仮面ライダーZERO

Presented By cancer

第四話「再会、されど哀しみは止まず」

 

 

 

鍵山市からそう遠くない所にある建物の中で異形の怪物が二体と老人が一人おり、その内の異形の一体は紫色の光を纏う不気味な球体に向かって跪いている。

「首領!今一度・・・今一度だけ私に機会を!!さすれば今度こそZEROめを葬って御覧にいれます!」

鬼の姿をした異形、ヘルズオーガは必死に紫に光る球体に助命と汚名返上の機会を請う。一角獣の姿を持つ異形はその様子を嘲りながら見ている、老人は全く意に介さず前回の戦闘のデータを纏めているようだ。

「ヘルズオーガ。お前は前回、首領に頂いた機会を自身の甘さで潰したのだ。これ以上の申し立ては見苦しいぞ。」

「・・・っく!ダークナイトメア、貴様は黙っていろ!」

確かにZEROの戦闘力を侮っていたヘルズオーガは図星であったため言葉に詰まりかけたが、肯定すると後が無いのがわかっているためダークナイトメアの言葉に激昂するしかなかった。ダークナイトメアは憐れみの視線を向け黙る。元より口を挟むつもりはないのか老人は黙ったままだ。結果、その場は沈黙が支配した。

「・・・・・・ヘルズオーガよ、お前には失望した。組織に無能はいらん、滅せよ。」

首領と呼ばれる球体に突如ぎょろりと瞳が現れ紫電をヘルズオーガにあびせる。ソレは獲物に喰らいつくようにヘルズオーガを捕らえ壁に叩きつける。壁はヘルズオーガを中心に放射状にひびが入り、一気に陥没する。

「ぐががががぁぁぁっ!!!」

狂ったように悲鳴を上げるヘルズオーガ、そこへ何者かが首領の発する紫電を手に持った剣で断ち切る。紫電から解放されたヘルズオーガは重力に従い地面に落下し低く呻く。

「短気はなりませんぞ、首領。」

不気味な笑顔の仮面をつけた男が膝をつき首領へ手に持った剣と石のようなものを献上しながら諫めるように言う。ダークナイトメアは突然の乱入者に驚き警戒するが、老人の方は相変わらず沈黙を守っている。

「良くぞ戻った、マッドクラウン。しかし何故邪魔をした?」

首領は瞳を閉じてマッドクラウンと呼ばれた男にねぎらいの言葉をかけつつ処刑の邪魔をした真意を問う。

「この者には、まだ使い道があります。よろしければこの者の命、私に預けていただけませんか?」

その言葉に首領は沈黙しながら紫に点滅していた。

「・・・・・・よかろう、策はあるのだな。」

「はっ、必ずやデスクロスの益になるでしょう。」

そう言い残してマッドクラウンは戦闘員にヘルズオーガを運ばせて闇に消えた。その姿が消えた後ようやく警戒を解いたダークナイトメアは首領の前に跪く。

「恐れながら、首領。あの者は一体何者なのですか?」

先程の会話から察するに自分と同等かそれ以上の地位、そんな存在を本部にいる幹部である自分が知らないことを不審に思い自尊心の強いダークナイトメアは問わずにいられなかったようだ。老人は黙ったままだが、興味はあるのか首領の方を窺っている。

「アレは我の側近で此度よりヘルズオーガに変わって幹部になるマッドクラウンだ。何か異論があるのか?」

首領はその態度から心情を見抜いたのか瞳を開いて問いただす。

「い、いえ、出すぎた真似をしました。申し訳ありません。」

首領は何も言わずに消え、ダークナイトメアは体中に冷や汗が流れ暫く動けなかった。

 

 

 

 

同時刻、意識を取り戻したヘルズオーガは作戦を命じられていた。

「わかった、俺は機会をくれたあんたに異論言える立場ではない。それに奴の心身をボロボロにできるなら文句は無い。」

マッドクラウンに命じられた作戦内容に凄絶な笑みを浮かべ、作戦の準備をするため部屋から出ようとする。

「・・・早まるな、既に準備は整っている。」

「手筈がいいな、あんた。」

感心したように言うヘルズオーガに

「お前がずさんなだけだ。」

とマッドクラウンの呟いた言葉はZEROを完膚なきまでに倒す事ができる事に狂喜の笑みを漏らすヘルズオーガに聞こえる事は無かった。

 

 

 

 

鍵山市中央病院、かつてあゆや栞が入院していた病院に四人の男女が一人の男を担ぎ込んで来ていた。四人の内一人は担ぎこまれた男、祐一が倒れた現場に居合わせた滝であり、もう一人の男は滝の連絡で慌てて車を回して祐一達を病院まで連れてきた藤兵衛である。残る二人は女性なのだが・・・。

「悪いけど、手術室を一部屋貸してくれる!?急いでんだから、早く!」

などと若い方の女性は受付のナースに無茶苦茶なことをのたまっている。

「お願いします、ちょっと特殊な事情があるんです。」

もう一人の方の女性は何度も頭を下げている。

「い、いえ、そんなことを言われましても。」

ナースは新人なのかおろおろして、もはや半泣き状態である。当たり前であろう、いきなり手術室を貸して欲しいなどど言われても無理に決まっている。しかし、いい加減早く処置を施さなければ改造人間とはいえ危険だ。二人の女性がますます焦りだす中、一人の医師と思わしき青年が近づいてきた。

