仮面ライダーZERO

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第二話「新たなる仮面ライダー!」

 

 

立花モータースの奥で祐一は藤兵衛に出されたコーヒーを飲んでいた。

祐一としては早くバイクを購入して秋子達のいる街へ急ぎたいのだが、藤兵衛が難しい顔をして自分を見つめているので気まずくて別の店に行く事も出来ず話を進める事も出来ず所在無さげにしている。

(あ、このコーヒー美味い・・・。)

こういう雰囲気が苦手なのか意識を関係無いことに向けていたりしていた。そこで今まで黙っていた藤兵衛が真剣な顔をして祐一に質問をする。

「あいつらは、一体何者だ?なぜお前は変身できる?」

この質問に祐一は驚いた。てっきり祐一は自分のあの姿を警戒しているのかと思っていたが目の前の男は事態を把握しようとしているのだ。祐一は藤兵衛が今までライダー達と共に数多くの組織と戦ってきたことを知らないからそれを冷静な男と判断した。

「あなたは知らない方がいい、巻き込まれるぞ。」

「巻き込まれるも何もやつらは俺を狙ってきたんだ、ライダー達の居場所を知るためにな。」

祐一は驚いた顔をしたあと怪訝な顔をする。

「ライダー?」

「仮面ライダーだ、俺はあいつらと一緒にああいうやつらと戦ったからな。」

どこか昔を思い出すように遠い目をしながらそう呟く。

「ちょっと待った!?仮面ライダーって都市伝説じゃないんですか?」

祐一は藤兵衛の言ったことに目を見開いて驚く。

その祐一の様子に藤兵衛は微笑みながら肯定した。

「ああ、だから教えてくれないか?あいつらとお前の事を。」

祐一は目の前の男なら信じられると感じ、ぽつりぽつりと語り始めた。

冬に起きた奇跡のこと、それがベルトについている石のおかげらしいこと、連れ去られた時のこと、家族のこと、デスクロスの本部が大切な人達がいる街のそばらしいこと、脱出のときのこと。

そこまで聞いて藤兵衛は言葉をもらした。

「おそらくその爆発がライダー達のせいだと思ったのだろうな。・・・!?」

そこで藤兵衛は祐一の顔に哀しみの影が浮かんだのが見えた。

(・・・そうか、戦いのときの決意は聞こえていたが、こいつはまだ高校生だったな・・・。)

藤兵衛は優しく祐一に語り掛ける。

「悲しい時は、泣くものだぞ。」

少しぴくっとなる祐一だが笑顔でしかし決意の篭った目で藤兵衛に答える。

「いや、今は泣きません・・・俺が泣くのは奴等を倒した後だ。」

その言葉に藤兵衛は胸を締め付けられるようだった。

 

暫く無言で何か考えていたが突然立ち上がり何処かに電話をかけだした、その様子に祐一はぽかんとなる。

やがて電話を終えて戻ってくると祐一についてくるようにように促す、祐一は分けもわからずとりあえず従う事にした。

 

 

しばらく藤兵衛の後をついて行くと少し広い場所に着いた。そこにはシートを被せられた何かが中央に鎮座しているだけで、祐一は何でここに連れられてきたか見当がつかない。ここでようやく、今まで黙っていた藤兵衛が再び口を開く。

「お前がこれからの戦いで必要になるバイクは一台しかない・・・持って行け。」

そういってシートを一気に取ると、そこには何の変哲も無いメタリックブルーのオフロードマシンがあっただけだった。

祐一は思わずきょとんとなってしまった。

「これですか・・・?」

そう思うのも無理は無い目の前にあるようなバイクなら店の方にもたくさんあったのだから。

「まずはこれに乗ってみろ。」

と藤兵衛が不敵な笑みを浮かべながら言うのでとりあえず跨ってみると、突然体の中を何かが走りぬけるような感覚が襲った。

「!?な、何だ今の?」

「今度は変身してみてくれ。」

祐一の動揺を無視してさらに言葉を続ける藤兵衛。かなり納得いかないが祐一は言われたとおりに変身のポーズをとる。

「変身!」

祐一の身体を蒼い光が包み込むと、そこには蒼の戦士ZEROが現れた。

「これでどうす・・・!?」

どうするのか?と聞こうとした時またさっきの感覚がはしるとバイクに変化があらわれはじめる、メタリックブルーのボディに重なるようにシルバーの装甲が現れ後部マフラーの形も変わっていった。

