<都内某所 22:48PM>
すっかり夜も更け、人影も少なくなる。
「もうこんな時間か……」
腕時計の時刻を見ながら、サラリーマン風の男性が夜道を歩いていた。
「明日もこのくらいまで残業が続くんだろうな……忙しくなるのは仕方ないけど、もう少し早く終らないかな……」
疲れた顔をして男性は空を見る。
「!?」
その時、男性の視界が歪み始めた。
男性の足がふらつき、コンクリートの壁に寄り掛かる。
そして数秒後、歪みが消えた。
「……疲れてるみたいだな、早く寝よ」
体制を立て直してやや足早にその場を去った。
男性が気付かなかった。
自分の背後にヌヴァラグがいた事を。
「ナシェ……シュジミ・スガル・ガ」
屋根の上から男性が去って行くのを見届けると、蠍の姿をしたナノヂ・ゴバルは闇夜の中へと消えて行った……。

仮面ライダーソルン
Episode.9「宣告」

<静岡県立大学考古学研究所 13:52PM>
講義を終え、石山洋介と木下雅美はいつもの活動場所に移動した。
先日東京に行った時にようやく広本昇太を見付ける事が出来たが、昇太は戦う運命に巻き込まれ、未確認生命体との戦いを終えるまでここには戻れない立場にあった。
そして、後から昇太が未確認生命体C3号と呼ばれている事を知った。
「広本さんは……あの日からずっと未確認生命体と戦っていたんですね」
やりきれない表情で、雅美は呟く。
あの日、それは約半年前に昇太がN県の遺跡に向かい、行方不明になった時である。
「ああ……俺達がこうやっていた間にも……アイツは戦っていたんだな……なのに俺は……そんな事とは知らずに……」
洋介は椅子に腰掛け、俯いている。
先日昇太に言った言葉を思い出す。
あの時、昇太は何も言おうとはしなかったが、それは当然の事だ。
自分が人ではない姿になって未確認生命体と戦ってるなんて、簡単に言える事ではない。
そうとは知らずに洋介は昇太から無理矢理聞き出そうとしていた。
洋介はあの時の自分を後悔していた。
「洋介さんは悪くないですよ……」
雅美はそっと洋介の肩に手を置く。
「だからと言って、広本さんが悪い訳ではありません……上手く言えませんけど、誰も悪くないと思います」
「……ありがとな」
そう言って、洋介は近くにあるパソコンの起動スイッチを押す。
「もう一度、古代の研究をやろう。少しでも俺達に何か出来る事があれば……アイツの助けになるかもしれない」
「はい!」
雅美は強く頷き、洋介の隣にあるパソコンを立ち上げた。

<関東医大病院 15:24PM>
病院の廊下を歩いている広本昇太は、診断室の前に立ちドアをノックした。
「入っていいぞ」
霧島聖の声がして、昇太はドアを開く。
昇太の姿を見て、聖はやや驚いたような顔をした。
「おや、広本君じゃないか。どうしたのだね?」
「以前話していたソルンの色の事ですが、聖さんの予想が大当たりですよ」
「ほう、半信半疑ではあったが……それで、どうなったんだ?」
聖は驚き半分、興味半分な表情で昇太の話を聞く。
「使ったのは右手の方で……カノンで言う紫みたいな姿になりました」
そのまま昇太は真紅のソルンの事を説明した。
紫のような防御力と赤のような攻撃力を併せ持った重戦士のソルンの事を。
一通りの説明が終ると、聖は複雑な表情で腕を組んだ。
「やはりソルンはカノン以上に未知の戦士のようだな……」
聖の考えた結論はこうなった。
体の構造にしろ、カノンとの能力の違いにしろ、異なる部分が多く、聖にとってはさらに興味深いものとなった。
「とりあえず香里さんにもこの事を伝えておこうと思ってます」
「そうだな……多分今ならホワイトにいるんじゃないかな?」
部屋の時計を見ながら聖は言う。
「わかりました、では失礼します」
昇太は部屋から出て、病院の外へと歩き出した。
「……ますます彼の体を解剖してみたくなったな」
昇太の後ろ姿を見送りながら、聖は呟いていた。