「どうしたんですか?」

とりあえず、その青年はナースに状況を尋ねる。

「い、石倉先生。この方達が・・・。」

天の助けとばかりに、石倉と呼ばれた医師にすがりつくナース。事情を聞き急いで祐一の様子を診る石倉医師。

「これはいけない!急いで手術しなければ!!彼は私達にまかせて・・・。」

そこまで言って石倉医師は藤兵衛と滝を見て固まる。

「立花さん・・・滝さん?」

その呟きが聞こえたのか二人は石倉医師のほうを見る、二人は石倉という苗字に心当たりが一人だけあった。よく見てみるとかすかに面影がある。ショッカーと戦いを繰り広げる中、立花レーシングクラブに出入りしていた少年にその医師の顔が重なる。

「「ひょっとして五郎か?」」

二人同時にそう言うと石倉医師は嬉しそうに頷いたが直ぐに真剣な顔に戻す。

「二人が揃っているという事は、彼もあの時のように何かと戦っているんですね?・・・わかりました。君、ストレッチャーを急いで持ってきて!」

少し考えた後にナースに指示を出す、その指示に益々困惑する新人ナース。

「先生?」

「他の先生への説明は後から私がするから、急いで!」

「は、はい!!」

ナースは慌てながらもストレッチャーを急いで持ってきて祐一を慎重に寝かせる石倉医師を先頭に四人を連れて手術室に向かった。

 

 

 

 

ナースに席を外させ手術を始めようとする石倉を女性達の内、若い方がそれを止める。そんな行動に藤兵衛や滝は困惑する。

「貴方達は事情知っているみたいだけど、彼は信用できるの?」

祐一は改造人間である、それを受け入れ尚且つ偏見の目で見ないかというのは祐一を見守る二人には重要な事である。人払いをして手術室を用意してくれたことは感謝するが完全に信用しているわけではないので石倉医師のほうを見極めるかのようにじっと睨む。

「大丈夫です、五郎なら信用できますから安心してください。」

滝が女性達に真剣な目でそう言うと、藤兵衛もそれに続き頷く。

「わかりました、それでは私達の後で処置をお願いします。」

落ち着いた方の女性がそう言ったあと石倉医師の返事も聞かず術式に入る。

「え、ちょ、ちょっと?・・・っ!彼は改造人間だったんですか!?」

祐一の肉体の中には本来人間が体内に持っているはずの無い機械や、明らかに人間ではありえない強化筋肉があった。ショッカーのような組織と戦って特殊な毒を受けたものと考えていた石倉はその事実に驚愕した。この二人の女性はその毒の専門分野の人たちと思っていたのだが、その女性達は真剣な目で機械などの細部を調べている。

「ナノマシンの動作不良が原因で治らないみたいですね。・・・そうです、息子は私達が改造してしまったのですから。」

診断を下した後、罪を告白するように落ち着いた方の女性、祐一の母『冬香』はそう言った。若い方の女性、『祐夏』も自分の弟を慈しむように処置をほどこしながらその表情は哀しみに満ちていた。医者として、そしてあのライダー達の戦いを見ていた一人の人間として石倉はその行いについて激怒しそうになったが、二人の様子を見て何も言えなくなった。

「し、しかし、祐一の話では祐一の家族は・・・。」

藤兵衛は祐一を逃がすために爆死したと聞いた二人が今目の前にいるのが信じられなかった。

「そのことについては祐一が目を覚ましてから話します。」

作業を続けながら冬香はそう言った。その後誰も言葉を発せず一時間が経とうかとした時二人が、静かに祐一から離れた。

「石倉先生でしたね?・・・後は頼みます。」

そう言って石倉医師に頭を下げた、その様子は家族を心配する親兄弟そのものだと石倉は思ったが途中で頭を振った。

(何を馬鹿なこと考えているんだ・・・家族を心配しないわけないだろ。)

「わかりました、お任せください。」

安心させるように微笑みながらそう言うと祐一に真剣な目を向け手術を始めた。

 

 

 

 

 

祐一の手術を無事に終え、病室に移すと冬香と祐夏は緊張の糸が切れたのか眠ってしまった。

「久しぶりだな〜五郎。まさか医者になってるとは思わなかったぞ。」

二人に毛布をかけた後、藤兵衛は改めて再会を喜ぶ。

「全くだ、まさかあんなに生意気だった奴がこんなに立派になるとはな。」

滝は石倉の頭をわしゃわしゃと撫でながら嬉しそうに笑う。

「ちょ、滝さん!俺もう子供じゃないんだってば。」

照れくさそうに頭から手をどかすが、口調は昔に戻っていて、そこには在りし日の立花レーシングクラブ光景があった。その後ひとしきり昔の事、そして今まで何をしていたかなど談笑していたが急に石倉の顔が引き締まる。