「こ、これは!?」

ZEROは驚きのあまり声を上げる。

「そのバイクは仮面ライダー達しか乗れないようにおれが特別に作ったものだ。変身前の脳波と変身後の脳波を覚える事で乗り主の意思で自走するかとが可能になり、さらに変身に合わせてバイク自身も真の姿に変わる。」

藤兵衛はどこか誇らしげにZEROの乗っているバイクを叩く。ZEROの方は自分の乗っているバイクに圧倒されるばかりであった。

「これを本当に貰っていいんですか?」

ZEROは呟くように聞いた。

「元々ライダー達用に造ったんだ、俺が持っていても仕方が無い。だからこれは仮面ライダーに乗ってもらわなきゃ困る。」

微笑みを浮かべてそう言った後、藤兵衛はどこからか取り出したパイプを銜える。

「仮面ライダー・・・・・・俺が?」

信じられないように自分の身体を見ながらZEROは呆然と呟く。

その様子に藤兵衛はパイプを口から離し真面目な顔をしてZEROにむかって言葉を投げかける。

「お前の決意は聞いた、仮面ライダーを名乗る資格があると俺は思う。・・・お前がこれから何が起きようとも諦めない覚悟があるなら、仮面ライダーと名乗れ。」

これは日常に戻るか否かの選択の最後通牒のようにも聞こえる。ZEROは右手の拳を握りそれをじっと見つめる、藤兵衛はそれを見守るように黙って答えを待っていた。・・・やがて拳を固く握り締めて迷いを振り払い、ZEROは己の変わらぬ決意を言葉にする。

「・・・俺は、あいつらを守りたい。そして、これ以上理不尽な悲しみを増やさないように必ずデスクロスをぶっ潰す!・・・この気持ちは絶対揺らがない。」

そう言ったあとZEROは変身を解き祐一に変わっていく、それに合わせてバイクも元の普通のバイクへと姿を変えた。藤兵衛はその様子見ながら祐一の言葉を聞いて微苦笑を浮かべ、またパイプを銜える。そして煙を吐きながらの予想だにしなかったことを言った。

「さて・・・これからよろしく頼むぞ。俺は立花藤兵衛、あいつらからは『おやっさん』と呼ばれてたからそれで呼んでくれてもいいぞ。」

「あ、俺は相沢祐一です・・・ん?これから??」

祐一はバイクを売ってもらったらそのまま鍵山市に向かおうとしていたので、藤兵衛の言う『これから』の意味がわからなかった。その様子に藤兵衛は呆れたように祐一を見る。

「お前はこのバイクの整備、俺以外に出来ると思うか?それにお前がこれを乗りこなせるように鍛えてやらなくちゃいかん・・・それに経験からアドバイスできることがあるかもしれないしな。」

たしかにその通りである、このバイクは特殊であることは先程目にしたばかりであり、祐一はもちろん他のバイク屋にも整備は無理だろう。だがそれ以上に言外に藤兵衛が祐一のことが心配しているということがことが祐一にはわかり、その優しさがありがたかった。

