<港区有栖川宮記念公園付近 11:42AM>
カノンは素早くジャンプ。
空中を1回転して、光に包まれた右足を突き出す。
しかし、シューヅ・シィバルはそれをかわし、旋回してカノンを突き飛ばす。
「ぐっ!!」
壁に叩き付けられ、地面に落ちるカノン。
今度はPSK−03に向かって旋回する。
PSK−03はそれを躱そうとするが、ブレイバーバルカンが掠り、落としてしまう。
ブレイバーバルカンは僅かに火花を散らしている。
どうやら先程の衝撃で何処かが破損してしまったようだ。
「くそっ!」
咄嗟にブレイバーショットを引き抜き撃ち込む。
しかしシューヅ・シィバルのドリルの様な嘴に全て弾かれ、そのままPSK−03の装甲に嘴が当たる。
「ぐっ!!」
咄嗟に上半身を反らして直撃は免れた。
しかし、嘴を受けた装甲は抉り取られたような後を残していた。
(何て嘴だ……装甲が簡単に抉られるなんて)
PSK−03は何とか起き上がろうとするが、今の攻撃で上手く立ち上がれないでいた。
「ラショバ・カノンジャマ!」
PSK−03が動けないのを見ると、シューヅ・シィバルはカノンに標的を向けた。
カノンは先程の衝突で落ちたブレイバーショットを拾う。
「フォームアップ!!」
カノンの色が聴覚・視覚・射撃性能の増す緑に変わり、ブレイバーショットを緑のボウガンに変える。
「ゴリ!」
シューヅ・シィバルは高度を上げる。
カノンはボウガンの後部にあるレバーを引き、上空を見る。
「そこか!」
緑のカノンは素早く振り向き、レバーを放し、同時に引き金を引く!
シューヅ・シィバルはそれに反応すると、嘴を回転し始めた。
何と、シューヅ・シィバルは放たれた大気の矢を回転した嘴に当て、その矢を弾いてしまった。
「何っ!?」
カノンが驚いている隙に、シューヅ・シィバルはそのままカノンに嘴を向けた。
カノンは慌ててボウガンの引き金を引こうとするが、シューヅ・シィバルの方が僅かに速かった。
「ぐわっ!!」
辛うじて嘴の直撃は免れ、装甲が掠った程度で済んだが、突進までは回避しきれずカノンは大きく突き飛ばされてしまった。
「グッ……ギャヅマ……カノンセ」
吐き捨てるように言うと、シューヅ・シィバルは飛び去って行った。
その腹には、古代文字が浮かび上がっていた。
先程のカノンのボウガンが突進を受ける寸前に放たれたようだ。
カノンは既に祐一の姿に戻っていた。
「祐の字っ!」
慌てて国崎往人が駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「……とりあえずは…な」
やや青ざめた顔で言う祐一。
「そんな顔で言っても説得力ねぇぞ!」
往人はそう言いながら祐一を担いで車に運ぶ。
そこに、1台のオフロードバイクが止まる。
「大丈夫ですか、相沢さん!?」
それは広本昇太だった。
ヘルメットを外した昇太は、バイクから降りて2人に近寄る。
「広本……そっちは終わったのか?」
「はい、こっちは?」
「悪いな……逃げられちまった」
「そうですか……とにかく、相沢さんを病院に!」
「ああ!」
往人は祐一を車に乗せ、昇太はバイクに跨り、関東医大病院へと向かった。