<静岡県某所 16:40PM>
洋介と雅美は、深見彩と共に大学から出る。
その途中、駅近くにある大型テレビに未確認生命体に関するニュースが流れていた。
3人共それに目が行く。
「昇太君……」
その中で、彩は昇太の名を呟き、俯いた。
いつからか、彩は昇太の事を『広本君』ではなく『昇太君』と呼ぶようになっていた。
約半年前、昇太が第0号との戦いで行方不明になった時、彼女は昇太の安否を思うと同時に昇太への想いに気付き、その想いを募らせていた。
「彩さん……」
彩の姿を見て、2人の表情が重くなる。
2人はまだ昇太を見つけた事を話してない。
もし話したら、彩は有無を言わず昇太の元へ行くだろう。
しかしそこは未確認生命体の活動範囲でもあり、あまりにも危険である。
さらに昇太がその未確認生命体として呼ばれている事を知ったら、彩は相当なショックを受けるかもしれない。
その為、2人共言う事が出来ないでいた。
「……………かな?」
「えっ?」
彩の小さな声に、2人は思わず聞き返す。
「どうすれば……昇太君に会えるかな?」
悲しみに満ちた声で、彩は2人に尋ねる。
「……」
2人は答える事が出来なかった。
下手に答えようなら、余計に彩を傷付けるかもしれない。
もしくは昇太が見つかった事を気付かれてしまい、昇太のいる場所を聞き出すかもしれない。
だから、何も言えずに彩を見ていた。
その沈黙が暫くの間続く。
「……私、もう1度東京に行ってみる」
やがて、彩の口が開いた。
「もう1度東京に行って……昇太君を探してみる」
「で、でも……」
「手掛かりが無いのはわかってる、それに危険だって事も……でも……それでも私は探したいの」
雅美の言葉を制して、彩はぎゅっと手を握りながら言った。
真っ直ぐにこちらを見る瞳に、2人は止められない事を悟った。
「……そこまで言うなら止めはしない」
そして洋介は溜め息混じりに行った。
「ただ、行くなら明後日にしろよ。明日は講義があるんだからな」
「わかってる、明後日は休みだからそのつもり」
そして先に帰るね、と彩は駅に向かって歩き出した。
「洋介さん……」
「ここで下手に止めたら気付かれるかも知れなかったからな……こうするしかなかった」
「はい……」
複雑な表情で、2人は彩を見送った。

<都内某所 22:48PM>
「やっぱり掛ったな……」
昨日のサラリーマン風の男性が、昨日とほぼ同じ時間に夜道を歩いていた。
自分の予想通りの時間であった。
「明日になれば少しは楽になるだろう……」
自分に言い聞かせるように、男性は夜空を見上げる。
その時だった……。
「!?」
身体の内部から急激な苦しみを感じた。
思わず男性は腹部を押さえる。
「ぐっ……ぅぅぅっ……」
苦しそうに声を上げる男性。
そして気付いた。
自分の手が紫色に染まっているのを。
「!?」
驚くのも束の間、男性はあまりの苦しみに意識を失った。
その数分後、たまたまパトロール中だった警察官が現れる。
「どうかしましたか?」
警察官は自転車から降りてその男性に駆け寄り、うつ伏せに倒れている男性を起こそうと、仰向けにさせた。
「!?」
その時、警察官は声にならない悲鳴を上げた。
男性の顔も紫色に染まっており、肌に醜い痕が現れていた。