「ところで、立花さん、滝さん、彼が改造人間ということはひょっとして・・・。」

滝は黙って頷き、その言葉への返答を口に出す。

「ああ、さっき五郎が言ったように新たに組織が動き出した。」

その言葉に石倉は思わず、ずっこける。その様子に滝は不思議そうな顔をすると石倉は困ったような顔をしてもう一度自分の言った意味を告げる。

「彼は、仮面ライダーなんですか?」

滝は「あぁ、なるほど」といった表情をして手をポンと叩く。滝のそばで苦笑しながら藤兵衛が石倉の疑問に首を縦に振り答えた。

「ああ、祐一は今、仮面ライダーとして戦っている。・・・ただ表面上明るい様に見えるが、どこか自分を追い詰めてる感があるからな。彼女達が祐一の救いになってくれればいいが。」

藤兵衛は祐一のベットに倒れるように寄り添いながら寝ている冬香と祐夏を見る。彼女達の顔は滝が知っていたし、特に祐一に対して妙な真似もしていなかったので確証があるわけではないが本人達であることを信じた。そう、信じたかったからかもしれないが。

「・・・彼が怪我をしたときには俺が担当になるように院長と掛け合っとくよ。」

以前は自分は人質となり足を引っ張る事が多かったが、今は確実に力になれる技能を持っている。石倉は自分が力になれることやると約束し心に誓った。

「助かるぜ、五郎。」

滝は石倉の背中を軽く叩きながら握手をした。石倉は握手しながら昔、自分がしていたように空いている方の手で鼻の下を軽くこする、そんな二人の様子を藤兵衛は優しく見つめていた。

結局その日、藤兵衛からの連絡を受けて秋子達が駆けつけたが祐一は目を覚ますことは無かった。目を覚ませば直ぐに退院できることをがわかって皆ほっとしたが、祐一のベッドに寄り添い寝ている二人を見て秋子と名雪が気絶して新たにベッドが二つ必要になってしまった。

 

 

 

翌日、朝の光が病室に差し込み祐一の顔を照らし出す。指先が僅かに動きその意識が覚醒し始めると同時に両腕にかかる重みに祐一は気付いた。

(なんか、暖かいなと思ったら誰かがずっとそばにいてくれたのか。しかし、ここは病院みたいだが俺はどうなった?)

意識を失う直前に今は聞けるはずの無い懐かしい声が聞こえたような気がしたところまでは覚えていたが、情報が不足していて現状を把握できない。

(懐かしい声・・・か、もう聞けるはず無いのにな。)

自嘲気味にそう考えながらとりあえず起き上がって自分のことを看てくれた人にお礼をと思いゆっくりと体を起こすとそこで祐一は固まってしまった。

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

「母さんっ!?姉さん!!??」

突然の叫び声に二人は飛び起き、ナースが飛んできた。

「相沢さん、病室ではお静かに!・・・って、あら?」

飛び込んできたナースが見たのは抱き合って泣いている三人だった。事情は知らないがこの光景を邪魔するほど野暮ではないとそっとドアを閉めナースは仕事に戻っていった。もっとも、後数分後には仲間達が集まってきて騒がしくなり再び注意しにくるこになるのだが。

 

 

 

 

とりあえず病院では落ち着いて話せないと、退院の手続きをして喫茶店『そよ風』の地下へと場所を移す。冬香、祐夏のことを知らない者は事情がつかめず困惑の目で見ている、二人を知っている面々は嬉しいのやら怪しいのやらかなり微妙な表情をしていた。周囲の状況を見て自分が聞かなければ話が進まないのだろうと思い祐一は自分が一番聞きたいことを聞いてみることにした。

「母さんと姉さん・・・だよな?あの時の爆発の中でどうやって無事だったんだ?」

そう、あの時の爆発の範囲は祐一がいる辺りが即死にならない限界点だった。そう普通なら生きているはずが無いのである。ちなみに祐一の母さん、姉さん発言に事情が分からなかった面々は遅まきながら固まった。

「・・・あの時、裕輔さんが急にね『祐一に遣り残した事がある』って言って何かを私のポケットに手紙を入れたと思ったらいきなり足元に穴が開いて・・・気付いたら外で気絶してたわ。きっと裕輔さんはじめから私達を逃がすつもりだったのね・・・手紙には『すまん』て書いてあっただけだったわ。」

冬香は哀しそうにぽつぽつと語っていく。だが決して涙は流さなかった、今ここにいるのは母としての冬香だったから。目を見て話を聞いていた祐一はそれが辛かった、裕輔が死んで一番辛かったのは冬香であろうに、自分の為に強く見せている母は悲しく、辛く、苦しそうに見えた。

「でも父さんが逃がしてくれたおかげで私達は祐一の力になることができた。」

祐夏はこれ以上冬香や祐一を思い詰めさせないように前向きな方向に話を変えさせた。祐一は姉が普段元気が服を着ているような性格なのに細かい気配りが出来るところを人間としてを尊敬している。

「そう言えば何で俺は病院にいたのかまだ聞いていなかった。」

だから祐一もその話に乗ることにした。ただ、そう言ったらみんなに呆れた目で見られたが。

「あんだけ、派手に怪我しといて『何で?』もないでしょう。今回は祐一の改造人間としての部分が動作不良を起こしていたのよ。」

祐夏は『改造人間』という部分でやはり負い目があるのか顔を少し歪めた。

「改造人間としての部分?」

このことに関しては自分が何を言っても二人は自分に負い目を持つだろう事を理解しているので、できるだけ普通に尋ねた。

「そう、祐一を改造人間に足らしめる機械的な部分を自動的に修復させるはずのナノマシンの動作不良が原因であなたの人間としての部分に負荷をかけて本来より症状を重症にしたの。本当ならあなたは怪我をしても人より早く治るのよ、だから今は普通に動けるでしょう。」

