この地球上にいる何億という人類





















その中でたった一つ変わらないもの























それは―――死





















死は等しく誰の上にも舞い降りる





















それは………





















彼らとて同じ
































仮面ライダークラナド
































DEAD or ALIVE
































カードデッキは13個

望みを叶えられる力を得られるのはたった一人

戦い、勝ち残った者だけがその力を手に入れることが出来る

戦いに敗れたものに待つのは

「死」という運命のみ
































ザクッ!!

背後からのその一撃は彼の心臓を貫いていた

「甘いですねぇ……」

彼を貫いた剣を持つ男が呟くように言う

「その甘さが貴方の命を奪ったんですよ……」

「き、貴様……」

振り返ろうとする彼の身体からその剣を引き抜く男

彼は思わず片膝をついてしまう

「フフフ……」

血に濡れた剣を片手に男はその場から去っていく

その背を、霞む目で追いかけながら彼はその場に崩れ落ちる

「高町さんっ!!」

倒れた彼の名を呼びながら一人の少年が駆け寄ってきた

「一体誰にやられたんだよ!?」

「……岡崎君……君は……」

彼は息も絶え絶えに少年に何かを伝えようとする

「君は負けるな……みんなを……守ってくれ」

そう言って彼は少年に一枚のカードを手渡す

カードの名は[FAMILIAR]

「頼む……岡崎君……」

彼は少年がカードを手に取ったのを見て、満足げに笑みを浮かべると

―――その場で息絶えた

「高町さぁぁぁんっ!!」

少年の絶叫がミラーワールドの中に響き渡る

その絶叫をBGMに彼、高町恭也の身体は消滅していく

ミラーワールドでの死、それはすなわち消滅を意味しているのだ……

































「ごちゃごちゃいやがって……ウザイんだよ、お前ら」

そう言って引き金を引く青年

「吹っ飛べ」

次の瞬間、物凄い量のエネルギー弾が発射される

目標は青年の前方で繰り広げられている戦いの場

そこで戦っていたものが自分達に向かってくるエネルギー弾に気付いた時は既に手遅れだった

エネルギー弾の着弾と同時に起こる大爆発

次々と吹っ飛ばされる仮面ライダー達

「フン……」

つまらなさそうに爆発に背を向けて立ち去っていく青年

爆発がおさまり、その場にばたばたと倒れているライダー達

その中で一人、ふらふらと立ち上がる

「こ、こんなところで……」

彼はふらつきながらもゆっくりと歩き出した

その前に、突如現れる人影

「悪いがここで死んで貰う……」

それは蒼身の戦士

全身から殺意を放ちながら

ふらふらの彼に問答無用で襲いかかる

[FINAL−VENT]

