「なのはっ!?」

 フェイト=T=ハラオウンは目の前で起こった光景を信じられないでいた。

 時空管理局が管轄している研究施設連続襲撃事件の容疑者・高町なのはを乗せた護送車が彼女の目の前で何者かにより襲撃、爆発炎上したのだ。

 いくら優秀な魔道師と言えども何も出来ないよう拘束された状態であの爆発から逃げる方法はない。

「そんな……」

 その場にヘナヘナと崩れ落ちるフェイト。

 彼女の前では未だ護送車が炎上し続けている。



魔法少女リリカルなのはStrakers―高町なのはの反逆U・高町なのはの消失―



 法廷へと護送されていた高町なのはが何者かに襲撃を受け、護送車ごと葬られてから一週間後。

 時空管理局の新人執務官でこの一件を担当していたメアリー=スーは改めて連続襲撃事件を調査し直していた。

 容疑者である高町なのはがどうして襲われ、殺されなければならなかったのか?

 そのことに何か裏があるような気がして再調査を始めたのだが、始めてすぐにその調査を終了するように申し渡される。

 この連続襲撃事件は高町なのは単独による管理局に対する反逆行為で、彼女が死亡した以上調査は無意味。管理局の上層部がそう断じたからだ。

 上層部の決定に何かきな臭いものを感じながらも新人執務官である彼女はそれを受け入れるしかなかった。



 一方、なのはの無実を信じるフェイト達機動6課の面々はその活動を無期限停止とされていながらも独自に調査を開始していた。

 なのは直属の部下であるスバル=ナカジマとティアナ=ランスターは様々な次元で襲撃された研究施設の調査。

 機動6課の部隊長である八神はやてはヴォルケンリッターの皆と共にその動機に関する調査。

 そんな中、なのはの死に激しいショックを受けていたフェイトだったが直属の部下のエリオ=モンディアルとキャロ=ル=ルシエの励ましにより何とか立ち直り、護送車襲撃事件の方を調べ始める。

 だが、調査を始めた彼女たちの前に何者かの邪魔が次々と入り、手がかりの一つさえも彼女たちは得ることが出来ない。



 新人執務官メアリー=スーは上層部の決定した高町なのは反逆事件の捜査凍結に従いつつも、独自に調査を続けていた。

 高町なのはを逮捕してから少しの間彼女と話す時間があり、その時受けた印象は彼女が何の理由もなく管理局に対して反逆を企てるような人柄ではないと言うこと。

 それに彼女を知る誰に話を聞いても、彼女がそのようなことをするとは思えない、何かの間違いだと言うばかり。

 如何に高町なのはが様々な人間に慕われているかを知り、メアリーも何故彼女がこの様なことをしたのかを思い始めたのだ。

 しかし、そんな彼女の前にも何者かが現れ、問答無用で襲い掛かってくる。

 新人であり、魔導士ランクとしてはA+そこそこである彼女は突然のことに対処しきれず逃げまどうのみ。

 それもむなしくあっという間に追いつめられるメアリー。

 絶体絶命の彼女を救ったのは同じ執務官のクロノ=ハラオウンだった。

 彼は謎の襲撃者を追い払うと怯えるメアリーを連れて、自らが艦長を務めるアースラへと戻っていくのであった。



 悉く調査を邪魔され、何一つ手がかりを得ることが出来ずにいた機動6課に更なる試練が襲い掛かる。

 活動の無期限停止だけではなくその規模の縮小。

 時空管理局の上層部からの通達に部隊長・八神はやては苦悩する。

 理不尽とも言えるこの通達。

 おそらくその理由はなのはがこの部隊に所属していたからだろう。危険視されているのだ。この部隊にはS級以上の魔道士がまだいるのだから。

 なのはの無実を信じている彼女だが、仮に襲撃事件を本当になのはが起こしているのだとしても何か事情があるに違いないと考えていた彼女だが、この通達になのはを恨まずにはいられなかった。