<関東医大病院 9:03AM>
相沢祐一と昇太の2人は、大急ぎで聖のいる診断室へと向かっていた。
そして診断室に着き、ドアを開ける。
「来たか」
2人が入って来たのを見て、聖は椅子から立ち上がる。
そこには対未確認生命体捜査本部の一員、国崎往人もいた。
「今度はどんな奴なんだ?」
「恐らく非常に強力な猛毒を持ったヌヴァラグのようだ」
聖の言葉の後、往人は警察手帳を開いた。
「第1発見者の情報だと被害者は急に苦しんで倒れたそうだ。その時既に全身の肌が紫に染まっていたらしい」
「そこにヌヴァラグはいなかったのか?」
「いや、回りの人にも聞いてみたが誰もヌヴァラグの姿を見てない。その事から未確認生命体C4号として捜査を進めて行く事になった」
そう言って、往人は警察手帳を閉じる。
「そうなると、今度のヌヴァラグは遠くから毒針か何かを放ったって事になるのでしょうか?」
「今の所、その方法が1番有力だ」
昇太の疑問に往人が答える。
そして聖は封筒から数枚の写真を取り出した。
「被害者の解剖の結果、身体の中に小さな異物が発見された。恐らくここから猛毒が発生して、血管を通じて全身に回ったのだろう」
「なんてやり方だ……」
祐一は僅かに身体を震わせている。
昇太は若干顔が青ざめ、その恐ろしさを感じた。
「今警察ではこのC4号の捜索に当っている。お前達も気を付けろよ」
2人は頷くと、診断室を出た。

<廃ビル 9:11AM>
日の光のみで照らされている廃ビルの中に、数名の男女が集まっていた。
「カノンソジョギザ・ガヴァッシャ・ラショ?」
小柄な男の言葉に、ナイフを持った男は僅かに驚いていた。
他の者も少なからず反応している。
「ララ、ナダミ・カノンミ・シィガグマッシャ・シシャリ・ジャ」
「マダ……カノンソジョギショニシェバ・チッシャヂ・メ」
青い髪飾りの女性は面白そうに笑みを浮かべる。
「ショゴドジェ・リサ・ジャデザ・ゼースン?」
「リサバ・ナゴヂジャ」
青い髪飾りの女性の言葉に答えたのは口を布で覆っている男だった。
「ナゴチ・ガ……ラリシュモ・ジョグバ・ガグイシュミ・ビサンモリギモメン・ショセヅマ」
「フン、シュサダヲギャヂガシャ・ジャ」
ナイフを持った男は面白くなさそうに吐き捨てると、ナイフをポケットに仕舞い、その場を去る。
「マヲジャ?ラリシュ……」
「ニッショニシェリヅモ・ギョ。ギャシュモシィガダ・ミ」
「シイセマ・ギャシュ・ジャ」
そう言いながら、口を布で覆っている男は小さく笑っていた。

<都内某所 9:37AM>
関東医大病院病院を出た祐一と昇太は、各々のバイクで喫茶店ホワイトに向かって走っていた。
「きゃああああああああああああっ!!!!!」
その途中、近くで女性の悲鳴が聞こえて祐一と昇太は慌ててバイクを止めた。
2人はバイクから降りて悲鳴のした所に向かうと、目の前の曲がり角から怯えた表情で腰を抜かしている女性を見つける。
「どうかしましたか?」
「………ぅ……ぁっ」
女性は何かを言おうとするものの、口が上手く動いていない。
その女性の視線の先を見た時、2人の表情が変わった。
そこには、皮膚が紫に変色して倒れている男性の姿があった。
仰向けに倒れていた為、顔に醜い痕が残っているのがわかった。
「………」
「………」
祐一と昇太は暫くの間固まっていたが、我を取り戻してヌヴァラグの気配を探るも、全く気配を感じなかった。
「くそっ、姿を現さないヌヴァラグってのは辛いな」
「そうですね……相沢さんは国崎さんをここに呼んで下さい、俺はもう少し探してみます」
「見つかるのか?」
「わかりません……でも俺は以前からC体のヌヴァラグと戦ってましたから見つけられるかもしれません」
「……わかった」
祐一は頷き、携帯電話を取り出して往人に連絡を入れる。
その間に昇太はバイクに乗り、その場から離れた。

