツの運動性が格段に跳ね上がる。しかし、その分装着員には絶大な負担を強いる諸刃の剣だった。
「ウオオオッ!!」
雄叫びを上げてPSK−03がふらふらのガセデ・ババルに向かって突っ込んでいく。相手が透明化出来ない時間はそれほど残っていない。姿を消されたら、センサーを破壊されている今のPSK−03では探しようがないし、戦いようがない。だからこそ、短期決戦を狙ってのモードB起動なのだ。
右腕を振り上げる。この一撃を叩き込むことが出来なければ、相当にやばい。何せ残り時間は30秒を切っている。これがラストチャンス。
「オオオオッ!!」
再び雄叫びを上げ、右手を、ガトリングステークを突き出すPSK−03。
ガセデ・ババルは自分に向かってくるPSK−03を見ると、口を大きく開けて舌をPSK−03に向かって伸ばしてきた。長く伸びた舌先がPSK−03の胸部装甲に触れ、たわむ。次の瞬間、まるでゴムのようにたわんだ舌がピンと伸び、その反動でガセデ・ババルは後方へと飛び下がっていた。
突き出した腕を空振りさせられ、思わず呆然となるPSK−03を前に、ガセデ・ババルはニヤリと笑った。
『……タイムリミット……』
愕然とした留美の声。
「……まだだ!!」
潤はそう言って再び未確認生命体第29号に向かって突っ込んでいく。
「逃がすわけにはいかないんだっ!!」
背中と脚部のブースターを全開にする。足についたローラーが床との摩擦で火花を飛ばす。狙うは一点。第29号のみ。そのスピードはPSK−03モードAの限界速度を超えていた。
物凄い速度で突っ込んでくるPSK−03を見ながら、姿を消していくガセデ・ババル。もはや相手に自分の姿を捉えることは出来ない。ダメージを思った以上に受けすぎたが、これもある程度の時間があれば回復する。ゼースの残り時間を考えればギリギリだが。
そんな事を考えながら透明になっていくガセデ・ババル。だが、一つ、見落としていたことがあった。それは………背を向けている方にあった大きな窓。そこから入ってくる太陽光。
PSK−03の突進から逃げようと踵を返した時、ガセデ・ババルは自分の迂闊さを呪った。姿を消すことが出来てもそれは体色を周囲のものにあわせる保護色でしかない。実体を消すことは不可能なのだ。体温は消せない、壁を通り抜けることも出来ない。そして…………光を透過することも出来ない。
窓から入ってくる陽光、それは近くのガラス張りのビルからの反射光。それが今、はっきりとガセデ・ババルの影を映しだしていた。
「そこだぁぁぁぁぁっ!!!!」
吼えるPSK−03。
ガセデ・ババルは慌てて窓の方に走り出した。あの窓を突き破り外に飛び出す。そして屋上へと脱出。そうすれば後は何とか逃げきれるはずだ。尤も後方から迫ってくるPSK−03を振り切れれば、の話だが。
走りながら舌を伸ばしガラスを叩き割る。そこに出来た穴に飛び込もうとガセデ・ババルがジャンプした時、PSK−03がその背に追いついた。
「これでも喰らえぇぇぇっ!!」
その叫びと共に突き込まれるガトリングステーク。炸裂音と共に鋭い穂先がガセデ・ババルの皮膚を貫き、体内に深く突き刺さる。
「ガハッ!!」
口を大きく開け、息を吐き出すガセデ・ババル。
次の瞬間、両者は勢い余って窓の外へと飛び出していた。
『北川くんっ!!』
留美が思わず叫び声を上げる。だが、潤はそんな事に構わず目の前の敵を倒すことだけに専念していた。
「とどめだっ!!」
落下しながら、連続する炸裂音と共に何度も深く肉体を貫くステーク。最後の一撃でガセデ・ババルの体内にある何かを打ち砕き、次の瞬間ガセデ・ババルは断末魔の悲鳴を上げて空中で爆発した。
その音を聞いて囮作戦の舞台であった5階にあちこちの部屋に姿を隠していた刑事達が廊下に飛び出し、PSK−03とガセデ・ババルとが落ちていった窓を覗き込む。勿論その中には留美や斉藤の姿もある。
「北川君………」
「北川さん……」
二人とも顔面蒼白になっていた。いくらPSK−03が頑丈だと言っても5階の高さから落ちれば無事にはすまない。それに今回はモードA装備でその重量は更に増している。たとえ外側が無事でも中の装着員が無事にはすまないはずだ。
窓から下を見下ろす。まだ爆発の煙で地面は見えないが、そこにあるであろう惨状を想像して思わず留美は顔を背けていた。
『……瀬さん……』
と、インカムからノイズ混じりの声が入ってきた。
「……?」
思わず顔を上げる留美。
「北川君……?」
『……はい、北川です……未確認生命体第29号の殲滅、完了です』
ノイズ混じりのその声を聞いて留美は思わず笑みを零していた。同じようにインカムをつけていた斉藤も嬉しそうな表情を浮かべる。