それは彼が聞いた絶望の響き

新たに起きあがった少年が彼の最後を見ることになる

必殺のキックを受け、為す術もなく吹っ飛ばされる彼の姿

壁に叩きつけられ、力無く地面に落下する

「貴島ぁぁぁぁぁっ!!」

少年の絶叫

「……ゴメン………迎えに行けそうもない………」

彼はそう呟き、涙を一筋零した

その彼の目に最後に映ったのは……

彼が迎えに行きたいと切望していた少女の笑顔

ニコリと微笑みを浮かべ、貴島和宏はこの世界から消えていった
































戦いとは非情である

隙を見せた方が負ける

負けた者に待っている運命は一つ

それはどんな栄光を持っていたとしても同じ

彼らはかつての栄光に囚われすぎていた

それが隙となることも知らずに……

































「君に研究室を用意しているのだよ」

それは再び彼が栄光の道に返り咲いた瞬間だった

これ以上戦う意味はない

「もうこれ以上あそこで実験をする必要はないんだよ、私は」

「ライダーになった者はその運命からは逃げられないわ」

全てを知る少女・藤林 杏の言葉は現実だった

かつての栄光を取り戻す為に力を手に入れた男は

その力の為に自らの運命を狂わされてしまっていることに気付かない

「お前、邪魔なんだよ」

その男の容赦のない一撃が戦う意味を失った男を容赦無く引き裂いた

「な、何故だ……私は……再び栄光を手にしたのに……」

その場に崩れ落ちる男

絶望的な表情で相手を見上げると、その相手はにやっと笑って見せた

「そうだ、その表情がたまらない……絶望に彩られた、その表情が」

「き、貴様、たったそれだけのことで………」

「俺はな、他人が絶望する様を見るのが一番楽しいんだ。悪く思うな」

それだけ言うと、その男は高笑いをしながら去っていく

「私は……栄光を………」

男が倒れたまま手を伸ばす

まるでそこに何かあるかのように

「栄光を……再びこの手に………」

男の名は比良坂竜二

彼の手は何も掴むことなく消えていった
































ミラーワールドに降る雨

その雨の中、死闘を繰り広げている二人のライダー

「俺はここで死ぬわけにはいかないっ!!」

「そう言った奴ってのは大抵死んでいるぜ、おい!」

彼もまた失ったものを再びその手に掴みかけていた

だが、ライダーとなった運命が彼にそれを許さなかった

「もうこいつはいらない。返すよ」

「そうはいかないわ。これを手にした以上、最後まで戦って貰う。それがルールよ」

カードデッキを返そうとする彼だが藤林 杏はそれを否定した

だから、彼は生きるのに必死だった

「お前もライダーなら……俺が殺すッ!!」

突如乱入してくるもう一人のライダー

自らの死をも恐れぬその攻撃は彼を怯ませる

そして、決定的な瞬間が訪れた

ミラーワールドと現実世界をつなぐ唯一のパスポート

カードデッキが破壊されたのだ

降りしきる雨の中、彼は現実世界へと戻る道を探して駆け回る

割れた鏡に映る最愛の人の名を呼びながら、助けを求める

「頼む、助けてくれよ、瑞希!!」

「やっと……やっと俺の書きたいものが見つかったんだ!!」

「ここから出してくれよ!! 瑞希、聞こえないのかよ!!」

「俺は……俺は……死にたくないんだよぉ……」

割れた鏡に映る彼女は心配そうな顔をして、雨の中立ち尽くしている

彼は泣きながら、彼女に助けを請うがその声は届かない