<静岡県立大学 12:36PM>
昼休みに入り、多くの学生が食堂で食事をしている。
その中に洋介と雅美、そして彩の姿があった。
3人は先程まで受けていた講義の内容や、改めて調べ始めた古代文字についての話をしながら昼食を頂いている。
「石山君」
話の途中、彩は困惑の表情を浮かべて洋介を見た。
「何だ?」
「明日……どの辺りを探せばいいかな?」
彩は明日、昇太を探すと言った。
しかし、実際探すと言っても情報が少なすぎるので、どの辺りを重点的に探せばいいのかわからないでいる。
ましてや、1日で探せる範囲は限られているので小さい範囲で絞って探さなければならない。
「……」
雅美はチラッと洋介を見る。
洋介はその視線に気付き、『大丈夫だ』と言うように小さく頷いた。
「一応、集まった情報を整理したが……文京区で見掛ける情報が他と比べて多かったんだ。確実とは言えないが、文京区でなら広本を見付けられる可能性が高いと思う」
「文京区ね……わかった」
他に手掛かりがないので、彩は洋介の言葉に頷く。
「ちょっとその辺りをパソコンで調べてみるね」
そう言って彩は食器を片付け、食堂から出た。
彩が出て行くのを見送り、雅美は安堵の息を着きながら洋介を見る。
「本当に文京区で見掛けた情報が多かったのですか?」
「と言うより、アイツがそこに住んでるんだ」
「えっ!?」
思わず驚きの声を上げる彩。
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、俺達がこっちに帰って来た時にアイツから電話があって携帯の番号と住所を教えてもらったんだ。だからさっきみたいな事が言えたんだ」
その時の事を思い出しながら雅美に教える洋介。
「そうでしたか……では広本さんにこの事を……」
「ああ、後で言おうと思ってる。迷惑かもしれないが今回ばかりは…な」
洋介の言葉に、雅美は小さく頷いた。
「でも……広本さんは何て言うでしょうか……?」
「さぁな……だが何にしても、後はあの2人次第だ」
複雑な表情のまま、2人は食堂を後にした。

<都内某所 13:20PM>
人気のない荒廃した建物の中で、誰かの歩く音が聞こえる。
それは全身が黒い装甲で覆われた謎の戦士・ネオである。
ネオはゆっくりと建物の中を歩いている。
構える動作もせず、ただ歩いている。
途中、僅かな音が聞こえた。
「死ねぇい!!」
刹那、真上からイグアナ怪人がネオに向かって飛び掛かる。
さらに別の所から狐怪人が飛び出し、イグアナ怪人と共にネオに襲い掛かる。
ネオは素早くそれに気付き、2体の怪人の奇襲を避け、距離を取った。
「逃がさん!」
先に狐怪人が飛び出す。
狐怪人はネオにパンチを叩き込もうと右手を振り上げた。
「ぐおっ!?」
だがその瞬間、ネオの拳が狐怪人の身体を貫いた。
距離はまだあった筈だと思っていたが、ネオは信じられないスピードで距離を詰め、狐怪人の右手が出る前に自分の拳を叩き込んだのだ。
「馬鹿…な……」
突然の動きに理解できず、狐怪人は爆発する。
「……くっ!」
ネオとの力の差を感じたのか、イグアナ怪人は慌ててその場を去った。
爆炎から出たネオは残りの敵を倒そうとしたが、姿が無い事に気付く。
「逃げたか……」
そう呟き、ネオは建物から出ようとした。
「!!」
その時、背後から殺気を感じ取り、ネオは咄嗟に飛び退く。
すると先程まで自分がいた場所に複数の針みたいな物が通過した。
放たれた針は壁に刺さると、複数の子爆破を起こす。
ネオはその針の放たれた方を見る。
そこにいたのは、怪人と言うより、むしろサイボーグのような姿をした者であった。
生物と機械が混ざったような身体をしており、右腕にはガトリング砲のような武器が備わっていた。
「ようやく見つけたぞ、仮面ライダー!!」
ネオの姿を見るなり、そのサイボーグは前に出る。
どうやらこのサイボーグはネオの事を知っているようだ。
「やっと姿を現したか……」
ネオもそのサイボーグを知っているらしく、落ち着いた口調であった。
「これ以上貴様を野放しにしておけない、ここで死ね!!」
サイボーグは右腕を前に突き出し、先程の針をマシンガンのように連射した。
しかしネオは回避しようとせず、ただ立ち尽くしていた。
煙を上げながら、針はネオの身体に刺さり、爆発していく。
(なっ、何故避けない?)
不審に思いながらも。サイボーグは好機とばかりに針を連射する。
やがて、ネオの姿が煙に包まれて見えなくなる。
それと同時にサイボーグは攻撃を止めた。
ネオの行動を不審に思い、サイボーグは構えを緩めなずに、そのまま煙の中からネオの姿をサーチしようとした。
「!!!」
その時、真っ正面からパンチを受け、サイボーグは大きく吹っ飛ばされた。
(なっ!?何だ……?今の動きは……)
今の攻撃はネオのだと確認出来た。
しかし、サイボーグとネオとの距離は約3メートルはあった。
ネオはその距離を一瞬で近付き、攻撃を叩き込んだ。
サイボーグが攻撃を止めてからサーチに入るまでの1秒にも満たない間に。