仮面ライダーソルン
Episode.8「重腕」

<関東医大病院 12:17PM>
祐一をベットに寝かせ、往人と昇太は聖の診断室にいる。
「傷もそれ程酷くはないからすぐ治るだろう。だが緑の力を使ってしまったから2時間は変身できない」
「そうですか……」
昇太は軽く胸を撫で下ろす。
「広本」
「はい?」
「お前も診てもらった方がいいんじゃないか?」
「何をだ?」
往人の言葉に、聖は軽く眉を顰める。
「こいつも祐の字と同じなんでな」
「同じ……という事は君もカノンなのか!?」
やや驚き気味の聖。
「正確にはカノンではないですが、そんな所です」
「……説明してくれるか?」
その言葉に応じて、昇太は今までの出来事を聖に話した。
第0号が現われた時、自分もそこにいた事。
カノンに変身して戦ったが、全く歯が立たなかった事。
第0号の攻撃をベルトに受け、闇のカノンになってしまった事。
今まで祐一達とは違う場所で戦っていた事。
そして、戦士・ソルンに変身した事。
「……という訳です」
「ふむ……」
聖は腕を組み、考え込むような仕草を取る。
「とりあえず詳しい事は後にしよう。今は君の身体を診るのが先だ」
そう言って聖は昇太を検査に連れ出した。

<都内某所・とある橋の下 12:39PM>
車が引っ切り無しに通る橋の下で蹲る者がいる。
シューヅ・シィバルだった。
先程の戦いで、カノンの矢のダメージが予想以上に大きく、ここまで逃げたのだ。
「カノン……ロサレバ・ガマダウ・オデザ・ゴドヌ!」
そう呟きながら、腹を抑えていた。
その姿を数人の集団が見ていた。
「シイセマ・ヌガシャジャマ」
「ラデカ・カノンミバ・ガシェマリマ」
口々に言う者達。
「カノンリザリミソ・リヅギョルジャマ……」
「あのカノンもどき……か」
美しいドレス姿の女性はそう言って、歩き出す。
それに続いて、他の者達も歩き出した。

<関東医大病院 13:24PM>
一通りの検査を終え、昇太は診断室の椅子に座っている。
往人は警視庁に戻ったので、昇太1人だけだ。
「待たせたな」
それから暫くして、聖がドアを開けた。
「……どうでしたか?」
「……正直な所、君の体は相沢君以上に謎の部分が多い」
聖は手に持っていた封筒から数枚の写真を取り出し、机の上に置く。
「君の身体にも相沢君と同様に腰の一点に霊石があるのだが……相沢君の様な神経が全く張り巡らされていない。確かに神経が張り巡らされた跡は残っているのだが……神経そのものが見られなかった」
「そうなると……その神経は変身する時に出てくるのでしょうか?」
「それは考え難い」
聖はそう言って首を左右に振る。
「今の君の身体そのものはほぼ生身と言って良い。そこから急激に神経が発達するとなると君の身体に負担が掛り過ぎる……おそらく君は相沢君のように神経によって筋肉組織を強化しなくてもカノンと同等の力を得られている……」
「……と言う事は、俺の中にあった神経は闇のカノンからソルンになった時に無くなったって事になりますね」
「うむ……実はあともう1つ相沢君とは違う所がある」
聖は先程とは別の写真と取り、昇太に見せる。
その写真は、右腕と左腕の写真だった。
「君の両腕に、腰にある霊石と同じ様な石が埋め込まれている」
聖の言う通り、昇太の両腕の手首の部分に霊石よりも小さい石みたいな物が左右に1個ずつ埋め込まれていた。
「これは……?」
「詳しい事は分からぬが……恐らく相沢君の様に色が変る為の物かもしれん」
聖は腕の部分の写真を見ながら言う。
「色……」
「君の場合、カノンのように古代文字の解析が出来ないからどんな能力なのかは見当も付かない……だから実際にその色になってみるしかない。だが、もしこの石がソルンの色を変える物だと考えると、君の場合は通常の姿を含めて3つだけになる」
「3つ……ですか?」
「うむ……だがそうなるとカノンよりも若干万能性が低いかもしれん」
聖は腕を組みながら考え込む。
その時、ドアが開く。
「やっぱりここにいたか」
入って来たのは祐一だった。
「相沢さん、もう大丈夫なんですか?」
「体の方は問題ない」
まだ変身できないけどなと付け足して、祐一は近くにあった椅子に座る。
「どうしたのだね?」
「広本に頼みがあってな」
「俺に?」
疑問の言葉を出す昇太を見て、祐一はポケットからカード状の物を出す。
「それは……確かロードツイスターのキーでしたね」
「ああ、実は向こうに置きっぱなしでな……悪いが向こうまで送ってくれないか?」
「わかりました」
昇太はそう言って立ち上がった。
祐一も立ち上がって部屋を出ようとする。
「広本君」
聖が昇太を呼び止める。
「君が死ぬようなことがあれば私に解剖させてくれないか?なに、遠慮はいらんぞ」
その言葉に祐一は後ずさる。
「……そうですね、ではその時になったらお願いします」
しかし、昇太は何でもない様に言う。
少し身震いしながら、祐一は昇太と共にロードツイスターを取りに向かった。