「やっと……やっと見つかったのに……」

「やだよ、俺……死にたくないよぉ……」

泣きながら、彼の姿は消えていく

その日、一人の若い漫画家候補がこの世界から消えた

彼の名は千堂和樹

































運命の輪は時に連鎖を生み出す

彼らの運命は複雑に絡み合い

そして意外な結末を生み出す

それは時として非常に残酷な………
































病院のベッドの上に彼はやせ衰えた身体を横たわらせていた

「何だ、そのザマは?」

その病室に入ってきた男がベッドの上の彼を見て嘆くように言う

「貴様……何の用だ?」

彼は入ってきた男に挑発的な視線を向けた

その目だけは生気を失っていない

やたらとギラギラ輝いている

「お前が倒れたって聞いたから様子を見に来てやった……ついでにとどめを刺してやろうとも思ったが」

男はそう言って言葉を切る

自分のすぐ後ろにいるメイド姿の少女をちらりと見やり

「こいつがうるさいからやめにしておいてやる」

「俺の方は構わないぜ」

彼はそう言って身を起こすとカードデッキを手に取ろうとして、

床の上に落としてしまう

彼は驚いたように目を見張り、自分の指を見た

もはや指先にも力が入らない

それを見ていた男が彼のカードデッキを拾い上げた

無造作にベッドの上にカードデッキを投げる

「フッ……フフッ……ハハハッ!!」

いきなり彼が笑い出した

「何てザマだ!! この俺様が!!」

それは自嘲の笑い

男はそんな彼を悲しそうな目で見ている

「帰るぞ、椛」

そしてくるりと彼に背を向けて歩き出そうとした

「御門、次に会う時はお前を殺してやる……楽しみにしておけ」

男の背に向かって彼はそう言った

「……ああ、楽しみにしておく」

男は少しの沈黙の後、そう答えた

おそらく二度と彼と戦うことがないであろう事を予想しながら

男とその連れの少女が出ていき、ドアが閉じられる

彼はベッドの上に投げ出されたカードデッキを何とか掴むとベッドに倒れ込んだ

「フフッ……フフフッ……フハハハハハハッ!!!!」

いきなり笑い出す彼

その笑い声が止んだ時、彼の手からカードデッキがするりと抜け落ちた

カランという音と共に床に倒れるカードデッキ

その持ち主である勝沼紳一は何故か満足そうな笑みを浮かべていたと言う
































「………奴が………死んだ?」

彼は驚きのあまり言葉を無くしていた

彼が倒すべき相手が死んだ

それはすなわち、彼の目標が無くなったのだ

「何故だ……何故死んだ……貴様は……俺が殺すはずだったのにっ!!」

そうしないと彼の真の目的は達せられない

彼はそう信じ込んでいた

目的を失った彼は暴走する

「ライダーはみんな敵だ!! みんな俺が殺してやるっ!!」

ミラーワールドで暴れ回る彼に他のライダー達は為す術がなかった

現実世界でも彼は荒れ狂う

そして、彼は最愛の妹が息絶えたことを知り、自暴自棄になる

「どいつもこいつも……みんな死ねばいいんだっ!!」

ミラーワールドで、現実世界で、彼の目的無き暴力はとどまるところを知らない

だが、そんな彼に終焉の時が来る

「オラァッ!! 俺の邪魔すんじゃねぇっ!!」

街で彼がケンカを売ったのは若いちんぴら

一方的に殴り飛ばし、そのちんぴらを残して歩き出した彼は

そのちんぴらが手にナイフを持ったことに気付かなかった

グサッ!!