「・・・ありがとうございます。ところでこのバイク、名前無いんですか?」

「名前は決めてない、何しろ完成したばかりだからな。お前が決めていいぞ。・・・ああ、それと話すときは敬語じゃなくてもいいぞ。」

藤兵衛は照れくさそうにパイプをふかしながらそう言った。

「はい・・・違った。わかったよ、おやっさん。・・・・・・ロードウィンドなんてどうだろう?道を駆け抜ける風と風神て意味で。」

「成るほど、日本語発音だからできる掛詞だな。」

「おやっさん、なかなか博識だったんだな。」

ロードでなぜ神なのかと言うとキリスト教でいう主を表す言葉でスペルは違うがそういう単語があるのだ。日本人はあまり知らない言葉であるが何故かこの二人は知っていた。

「改めてよろしく、相棒。そして、おやっさん。」

ロードウィンドと名づけられたバイクをぽんぽんと叩いた後、藤兵衛に右手をさしだす。それに応えるように右手をがちっり掴む。

「ああ、こちらこそな祐一。」

祐一はふと気になった事を聞く。

「おやっさん、その様子だと俺と一緒に今から行くように見えるんだけど、住む場所とこの店は?」

祐一の言葉にそんなことかと笑ってこたえる。

「それなら、さっき向こうにいい条件の物件を確保した、ここは後で引き払われるようになってるから大丈夫だ。」

「え、でも他のバイクは?」

「他のバイク屋に渡すから大丈夫だ?」

「じゃあ、商売できないじゃん。」

祐一はその言葉を聞きますます首をかしげた。

「向こうじゃ、喫茶店やるからだいじょうぶだ。」

「へ?」

職種が全然違うものを言ってきたので思わず間抜けな声を出してしまった。

(電話だけじゃ普通、契約は成立しないんじゃないのか?っていうか喫茶店!?)

立花藤兵衛、謎が多い男である。

 

 

 

 

 

一方、鍵山市にある水瀬家では、秋子が娘達やその友人達を慰めながら祐一が帰ってくるはずの日のことを思い出していた。

 

警察から電話で知らされた時は思わず気を失いそうになったが、今自分がしっかりしなくてはという思いからなんとか立ち直った。相沢邸が焼失して全員が行方不明誰もが最悪の事態を予想せざる負えない事態に娘達には暫く黙っておくべきか迷っていた時、娘の一人真琴が退屈だったのかテレビをつけたところ運悪く、というか丁度そのことがニュースで取り上げられていて時だった。

 

「・・・!?」

気付かないうちに目の前の風景が歪み涙が零れそうになっていた、慌てて目元を拭う。今自分は泣いてはいけないと自分に言い聞かす秋子。気分転換にここを尋ねてきた一人の警察官の事を思い出す。

「・・・たしか、ここに。」

ポケットから一枚の名刺を取り出す、名前は『滝和也』とある。もう一人滝についてきていたのだがあまりにも無神経なことを言ってきたので思い出したくも無い。滝は相沢邸の焼失について教えてくれた。相沢邸は正に焼失していたと、何も残さず黒い跡のみ残っていたと。普通そんなことはありえない、何かしら残るはずだし、仮に何でも燃やし尽くしてしまう高温だったとしたら隣家に何の被害が無いのはおかしいと言っていた。

ドン、ドン!

秋子の思考をさえぎるようにドアが強く叩かれる。

「水瀬さん!大変だ!!テロリストみたいな奴等が暴れてる!あんたらも逃げた方がいい!!」

冗談みたいな内容だったがその声は嘘というにはあまりに真に迫っていたし、その声の主は良く知っている人でこんな嘘はいわないひとだった。ドアの近くから人の気配が消え足音が遠ざかる。秋子はいたずらとは思わないが一度外に出てみた、すると遠くで警官隊と黒尽くめの集団が争っているのが見えた。秋子は急いでリビングに戻って全員に声をかけた。

「さぁ、さっきの声は聞こえましたね?みなさん急いで逃げますよ!」

だが、全員の反応は鈍い。

(それほどまでに・・・。)