<港区有栖川宮記念公園付近 14:03PM>
先程の戦闘があったからか、人は殆どいない。
昇太はロードツイスターを見つけ、バイクを止める。
後に乗っていた祐一だけが降りて、ロードツイスターに歩み寄る。
「本当に良いバイクですね……」
やや羨ましそうな声で呟く昇太。
「お前も欲しいのか?」
「そりゃそうですよ、やっぱり自分専用のマシンは欲しいと思います」
昇太はバイクから降りてロードツイスターの前に立つ。
「あなたがC3号……ですね?」
不意に声がして、祐一の手が止まる。
昇太も声のした方に振り向く。
そこには、2人の女性と男性が祐一と昇太に向かって歩み寄ってきた。
倉田佐祐理、そして北川潤だ。
「北川、それに佐祐理さん……」
「知り合いですか?」
「ああ、PSKチームって言ってたな。そんで2人は高校からの仲だ」
佐祐理と潤を見ながら言う祐一。
「PSK……この間の青い装甲の奴でしたっけ?」
「ああ、そんであの時お前を殺そうとしたのがあいつだ」
そう言いながら祐一は潤を指差した。
「うっ……」
痛い所を突かれて、潤は罰が悪そうに視線を下げた。
(って事はあいつが装着員って事か……)
「それで今日は何の用だ?」
祐一が1歩前に出る。
「今日は……そちらの人にお話をしたくて来ました」
そう言いながら佐祐理は昇太を見た。
「俺に?」
「はい、あなたに色々と聞きたい事があります……いいでしょうか?」
「俺は構いませんが……」
昇太は横目で祐一を見る。
祐一はそれに気付くと軽く頷いた。
「じゃあ、俺は先にホワイトに戻ってる」
「わかりました」
祐一はロードツイスターのキーを挿し込み、ヘルメットを被るとそのまま走り出した。
「では……えっと……」
「広本です」
「あっ……はい、では広本さん、こちらへ」
昇太は自分のバイクを押しながら、佐祐理達の後を着いて行った。

<東京駅 14:09PM>
駅の出入り口に2人の男女が出てくる。
「今度はどの辺りを探しますか?」
「そうだな……新宿の方だな」
その2人は石山洋介と木下雅美だった。
昇太が消えて約半年。
はっきり言って情報は少なすぎるが、それでも待つだけでは決して見つけられないと思い、2人は再び東京に来た。
「洋介さん」
雅美の口が開く。
「広本さん……見つかりますよね?」
「当たり前だ」
そう言っている洋介だが、実は不安だった。
(広本……出て来いよ!深見がお前をずっと待ってるんだぞ!!)
不安な気持ちのまま、2人は歩き出した。