自分の身体の能力に祐一は感心し、他の面々もほへ〜となっていた。一部、話について行けず別の意味でぽかーんとしていたが。そんな雰囲気の中に祐夏がさらりと爆弾を落とす。

「それと祐一、妹ができたから。」

「・・・は?」

そこで全員の目が冬香のお腹に視線を集中させる、普段ならここで「あらあら」と言って微笑んでいそうな秋子さんまでがである。今までの周囲の空気にうっちゃりをかけたように奇妙な沈黙が続いた。自分のお腹が凝視されている事に気付いた冬香が少し頬を染め訂正する。

「祐夏、それだけじゃ意味が正確に伝わらないでしょう。・・・私達があの場所で改造したのは祐一だけじゃなくもう一人いたの。」

冬香は驚いている祐一の方を見ながら話を続ける。

「祐一の改造が終わった後に15,6歳ぐらいの女の子が連れてこられてね、完全に記憶を消されてたみたいで名前を聞いても分からなかったみたいだったわ。」

そこまで言い冬香はうつむく、そこで祐夏が引き継ぐ形で話を続ける。

「私達は疑われるわけにはいかなかったとはいえ、その娘を改造してしまった。脳改造させてないとはいえ罪滅ぼしにもならないわよね。」

また空気が重くなって来たのを感じても祐夏は自嘲的にならざる終えなかった。

「祐一を逃がした直後に目覚めてくれたおかげで脱出させる事が出来たけど、あの娘には記憶が無いから帰る場所が無かったのよ。」

「それで同じ改造人間である俺の妹にして帰る場所を作った、か。」

話が読めてきたので祐一がそう言うと祐夏がうなずく。

「でも、それにしちゃあ遅くないか?」

普通の人間である冬香と祐夏が辿り着いているのに、それらしい人物には会っていない。しかも捕まっていた施設はそう極端に離れているわけではない。つまりもうここに着いていないとおかしいということだ。

「それが・・・慌ててたから名前と鍵山市としか教えてなかったの。」

それまでの雰囲気をぶち壊しにするように舌をちょろっと出して、てへっと言わんばかりに照れたようにそうのたまう祐夏。その場で冬香以外がいっせいにこける。

「デスクロスと戦っていれば気付いてくれるわよ。」

「それまでの宿はどうするんだ・・・年頃の女の子だぞ。」

あっけらかんに言う祐夏に頭を抱えながら祐一は反論する。どうやら妹にすることに異議はないらしく早速、保護者ぶりを発揮させている。

「義妹だな、相沢。」

それをからかうように北川が言う。

「妹だ、北川。」

何やら親友の発言のニュアンスに不穏なものを感じたのか拳で黙らせた。

「本当に完全復活していたな、相沢。これじゃ殴られ損だぜ。」

背中をさすりながら復活する北川、ちなみ殴ったのは頭頂部だ。というかツッコミで状態をはかるのはどうだろう?しかも、心配でぼけたのか。まぁ、こんなやりとりも二人を親友たらしめているのだろう。

「はいはい、馬鹿なことやっていないの。」

美坂チーム、リーダーの香里がいつもの如く呆れながらも場をおさめる。

「それで名前は、何ていうんですか?」

名雪が興味しんしんなのか冬香に尋ねる。

「それが記憶がないから、名前も分からないらしいの。逃がす事に集中していたから後は祐一に頼んだことにしてたのよ。」

困ったように祐一を見ながら冬香がそう言う。そう言われても一番困ったのは祐一だ、全然聞いてない話なのだ。

「マジ?」

「マジ。」

聞き返す祐一に祐夏が笑いながら同じように返す。祐一は自慢ではないが、真剣に名前を考えたりするのは苦手であった。そこで、そういうのは冬香にやってもらうように言おうとした時、滝の携帯が鳴る。

「失礼・・・・・・何!?わかった、直ぐに向かう!!付近の住民の避難を優先させてくれ!」

滝は祐一の方を見る、それだけで祐一は何が起きたか理解し頷き立ち上がる。

「祐一くん?」

あゆは滝の剣幕に驚いてそれに合わせて立ち上がった祐一の方を見る。事情のつかめていない者はあゆと同じように不思議そうな顔をしている。事情を察した者は退院したばかりの祐一を心配そうに見つめた。

「奴等か?」

藤兵衛はわかっていたからただそれだけ聞いた。

「ええ、Y大学にデスクロスの奴等が現れたらしいです。」

そう言って階段を駆け上がっていく、祐一もその後に続いて行こうとすると。

「祐一!・・・頑張って。」

「無事に戻ってくるのよ。」

母や姉の声援を受け照れくさいのか振り向かずに右手軽く上げて滝を追いかけていった。

 

 

祐一はバイクに跨りながらある疑問が浮かんできた。

「滝さん、連中はY大学を狙ってどうするんだろう?あそこは極普通の大学だぜ。」

「そうなんだよなー、だが、放って置くわけにはいかんだろう。」

祐一の言葉には同意するがデスクロスが現れたからに被害をくい止めるために倒さなければならない。そのことに対して異論は無いので頷きバイクのエンジンをスタートさせ走り出した。滝もそれに並んで走り出す。