ちんぴらの持ったナイフが彼の背に突き刺さる

「ハァハァ……へへっ……」

不気味な笑みを浮かべ、ちんぴらはその場から逃げていく

背中から血を噴き出させながら呆然と彼は立ち尽くしていた

「……これで……お前の所に行ける……」

そう言った彼は優しげな笑みを浮かべていた

櫂崎諒一

彼は名もないちんぴらに刺されて死んだ
































「クソ面白くない………」

雑踏を歩きながら彼は小さい声で呟いた

街行く人々を見ていると、幸せそうな人々を見ているとイライラしてくる

自分が無くしたものをこいつらは持っている

それが余計に彼を苛立たせていた

それに最近のライダーバトルも彼を苛立たせている

本気で殺し合おうとする奴はいない

そう言う奴は既に脱落している

今残っているのは

誰かを助けようとか人を守るとか失われたものを取り戻そうとかしている奴ばかり

誰も俺を殺そうとはしてくれない

イライラしながらも彼は交差点で足を止めた

丁度赤信号

「……だったら……俺が戦わせてやる……」

物騒な決意をしてニヤリと彼が笑う

と、その時だった

信号が変わり、歩き出した彼の横を一人の女性が駆け抜けていった

何をそんなに急いでいるのか

そう思ってその女性を見やると

かつて彼が失った大切な人の面影が彼女に被った

「………!」

そこに一台の大型トラックが突っ込んできた

居眠り運転、このままだとあの女性に突っ込んでしまう

そう思った瞬間、彼は何も考えずに飛び出していた

驚き、足が止まってしまっている女性を突き飛ばし

―――彼は微笑んだ

衝撃

悲鳴

薄れ行く意識の中、彼は泣き喚く女性の声を聞いていた

よく見れば彼女は全然似ていない

「これで……良かったんだろ……?」

彼はそう呟いた

彼の目に映っていたのは、

かつて彼が目の前で失った大切な人

彼女が微笑んでいる

そう信じて

彼、相沢祐一は逝った
































ミラーワールドにいるのはライダーだけではない

様々なモンスターが罪のない人の命を狙っている

それは彼らが生きる為

生きる為にモンスター達は人の命を捕食するのだ

それを止めようとするのはまさに命懸け
































ショーウインドウに映る不気味なモンスター

蠍のような姿を持つモンスターの針付の尾が

その前を歩く二人の女性を狙う

その二人は姉妹なのかよく似ていた

仲良さそうに話をしながら歩いている二人の女性

彼女たちに狙いをつけた蠍のモンスターに彼は気付いた

「間に合えっ!!」

必死に駆け出す彼

蠍のモンスターの尾が勢いよく振り下ろされる

ミラーワールドから現実世界に実体化した尾が二人の女性を貫こうとした瞬間

彼が尾と彼女たちの間に割って入っていた

「キャアアアッ!!」

女性が悲鳴を上げた

ショーウインドウの中から蠍のモンスターが実体化してくる

「に、逃げろっ!! 早くっ!!」

彼はそう言って自分の後ろにいる女性達を逃がした

その彼の胸からは血がどくどくと流れ落ちている

先程女性達をかばった時に、尾の先についている針に貫かれたのだ

荒い息をしながら彼はカードデッキを構え、ポーズをとる

モンスターと戦う為に

彼には先程自分がかばったあの二人の女性が

かつて自分が傷つけた二人の妹とかぶって見えていたのだ

ミラーワールドの中、他のライダーと協力してモンスターを倒すことに成功する

だが、現実世界に戻ってきた彼の命の灯は消えようとしてた

小さな公園のベンチに倒れるように座り、天を仰ぐ

「俺を………許してくれるのか……」

そう言って彼、奈良橋翔馬は目を閉じた
































「うわぁっ!!」

強力なモンスターの攻撃に吹っ飛ばされる少年

「なぁにやってんだよ、お前」

彼はそう言ってカードを召還機に装填する

[STRIKE-VENT]

しかし、そのモンスターの力は彼の想像を超えていた

徐々に追いつめられていく二人のライダー

「何とかしろっ、岡崎ッ!!」

「何とかって、どうすりゃいいんだよっ!!」

「お前、切り札持ってんだろっ!! さっさと使えっ!!」

「お、おうっ」

少年が切り札ともいえるカードを取り出した時

いきなりモンスターが攻撃してきた

為す術もなく吹っ飛ばされる二人

「ああ、カードが!?」

「この馬鹿ッ!! 俺があいつの相手しておくからその間に探せ!!」

少年がカードを探している間、彼は強敵に一人で挑む

持てるカードを使い、決死の覚悟で恐るべき強敵を引き付ける

少年がカードを見つけ、新たな姿に変身し終えた時、

彼は既にボロボロになっていた

「折原さんっ!!」

「おせぇんだよ、岡崎ッ!! とっとと行くぞ!!」

[FINAL-VENT]