<都内某所・Kトレーラー内 14:13PM>
昇太はKトレーラーに案内され、バイクもそこに置く。
中には七瀬留美、深山雪見、そして斎藤もいて、計5人が昇太の前にいる。
「とりあえず、来てくれてありがとう」
留美は軽く頭を下げる。
「私はPSKチームのリーダー、七瀬留美よ」
「俺は……って自己紹介は不要ですね」
「未確認生命体C3号……だったわね」
雪見の言葉に斎藤が震えて後ろに下がるが、他の4人はそれを無視して話しを続ける。
「でも名前くらいは教えて欲しいわ」
「広本……広本昇太です」
「広本君ね」
覚えるように繰り返して昇太を呼ぶ留美。
「それで……聞きたい事って何ですか?」
「まぁ、色々と質問なんだけどね」
それから昇太は、留美達から様々な質問を受けた。
何故変身出来るようになったのか。
祐一とはどのような関係なのか。
何故途中に姿が変ったのか等。
「……そろそろいいですか?」
疲れたのか、昇太は少しげんなりとしている。
「あっ、そうね……少し話過ぎたかしら」
留美はそう言いながら時計を見る。
「広本……だったな」
潤の口が開く。
「あの時はすまなかった……お前を撃っちまって……」
そう、潤もエニミートカノンの姿だった昇太を撃った。
祐一が止めるまでずっと。
最悪の場合、そのまま昇太は死んでいたかもしれなかった。
潤は……人を殺してしまうかもしれなかった。
「気にしなくていいですよ」
しかし、昇太の返事はあっさりとしてた。
「なっ、何言ってんだ!俺は相沢が止めなかったらずっと撃ってたんだぞ!お前を……お前を未確認生命体だと思って!!」
潤は思わず立ち上がり、声を上げる。
「それが普通ですよ」
その言葉に潤だけではなく、留美達までもが言葉を失う。
昇太は恨んでいる表情ではなく、普段と変わらない表情で言っている。
それが逆に、5人は恐怖を感じた。
「あの姿だったら誰だって未確認だと思いますから、それに撃たれる事も予想してましたし」
「予想してたって……それ、本気で?」
「ええ、100%本気で」
あっさりと言い放つ昇太。
5人はその言葉に固まる。
「あなた……凄い覚悟ね」
雪見は何ともいえない表情で呟いた。

<喫茶店ホワイト 15:20PM>
ピークを過ぎたのか、昇太が入った時は客は香里だけだった。
「あっ、広本さん。いらっしゃいませ!」
始めに昇太に気付いた瑞佳が昇太を迎えた。
「終ったのか?」
祐一もカウンターに来る。
「はい」
そう言いながら昇太はカウンター席に座る。
「あっ、広本さんはコーヒーだよね?」
「お願いします」
「じゃあ俺が入れるよ」
そう言って祐一がキッチンに入る。
その後、コーヒーが出来て昇太の前に置かれた。
「……あっ、そうだ」
コーヒーを一口飲んだ時、昇太はある事を思い出した。
「どうかしたの?」
昇太の隣に座っていた香里が声を掛ける。
「実は……相沢さんがヌヴァラグと戦ってた時、俺は別の所に行ってたのですが……」
「何かあったのか?」
キッチンから祐一が顔を出す。
「はい」
そう言うと、祐一がカウンター前に座る。
「それで?」
「あたしも聞いていいかしら?」
香里が2人の間に入る。
「いいですよ」
昇太は軽く頷く。
「実は……そこで俺や相沢さんと同じ様な姿をした戦士を見たんです」
「本当か!?」
祐一も香里もそれに反応する。
「もしかして……その戦士って、この前相沢君と戦った……」
「いえ、違います……確かその戦士は深緑の姿でしたよね?」
「ああ」
「俺が見たのは……黒い身体でした」
「黒い身体……?」
香里は昇太の言葉を繰り返す。
「はい、俺が来た時……そいつは未確認亜種体5体をあっさりと倒してました……」
「未確認亜種体5体をたった1人でか!?」
驚く祐一の言葉に昇太は軽く頷く。
「その後……ヌヴァラグの奴が現われて……そいつ……ネオと言ってましたが、ネオはヌヴァラグの奴をも圧倒しました……」
「そんなに強いの?その、ネオって人は?」
瑞佳も話に入ってきた。
「はい……少なくとも俺ではそいつに敵わないと思いました……だけど」
「だけど?」
「ネオは……亜手体は倒せても、ヌヴァラグが相手じゃキツイみたいです」
「どういう事だ?」
祐一が聞き返す。
「確かにネオは強い……だけど、その力はヌヴァラグにはあまり効果が無いんです」
「つまり……ネオって戦士の力はヌヴァラグを倒すのには向かないって事?」
昇太は香里の言葉に頷く。
「ここからは俺の考えですが……おそらく……ネオはカノンとは全く違う力を持った戦士だと思います」
「カノンとは違う……?」
「はい、多分ベルトの石そのものが俺達の物とは違う可能性があります」
「カノンのべルトを持たない戦士……初めて聞いたわ」
香里は溜め息混じりに言う。
祐一も瑞佳も複雑な表情をしていた。
「ますます分からねぇ事が増えたな……」
「そうね……ソルンの事でさえ全然分からないのにね……」
「私にも何が何だか分からないよ……」
3者3様で悩んでいる。
昇太も残りのコーヒーを口に含みながら思考を巡らしていた。