<喫茶店ホワイト 同時刻>
客がいないからか、祐一はカウンター席で水を飲んでいた。
そこに、昇太が入って来る。
「あっ、広本さんいらっしゃい!」
ウエイトレスの長森瑞佳が昇太を迎えた。
「その様子だと……見つけられなかったみたいだな」
「……はい」
祐一の言葉に、昇太は申仕分けなさそうに頷く。
「まぁ、仕方ない。とりあえずコーヒーでも飲んで休んどけ」
そう言って祐一はキッチンの方へと歩き出す。
昇太はカウンター席に座り、軽く溜め息を付いた。
「広本さん」
その時、瑞佳がカウンター越しに声を掛ける。
「はい?」
「祐さんから聞いたんだけど……この前広本さんの友達が来たの?」
「そうです……大体半年ぶりに会いました」
昇太はその時の事、そして友人の事を瑞佳に話した。
昔は自分を含めた3人で古代の研究を行っていた事。
数日前にその友人がこっちに来て自分を探していたと言う事。
最後にソルンとなった自分の姿を見せた事。
「……と言う訳でした」
「そうなんだ……」
話を聞き終えると、瑞佳は複雑な表情をしていた。
昇太が祐一と同じように未確認生命体と戦わなければならない為に友人と離れ
てしまったからだ。
「なに?なに?何の話?」
そこへもう1人のウエイトレス、霧島佳乃が出て来る。
「数日前に俺の友人が来た事です」
「えっ?広本君の友達が来たの?私も見たかったなぁ……」
残念そうに目を細める佳乃を見て、瑞佳も同じ様な顔をする。
「私も見てないんだよ、だから今度ここに来た時この店に連れて来てね」
「わかりました」
やや苦笑いしながら答える昇太。
「何か随分話が弾んでるな」
コーヒーを片手に、祐一も話しに加わった。
祐一からコーヒーを受け取り、昇太はゆっくりと飲み始める。
そのまま、昇太は自分のいた所での出来事を話す事となった。

<都内某所 14:02PM>
ネオとサイボーグの戦いは、ネオの圧倒的な強さでサイボーグが敗れた。
「くっ……っ…」
サイボーグの体中から火花が散っている。
目の前にいるネオは、目立った傷はなく、大したダメージはない。
「や、やはり……1人で、は……無、理だっ、た……か………」
そう言い残すと、サイボーグはゆっくりと前に倒れ、爆発した。
(奴等が動き始めたか……今度こそ倒してみせる)
爆発を見届けると、ネオはその場を去って行った。