二人のライダーの必殺技が遂にモンスターを粉砕する

現実世界に戻り、彼と少年は互いに別れた

歩き出し、そして彼は不意にその場に崩れ落ちる

「ハァ……ちょっとやられすぎたようだ……」

そう呟いて立ち上がろうとするが

彼の身体は言うことを聞こうとはしなかった

あのモンスターとの死闘

それは彼の身体をボロボロにしていたのだ

「へっ……ザマァねぇなぁ」

そう呟いて彼は目を閉じた

「もう……いいだろ?」

疲れたようにそう言い、彼は身体を何とか反転させた

そのまま、彼、折原浩平は二度と目を開けることはなかった
































どうしても許せない奴がいる

この手を汚してもあいつだけは許せない

戦いをゲームのように考えている奴

戦いを自分の楽しみにしている奴
































「どうした、どうした? もう逃げないのか?」

彼は圧倒的な強さで二人を追いつめていた

二人と彼の間には決定的な差があった

ライダーを、人をその手で殺せるか否か

彼は前者であり、二人は後者であった

だから二人は彼を攻撃することに躊躇ってしまう

「この私を倒すんじゃなかったのか?」

その声は獲物を追いつめる喜びに満ちている

少し離れた場所でその様子をうかがっている青年がいた

青年は苛立たしげに手に持った銃を構えて歩き出す

彼の攻撃が二人に加えられようとした時

そこに青年が乱入する

「ほぅ……君も私を楽しませに来てくれたのかね?」

「生憎だがそう言う趣味はない」

青年は冷たい口調でそう言い、銃口を彼に向ける

「お前はどうしてもこの俺が始末するべきなんでな」

そう言った青年の脳裏に浮かぶメイド服姿の少女

青年のすることに文句も言わず、ただ黙って付き従う少女

全てを諦めきったような、笑顔を失ってしまった少女

(この俺が椛の為に……? 堕ちたもんだ)

心の中だけで苦笑を浮かべる青年

「お前らはモンスターの相手だけしていろ。はっきり言ってここにいて貰ったら邪魔だ」

「……ああ、わかった」

そう言ったのは二人のうちの年上の男だった

何か言いたげな少年を連れて男はその場から去っていく

その場に残された彼と青年の死闘が始まった

青年の持つ銃が火を噴き、彼の身体にダメージを与える

彼の持つ武器が唸りを上げ、青年の身体を傷つけていく

果てしなく続くかと思われた死闘に決着の時が来た

一瞬の隙をついた青年の鋭い射撃が彼のカードデッキを粉砕したのだ

「……これで終わりだな」

青年がそう言って倒れた彼の頭に銃口を向ける

カードデッキを破壊され、既にライダーでなくなった彼は

自分に向けられた銃口を見つめながら、突然笑い出した

「フフフ……ハハハッ!! 楽しかった……楽しかったですよぉ!!」

笑いながらゆらりと起きあがる彼

その異様な雰囲気に青年は思わず一歩足を引いていた

「最高のゲームでした。自分の命を懸けるに値した、ね」

そう言って彼は両腕を広げた

「さぁ、先にあの世で待ってますよ、御門君」

彼の姿が徐々に消えていく

青年は消えながらも高笑いを続ける彼、木内賢一を忌々しく睨み付けるだけだった
































ミラーワールドでの戦いを終え、現実世界に戻った青年は

心配そうにガラスを見つめていた少女の元へと歩き出そうとした

が、不意に足に力が入らなくなり、その場に崩れ落ちてしまう

「和人さんっ!!」

驚いたように少女が青年に駆け寄ってくる

少女の手を借りて起きあがる青年

(フッ……どうやらダメージを受けすぎたか……)