秋子は心を痛めるが、ここでじっとしていたら巻き込まれるかもしれない。

「立ちなさい!・・・それともあなた達にとって祐一さんは足枷になる人でしかなかったんですか?」

自分の言った事ながら心が痛む、と秋子が内心自嘲していると、案の定その言葉に過剰に反応を示す名雪達。

「そんなはずないよ!お母さんなんでそんなこと言うの!?」

名雪が

「そうだよ!秋子さんひどいよ!!」

あゆが

「祐一はそんなんじゃない!」

真琴が

「祐一さんは私達を助けてくれた人です!そんなはずないじゃないですか!!」

栞が

「秋子さんでも言っていい事と悪い事があります。」

香里が

「・・・祐一の悪口は許せない。」

舞が

「祐一さんは、佐祐理達に大切なものをくれた人です・・・それを」

佐祐理が

「私達がどうしてここに集まってると思ってるんですか!」

美汐が

「相沢との付き合いは短いけど、あいつは尊敬できる親友です!足枷になんかなるわけないじゃないですか!」

北川が自分達の溜まっていた何かを秋子にぶつける。秋子はそれに怯まず静かに言葉を続ける。

「では、あなた達は何故座っているのですか?あなた達がここに座り続けて何になるのですか?それとも間接的にでも祐一さん人殺しをさせるつもりですか?今、祐一さんを理由に座り続けて、それで殺されてしまったらそういうことになりますよ。そしてそれを知った祐一さんがどう思うかもわからないんですか!?」

秋子は静かに言ったつもりだったが、いつの間にかそこには激情がこめられていた。誰もが何も言えなくなる、言われるまで気付かなかったのだから。無論それほどまでに悲しみが深かったからそこまで考えがいかなかったのは責めるべきではないのかもしれない、でも秋子は言わなければならなかった。現状はそれほどまでに切迫していた、こうしているあいだにも黒尽くめの集団がだんだん近づいてきているのだ。

「・・・秋子さん、ごめんなさい。」

秋子の内なる悲しみに気付いて謝る舞、そう悲しくないわけが無いただ大人として皆を励していたのだ。

「みんな、立つ。祐一を待つには生きなくてはいけない。」

舞の言葉にみんな立ち上がり、秋子に謝りながら外に向かう。秋子も頷き避難するために、防災鞄を持ち避難ルートを頭に作る。

 

 

 

その頃、デスクロスが早くも活動を開始したと知らない祐一達はパーキングエリアにいた。

「まさか高速で2時間の場所だったとはな。」

祐一は地図を見ながらぼやているとそこへ藤兵衛が声をかけてくる。

「そろそろ行くぞ、急いでるんだろ?」

「了解・・・(無事でいてくれよ)。」

二人で停めてあるバイクに向かう。

 

 

 

 

水瀬家から離れものみの丘方面に避難していく途中で先程までしていた銃声が止んだ。

「・・・終わったかな。」

北川が楽観的希望を口に出すと、それを香里が嗜める。

「どっちが終わったのかわからないのに安心してちゃだめよ。」

そこまで言った時、突然声が割り込んでくる。

「これ以上先に行っても警官がいないからよけい危険だぞ。」

「うぐぅっ!?」

人一倍怖がりであるあゆはその声に驚き飛び上がった。全員が振り返るとそこには先日秋子に名刺を渡した男、滝和也が立っていた。滝の方は一斉に視線が集まりたじろいでいた、中でもあゆはうらめしそうに見ていた。

「どうして、あなたがここにいるのですか?」

秋子がとりあえず全員が聞きたいことを聞いた。

「どうしても何も、あんたらが警察がいない方に進んでいったのを見かけたから追いかけてきたんだ。」

肩をすくめながらそう言うと顔を真剣に戻す。

「とりあえずここを離れるぞ、ここで襲われたらたまったもんじゃないからな。」

全員に注意を促しながら先頭に立ち道を引き返し始める。その後を緊張しながらついて行き、街の被害の出ていないと思われる場所を通りながら警察の作った安全地帯へと向かう。もう少しで安全地帯に着くというところで舞が異変に気付き疑問を口に出す。