<都内某所 16:12PM>
歩道橋を歩く2人の学生。
その向かい側の階段から、目付きの鋭い男が上ってくる。
その間に2人の学生は、階段を下り始める。
目付きの鋭い男は、2人の姿を見て、立ち止まる。
「何だ、アイツ?」
「足でも怪我してるんじゃないのか?」
そう話した瞬間、目付きの鋭い男がシューヅ・シィバルへと姿を変える。
「!?」
「っ!?」
2人とも声にならない叫びを上げ、逃げようとする。
「ミゼダデヅショ・ロソッシェ・リヅモガ?」
しかし、2人はシューヅ・シィバルに突き飛ばされ、歩道橋から転落する。
鈍い音を出しながら、2人は倒れる。
シューヅ・シィバルは、そのまま上空を飛ぶ。
その途中、サラリーマン風の男性を見つけ、その人の身体にドリル状の嘴を突き刺した。
そのまま上空に飛ぶと、突き刺さっている男性を振り捨てた。
男性は地面に叩き付けられ、辺りは血の海と化した。
「タギャグ・ゴリ・カノン!」
シューヅ・シィバルはそう言い放つと、何処へと飛び去って行った。

<昇太のアパート 17:20PM>
ホワイトを出た昇太は、自宅に戻ってベットに倒れ込む。
「ソルンの変化……か」
昇太は聖の言葉を思い出していた。
『おそらく君は相沢君のように神経によって筋肉組織を強化しなくてもカノンと同等の力を得られている……』
「まさにカノンに似てカノンで無い……だな」
そして思い出すもう1つの言葉。
『君の場合、カノンのように古代文字の解析が出来ないからどんな能力なのかは見当も付かない……だから実際にその色になってみるしかない』
「……待てよ」
聖の言葉を思い返した時、昇太はベットから起き上がった。
(だけど……ソルンは俺の意志でその姿を創った……なら他の色も俺の意志で既に創られてるのか?)
そう思った昇太は、目を閉じて、意識を霊石へと集中する。
すると、霊石から発せられた光が昇太の頭の中へと入り込む。
光は大きく広がり、映像を映し出した。
そこに映し出されているのはソルンの姿だった。
しかし、映っているソルンは銀の生体装甲ではなかった。
生体装甲は深い赤色に覆われている。
さらにそのソルンの右手には何かが握られていた。
「!!」
そこで昇太の意識が戻る。
「今のは……」
昇太は右手を見る。
ソルンの姿が映った時、右手が疼いたからだ。
「収穫あり……か」
そう呟きながら、昇太は立ち上がる。
「!!」
その時、昇太の頭の中で何かが走る。
「来たか……」
昇太は素早く外に出てバイクに跨り、走り出した。