全身に走る激痛に顔色一つ変えず青年は少女に命ずる

「少し疲れた。膝を貸せ」

そう言って青年は少女を座らせ、その膝の上に自分の頭を載せる

穏やかな風が二人を包んでいく

「……椛」

「……はい」

「……お前は自由だ。もう、俺の側にいる必要はない」

少女は青年の突然の言葉に戸惑ったように青年の顔を見た

目を閉じた青年の顔は何処か寂しげにも見える

「お前をこう言う運命に叩き込んだ奴はもういない。後は……お前の好きにしろ」

「……だったら……私は側にいます」

少女の言葉に青年もなにも返さなかった

「ずっと、和人さんの側にいます……」

それは愛の告白だったのか

だが、既に青年はその言葉を聞いてはいなかった

青年、御門和人は、少女の言葉に答えることなく逝ってしまっていた

少女はそれに気付いているのかいないのか

一筋の涙が彼女の頬を流れ落ちる
































運命の皮肉

一人の少女を助ける為だけに戦う男は

その少女の為に命を削り

一人の少女を守ろうと思った少年は

その少女の悪夢に翻弄される

そして待っているのは残酷な結末………
































ある屋敷の中

鏡が乱雑に置かれたその部屋の中で

彼は藤林 杏と対峙していた

「………何しに来たの?」

「……もう時間がない。観鈴を助ける為に……」

彼は悲壮なまでの決意を固めていた

「お前を殺してでも……」

「……あなたの目的はユピテルね……いいわ、戦わせてあげる」

杏がそう言うと、すぅっと鏡の中に仮面ライダーユピテルの姿が現れた

その姿に思わずビクッと身体を震わせてしまう彼

「戦うも戦わないもあなたの自由よ。さぁ、選びなさい」

「そんなもの、始めから決まっている!」

彼はそう言うとカードデッキを取り出した

「変身ッ!!」

戦う為の姿、仮面ライダーとなりミラーワールドに飛び込んでいく彼

薄く霧がかった庭園で彼はユピテルと対峙する

「後悔するがいい……私と戦ったことを」

「黙れ!!」

彼は一枚のカードを召還機に差し込んだ

[SWORD-VENT]

長大な槍を握り、彼はユピテルに向かっていく
































鳴り響く携帯の着信音

慌てて通話ボタンを押す少年

向こうから聞こえてきたのは彼が探していた少女のものだった

「何だよ、何処にいるんだよ?」

少し怒ったように言う少年

それに対して少女の返答は物凄く意外なものであった

「……何だよ、それ? おい、何処にいるんだ? すぐに行くから動くな!!」

そう言って走り出す少年

だが、少女は通話を切ってしまった

「クソ………何でだよっ!!」

焦燥感を憶えながらも少年が走る

そして少年が辿り着いたのは

少女と始めて出会った場所だった

「椋!! 何処だ!?」

周囲を見回し、少年が叫ぶ

求める少女の姿はそこにはない

「遅かったのか……?」

そう呟いた時、彼はガラスの中にそいつを見つけた

自分が変身した後の姿と酷似した存在

違うのは色

少年の変身後が鮮やかな赤に対して

そこにいるのは冷酷なまでの蒼

「お前が………椋を?」

蒼き戦士を見つめて問う少年

「知りたければ俺と戦え」

「………ッ!!」

少年は急ぎガラスに駆け寄り、カードデッキを突き出した

「変身ッ!!」

少年の姿が仮面ライダーへと変わる

すかさず少年はミラーワールドの中へと飛び込んでいく

「お前だけは……絶対にゆるさねぇっ!!」
































圧倒的なまでの力の差に彼は膝をついてしまっていた

もはや全身ボロボロで膝をついていられるのもやっとである

切り札であるパワーアップのカードですら目の前にいる相手の前では遊びに等しかった

「クッ……」

悔しそうに歯を噛み締めながら彼は相手を睨み付ける

「始めからわかっていたことだ。力の差は圧倒的だと」

「……それでも……それでも俺は負けられないんだよっ!!」

彼が最後の力を振り絞って召還機でもある剣を突き出す

しかし、その一撃すら相手は悠々とかわしてしまった

そして無情なる声が響いてくる

[FINAL-VENT]