「・・・人の気配がしない。」

滝はその疑問を聞き驚いたような顔をする。

「お前さん、勘がいいな。俺もなんだか嫌な予感がしやがる、外れてくれればいいんだがな。」

冷や汗を流しながら先へ進む、不安が全員を覆い空気が重い。・・・暫く進んで行くとそこには滝の予想していた中で最悪の事態が広がっていた。警官隊は全滅していた、しかも見るも無残な姿で。あるものは首があらぬ方向へ曲がり、腕が途中から欠けたり、胸に大きな穴が開いていたり、又あるものは下半身を失っている。・・・・正に地獄、血が辺りを覆い鉄のにおいが纏わりついてくる、赤くない場所が見当たらないぐらいだ。滝、舞、北川、香里、佐祐理、秋子以外は気を失ってしまった。

「うっ!な、なんなのよこれ!?」

香里は口元を押さえながら叫ぶ。気は失わなかったのは凄いがやはり一般の学生、いつもは冷静で明晰な頭脳も事態を処理できず混乱している。滝以外の立っている者もほとんど香里と同じように全員顔色が悪く、気を失ったものを支えているだけで精一杯の状況だった。

「騒ぐな、ここからさっさと離れるぞ。誰かを抱えたままじゃ逃げるのは難しいからな。」

滝のその言葉に誰も何も言わず・・・何も言えず、一刻も早く離れるために地獄に背を向け滝の後をついていく。

 

 

 

とりあえず血のにおいも消えた場所で気を失った者達を起こす。滝は辺りをその間、教われないように辺りを見張る、そこへ舞もやってくる。

「ん?お前さんも休んでた方がいい、素人にはきつかっただろう?」

滝は気遣わしげに言うと。

「ぽんぽこたぬきさん、それに気配を探るのは私の方が役に立つ。」

まだ多少、顔は青いがそれでもその瞳には強い意志が宿っている。

「ぽ、ぽんぽこ・・・?何だそりゃあ?」

滝が目の前の表情の乏しい美少女の突拍子もない言葉に思わず言葉を失う。舞は舞で自分の言ったことについて滝が固まったのを見て急に恥ずかしくなり顔を真っ赤にする。相手が祐一や友人ならチョップする所だが目の前にいるのは年上だったため誤魔化そうにも誤魔化せず佐祐理の方へ走っていった。

「肝は据わってるみたいだが、やっぱりまだ子供か。」

苦笑いしながら、辺りを見回す。特に異常は無い、そろそろ行けるか聞こうと秋子達のほうへ意識を向けると。

「キィーー!」

背後から黒尽くめに身体に赤い十字架ペイントしてある戦闘員がナイフを突き出した。

「ちっ!俺の勘も鈍ったか!?」

舌打ちしながらナイフを避けると同時に振り返る力を利用して戦闘員の頭に裏拳を叩き込む!戦闘ポーズをとったまま秋子達のほうを見ると向こうにも戦闘員達が襲いかかろうとしていた。今の滝の位置から走っても間に合わない、もう一度舌打ちして懐から拳銃を取り出すが引鉄をひく前に戦闘員達が次々に倒れていく。何事かと呆気にとられると金属バットを二本持った舞が立っていた。

「北川。」

そう言うと持っていたバットのうち一本を北川の方へ放る、北川は慌ててそれをキャッチする。

「川澄先輩、これどこから?」

舞は無言でそばにあったスポーツ用品店を指さした。

「・・・緊急避難。」

北川は冷や汗を流し、滝は今が非常事態じゃなかったら笑っていただろう、顔が微妙にゆがんでいる。

「来る!」

舞はそう言い向かってくる戦闘員に向かって走って行き袈裟懸けに殴る。ガキッという鈍い音がして崩れ落ちる戦闘員、北川も舞が処理し切れなかった数人相手にバットを振り回す。