 親友を信じたいが、その親友が起こした事件の為に今、彼女の夢が潰えようとしている。

 一人、悩み続けるはやて。

 そしてそんな彼女をヴォルケンリッターの一人、ヴィータが辛そうな目で見つめていた。



 はやてが苦悩する中、フェイトは爆破された護送車の中に誰の死体も見つかっていないと言う情報を入手する。

 それはつまりなのははあの爆発で死んでいないと言うこと。

 なのはが生きていると言うことに喜びを覚えつつ、誰が、いつ、なのはを連れ去ったのかという新たな疑問に直面する。

 機動6課に配属される前の仲間やなのはが教導官をしていた頃の教え子達に協力してもらい、消えたなのはの行方を追うフェイト。

 全ての疑問は彼女を見つければわかる。

 そう考え、フェイトはたった一人、なのはの姿を求めて様々な次元世界を渡り歩く。



 同じ頃、もう一人苦悩する少女がいた。

 ヴォルケンリッターの一人、紅の鉄騎との異名を取るヴィータである。

 彼女はなのはと同じ小隊の副隊長。

 なのはが消える前、最後にその姿を見たのが彼女であった。

 そしてなのはが姿を消す前、何か悩んでいるような素振りを見せていたことも彼女は知っていた。

 なのは自身によって口止めされていたそのことを、悩んだ末にヴィータはある人物に告白する。

 現時点で機動6課とは関係がなく、その上で頼りになるであろう人物。

 クロノ=ハラオウンに。



 それぞれがそれぞれの思惑で必死に動いている中、再び襲撃事件が発生する。

 今度狙われたのは研究施設ではなく、管理局上層部の幹部。

 命を奪われることまではなかったが、重傷を負わされてしまう。

 そしてそれは間をおかずに二度三度と発生する。

 まるで対処する為の時間を与えないのかのように。



 次々と襲われ、重傷を負わされる幹部達。

 その事件を担当することになったクロノ=ハラオウンはメアリー=スーを助手に調査を開始する。

 時空管理局上層部は優秀な魔導士である彼に幹部達の護衛をさせようと考えていたのだが、彼はその思惑に反するように襲われた幹部達のことを調べ出す。

 そこで浮かび上がったのは、襲われた幹部達がかつてなのはによって破壊され尽くした研究施設に関わっていたと言うこと。

 その事実を元に彼は今回の幹部襲撃事件の犯人もまたなのはであると推理。

 何故彼女が時空管理局の一部の幹部を襲撃するのか、その動機を探るべくなのはが失踪する直前の行動を調べ始めるのであった。



 その間にも幹部襲撃事件は続く。

 そんな中、一人の幹部が機動6課を訪れた。

 ギリアム=コンラッド。

 何かと黒い噂のつきまとう男であるがその来訪を拒むわけには行かない。

 対応に出たはやてにコンラッドは威圧的に言う。

 機動6課の活動の無期限停止を解く代わりに自分を守れと。

 襲撃犯が高町なのはだと断定し、彼女をよく知る機動6課の面々に彼女を倒せと。

 そんな話は受けられないと断ろうとするはやてだが、コンラッドはこれは要望ではなく命令だと言い放ち、問答無用で立ち去ってしまう。

 更に苦悩を深めるはやて。



 何者かの襲撃を恐れ、とある次元世界に逃げていた一人の幹部。

 だがそこにも襲撃者は現れる。

 襲撃者の圧倒的な砲撃魔法の前に幹部は為す術もなく倒される。

 その幹部が死んでないことを確認して立ち去ろうとする襲撃者の前にクロノからの連絡を受けたフェイトが立ちはだかった。

「今度は逃がさない」

 そう言って自らの相棒とも言えるインテリジェントデバイス・バルディッシュを構えるフェイト。

 そんな彼女と無言で対峙する襲撃者。

 二人がまさに激突しようとしたその瞬間、何者かが間に割って入った。

 フェイトの攻撃を受け止め、その何者かは襲撃者と共に転移魔法で消えてしまう。

 呆然としつつ、フェイトはそれを見ていることしか出来なかった。



 時空管理局幹部連続襲撃事件の犯人は高町なのはなのか?

 だとすればその動機は一体何か?

 何故幹部達は襲われなければならなかったのか?

 様々な謎を孕みつつ、事態は新たな局面を迎えようとしていた。 

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