<千代田区内某所 14:22PM>
ホワイトを出た昇太は、再び未確認生命体C4号をの捜索をしていた。
昇太はエニミートカノンとして戦っていた頃は、ずっとC体のヌヴァラグと戦っていた。
このヌヴァラグは通常のヌヴァラグ達とは違い、誰にも気付かれないような場所やタイミングで次々と殺人を繰り返している。
今も何処か人目に付かない場所で殺人を行っているかもしれない。
そんなヌヴァラグと、昇太は何度も戦っていた。
だからC体のヌヴァラグなら必ず見つけられると思っていた。
「!!」
その時、頭の中で何かが走った。
C体のヌヴァラグを感じとったのである。
(近い……こっちか!)
昇太は急いでその場所に向かう。
辿り着いた広場で昇太はバイクを止める。
意識を集中させ、ヌヴァラグの位置を確かめる。
(あそこか!!)
そして未確認生命体C4号と呼ばれているナノヂ・ゴバルを見付けた。
ナノヂ・ゴバルは前方にいる親子に向けて左腕を突き出していた。
昇太はそれに気付くと、素早く胸の前で腕を交差してその腕を左胸の前に引き、十字を作る。
すると、昇太の腰の部分が光りを発し、ベルトが浮かび上がる。
そして右腕をそのままの状態で左腕を一気に引いた。
「変身!!」
そう言って昇太は素早く走り出す。
昇太の体に次々と銀の装甲が備わり、戦士・ソルンへと姿を変える。
ナノヂ・ゴバルが左腕に仕込まれている猛毒の針を発射させようとした、まさにその時───
「ハッ!!」
ソルンは大きくジャンプすると、空中でパンチの体制を作り、そのままナノヂ・ゴバルに叩き込んだ。
「!!」
突然の攻撃を受け、ナノヂ・ゴバルは大きく吹っ飛ばされて地面に落ちる。
同時に、ヌヴァラグの姿を見た人達が大慌てで逃げ出して行く。
そしてあっという間に人が居なくなった。
「……クッ!」
起き上がったナノヂ・ゴバルは、目の前にソルンがいる事に気付いた。
「ロサレ・ガ!ロデモ・イャサン・ニシャモ・バ!」
右腕の鋏を動かしながらソルンを睨み付けるナノヂ・ゴバル。
ソルンはさっと構えを取り、徐々にナノヂ・ゴバルとの距離を詰める。
「ギナサバ・ゴモ・ナノヂ・ゴバルザ・ゴドニシェ・ギャヅ!!」
そう言いながらナノヂ・ゴバルは右腕を振り上げてソルンに迫った。

<喫茶店ホワイト 14:46PM>
買い物に出掛けようと、祐一は外に出てロードツイスターに乗ろうとした。
その時ロードツイスターに搭載されている無線が鳴り出した。
『全署に連絡。千代田区皇居付近にて未確認生命体C4号、及びC3号が交戦中。付近を巡回中のパトカーは至急現場に急行して下さい』
警視庁未確認生命体対策本部の本部付の婦警の声が聞こえた。
祐一はすぐさまロードツイスターに跨り、エンジンを掛けると一気にスタートさせた。
その時、別の通信が入る。
『祐の字!今の聞いたな?』
それは往人の声だった。
「ああ、今向かってる!」
『わかった、こっちもすぐに向かう!』
そう言って通信が切れる。
祐一はアクセルを回し、猛スピードで走って行く。