最後の一撃をかわされ、呆然としている彼に

それをかわすことなど出来なかった
































ミラーワールドの中、同じ姿のライダーが戦っている

片方は赤、片方は蒼

色こそ違え、姿は全く一緒

使役するモンスターも同じ姿の色違い

だが、その強さだけは違っている

蒼いライダーが赤いライダーを圧倒している

「うおっ!!」

蒼いライダーの一撃を受け、吹っ飛ばされる赤いライダー

「つ、つえぇっ!! こいつ、マジで強い!!」

焦りの表情を仮面の下で浮かべ、少年は蒼いライダーを見据える

「どうした……お前の力はそんなものか?」

挑発するように蒼いライダーが言う

「……だがな……俺は負けられないんだよ!! お前だけにはよぉっ!!」

そう言って赤いライダーが蒼いライダーに殴りかかる

だが、その手をあっさりと受け止めてしまう蒼いライダー

「期待外れだったな……お前ならもしくは、と思っていたが」

「何の話だよ!?」

「こっちの話だ……お前が気にすることではない」

蒼いライダーがそう言って赤いライダーの手を離したその時

赤いライダーのパンチが蒼いライダーのボディを捉えていた

「お前だけは……お前だけは……絶対に倒してやる!!」

今まで他のライダーを倒すことを否定してきた少年が初めてそう宣言する

「やれるかな、君に?」

挑発的な態度を崩さない蒼いライダー

赤いライダーは切り札であるカードを手にした

それを見た蒼いライダーが初めて動揺のようなものを見せる

「そ、それは……」

「お前だけは……俺がこの手を汚してでも必ず倒すんだ!!」

そう言って赤いライダーがカードを召還機に装てんした

次の瞬間、赤いライダーの姿が炎に包まれ、新たな姿となる

「いくぞぉっ!!」

赤いライダーが吼える

「勝負!!」

蒼いライダーがカードを手にすると赤いライダーもカードを手にした

同時に召還機に装てんされるカード

[FINAL-VENT]