「ひゅ〜、ホントにあいつは女子大生か?」

滝は舞を見てそう呟いた。そこへ戦闘員が群がってくる。

(っと、余所見してるわけにはいかねぇか。あの様子なら任せても大丈夫そうだしな。)

戦闘員の腕を掴み投げ飛ばしながらそう思っていた。

「おらぁっ!」

滝が上段蹴りで戦闘員をふっとばし

「はっ!」

舞が胴を薙ぎ払い

「くそったれ!」

北川が脳天に叩き込む

十五人近くいた戦闘員は三人により倒れふしていた。北川は荒く呼吸をしてほっとしているが舞と真琴は警戒を解いていない。滝は秋子達の方へ今のうちに近づいてきた。

「まだ、注意を怠るな。これで終わりというわけじゃないからな。」

滝がほっとしている者に警戒するように促す。

「何かが近くにいるのよぅ。」

真琴は震えながら辺りを見回す、それは動物が本能的に持っている危機回避能力かずっと何かを感じている。震える真琴を見て美汐と秋子は落ち着かせるように真琴を抱きしめた。抱きしめられた後真琴は暫く震えていたが急にびくっとなる、それと同じタイミングで舞が振り返り顔を恐怖にゆがめた。

「ふははは、たかが三人でここまでしのぐとはな・・・いいぞ、お前たちいいぞ!我等が兵の素晴らしい素材になれる、我が首領も大層お喜びになられるだろう。」

向かいの建物の屋上には三対の手を持ち禍々しい複眼ぎらつかせながらこちらを凝視している怪しい模様を身体に持つ蜘蛛のような化物がいた。その三対の腕には血が滴っている、恐らく先程の警官隊を全滅させたのがこの怪人なのだろう。

「貴様!ショッカーか!?」

滝が蜘蛛の怪人を睨みながら叫ぶ。

「ショッカー?知らんな、我々はデスクロスだ、もうすぐお前達が忠誠を誓う事になる組織だよく覚えておけ。」

屋上から飛び降り、醜く顔を歪めて哂いながら近づいてくる。滝以外は震える事しか出来ない、滝は今の装備では時間稼ぎさえもできない事を知っているために顔に焦りが浮かんでいる。

「お前らさっさと逃げろ!」

滝はそう言った後素早く拳銃を引き抜き引鉄を引く、しかし蜘蛛の怪人はそれを物ともせず向かってくる

「逃がすと思うか?キシャャャャァッ!」

蜘蛛怪人は奇声と共に口から糸を吐き出しその場にいた全員を捕らえる。必死にもがくが糸は切れずにさらに怪人は近づいてくる。

「嫌ぁぁぁっ!助けて、祐一!!!」

血のついた腕が自分達を値踏みするように触れようとした時、名雪は今は傍にいない想い人の名前を叫んだ。その時

 

大地を揺るがすような重低音が響いてきた

それは音でありながらこの場を支配する

滝にとってはそれはいつか見た光景

その先に見えるのは二台のバイク

人が二人増えたぐらいでは助からない状況なのに

何故か全員が助かると確信した

 

二台のうち一台がスピードを上げてジャンプし怪人に体当たりする。怪人はたかがバイクの体当たりぐらいでは自分は揺らがないと侮っていた、だがその勢いは怪人をふっ飛ばしてしまった。そのバイクはなんの変哲も無いメタリックブルーのバイク、そしてそれ操っていたフルフェイスヘルメットを被り白い革ジャンに黒いグローブをつけた男に滝は自分の戦友の姿を重ねその名前を呼んだ。