 

 

 

二人の姿が見えなくなった後、不気味な影がその場で揺らめいた。

 

 

 

Y大学に辿り着いた時にはデスクロスは大型トラックを使い、引き揚げようとしていた。それを見た祐一達は遅かったと悔やんだが、今尾行すれば基地に案内してもらえると考え距離をとって追跡を始めた。

「相沢と滝は着いてきているか?」

運転席にいる戦闘員が助手席にいる戦闘員に確かめる。

「ああ、しっかりと着いてきている。」

それを聞いた運転している戦闘員は覆面の中でにやりと笑い、急ブレーキをかけた。トラックの後ろを追跡していた祐一達は急にトラックが迫ってくるのであわやというところでハンドルを急いで切り何とか回避した。

「ちっ!感づかれていたのか!?」

滝はそう吐き捨て運転席に乗り込もうとするが、またトラックが発進してしまった。祐一はまだバイクに跨ったままだったのでそのまま発進させ追跡を再開し、滝も慌ててバイクに戻り追いかける。

「バイクから乗り移るしかなさそうだな!」

「そうですね!」

滝は助手席に、祐一は運転席に並ぶためにアクセルを回しスピードを一気に上げる。ところが並ぼうとしたところでトラックが蛇行をはじめ祐一達に体当たりをしかけてきた。その上、窓から手榴弾を投げてくる。

「くそっ!近づけない!!」

「えげつないことしやがって!」

必死に避けながら離されないようにスピードを落とさず毒づく。そしてついに祐一の前で手榴弾が爆発し煙の向こうにその姿を消した。その様子を見ていた戦闘員は愉快そうに笑った。

「はははは、見たか、おい!手柄俺たちのものだ!!」

「ああ、俺たち幹部になれるかもな!」

この二人は気付かなかった、祐一が居なくなっても滝が動揺していないことに・・・そして。

「よう、随分余裕だな。」

突然声がしたかと思うと運転席の上からドアを開け飛び込んできた。あの時、祐一は爆風を利用してジャンプでトラックのコンテナの上に飛び移ったのだった。ロードウィンドは変身した時ほど細かく遠隔操作できないが、ある程度なら操作する事が出来る。つまり爆煙が消える前に素早くトラックの死角に移動させたおかげで祐一の移動を悟られる事がなかったというわけだ。

「き、貴様!何故生きている!?」

動揺しとっさに身体が動かなかったのか、大して抵抗する前にパンチを喰らい気絶した。

「それを知るためだ。」

何か見当違いなことを満足そうに気絶した戦闘員に言い、運転している戦闘員を外に放り出しブレーキを踏んだ。トラックを停めた後、助手席から気絶した戦闘員を引き摺り下ろすとバイクから滝が降りてくる。

「こいつにデスクロスが何を企んでるか吐かせましょう。」

祐一の提案に滝が頷くと先程トラックから放り出された戦闘員が犬笛サイズの何か増えのようなものを吹いた。するとトラックのコンテナから戦闘員がわらわらと現れる。あっという間に二人は囲まれた。

「団体さん、いらっしゃ〜い、ってところか。相沢、いけるな!」

「もちろん!」

お互い確認しあうと戦闘員に殴りかかった。戦闘員が武器を持ち出せばそれ奪い反撃し、お互いにピンチの時は手助けする。そんな戦いが15分ほど続き祐一に蹴り飛ばされた戦闘員を最後に全員倒した。先程の助手席にいた戦闘員を無理やり起こすと、そいつは嫌な笑みを浮かべた。

「ふふふ、俺たちの任務は時間稼ぎさ。今頃、藤兵衛たちは・・・うっ!」

最後まで言わせず祐一はその戦闘員を思い切り殴り飛ばした。滝は急いで藤兵衛に連絡を入れるが中々出ない。

「おやっさん!こちら、滝!!おやっさん!こちら滝!!」

二人とも焦りだした時、僅かにうめき声が聞こえてくる。

『た、滝か・・・?まずい事になった、冬香さんと祐夏さんが鬼の化物にさらわれた。それ・・・とZEROに車谷採石場跡に来いと言っていた。』

「おい、おやっさん大丈夫なのか!?」

『ああ、睡眠ガスを使われただけなようだから、だからこっちはいいから・・・。』

最後まで聞くことなく祐一はロードウィンドに跨った。

「滝さん!先に行く!!」

返事も聞かずにそのまま走り出して行った。

「絶対罠がある!気をつけろ!!」

そう祐一に叫んで自分もバイクに向かう。

 

 

バイクに乗ったまま腰を浮かし両手を上下に突き出すと腰に中央に『アーク』が納めてあるべるとが出現する。そのまま両手を180度回転させ、そしてその手を胸の前で交差させ一気に両腰に引く。

「変身!」

『アーク』から蒼い光が放たれバイクごと全身を覆う。光がおさまると蒼いマスクに蒼いボディ、赤い眼に赤いマフラー、胸にZの変形字が刻まれた石を持ち、手足に銀の手袋とブーツのZEROがメタリックブルーを覆うようにメタリックシルバーの装甲が現れたロードウィンドに乗っていた。そして最後に『アーク』から紅い光が放たれ『アーク』の色が蒼から紅へと変わった。

 