「ご苦労様、北川君。で、何処にいるの?」

PSK−03は何と2階の廊下に倒れていた。
どうやらガセデ・ババルが爆発した際に丁度2階の窓の側にいたらしく爆風で中に吹き飛ばされてしまったらしい。更に未だついていたブースターが上手く衝撃を和らげてくれたようで、潤はほとんど無傷での生還を果たしていた。
尤もPSK−03のメインのバッテリーは切れてしまい、身動き一つ取れなくなってはいるのだが。
倒れて、動けないPSK−03のマスクの下、潤は安堵の笑みを漏らしていた。

<都内某所・ガラス張りのビルの屋上 10:32AM>
少し前に向こうの白い建物の側で起きた爆発。
それが何を意味するかわからないものはその場にはいなかった。
「ガセデバ・ニヲジャガ」
そう呟いたのは切れ長の目を持つ女性。
「シュジゴノ・ゴモヴァシャニア・ゼースモ・ツデリギャージャ」
切れ長の瞳の女性がそう言うのを聞いても誰一人として異議を唱えるものはいない。この場において、切れ長の瞳の女性はそれほどまでの力を持っていたのだ。
「バギャグ・ガルヲシャーン・ビドッシェゴリ・ラヲソ」
”ラヲソ”と呼ばれた男は背を丸めたまま、切れ長の瞳の女性を見上げた。
「ロサレナヲミ・リヴァデヅ・サジェソマリ」
ギロリと切れ長の瞳の女性を見上げて言い、歩き出す背を丸めた男。
その様子をニヤニヤ笑いながら見ているキザな男がいた。
切れ長の瞳の女性はキザな男の視線に気付くときっとキザな男を睨み付けた。
「マミガ・ロガニリ・タッシャ?」
「ツデリギャーン・ギセヅノバ・ロサレカマリ・ノデバ・ターダモニオショジャ」
すっと目を細めてキザな男が言う。
「マヲジャショ!?」
「ヅーヅバ・サソデ・ジェマゲデタ……」
キザな男が全身から物凄い殺気を放つ。それはその場にいた全ての者を震え上がらせ、更には一歩後退させてしまう程のものであった。この殺気でキザな男が何が言いたいのか、理解出来なかった者はいないだろう。しかし、その中で一人、切れ長の瞳の女性だけが一歩も引かずきっとキザな男を睨み付けていた。
「タッシャ・ヴァシャニン・バルジャショ・ロソッシェ・マセヅマ!」
「マセシェマジョ・リマリ・ショグミ・ロサレバマ」
そう言ってキザな男は肩を竦めた。
「……ターダバ・ジョルニシャ?」
「ボガモ・チナミ・ギョバデシェ・リマリ」
答えたのは切れ長の瞳の女性に”ラヲソ”と呼ばれた背を丸めた男だった。
「……ノドノド・ターダソ・ギャタリガソマ」
キザな男はそう言うと低い声で笑った。

<喫茶ホワイト 10:41AM>
カランカランとカウベルの音がして勢いよくドアが開けられる。
「いらっしゃいま……香里さん?」
店内にいたウエイトレスの長森瑞佳は息を切らせて飛び込んできた香里を見て驚きに目を丸くした。
「ど、どうしたの?」
「あ、相沢君は帰ってきた?」
彼女はこの店に彼がいないことを知っていた。1時間程前にも香里はこの店を訪れている。その時に彼女が探している相沢祐一が昨日から帰ってきていないことを聞かされていたのだ。
「ううん、まだだけど」
「連絡とかは?」
「全く無いよ。ねぇ、マスター?」
瑞佳が振り返り、カウンターの奧で新聞を広げていたマスターを見る。
「ああ。昨日飛び出していったきり何も音沙汰無しだ」
「……何やってるのよ、この大事な時に……」
小さい声で呟く香里。その表情には明らかに苛立ちが見て取れた。
「瑞佳さん、相沢君から連絡があったらすぐに私に連絡くれるように言っておいて」
「いいけど……何かあったの?」
「……これは……私とか相沢君の話なの。ゴメン」
少し申し訳なさそうに香里が言ったので、瑞佳は小さく頷いた。
「わかったよ。祐さんから連絡あったらちゃんと伝えておく」
「……ゴメン、瑞佳さん。事が終わったらちゃんと説明するわ」
香里はそう言うと、すぐに喫茶ホワイトから出ていった。表に停めてあったスクーターに乗って何処かへと去っていく。
「……何が……あったんだろう……?」
いつもとは違う、香里の追いつめられたような表情に瑞佳は何とも言えない不安を覚えていた。

<東京都内某警察病院 10:50AM>
未確認生命体第29号撃破の事後処理を未だ病院に残ってやっていた警視庁未確認生命対策本部の刑事・国崎往人はいきなり鳴り出した携帯電話に顔をしかめた。
「……ったく、この忙しい時に」
ぶつぶつ言いながら携帯電話を取り出す。
「はい、国崎……」
『あんたにお願いがあるの』
「……美坂香里。俺は今、忙しいんだが」
電話をかけてきた相手の顔を思い出し、国崎は更に顔をしかめる。
『あんたにお願いがあるの』