「本郷か?」

しかし、男はなにも応えずヘルメットを脱ぐ。その顔にその場にいた滝以外はその名を叫んだ。

「「「「「「「「「「祐一(君、さん)相沢(君、さん)!?」」」」」」」」」」

行方不明とされ、最悪死んでいるかもとされた帰りを待ち望んでいた人物が目の前にいる。今が絶望的状況なのは変わらないのに涙を流して喜んだ。滝にとって祐一は捜索対象の少年であって、今この状況では出てきても捕まるだけだと思ってる。

「おい!お前、今すぐ逃げろ!捕まっちまうぞ!!」

しかし、そこで怪人が驚いた声を出す。

「相沢祐一だと!?お前は相沢博士達と共に死んだのではなかったのか?」

その言葉に反応して今まで黙っていた祐一はこの場で初めて声を出す。

「ああ、死んださ・・・人間としての俺はな!・・・変っ」

そう叫んだ後、両手を上下に突き出すと腰に機械的なベルトが現れその中央には蒼い石が輝いてる。突き出した両手を180℃回転させそのまま胸の前で交差させ一気に腰に引く

「・・・身っ!」

腰のアークから澄んだ蒼い輝きが祐一の身体を覆い尽くす!だんだん光が収束していくと腰のアークから紅い光が放たれ変身が完了し、そこには蒼き戦士が立っていた。

「な、お前!?」

滝が驚いた声を出し目の前に立つ祐一だったものを見る、一方秋子達は目の前で起こったことが信じられず呆然とするばかりであった。

「俺の名は仮面ライダー!仮面ライダーZEROだ!!」

その姿正に威風堂々、怪人は圧倒されて怯むその隙にZEROは滝達を捕縛している糸を引きちぎる。そこでもう一台のバイクが辿り着く。

「おやっさん、みんなを連れて逃げてくれ!」

ZEROは藤兵衛に向かってそう叫ぶと怪人に向き直る。

「わかった!あとは頼むぞ!!」

「逃がすか!!」

藤兵衛が皆を連れて安全な場所に逃げようとすると蜘蛛怪人は口から針を何本も吐き出す!当然ZEROは怪人と藤兵衛達の間に割り込み針を手刀で叩き落すが2本がコースをはずれてZEROの後ろへ抜けようとする、それをかろうじてキックで一本横へ飛ばしもう一本を体を張って止める。

「くっ!」

刺さった針を抜いて放る。先程まで幾分か焦ったように歪んだ蜘蛛怪人の顔は今は余裕の笑みを浮かてべいる。

「ふふふ、俺もつきが回ってきたな!貴様を首領に突き出せばこのデスタランチュラ様が幹部になるのだ!!それに今回連れ去った人間を合わせれば確実だ!」

狂ったように高笑いを続けるにZEROは拳を叩きつけようとするが難なくかわされる。

「無駄無駄っ!貴様の体の中には俺の麻痺毒が注入されたのだ、動けるのは驚きだが体に力が入るまい。」

デスタランチュラの言うとおり今ZEROの体には力が全く入らない、かろうじて人並みに行動できるぐらいしか出来ない。

「貴様の連れ去った人間はどこにいる!?」

ZEROはさらにデスタランチュラに攻撃するべく走る、しかしやはりその動きは精彩に欠ける。事実あっさりデスタランチュラにかわされ背中にキックを入れられて倒れこんでしまう。

「シャャァー!」

さらにその意識を奪うべくZEROの首に糸が巻きつけられる。そしてそのまま勢いよく振り回され壁に叩きつけられ叩きつけた壁を貫通して建物内部に転がるZERO。

「ガッ!ハッ!!ゲホッ!」

呼吸にならず咳き込むZERO、そこまで歩み寄るデスタランチュラそのままZEROを蹴り上げる。天井に叩きつけられ背中が軋む、そこから床に叩きつける。

「ぐあっ!」

さらに建物から引きずり出し、またアスファルトに叩きつけ壁に叩きつける。その行為がそのあと五回も続いた後にZEROの頭を踏みつけながらデスタランチュラは得意そうにZEROに話しかける。