<千代田区皇居付近 同時刻>
ナノヂ・ゴバルは右腕の鋏をソルンに向けて振り下ろす。
ソルンはそれを見を縮めて躱し、そのまま勢いを付けたアッパーカットをナノヂ・ゴバルの顎に叩き込む。
よろめいたナノヂ・ゴバルは体制を立て直すと、鋏を大きく広げてソルンの首を狙って突き出す。
すぐさまソルンは横に飛ぶ。
鋏はソルンの真後ろにあった巨木を挟み、そのまま切り裂いた。
(アレに挟まったら一巻の終わりだな……)
倒れた巨木を見て、ソルンは戦慄を覚える。
「ギョグ・ギョゲシャマ・ジャザ・ゴヲソバ・ミザアヲ!!」
再び鋏を大きく広げるナノヂ・ゴバル。
その時、ソルンは回りを見る。
民間人は全て逃げ出したようだが、この後すぐ警察が来るだろう。
このまま戦いが長引けば、ナノヂ・ゴバルの毒針がその警官達に刺さってしまうかもしてない。
ここで決着を付けると、ソルンは腰を落としてキックの体制を取る。
そして鋏が最大まで広がると、ナノヂ・ゴバルはソルンに迫って来た。
ソルンはナノヂ・ゴバルの来るタイミングを合わせ、素早くジャンプ。
「ハアッ!!」
突き出された鋏を躱し、ナノヂ・ゴバルの胸部にソルンは左足を叩き込む!
「!?」
しかし、金属の衝撃がしたと同時に、ソルンが弾き飛ばされてしまった。
キックを弾かれたソルンは、そのまま地面を転がる。
ナノヂ・ゴバルの胸には古代文字が焼き付けられていたが、非常に薄く、すぐに消えてしまった。
「ノモ・シェリジョモ・ゲヂマジョ・ロデシバ・ギガヲ!」
余裕の表情で笑うナノヂ・ゴバル。
(くそっ……)
起き上がったソルンは、戸惑いながらも、構えを取り直す。
ナノヂ・ゴバルが迫って来たのを見て、ソルンはタイミングを合わせ、カウンターの如く胸にパンチを叩き込んだ。
「くっ!?」
しかし、ナノヂ・ゴバルの胸部の装甲はソルンのパンチをも弾き返した。
あまりの硬さで、ソルンの手が僅かに痺れている。
ソルンは成す術もなく、ナノヂ・ゴバルから距離を取る。
(胸部の防御力だけは明らかに違う……なら!)
ソルンは右手の石の力を解放させようと、意識を集中させる。
その時、ナノヂ・ゴバルは左手の中指を伸ばし、猛毒の針を発射させた。
「!!」
力の解放に意識を集中させていたため、ソルンの反応が遅れてしまう。
そのまま猛毒の針は……ソルンの首に刺さり、体内に入り込んだ。
「ぐっ!?」
途端、ソルンの意識が揺らぎ始める。
足元がふらつき、まともに立っていられない状態だった。
意識も朦朧としていて、体の自由が利かない。
「ロサレミバ・ショグテシュマ・ジョグン・ギョルヂニシャ・ゴデリイョル・ロデモ・ニャサバ・ナネマリ!!」
そう言い、ナノヂ・ゴバルは無防備な状態のソルンに向かって飛び掛かった。
しかし、ソルンはまだ意識が回復してなく、成す術がない。
そうしている間に、ナノヂ・ゴバルの鋏がソルンの首を捕えた。
「ぐっ!?」
ソルンはその鋏を外そうとするが、手に力が入らず、ナノヂ・ゴバルの成すがままとなってしまっている。
鋏の力はさらに強まり、ソルンの首を挟み切ろうとしている。
(まずい………意、識が……持、た…な………)
ソルンの意識が朦朧とし、手の力が無くなってしまった。

Episode.9「宣告」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderSorun


次回予告
辛うじてナノヂ・ゴバルを退けられたが、昇太の体にはあの猛毒が埋め込まれてしまった。
死を防ぐ手を知っているのは直樹ただ1人。
祐一「もう時間がない……」
直樹「方法はただ1つです」
彩は遂に昇太と再開する。
だが、昇太の死の宣告を知り、泣き崩れる
聖「残念だが……本当だ」
昇太「だから俺は……やらなきゃならない」
残された時間はあと僅か。
嵐を秘めし刃よ、今こそ目覚めの時だ!
彩「私………昇太君が……」
次回、仮面ライダーソルン「覚醒」
解き放て!その力!!

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