わざわざ繰り返す香里。その声から物凄く不機嫌だと言うことがありありとわかる。逆らわない方がさっさと終わるだろう。
「……何だ?」
『人を一人捜して欲しいの』
「またか!? 前にも言ったと思うが俺は未確認担当であって行方不明人捜索係じゃない」
『わかってるわよ、そんな事。前にも言ったけど警察関係なんてあんたぐらいしか思いつかないし』
「……前にも似たようなことがあったな。あの時は未確認亜種が出て話を聞くどころじゃなかったが」
『探して欲しいのはあの時と同じ人物よ。あんたも秋子さんには会っているでしょ? その秋子さんの娘の名雪を捜して欲しいの』
「……ああ、そういやなんか話を聞いたっけな。祐の字がどうしてもその手に取り戻したいって言う子の事だな?」
『ええ、そうよ。一刻も早く探し出さないと取り返しのつかないことになるわ』
「しかしなぁ……」
そう言って国崎は周囲を見回した。鑑識やら他の警官達がまだ忙しそうにしている。この中を抜け出すのはおそらく無理だろう。それでなくても第29号撃破の報告書を書かなければならないのだ。とてもじゃないが人捜しなどやっている余裕はない。
「今は動けそうにない。手が空いたら連絡するから……」
『それじゃ遅いのよ!! 事態は一刻を争うのよ!!』
電話の向こうで香里が本気で怒っている様子が脳裏に浮かぶ。この様子からするとかなり焦っているようだ。普段の冷静さが嘘のように。
「あのな、俺も仕事があるんだ。無茶言わないでくれ」
自分も怒鳴り返したい気持ちを必死に堪えて国崎は言った。
『……そう、ね。あんたも仕事あるんだったわね……』
帰ってきたのは何処か沈んだ声。どうやら自分が無理を強いていたことに気付いたらしく、彼女にしては珍しい程声が沈んでいる。
『ゴメン、無茶言って……』
「……イヤ、俺も何とか手伝う。美坂、お前や祐の字には世話になりっぱなしだからな」
余りにも沈んだ香里の声に何となく罪悪感を憶え、国崎はそう言い、また周囲を見回した。今度は周囲の様子を見るのではなく、ある人物の姿を探して。目的の人物はすぐに見つかった。
「後で連絡する。一旦切るぞ」
そう言って携帯電話の通話を切り、彼は他の警官と何やら喋っている住井の側に歩いていった。
「住井君」
「……ダメですよ」
明るく声をかけたのだが返ってきたのは否定の言葉だった。しかも間髪を入れず。
「……まだ何も言ってないと思うんだが?」
「どうせ報告書を書くのを替われとか言うつもりだったんでしょ? 今回は絶対に替わりませんよ。神尾さんにも言われているんですから」
容赦の欠片もない否定。国崎はどうするべきかと黙って考え込み始めた。
このまま大人しく引き下がってしまっては香里が果てしなく怖い。だが、ここで問答無用で逃げ出したら今度は晴子が物凄く怖い。はっきり言ってどっちもどっちであった。
「………なんてついてないんだ、俺は」
自らの不運を嘆くように呟く国崎。
「住井、悪いことはいわん。俺の身を案じてくれるなら是非とも替わってくれ」
ガシッと住井の肩を掴んで国崎が言う。
「意味がわかりませんよ。……で、一体何だって言うんです?」
根負けしたと言わんばかりに住井が国崎を振り返った。
「知り合いが行方不明になったんだ。そいつを捜してくれって頼まれてな」
「知り合い? 国崎さんに俺たちの他に知り合いなんていたんですか?」
「それは物凄く失礼な発言だと思うが……」
思わず半眼になって住井を見る国崎。
「とにかく事態は一刻を争うらしい」
「……仕方ありません。今度だけですよ」
そう言ってため息をつく住井。
「すまない。この礼は必ずする!」
国崎はそう言うと、大急ぎで階段へと向かっていった。

<東京都奥多摩地区内某所 11:25AM>
相沢祐一は愛車であるロードツイスターを物凄いスピードで走らせていた。
「やっばいな〜、一体何時間連絡してないんだ、俺?」
昨日の朝に喫茶ホワイトを出てから一度も連絡を入れていない。きっとマスターはカンカンだろう。瑞佳さんも心配しているに違いない。多分。
「やっぱり携帯、持つかな?」
余り好きじゃないんだが、と心の中で付け加える。まぁ、香里や国崎にも持てと言われていることだし。
と、ロードツイスターのコンパネに取り付けてある無線が呼び出し音を鳴らした。
走りながら無線のスイッチをオンにする。
「ハイよ、相沢……」
『祐の字か? 今どこに……』
『相沢君、何処で油売ってるのよ!! この大事な時にっ!!』
まず国崎の声が聞こえ、それをかき消すかのように香里の大声が聞こえてきた。この様子だと香里の機嫌はすこぶる悪そうだ。
「まぁ、ちょっと色々あってな。今、奥多摩」
『相沢君、時間がないの。名雪を取り戻す最後のチャンスが……』