「お前が仮面ライダー?この弱さで笑わせるな。まぁ、意識失う前にさっきの質問の答えを教えてやるよ。俺が捕まえた人間どもなら病院そばの廃工場の地下だ。さぁ、もう寝ろ!」

そこでZEROの瞳に再び闘志が宿る!デスタランチュラが踏みつけようとしたのを転がって避ける。

「来い!ロードウィンド!!」

もう一度糸で振り回し叩きつけようとしたときデスタランチュラとZEROを繋ぐ糸部分にメタリックシルバーとメタリックブルーに輝く風が駆け抜けた!ロードウィンドのウィング部分により糸を切り裂かれ、デスタランチュラはZEROを振り回そうとした勢いで後ろに倒れてしまう。その間にZEROはロードウィンドに乗り込む。

「くっ、馬鹿な!?まさか・・・貴様、麻痺が効いていなかったのか!」

立ち上がりながらZEROを睨みつけようとするがすでに加速したロードウィンドが迫っていた。

「効いてたさ、ただ貴様が油断するのを待っていただけだ。それに連れ去られた人の行方を聞かなければならなかったからな!」

そう言い放つと、アークが輝きだし胸の石が反応し緑光を放つ。そこでZEROはハンドルを左手で持ち体をバイク前方に向け右足を突き出すとそこに緑光が集まる。

「終わりだ!バーストキィィィィック!!」

突き出された右足から緑光がデスタランチュラの体中に迸りふっ飛んでいく。そのままZEROは体をバイクに乗る体制に戻しブレーキをかけバイクをターンさせ停める。

「そのまま(ゼロ)に還れ!」

「グゥォォォォォォッ!!!」

ZEROの言葉と共にデスタランチュラの体は爆発四散する。その様子を見ていた滝は藤兵衛に一言呟いた。

「あいつが、新たな仮面ライダーですか、おやっさん?」

「そうだ・・・。」

祐一が変身を解くとその場で片膝をついてしまう、辛うじてバイクに掴まり倒れないようにしているがまだデスタランチュラの麻痺毒が抜けてないようだ。その様子を見ていた祐一の家族、友人達は駆け出した。その様子を見た祐一はただ一言呟いた。

「ただいま。」

 

〈つづく〉

 

 

    〈〈あとがき〉〉

 作者:舞がコメディっぽくなってしまったなぁ(汗)緊急避難とは実際はああいうことじゃないんだよ、良い子のみんなは真似もしくは勘違いしないでね☆

 北川:おい!

 作者:おや何ですか、微妙にへたれてた北川。

 北川:それは俺が聞きたいわ!

 作者:う〜ん、他の自作の北川はへたれてないんだけどなぁ。

 北川:何でこのSSだけ?

 作者:何でだろう?・・・くくく、冗談だ。北川はライダーマンやシャドームーンみたいな役にもなりません。だから必然的にへたれというか、普通の高校生になってもらいました(笑)当初は何かしらライダーにしてみるかと思ったんだけどね。

 北川:なら何で?(泣)

 作者:答えはいたってシンプル。俺はライダー考える時、変身ポーズを実際絵におこすのは知ってるよな?

 北川:ああ、テレビ版に似ている村枝氏の絵を真似て描いてるな。それがどうした?

 作者:気付かないのか?・・・お前のどんな変身シーンを描いても視線をお前のトレードマークが食ってしまうのだ、しかも画調が村枝氏だ(笑)

 北川:・・・がーん。そ、そうだったのかぁぁ!ちっくしょ〜〜〜〜(逃走)

 祐一:(しばらくして)・・・何か北川が泣いて走っていったぞ。

 作者:気にしないで次回予告いこう。

     次回  第三話『女性を誘う甘い甘い罠!?』

 祐一:ぶっちぎるぜ!!

 作者:RXかい!?

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