ZOIDS 〜勇気ある獅子と正しき邪竜〜





−リバーサイド基地・司令室−

「報告は以上ですか?」
「はい、ブレードライガーMk−Uは活動を停止していて手遅れでした、祐一さんも重傷を負ってしまって……」
言いながら竜聖は俯いてしまう。
秋子は困ったように頬に手を添え考えている。
「名雪さんにはあっちに残ってもらいました、祐一さんの事で頭が一杯だったと思いましたから」
「ありがとうございます、祐一さんはおそらく大丈夫だと思いますが……」
「ライガーの事ですよね?」
秋子は黙って頷いた。
「あのブレードライガーMk−Uは一機のみの試作機だったの、一般兵にも扱えるようにと設計された」
「では……代わりが無い……という事ですか?」
「えぇ、祐一さんには悪いけど軍からも今すぐに用意してもらうという事は無理ね」
静寂が司令室を支配する。
「とりあえず僕はアルディア基地へ向かいます、祐一さんが心配ですから」
「お願いするわ、無理はしないでね」
「はい」
元気よく返事をすると竜聖は司令室を後にした。
一人、司令室に残った秋子は考えていた。
(本当にどうしたものかしら……代わりにシールドライガーとかを用意してもらっても祐一さんの技量に機体がついていかない)
    コンコン
祐一の代わりの機体のことを考えていると司令室のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
ドアが開き書類を持った兵士が入ってくる。
「失礼します、先程Dr.ディから電文が届きましたのでお持ちしました」
そういって手に持ったれていた書類が手渡される。
「ありがとうございます」
「では」
兵士は一礼し退室した。
「何かしら?これは……」










第6話「闇を抜ける魂」









−アルディア基地・格納庫−

意識を取り戻し大分体の方も調子を取り戻してきた祐一が格納庫に来ていた。
祐一の目の前にはもう立ち上がることの無いブレードライガーMk−Uが横たえている。
彼としてはもう一度立ち上がってくれる事を期待しているのだろう。
だがライガーから生命の鼓動を感じる事は出来なかった。
「相沢、今日もここに来てたのか」
「あぁ」
「お前に伝える事がある」
「………」
祐一は黙って潤の話に耳を傾けた。
「……ブレードライガーMk−Uは本日をもって完全廃棄する事が決まった……」
少し間を置いて潤はライガーとの最期を意味する一言を告げた。
「……わかった……」
「じゃあな、それと水瀬さんが心配してたぞ『また、部屋からいなくなった』ってな」
「あぁ」
潤は格納庫から立ち去った。
祐一は黙ってライガーを見上げる。
「………すまない」
そう呟き祐一もその場を離れた。







−アルディア基地・シミュレーションルーム−

ここは基本的に兵士達がゾイド操縦技術の向上を目的とした訓練の場である。
実戦で得たデータを元にプログラムが戦闘レベルを設定してくる本格的なものである。
気分的にじっとしていたくなかった祐一はここに来ていた。
今もシミュレーターの中に入って戦闘を続けている。
戦闘データは潤のものを借りてやっている。
外部から戦闘の様子を確認できるスクリーンを名雪と潤の二人が眺めている。
祐一が始めてから10分が経過している。
撃墜数はすでに2桁はいっている。
このシミュレーターは止める時は使用者が任意に行うものだが祐一は一向に止めようとしない。
「祐一、ライガーのこと……吹っ切れたのかな?」
名雪が心配した様子で潤に問い掛けてくる。
「違うな…吹っ切れてないからこそあいつは今こうしてるんだと思う」
潤は名雪の言葉を否定した。
「吹っ切れてないからあいつはあそこでライガーの事を忘れないようにしてるんだろうな……見てみろよ」
そういうと潤は祐一が乗っているゾイドを指差した。
「あいつが乗っているのは『セイバータイガー』、共和国のブレードライガーMk−Uにタイプが一番近い奴だ」
セイバータイガーは共和国軍の高速大型ゾイド、シールドライガーに対抗して開発された同じタイプの高速大型ゾイドである。
潤が言った通りシールドライガーの流れを汲むブレードライガーMk−Uとは同じタイプと言っても過言ではないだろう。
「多分、相沢はああすることで自分の中で自分とライガーを繋ぎ止めてようとしているんだろう」
自分ならこうすると言わんばかりに言葉を続ける。
「祐一……」
「暫くはそっとしておいてやるんだ……俺たちが出来る事は相沢を信じて待つ事しかない」
潤は最後に一言付け加えると部屋を出て行った。






−シミュレーター内部−

祐一は黙々と自分の前に現れる敵を倒していった。
ライガーに乗っていたときと似たような戦い方をしながらただひたすらに倒していった、湧きあがってくる感情を振り払うように。
また祐一の前に新たな敵が現れた。
相手はシールドライガーだった。
これは帝国軍の機械だから敵は全て共和国のゾイドに設定されているのだろう。
祐一の中で目の前にいるシールドライガーの姿が自分を敗北させた黒いライガータイプと重なる。
押さえ込んでいる祐一の感情を触発するように目の前のシールドライガーは巧みな動きで襲い掛かってくる。
潤が戦闘した相手の中でかなりの手練れなのか今までようにうまくいかない。
今まで相手にしてきたデータの中にも普通の兵士では舌を巻くほどのものがあったのだがこれはそれを遥かに上回っている。
なかなか倒せないせいか祐一も次第に焦り始めてきた。
「くっ、何なんだよこいつ!!」
気が付けば、あともう一撃で撃墜されるまで追い込まれていた。
「強い……北川はこんな奴と闘って勝ったのか!?」
祐一は潤がこれほどの腕を持つ相手と戦ったことがあることに驚いていた。