「……っ!! 名雪を取り戻す最後のチャンス? どう言うことだ?」
『詳しいことは会ってから話すわ。とにかく合流しましょう』
「わかった。すぐにそっちに行く」
祐一は無線のスイッチをオフにすると、ロードツイスターのアクセルを回し、更にスピードを上げた。流石に最高時速の300キロまで上げることは出来ないが、それでもかなりのスピードでロードツイスターは走っていく。
と、その時だった。突如黒い影がロードツイスターの真上にかかったのは。
はっとなった祐一が上を見るとそこには黒い翼を広げた鳥のような怪人の姿。
「……第2号!!」
未確認生命体第2号ガダヌ・シィカパ。
第26号の事件の時に突如現れた第2号はその身体を何者かによって改造されていた。その戦闘能力は改造され格段に向上している。剛力を誇った第26号と互角以上に戦って見せたのだ。
あの時以来姿を見せていなかった第2号が今頭上にいる。
「こいつは……」
不意に祐一の脳裏にあることが思い出された。
自分の目の前で瑞佳が背中から血を吹き出しながら倒れていく。その向こう側には笑みを浮かべた第2号の姿。
悪夢のようなあの一瞬。
「こいつは……逃がすわけにはいかないっ!!」
そう言って祐一は右手をアクセルから離した。そして前に突き出して十字を描く。
「変身ッ!!」
祐一の腰に霊石を埋め込んだベルトが浮かび上がり、その中央にある霊石が放射状に光を放った。その光の中、祐一の姿がカノンへと変わり、ロードツイスターもカノン専用マシンへと変化する。
アクセルを回して一気に速度を上げてガダヌ・シィカパを抜き去り、ある程度先行すると急ブレーキをかけタイヤを滑らしながら停止するカノン。そして空中のガダヌ・シィカパを見上げた。
「……カノン……!!」
ガダヌ・シィカパは自分の真下にいた男がカノンに変身したのを見て驚いていた。
第26号ゾヂダ・ボバルとの戦いの後、PSK−03と戦い、更にその後フォールスカノンと戦ってそこで受けた傷を癒すのに今までかかった。どうやらパワーアップの為に埋め込んだ機械などが元々の治癒能力を下げてしまったらしい。ようやく傷が癒え、また殺戮を開始しようと思って狙いをつけた男がよりによってカノンだったとは。
しかし。
ニヤリと笑うガダヌ・シィカパ。
「……チョウドイイ……ココデカノン、オマエヲコロス……」
そう呟き、こちらを見上げているカノンに急降下していく。
「行くぞっ……!!」
カノンはエンジンを吹かせ、ロードツイスターをウィリーさせながら発進させた。そして急降下してくるガダヌ・シィカパに向かってロードツイスターごとジャンプ。
「ナニッ!?」
驚きの声を上げるガダヌ・シィカパを上手く後輪で捉え、地面に叩き落とすカノン。自身はガダヌ・シィカパの身体を上手くステップ代わりにして華麗に着地している。すかさずロードツイスターから降りたカノンは起きあがろうとしているガダヌ・シィカパに猛然と向かっていった。振りかぶった右のパンチがガダヌ・シィカパの顔面を捉えて吹っ飛ばす。
「おおりゃあ!!」
更に左のフックを喰らわせ、ガダヌ・シィカパがよろけたところに蹴りを叩き込んでいく。
たまらず吹っ飛ばされるガダヌ・シィカパ。
「お前を逃がすわけには行かないんだ……覚悟しやがれ」
指をポキポキ鳴らしながら倒れたガダヌ・シィカパに近寄っていく。
何とか起きあがったガダヌ・シィカパはまるで許しを請うかのようにカノンに向かって手を突き出し、後退する。だが、それよりもカノンの歩みの方が早い。
突き出された手を払い除け、パンチを叩き込む。二発、三発と連続で叩き込み、ガダヌ・シィカパがよろけて後退するのを見ながら腰をすっと落とす。必殺のキックの体勢。
「お前だけは……絶対に許せない……!!」
そう言ってカノンがジャンプする。空中で一回転してから右足を前に突き出す。その右足が光に包まれたその瞬間、低いエンジン音を響かせ一台のアメリカンバイクが突っ込んできた。
アメリカンバイクに乗っていたのは勿論キリト。
「変身……!!」
ニヤリと笑いながら彼がオウガに変身を遂げ、ジャンプした。ガダヌ・シィカパに向かって突き出しているカノンの蹴り足を自分の足で蹴り上げ、そのまま逆の足でカノンのボディにキックを叩き込む。
「何っ!?」
必殺のキックを横から邪魔され、地面に倒れるカノン。
一方邪魔をした方のオウガはすっと着地していた。
「まだこんなところで油を売っていたとは思いませんでしたよ」
倒れたカノンを見ながらオウガが言う。
カノンは素早く起きあがるとオウガを睨み付けた。
「お前は……」
「我が名はオウガ。あなたを殺す為に雇われた者」