全く同じ声が響き渡る

「ウオオオオオッ」

「ウリャアアアアッ」

二人の雄叫びと共にその技が激突する

起こる大爆発
































その必殺技を受けながらも彼はまだその場にいた

満身創痍になりながらもまだ彼は死んでいなかった

「なかなかしぶといな……その根性だけは認めてやる」

相手はそう言うとまた別のカードを召還機に装てんした

相手の手に現れる剣

「楽にしてやろう、これで」

そう言って相手が剣を振り上げるのを彼はどうすることも出来ずに見ているだけだった

もはや身体は動かない

指一本動かせない

自らの死を覚悟し、彼が目を閉じた時、それは起こった

「ウッ……ウウウウッ!!」

相手が突如苦しみだし、その姿が光の粒子となり消え始める

「な、何だ……?」

彼は目の前で起こった出来事に呆然とすることしか出来なかった

「ウオオオオオッ」

雄叫びを上げて相手が完全に消え去ってしまう

「………な、何だ……?」

先程と同じ言葉を口にした彼のすぐ側に一人の少女が現れた

少女の名は藤林 杏

「おめでとう……あなたの勝利よ」

杏はそう言いながら、苦しげに表情をしかめている

「……どう言うつもりだ?」

彼が問うが彼女は答えない

「あなたの勝利と言ったわ……それに……私の目的は……もう……」

そう言う杏の姿が徐々に消え始めている

笑みを浮かべながら杏は消えていく

「あなたは勝ったの……良かったわね」

「ま、待て!! お前は……!!」

そう言って彼が手を伸ばすが、それよりも先に杏の姿は完全に消えてしまっていた

残されたのは満身創痍の彼一人
































爆発がおさまった後

離れた位置で互いに背を向けあって二人のライダーが片膝をついていた

赤いライダーはその限界が来たのか元の姿へと戻り

蒼いライダーと同じく微動だにしない

しばしの後、すっと蒼いライダーが立ち上がる

「……やっと……」

そう呟いた後、ばたりと倒れる蒼いライダー

「終われる……」

その声に思わず振り返る赤いライダー

よく見ればその身体はボロボロであった

「そ、その声………」

驚いたように立ち上がり、蒼いライダーの元へと駆け寄る

不安を堪えて蒼いライダーを抱き起こすと、その仮面が割れ、蒼いライダーの素顔が露わになった

「…………!!」

驚愕のあまり声を失い赤いライダー

「な……何で……お前が……」

そこにあったのは彼が捜していた少女、藤林 椋の顔だった

「あ、ありがとう朋也君……これでいいんだよ」

弱々しい声でそう言い、微笑む椋

「私は私の中にいるもう一人の私を止められなかった……だから……誰かに止めて欲しかった」

「だから……だからライダーに戦いを………?」

少年の問いに小さく頷く椋

「ありがとう、朋也君……私を止めてくれて……」

「椋!!」

「嬉しかったよ……朋也君で……」

そう言い、がっくりと椋が項垂れる

「……ウオオオオオッ!!」

息絶えた椋の身体を抱きしめ、慟哭の叫びをあげる少年

































運命のライダー13人

生き残り願いを叶える力を得ることが出来るのは

たった一人

幾多の死を乗り越え

今、最後の二人が出会う

共に満身創痍

心まで傷付き

それでも彼らは戦う

願いを叶える為に


































降りしきる雨の中、傷だらけの男が歩いている

来ている黒いコートはボロボロの上、雨に濡れて重くなってしまっている

額からは雨と共に血を流し、片手で腹を押さえ、足を引きずりながら彼は

何処へともなく歩いている
































降りしきる雨の中、傷だらけの少年は

冷たくなった少女の身体を抱きかかえながら歩いている

自らを濡らす冷たい雨はもう気にならない

自らの手で奪い去ってしまった少女の命の方が遙かに重い

虚ろな目をしたまま、少年は彷徨い歩く

































降りしきる雨の中、二人は遂に出会った

古ぼけた、もう使われなくなった教会の敷地の中

二人は一定の距離を置いて対峙している

「岡崎……」

「国崎さん……」

「……それは……椋か?」

「ああ……あの蒼いライダー、あれが椋だったんだ」

「……そうか」

国崎往人は短くそう言うと岡崎朋也の側まで歩いてきた

既に息絶えた椋の顔を覗き込み、それからため息をつく

「……杏も消えちまった……」

「……椋が死んだからだろうな」

そう言いながら朋也は椋の身体を雨に濡れないところへと運んでいく

国崎は黙ってその様子を見ているだけだった

教会の入り口に椋を横たえらせ、朋也が国崎を振り返る

「……それじゃ、はじめるか」

国崎がぽつりと言う

「……ああ、そうだな」

短くそう答え、朋也は国崎の正面に立った

互いにカードデッキをポケットの中から取り出す

よく見ると二人ともボロボロであった

全身傷だらけ

おそらくは立っているのもやっとなのだろう、足が震えている

カードデッキのケースにもひびが入っている

「恨むなよ、岡崎」

「……ああ、わかってる」

互いににやっと笑い合い、二人は同時にカードデッキを前に突き出した

「変身ッ!!」

その声が響いた次の瞬間、彼らは仮面ライダーへと変身していた

全身傷だらけでボロボロの姿の仮面ライダー

「行くぜ」

「ああ……」

[SWORD-VENT]

二人が全く同じカードを召還機に装てんする

同時に二人の手元に現れる長大な槍と反り身の剣

「ウオオオオオッ!!」

「ウオオオオオッ!!」

二人が雄叫びを上げて激突する
































傷だらけのライダー達

その願いを叶えるべく戦い

力つきて倒れていく

この戦いに正義はない

あるのは

純粋な願いだけ

































仮面ライダークラナド

DEAD or ARIVE
































Episode Over


後書き

やっと出来上がりました。
いわゆるDO−DO的「仮面ライダークラナド・エピソードファイナル」です。
皆殺しスペシャルとでも題しましょうか。
本編からリンクするように書いていながらもリンクしないと言う不思議なものですが(フォールスフッドとかいないのでね)。
結局重要な謎はこれでは一切解明無し。
次々と死んでいくライダーの姿を書いただけです。
これは一応嘘予告でやっているライダークラナドとは別ルートなのであっちのほうのラストも考えないといけないなぁ………。
しかし、555ネタが妙に脳内進行する。
いつの間にか旅ものになっているし、ちゃんと3人のヒロインも一緒にいる設定が出来上がっているし。
良し、今度はそっちの嘘予告をやろう(爆)
…………実はこれ大変だったんですよ、作るの。
だって11人分の死に様考えるのって・…結構ねぇ。
かつては皆殺しのDO−DOと呼ばれたのにねぇ(爆)

戻りませう

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