数分後、祐一は敵の攻撃を全て紙一重の動きで避け続け徐々に相手を追い込んでいた。
「お互いあと一撃で勝負がつくな」
互いにあと一撃喰らう事で勝負がつく事を悟って動きを止めて隙を窺っている。
痺れを切らした祐一が先に動いた。
「こいつで決めさせてもらうぜっ!!」
祐一のタイミングと同時にシールドライガーも勝負に出てきた。
両者とも全速力で相手に向かって行きその距離は一気に縮まった。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
次の瞬間、二機が空中で交差する。
二機とも着地すると同時に崩れ落ちた。
結果は引き分けだった。
「ちっ、引き…分け……か………」
祐一はシミュレーターの戦闘が終わると同時に気を失った。






−アルディア基地・司令室−

    コンコン

『北川潤中尉です』
「入りたまえ」
『失礼します』
潤は断りを入れると部屋に入ってきた。
「先程、本国から連絡があって君が以前乗っていったセイバータイガーがこちらに搬入される事になった」
「いきなりですか?」
「うむ、皇帝陛下のご希望でな、今…この基地で治療中の相沢少尉に貸し与えてはくれないか…ということだった」
「少尉にでしたら構わないですが…何故、急にこのような事が?」
潤は祐一なら自分の大切な愛機を無碍にしたりしないだろうからということで承諾はした。
だが、いきなりこの事が決まったのに関して疑問を抱いているようだ。
「バン・フライハイト元大佐のことは知っているな?」
「はい」
「彼が2年前に何処からか少尉を連れて来て自分の後継者として育て上げた、退役する時に陛下に少尉の事を頼んでいたらしい」
「それで陛下が少尉を思ってと?」
「それもあるだろうな、陛下にとって彼は大佐の次にお気に入りだからな…別に僻むわけではないがな。 それと仮にもガーディアンフォースの隊員がゾイド無しではまずいと判断したのだろう」
「任務に支障が出ますからね」
「そう言う事だ、それとこちらも陛下からのご希望なんだが」
「何でしょう?」
言い出すのを渋っている司令に潤はわからないといった感じで聞き返す。
「…君に辞令が出てな……ガーディアンフォースの隊員に就任して相沢少尉をサポートして欲しいらしい」
「本当ですか!?」
潤は嬉しさ半分、戸惑い半分といったところだ。
「あぁ、こちらとしては基地の戦力が低下して心許ないのだが今の世界情勢を見る限りでは基地が襲われたりすることも無いだろうからな、あとは君の意思次第だ、どうするかね?」
「わかりました、お受けいたします」
「そうか、ならこちらから手続きを出しておこう…平和維持に貢献してくれることを期待する」
「では、失礼します」
潤は足早に司令室を後にした。






−アルディア基地・病室−

祐一はシミュレーター内部で気絶したあとこの病室へ運ばれていた。
まだ身体が全快した状態ではないのに無理をしてシミュレーター実行したせいだ。
今は静かにベッドの上で横たわっている。
ベッドの横にある椅子に名雪が心配そうに腰掛けて、祐一の手を握っている。

  ガチャッ

暫くすると潤が病室に入ってきた。
「いきなりで悪いが相沢の様子はどうだ?」
「うん、まだ寝てるよ…先生は快方に向かってきたところで無理したせいだって言ってたよ」
「だろうな、無茶しやがる」
シミュレーターをやっていたのを見てやっぱりといった口調で返事をする。
「どうせ相沢の事だ、『あいつ』を相手にして負けたに違いないな」
「『あいつ』?」
「相沢が目覚めたら話すよ……それと俺が昔乗っていたセイバータイガーをまわして貰ったと伝えといてくれな」
「うん」
潤がセイバータイガーをまわして貰った事を伝えると名雪は少し元気よく返事を返した。
「それじゃあ俺はもう少しで運び込まれて来ると思うからそっちに行って調整してるぜ」
潤は静かに部屋を後にした。






−ガラーム砂漠−

竜聖がジェノブレイカーをアルディア基地に向かって走らせている。
その横には龍牙が翼を広げ飛行している。
あたりは砂漠の丘陵が点々と存在している。
「祐一さんは気がついたかな?もう一週間近く経つけど……ん、センサーに反応?」
   ズガァァァァァァァン
大きな振動と音が響いたと思うとジェノブレイカーの周りを取り囲むように何機ものスリーパーゾイドが姿を現す。
「スリーパーゾイド!?何機いるんだ?」
レーダーの映像から敵機の確認を急ぐ。
「なっ!?100機以上!?なんでスリーパーゾイドがこんなに大量にいるんだよ!?」
ジェノブレイカーを中心にスリーパーゾイドによる包囲網が完成していた。
何故、この地にこれだけのスリーパーがいるかは不明だがそれらは確実にジェノブレイカーを標的にしている。
直ちにジェノブレイカーは戦闘体勢を取り、攻勢に出た。
その直後、ジェノブレイカーは空爆を受けていた。
「うわっ、空爆!?空中にもいるのか!?」
上空にカメラを向けると何機ものプテラスとレドラーが飛行していた。
「地上にいる奴らの迎撃は簡単だけど、飛行ゾイドの迎撃には限界がある・・・どうすれば!?」
今、竜聖達は危機に直面していた・・・









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第7話「空の剣士」

剣を持った竜が…今、大空を舞う……

続く
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