そう言ったオウガの身体がぐらりとよろめいた。イヤ、よろめいたように見えただけで、オウガはあっと言う間にカノンとの距離を詰め、そのボディにパンチを食らわせている。
「ぐっ!」
「死んで貰いますよ、カノン……相沢祐一!!」
言いながらカノンの首筋に上からエルボーを叩き込む。地面に倒れたカノンにめがけて爪先蹴り。のけぞって吹っ飛ばされるカノン。
地面に倒れたカノンに向かって再び蹴りを食らわそうとするオウガだが、カノンはすぐに起きあがりその足を受け止めた。
「ヘッ……そう何度も喰らってやるわけにはいかないんでな」
カノンはそう言うとオウガの足を掴み直し、そのまま一気に持ち上げた。
片足を持ち上げられ、バランスを崩して倒れるオウガだが腕を伸ばして地面に着地し、更にそのまま大きく後方へと飛び退いた。
カノンはオウガを追いかけるように前に出てパンチを繰り出すが、すっと身を反らせてオウガは楽々とかわしてしまう。更にパンチを連続して出すカノン。だが、その全てをオウガは身を逸らすだけでかわしきってしまった。
「まるでなっちゃいませんね……」
又カノンのパンチをかわしたオウガが小さく呟いた。今度は片足を半歩だけ後ろに引く。そうしてからカノンのパンチをかわすと同時にカウンター気味のパンチをカノンの顔面に叩き込んだ。
「パンチとはこうやるのですよ」
パンチをまともに喰らってよろめき後退したカノンに向かってそう言い、オウガはゆらりとカノンに近寄る。
「そしてキックはこう」
言いながら前蹴りをカノンのボディに喰らわせる。
為す術もなく吹っ飛ばされるカノンだがどうにか倒れ込むことだけは防いだ。
(クッ……こいつ、やっぱり強い……あれを使うか……?)
カノンの言う”あれ”とはこの日の朝方にようやく制御することが出来た水瀬の血による”不可視の力”のことである。同じ血脈を持ちながらもその力は千差万別で、カノン、祐一に発現したのは”虚無の力”。空間を引き裂く虚無を生み出す力である。同時にそれはありとあらゆるものを無効化する力も有していた。しかしながらその力は異常な程に体力を消耗してしまう。いわば背水の陣的な力なのだ。
(ダメだ……ここであれを使うわけには行かない……名雪を助け出すまでは……倒れている暇はないんだ!!)
よろける身体を踏ん張り、カノンはオウガに向かって走り出した。
「フォームアップ!!」
走りながらカノンが叫び、同時にベルトの中央の霊石が赤い光を放った。その光を纏うかのようにカノンの姿が赤く変わる。
「ウオオオオオッ!!」
筋力を増し、太さをも増した右腕を振り上げ、カノンが吼える。
「……っ!!」
オウガは自分に迫ってくるカノンを見て、すぐさま地を蹴って後ろへと飛び退いた。
だが、カノンはそれに構わず突っ込んできた。そのカノンの右の拳が炎に包まれる。未確認生命体ならば一撃で倒してしまう必殺のパンチ。そのパンチがオウガを襲う。
「やって……くれるっ!!」
身体をのけぞらせてそのパンチをどうにかかわすオウガ。同時に足を振り上げてカノンの右腕の付け根当たりを蹴り上げる。しかし、強化されたカノンの右腕はびくともしない。逆に地面に背中から倒れてしまう。
倒れたオウガを見てカノンが再び右拳を振り上げた。今度は真上から真下へ。躊躇うことなく炎の拳を振り下ろすカノン。
慌てて横に転がり、振り下ろされたその拳をかわすオウガ。
カノンの振り下ろした拳は地面、アスファルトに拳大の穴を穿っていた。イヤ、それだけではない。纏っていた炎の所為なのか、アスファルトが溶けている。それを見たオウガはビクッと身体を震わせた。
(何てパワーだ……こいつは面白いことになってきた……)
素早く立ち上がるとオウガは首をぐるりと回した。
「さぁ……続けようか?」
「生憎だがな、そんな暇はないんだよ!」
赤からいつもの白に戻ったカノンはそう言うと後ろに停めてあったロードツイスターに駆け寄った。
(あいつの相手をしている暇はない……香里達と早く合流しないと……)
そう思いつつ、ロードツイスターに跨り、エンジンをかける。
「……逃げるんですか? 私が水瀬の大婆様に雇われていることを忘れたようですね?」
その場に立ち、悠然とロードツイスターに跨っているカノンを見やって言うオウガ。
「お姫様の居場所を知りたいのでしょう?」
「テメェ……」
「知りたければ私を倒すことです……さぁ!!」
オウガはそう言うとカノンに向かってジャンプした。空中で鋭く蹴りを放つ。
ロードツイスターを発進させてオウガの蹴りをかわしたカノンはすぐさまUターンし、着地したオウガを見た。
『相沢君っ!! 何やってるの!? さっきからちっとも連絡しないで!!』
香里の声が無線から聞こえてくる。
『時間が無いって言ったの、忘れたの!?』