「母さん、姉さん!今行く!!」

 

 

 

 

車谷採石場跡の崖の上で二人は猿轡を噛まされて磔にされていた。そこではマッドクラウンとヘルズオーガが戦闘員に指示を出している。

「しかし、あんたは恐ろしい奴だ・・・。」

ヘルズオーガはマッドクラウンの張り巡らした策略に嘆息しながら思いを口にする。

「策略とは二重、三重に張って初めて効を成す。後はお前の力量しだいだ。」

自信から来る油断は無く、戦いへの気負いも無くただ無感情に淡々とマッドクラウンは語る。そこへ偵察に出した戦闘員から連絡が入る。

「仮面ライダーが間もなく現れます。」

その連絡を受けてマッドクラウンが戦闘員達に作戦の確認を始める。

「いいか、奴はこの二人を救出するために地雷原にのこのこ突っ込んでくるだろう、これで倒せればいいがそこまでは甘くは無いだろう。そこで奴が地雷原を突破したと同時にバイク部隊で突撃せよ!」

「キィーーッ!」

戦闘員は一斉に右手を胸の前に倒して右上にビシッと伸ばして叫んだ。その後各々の持ち場へと散っていった。

「作戦にはまだ続きがあるがな。」

自らも姿を隠すためヘルズオーガはこの場を離れながら呟いた。

「ああ、だが彼らにそれを言う必要も無い。」

冷淡にそう言い放つとマッドクラウンは姿を消した。

 

冬香と祐夏が磔にされている十字架が高性能リモコン爆弾であることなど二人の周りを警護している戦闘員は気付く無かった

 

 

ZEROは磔にされている二人を見つけさらにスピードを上げる。そこに地雷があるなど気付くはずもなく最短距離で向かおうとすると前輪に突如違和感が起こった。咄嗟に車体ごと右に傾けるといきなり爆発を起こした。

「くっ!地雷かよ!?」

避けた方向にも何か違う感触があり今度は一気に走りぬけると後方で爆発が起こる。しかし、やはり避けた先にもまた地雷が待っていた。しかも、今度のは周りに誘爆を起こし爆風の衝撃と熱がZEROを取り囲みながら襲う。それを、誘爆のさいの爆発するタイミングのズレを見極めスライディングの要領で車体をぎりぎりまで傾け滑らせてかわす。

「トォウ!」

ロードウィンドをジャンプさせ何とか地雷原を抜けると周囲にいきなりバイクに乗った戦闘員達が現れる。

「囲もうってのか?俺とおやっさんの造ったロードウィンドをなめるな!」

ZEROに向かってくる戦闘員達に向かってロードウィンドを加速させ、すれ違いざまに急旋回して何台かのバイクごと地雷原の方に向かってふっ飛ばした。地雷原に放り込んだ瞬間に爆発が起こりその爆風で何台かがバランスを崩す。それを見逃すほどZEROは甘くない、そのままバランスを崩した戦闘員達の方に突っ込み蹴飛ばし、殴りかかってくる戦闘員の拳を掴み引きずり倒し、乗り手のいなくなったバイクは違う戦闘員に衝突した。そうやって地雷と戦闘員の数を減らしていき、最後の戦闘員を正面から体当たりして倒した。

「母さん、姉さん。今助けるぞ。」

そう言いジャンプして二人が囚われている十字架の前に降り立ち警護していた戦闘員を片付け縄を解こうとしたその時・・・。

ドオオオオオオオオォォォォンン!!!

恐ろしい程の爆発音が辺りに鳴り響き、大きな振動が大地を揺るがし、天に伸びる火柱がたった。そこへ、やっと滝の運転するバイクが到着した。ヘルメットを脱ぎバイクから降りて周囲見回す。

「相沢ーーっ!返事をしろー!」

そこまで叫んだ時、突然背後でスタッと何かが着地した音がする。

(デスクロスか!?)

慌てて振り向き、振り向きざまに右ストレートを背後の人物に放つが、その人物は後ろに飛び退きそれをかわした。

「ちょっと、滝さん!危ないじゃないですか!?」

その人物は冬香と祐夏を両脇に抱えたZEROだった。それを見てほっとする滝。

「心配させやがって。あんな爆発が起きたから焦ったじゃねーか。」

滝は三人とも無事な様子を確認し微笑む、だが祐一の雰囲気はやや固い、と言うより怒っている。

「あいつら、最初から母さん達を殺すつもりだった。」

二人を木に寄りかからせながら憤り拳を握り締める。滝はそれ見守っていたがあることに気付く。

「そう言えば、おやっさんの言っていた鬼の化物は?」

それを聞いてZEROもはっとする。

 

 

「計画プランBに移行する、後はお前の仕事だ。」

マッドクラウンがZERO達の動向を見ていた場所から立ち上がりこの場所から立ち去ろうとする。

「わかった。必ず仕留めてやる。」

ヘルズオーガがその場所にそう言い残し消えていった。

「つかの間の再会が呼ぶ悲劇か・・・くくくっ、まるで喜劇(ドラマ)だな」

そう嘲るように吐き出された言葉に僅かに哀惜が含まれていたのは気のせいか・・・。

 

 

「よく来たなZERO!」

ヘルズオーガが崖の上に唐突に現れる。ZEROと滝はそちらに一斉に目を向ける。ヘルズオーガを目に留めたZEROは拳を握り締め胸の前まで持っていき睨みつけた先にいる鬼へと拳を突き出した。