「……悪いが……取り込み中だ。少し遅れる……」
カノンはそう言うとクラッチを切ったままエンジンを吹かせた。
「それに名雪の居場所を知っていそうな奴がいてな……そいつに名雪の居場所を吐かせてから合流するよ」
言い終わるのと同時にロードツイスターが前輪を振り上げて急発進した。
「そう簡単に口を割るとは思わないでくださいよ!」
オウガもロードツイスターに向かって走り出す。

<都内某所 12:14PM>
香里は無線のマイクをホルダーに戻すと国崎の方を向いて首を左右に振った。
「何かあったみたいだわ」
「ああ、そうらしいな」
ハンドルを握ったまま国崎が答える。
「また別の未確認でも出たのか?」
「違うみたい。どうやら水瀬一族の関係者っぽいのに襲われているようよ」
「あのまやかしのカノンみたいな奴のことか?」
「それはわからないけど……」
そう言って香里は不安げに目を伏せた。
城西大学考古学研究室で秋子の話を聞いてから既に2時間ぐらい経過していた。秋子の言うラストチャンスの期限も後どれくらい残っているかわからない。それなのに祐一は未だ合流せず、何者かと戦っている。それもどうやらかなりの強敵らしい。
「しかし、あいつも良く襲われたりする奴だな」
「水瀬一族にとって相沢君はいてはならない存在のようだからね。とにかくこっちはこっちで動きましょ」
そう言って香里は手に持っていた地図を広げた。
その地図は考古学研究室内で秋子が水瀬一族の隠れ家にしていそうな場所をわざわざ印づけてくれたものである。これを頼りに香里は名雪を捜し出すつもりであった。
「動くって言ってもなぁ。その名雪だっけ? その子が何処にいるか皆目見当もつかないんだろ? それじゃ探しようが……」
そう言って国崎が香里の方を見る。
「それでもよ!」
香里は強い口調で言い返した。
「それでも探すしかないのよっ!!……それが私に出来るあの子への償いなのよ……」
国崎の方を見ずに香里はしっかりとそう言う。
それを聞いた国崎は何も言うことが出来ず、正面を向いた。
「……で、まずは何処だ?」
「……ええ、そうね。まずは……」
香里は再び地図に目を落としある一点を指で示した。
偶然にもそこは何時か祐一達が秋子を救出した廃工場跡だった。

<東京都奥多摩地区内某所 12:16PM>
前輪を振り上げ、ウィリーしながら突っ込んでくるロードツイスターに果敢に向かっていくオウガ。
「フハハハハッ!!」
オウガは笑い声を上げながらロードツイスターの手前でジャンプすると空中で蹴りを放った。その蹴りはカノンに綺麗にヒットし、カノンはロードツイスターから振り落とされてしまう。
「どうしました? 私を倒すのではなかったのですか?」
嫌味な口調でオウガが言う。
地面に倒れていたカノンはすぐに起きあがるとファイティングポーズをとった。
(名雪の居場所を聞き出すにしろ、香里達と合流するにしろ、とにかくこいつをどうにしかする必要がある……)
しかし、目の前にいる相手は恐ろしく強い。そう簡単にはいかないだろう。それでもやるしかない。
カノンが決意を決め、一歩前に出たその時であった。
突如空から巨大な翼を持った怪人がカノンとオウガの間に舞い降りてきた。
「フッフッフ……ゴヲマショ・ゴドジェ・ラレヅショバマ・カノン!!」
翼を折り畳みながらその怪人、大鷲種怪人リズヅ・シィバルはカノンを指さして言った。
「ロソニドリ・ガダヌモ・ニサシュバ・ラショミニシェ・ナギミロサレガダ……」
リズヅ・シィバルがそう言い、一歩カノンに向かって足を踏み出した時、その背後にすっとオウガが現れ、その肩を掴んだ。
「邪魔をする気ですか?」
言いながらおもむろにパンチをリズヅ・シィバルに食らわせる。
いきなりの攻撃に思わずよろけてしまうリズヅ・シィバル。
「カノンを殺すのは私の仕事でしてね……誰にも邪魔をさせませんよ……」
オウガはそう言うとカノンに向かって走り出した。
だが、その横をすっとリズヅ・シィバルが風のように追い抜いていく。そのままカノンに向かって突っ込んでいく。
「カノンン・ゴドヌモバ・ゴモロデジャ!!」
その指先に生えている爪を光らせ、カノンに襲いかかるリズヅ・シィバル。
「そうはいくかよっ!!」
迎撃するかのようにカノンが回し蹴りを放つ。伸ばした足先がリズヅ・シィバルの爪の先を弾き返し、更に身体をもう半回転させながら放った後ろ回し蹴りがリズヅ・シィバルの横っ面を直撃した。
吹っ飛ばされるリズヅ・シィバルの身体を飛び越え、オウガがカノンに掴みかかってくる。
「流石ですよ、カノン!!」
「テメェもだよっ!!」
カノンは更に身体を半回転させて掴みかかってきたオウガに回し蹴りを叩き込んだ。
「何とっ!?」
とっさに腕でカノンの蹴りをガードするオウガだが、衝撃を殺しきれず真横に吹っ飛ばされてしまう。
「ぬうっ!!」
倒れるのを必死で堪え、オウガが顔を上げるとすぐ目の前に右手を振りかぶったカノンの姿。
「喰らいやがれっ!!」
勢いをつけたカノンのパンチがオウガの顔面を捉え、今度こそ吹っ飛ばす。
地面を転がるオウガ。
更に追い打ちをかけようとしたカノンの背後にリズヅ・シィバルが飛びかかってきた。カノンを羽交い締めにしようとするが、カノンは肘打ちをリズヅ・シィバルの横っ面に喰らわせその腕の中から脱出する。すかさず地面を転がり、リズヅ・シィバルと距離を取り起きあがる。
「フッ……なかなかやってくれる」
そう言ったのは起きあがったオウガだった。
「それでこそ殺し甲斐があるというものです……」
じりじりとカノンに迫り寄るオウガ。
そして別の方向からはリズヅ・シィバルがカノンに近寄ってきていた。
「カノン・ミヲジェ・ソダル」
威嚇するように翼を広げ、爪を光らせてカノンに迫り寄るリズヅ・シィバル。
「くうっ……」
左右両側から迫ってくる強敵にカノンは一歩足を引いていた。この両者を同時に相手するのはかなりきつい。おそらく一対一でもかなり苦戦を強いられるだろう。名雪を助け出すタイムリミットまで後どれくらいあるのかわからない今、事は一刻を争う。
(どうすれば……いい?)
とにかくこの場を何とか切り抜けるのが先決だ。そう思い、カノンは横倒しになったままのロードツイスターに目をやった。それほど離れた場所にあるわけではない。だが、そこに辿り着くにはオウガとリズヅ・シィバルを何とかする必要がある。
(一か八か……やるしかないっ!!)
意を決してカノンが飛び出した。
「フォームアップ!!」
カノンの姿が白から青になる。ダッと地面を蹴り、転がるようにしてオウガとリズヅ・シィバルの間を駆け抜け、ロードツイスターの方に向かう。
「ミザヌガ!!」
リズヅ・シィバルが振り返り、広げた翼から羽根を引き抜いてカノンの方に向かって投げつけた。
背中側から飛んで来た羽根に気付いたカノンはとっさに横に飛び、飛んで来た羽根をかわす。更にそのまま地面を転がって飛びかかってきたオウガをもかわした。
「何処に行く気ですか?」
着地したオウガがそう言ってカノンを振り返る。
「私を倒さないんですか? お姫様の行方、知りたいのでしょう?」
「この……」
片膝をついて起きあがったカノンはぐっと拳を握りしめ、オウガを睨み付けた。そこに飛びかかってくるリズヅ・シィバル。大きく後方にジャンプしてリズヅ・シィバルをかわし、着地すると同時に身体を沈めてリズヅ・シィバルの足を払うカノン。
「俺の邪魔をするなぁっ!!」
そう叫んで立ち上がったカノンは倒れたリズヅ・シィバルを踏みつけてからオウガへと駆け出した。
「さぁ……来いっ!!」
両腕を広げて突っ込んでくるカノンを待ち受けるオウガ。
カノンはオウガのその腕の届く範囲に入る直前にジャンプ、そのままオウガを飛び越える。
オウガのすぐ後ろに着地したカノンはすかさずオウガの首筋を左腕で締め、右腕でオウガの右腕を押さえた。
「言えっ!! 名雪は何処だ!? あのクソババァは何を企んでやがる!?」
「この程度で言うとでも?」
オウガは空いている左手で自分の首を締め上げているカノンの腕を引きはがそうとするが上手く引きはがせないでいる。それをいいことにカノンは更にオウガの首を締め上げていった。
「言わないとその首へし折るぞ、この野郎!!」
「フフフ……なかなか威勢のいいことを言ってくれますが……」
カノンの首を絞められ、苦しそうに言うオウガ。しかし、それでもまだ何か余裕のある口振りである。
「あなたの相手は私だけではないと言うことをお忘れ無く……」
オウガがそう言った時、カノンの両肩を何かがガシッと掴んだ。はっとなったカノンが上を見上げると、そこには翼をはためかせたリズヅ・シィバル。カノンの両肩を掴んでいるのはリズヅ・シィバルの両足であった。鋭く尖った爪がカノンの肩に食い込んでいる。
「しまった……!!」
リズヅ・シィバルはカノンの驚きと焦りをよそに翼を更にはためかせて上昇していく。その力は強大で、青いカノンのパワーでは堪えることは出来なかった。オウガを締め上げていた腕を離してしまい、カノンはそのまま上へと連れ去られてしまう。
オウガは少し咳き込んだが、すぐに上を見上げニヤリと笑った。
リズヅ・シィバルに両肩を掴まれ空に持ち上げられたカノンは何とか肩に食い込んだ爪を剥がそうともがいている。それはほとんど無防備な状態に近かった。
「フフフ……死んで貰いますよ、カノン」