「下りて来い!今すぐにぶちのめしてやる!!」

ヘルズオーガはあくまでも見下し、憎しみをぶつけながらZEROの言葉を無視する。

「お前の相手は、まだ俺ではない!立ち上がれ火炎カミキリ!!」

すると後ろの木に寝かせておいた冬香と祐夏が立ち上がりその姿を禍々しく変えていく。ZEROはその変化を呆然と見ているしかなかった。

「てめぇ!彼女たちは偽者だったってのか!?」

滝がヘルズオーガに向かって吼える。

「ああ、良く出来た偽者だ。もっとも死んだ本物の脳から記憶をダウンロードさせ自分達の死だけ書き換えただけだから本物と変わらんらしいがな!くっくっく、だが怪人状態の奴等はお前らの事を憎むデスクロスの駒に過ぎんのだ!!さぁ、行け火炎カミキリよ!!」

さも愉快そうに哄笑を続け怪人と成り果てた冬香達だったモノに命令を下した。完全に姿を変えた火炎カミキリ達がZEROと滝に襲い掛かる。ZEROはその攻撃を捌きながら滝を掴みジャンプして滝を安全な所に運び再び火炎カミキリの前に躍り出る。

「母さん!姉さん!俺だ祐一だ!!わからないのか!?」

ZEROはそう叫ぶが全く聞き入れられず二体から殴り飛ばされる。

「デスクロスの敵は死ねぇい!キシャァー!!」

二体は一斉に口から火を吹きZEROを燃やそうとする、それを横に転がりながら何とかかわしていくZEROの脳裏に浮かぶのは病院で自分をずっと看ていてくれた二人、自分を気遣ってくれる二人のやさしい眼差し。

(くそったれがー!攻撃できるわけないだろ!!)

殴りかかってくる一体を捌きもう一体を転がす。こんなものが決定打になる筈が無くどんどん体力を消耗していく。

バァァンッ!

ヘルズオーガの身体に爆発が起こる、先程安全な場所に運ばれた滝が拳銃で撃ったのだ。だがそこには大して傷もついていないヘルズオーガが立っていた。

「おいおい、特殊徹甲弾だぜ。傷さえつかねぇーのかよ。」

滝は冷や汗をかきながら呆然と呟く。

ZEROが死んだら、相手をしてやるから黙って見ていろ、滝。」

ヘルズオーガにとって、ZEROの苦しみは悦び、ZEROの流す血は美酒、ZEROの叫びは祝福であった。だからこそ、今の戦いは面白く気分がいい。本来ならここで滝を殺しても構わないのだが、気分が高揚しているの観戦させてやっているのである。

「ほら、ZEROが捕まったぞ!」

結局ZEROには火炎カミキリを本気で倒そうとする事が出来ず、一体に蹴り飛ばされた後もう一体に背後から捕まえられたのである。

「覚悟しろ!仮面ライダー!!」

ZEROを蹴り飛ばした火炎カミキリが右腕の巨大なハサミでZEROの首を切り落とそうと力をこめる。

「ぐあぁぁぁぁっ!」

ZERO!」

ZEROの叫びに滝が駆けつけようとすると目の前に剣が突き刺さる。

「黙って見ていろ!」

ヘルズオーガがショーを邪魔されないように投げつけてきたようだ。今度は銃を取り出し祐一を捕らえている火炎カミキリにむける。ところがその銃から弾が撃ち出される事は無かった、火炎カミキリ達に変化が起きだしたからだ。ZEROの首を絞めるハサミの力が徐々に弱まっていき、捕らえている方の力も弱まる。

「ゆ、祐一・・・私・・達を倒しなさい。」

「この・・・へ、へたれ怪人の・・・・・・意識を制圧しているうちに!」

その声は紛れも無く冬香と祐夏の声だった。しかしそれは今にも途切れそうな声であり余裕が無い。・・・だが

「そんなことできるわけ無いだろ!俺に母さんと姉さんを殺せというのか!?」

ZEROには家族後と倒す事など出きるはずが無かった。

「甘ったれないで!わた、私達に秋子達を殺させ・・・たいの!?あなたの守りたい者を守るんでしょう!」

冬香の厳しい叱咤がZEROに叩きつけられる。

「いい?い・・・まの祐一は『仮面ライダー』なんでしょう!?今、生きている人たちを守りなさい!!」

祐夏が祐一に決意を促す言葉を投げかける。

「ウオオオオオオオオォォォォォォッッ!」

ZEROは自分を捕らえている背後の火炎カミキリ肘うちを入れて、目の前にいる火炎カミキリに投げつけジャンプする。ZEROは呪った、デスクロスの冷酷さを。ZEROは呪った、死んだ母達まで利用したものを。ZEROは呪った、力があっても二人を守ることが出来ない自分を。ZEROは祈った、例えコピーであろうと母達の最期が安らかである事を。

「バァァストキィィィィィック!!」

アークから紅い光が放たれ胸の石が反応を起こし右足に緑光が集中する。キックが命中しかつて冬香だった火炎カミキリにエネルギーの奔流が走る。キックの反動を利用しもう一度跳ぶと先程と同じようにアークが輝き今度はその拳に緑光が集まってきた。

「ライダァァァクラッシャァパァンチ!!」

錐もみ状に回転しながらかつて祐夏だった火炎カミキリにエネルギーを叩き込んだ。二人は悲鳴も上げずふっ飛んでいく。

「せめて、せめて穏やかに無に還れ・・・。」

悲しみが込められた祈りの言葉がZEROからこぼれ出た。だがしかし、いつものように爆発が起きない。ZEROは振り返り二人の方を見ると何と人の形に戻っていた。隙を見てZEROの方に来ていた滝がZEROを促し二人に近づく。

「まだ、生きている!」

「滝さん、二人を病院へ!」

目に見えて慌てている二人に冬香と祐夏は弱弱しくも微笑んだ。

「その、必要は・・・ありませんよ。これは『アーク』がくれた別れの時間です・・・から。」

冬香が今自分達に起きている現象を説明すると、ZEROは、はっとして自分のベルトにあるアークに手をやる。

「こんな奇跡はいらない!母さん達を元に戻してくれ!!」

ZEROが叫ぶが冬香達の怪我は一向に治る気配は無い。その様子に祐夏が苦笑してZEROを諭すように優しく見つめる。

「祐一、どんなにアークが奇跡を起こせるものであっても失われた命を蘇らせることはできないわ。それは地球の生きとし生けるものの摂理を完全に逸脱するものだから。それに私達は本人ではないから今のこの状態から復活させる事はできないのよ。」

「そんな・・・。」

ZEROはうなだれる、そんな様子を見て祐夏がZEROの手を掴み言葉を紡ぐ。

「ごめんね、辛い選択ばかり押し付けて。ごめんね、また哀しいことを背負わせちゃって。ごめんね、悪いお姉ちゃんで・・・。」

涙を流しながら謝り続ける姉にZEROは握っている手を痛くない程度に強く握り首を横に振る。

「そんなことはない、姉さんは俺の自慢の姉だ。」

冬香がその様子を見ながら滝に話しかけた。

「祐一を頼みます、この子は強く見えますが弱い部分を持っていますから。」

滝は冬香の願いに黙って頷く。それを見て安心したように今度はZEROに話しかける。

「祐一、あなたは一人じゃないわ。周りにはあなたを支えてくれる素敵な友達がたくさんいる、それに妹も新しくできたしね。きっと本当の私達もあなたの事を今も見守っているわ。」

ZEROの顔を撫でながらそういう冬香に何度も頷くZERO

「もう一度、祐一の顔を見せてくれないかしら。」

恐らく最後の時が近づいているのだろう泣き笑いの表情になりながらZEROの顔を撫で続ける冬香、祐夏もZEROに向かって微笑みかける。二人の願いに変身を解く祐一。その仮面に隠れていた素顔は涙に濡れていた。

「もし、生まれ変われるのならまた家族になりたいわね。」

「わたしは恋人でもいいわよ。」

二人は祐一の涙をそれぞれ拭いながらそう言うと、腕からすっと力が抜けそのまま地面に落ちた。

「うわぁぁぁぁぁぁっ。」

祐一の慟哭が辺りに響き渡り滝も拳を握り締め血を流している。そこにヘルズオーガ飛び降りてくる。

「貴様の苦悩は心地よいが三文芝居のせいで興が冷めそうだ。血を滾らすために貴様の痛みを見せてもらうぞ。」

ぞっとするような笑みを浮かべながら祐一達に近づいてくる。

「てめぇ・・・っ!」

滝が再び銃を構えヘルズオーガに発砲しようとすると、それを二人の亡骸の目をそっと閉じさせた祐一が割って入るようにに左手を横に広げ二人の間に入る。そして、両手を上下に突き出し180度回転させ胸の前で交差させる。その腕を両腰に一気に引くとアークが輝き、その光が収まると蒼の戦士仮面ライダーZEROが現れた。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォッッ!!!!」

哀しみか怒りか憎しみか、あるいはその全ての叫びを上げそのままヘルズオーガに向かって突進していく。その動きに合わせてヘルズオーガも憎しみに歪んだ笑みを貼り付けたまま突進する。

「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォッッ!!!!」

二つの咆哮がぶつかり合い激しい戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

                          つづく

 

 

     <<あとがき>>

 

ロードウィンド

最高時速500km?  ジャンプ力50m

立花藤兵衛が今まで見てきたライダー達の戦いで得た知識と経験を盛り込んだライダーマシン

普段は何の変哲も無いメタリックブルーに塗装されたオフロードマシンで祐一の変身に合わせて

そのメタリックシルバーの装甲に包まれた真の姿を見せる

サテライトレーダーシステムや脳波による遠隔操作が可能などの機能が搭載されている

まだ明かされていない機能は後々作中で語られることになるだろう(多分)

なお、モデルはス○キのG−スト○イダーである

 

作者:今回のあとがきはマシンの紹介だけです。

 

 

怒りに囚われたZEROの攻撃はヘルズオーガに通じず

逆に大怪我をしてしまうZERO

滝の機転により辛くも脱出するが

ヘルズオーガの形振り構わない脅迫に怪我が癒えぬまま戦いに挑む

負けるな、ライダー!決めろ新必殺技!

 

次回 第五話「鬼が島の決戦!復讐鬼の最後!!」

 

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