すっと腰を落とし身構えるオウガ。カノンの必殺のキックの体勢を鏡に映したような体勢。それはカノンのキックと同等の威力を誇るオウガのキックの体勢であった。
「では……さようなら、相沢祐一……」
オウガが上空のカノンめがけてジャンプした。
まるでそれに合わせたかのようにリズヅ・シィバルがカノンを離した。
為す術もなく落下していくカノン。そのカノンに向かって左足を突き出すオウガ。まさに絶体絶命。
と、その時、一台の黒いオンロードマシンがエンジン音を唸らせて突っ込んできた。そのオンロードマシンは大きくジャンプすると、オウガの背中へと体当たりしていく。
「なっ!?」
とっさに身体を捻り、オウガはジャンプしてきたオンロードマシンのカウルに手をつき、その反動を利用して大きく後方に飛び退いた。
オウガを逃がしたオンロードマシンはそのまま落下してきたカノンを受け止めると、上手く路上に着地する。
「な、何者だ!?」
同じく着地したオウガがオンロードマシンを振り返って怒鳴った。普段冷静なオウガが思わず怒鳴ってしまったことから、カノンにとどめを刺せなかったことに対してかなり怒っていることがわかる。
「何者だぁ? 人に名前を聞く時は自分からって教わらなかったのか、あんた?」
黒いオンロードマシンに乗った男が振り返ってそう言う。
カノンはその声を聞いて、そして自分を助けてくれた黒いオンロードマシンを見て、すぐに彼が誰だか思いだしていた。
「お前は……」
「フッ、久し振りだな、相沢。イヤ、カノンって言うべきか?」
男はそう言ってヘルメットを脱いだ。
ヘルメットを脱いだ男はカノン、イヤ祐一とそれほど年の変わらない青年だった。不敵な笑みを浮かべてカノンの肩にポンと拳を押し当てる。
「随分苦戦しているじゃねぇの。ま、二対一なら仕方ねぇか」
そう言ってから青年は再びオウガの方を振り返った。
「へぇ……あんたがあの……話には聞いてるぜ」
「貴様……何者だ?」
怒りを押し殺してオウガが問う。
「おいおい、さっきも言っただろう? 人に名前を聞く時はまずは自分からだって」
あくまで人を食った態度。おどけるようにそう言い、青年はカノンを振り返った。
「手を貸すぜ、相沢。まだ借りを返し切っちゃいないんでな」
そう言って青年が黒いオンロードマシンから降りる。
「貴様、こっちの質問に……!!」
「俺の名は折原浩平……知らないとは言わせないぜ、あんたにはよっ!!」
折原浩平はそう言うと両手を交差させて胸の前に突き出した。交差させた腕をゆっくり左右に開き、左手だけを腰の前まで引く。次いで左手を腰の左側へ、右手も腰の左側へと引き寄せてからまた右手を前に突き出した。
「変身ッ!!」
浩平の腰のベルトが浮かび上がり、その中央にある霊石と霊石の左右に配置された赤と青の秘石が光を放った。その光の中、浩平の姿が戦士・アインへと変わっていく。荒々しい中にシャープさを秘めた戦士・アイン。
「貴、貴様が……」
目の前で変身を遂げたアインにオウガは思わず一歩後退してしまっていた。
「折原……」
「さぁ、行くぜ、相沢。まずはこいつらを撃退だっ!!」
「おうっ!!」
アインとカノンが並び立ち、それぞれ身構える。
それを見たオウガが流石にひるみを見せた。
「ウオオオオオッ!!」
「ウラァァァッ!!」
同時に駆け出すカノンとアイン。

<都内某所・廃工場内 12:43PM>
祭壇を前に老婆が一心不乱に祈り続けている。
その左右には双子の少女。
祭壇の上に寝かされた名雪は何処か苦しそうな表情を浮かべている。
老婆の口から漏れる呪文に名雪の身体はビクンビクンと反応していた。
(助けて……誰か……助けて……祐一……祐一っ!! )
声なき叫び。
しかし、無情にもその叫びは今の祐一には届いていなかった。

Episode.47「期限」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderKanon


次回予告
かつて彼は彼女を傷つけた
「聞こえているんだろ!!」
それでも彼女は彼を思い続けた
「目を覚ますんだ!!」
だが彼女の思いは彼には届かない
「そこから出て来いっ!!」
彼女はそう思い込んでしまっていた
彼が傷付いていたのを知っていたのに
自分の気持ちを押しつけてしまったから
「早く目を覚ませ!!」
そして、彼は今、人類の味方
彼女は今、人類の敵
運命の時は来た……!!
次回、仮面ライダーカノン
「名雪ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

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