<新宿内某所 17:41PM>
洋介と雅美は喫茶店にいた。
「駄目でしたね……」
「ああ……情報が少なすぎるからな……仕方ないさ」
探していた中で、昇太らしき人を見たという情報はあったのだが、どれも有力ではない。
「そろそろ帰るか?」
「そうですね……」
2人は喫茶店を出て、東京駅に向かう。
「!?」
その途中、洋介が急に立ち止まる。
「どうしたんですか?」
「今……誰かの悲鳴が聞こえなかったか?」
そう言う洋介の表情は固かった。
「ひ、悲鳴!?」
雅美も声が震えている。
その間に、すぐそばにある脇道から何かがこちらに向かって来る。
洋介はそれに気付く。
「お、おいおい……冗談だろ……」
「えっ?」
雅美も振り向く。
「!?」
それを見た瞬間、雅美は声にならない悲鳴を上げる。
2人に近づいているのは、シューヅ・シィバルだった。
「シュジバ・ロサレダザ」
そう呟いた瞬間、シューヅ・シィバルは翼を広げ、2人に迫る。
「くそっ!」
洋介は咄嗟に雅美を庇い、前に倒れ込む。
「チッ!」
シューヅ・シィバルは舌打ちすると、旋回して再び2人に向かう。
回りの人達が未確認生命体の姿に気付き、悲鳴を上げながらその場から逃げ出す。
「逃げるぞっ!!」
「は、はい!」
その間に、洋介は雅美の手を引いて脇道に逃げ込む。
途中、やや広い所に出た時、上空からシューヅ・シィバルが嘴を向けた。
「!!」
洋介はギリギリの所で雅美を抱え、横に跳ぶ。
嘴が洋介の肩を掠り、服が破られたが、傷は付かなかった。
「ギョゲヅモ・ジャゲバ・ジェギヅ・ギョルジャマ」
シューヅ・シィバルは動きを止め、洋介を見る。
「ジャザ・ラノチバ・ソル・ロヴァヂジャ!」
そう言うと、シューヅ・シィバルは嘴を回転させながら2人に突っ込む。
先程よりも速いスピードで2人との距離を縮める。
(くそっ……せめて……雅美だけは!)
洋介は雅美の前に立つ。
「洋介さん!?」
雅美の声も聞かず、洋介はシューヅ・シィバルを正面から迎え撃つ。
その時、1台のオフロードバイクが2人の間に入り込んだ。
「!!」
思わず洋介はそのバイクを見る。
バイクに乗った青年は、ウイリー走行でシューヅ・シィバルを蹴散らした。
勢いが強かったのか、シューヅ・シィバルは大きく吹っ飛ばされてドラム缶が積まれている所に衝突した。
その後、1台の覆面パトカーが雅美の後ろで停まる。
「大丈夫か!」
パトカーの中から、往人がライフルを片手に出てくる。
洋介は青年のバイクに目が行く。
その青年は、昇太だった。
昇太はヘルメットを脱ぐと、バイクから降りてシューヅ・シィバルが衝突したドラム缶の山を見る。
「ひ、広……本……?」
洋介は昇太の姿を見て、その場に立ち竦む。
「広本……さん?」
雅美も同じ様な状態だった。
その言葉は昇太の耳には届かず、昇太はそのままシューヅ・シィバルが起き上がるのを警戒していた。
「広本ッ!!」
今度は大声で叫ぶ洋介。
いきなりの大声で昇太は驚きながら声のした方を向く。
「!?……石山、それに木下さん……何でここに?」
「お前を探しに来たに決まってるじゃないか!!」
洋介は声を荒げながら昇太に近寄る。
ちなみに往人は洋介の態度に驚いていた。
「お前があの遺跡から居なくなって……俺達がどれだけ心配したと思ってるんだ!!連絡の1つも寄越さないで……お前は今まで何してたんだ!!」
洋介は昇太の胸倉を掴みながら声を上げている。
昇太は無表情のまま、何も言おうとはしない。
「黙ってないで何とか言いやがれっ!!!」
洋介はさらに前に出て叫ぶが、それでも昇太は何も言わなかった。
「このォッ!!!」
腹に据え兼ねたのか、洋介は昇太に殴り掛かろうと拳を振り上げた。
それを見た雅美は慌てて洋介の手を止めた。
「洋介さん、落ち着いて下さい!」
「止めるな!!1発ブン殴らねぇと気が治まらねぇんだッ!!!」
洋介は力任せに雅美を振り払い、昇太の顔面に拳を叩き込んだ。
「!?」
しかし、昇太はそれを受け止めていた。
「……悪い、今話をする時間はない」
「何だと!!?」
さらに問い詰めようとした時、何かが崩れる音がした。
それは、シューヅ・シィバルがドラム缶の山を力任せに退かす音だった。
「起き上がったか!」
往人はライフルを構えて昇太に近寄る。
「早く逃げろ!」
往人の言葉通り、洋介と雅美は逃げようとしたが、昇太が逃げない事に気付いた。
「何やってんだ広本!!お前も早く来い!!」
「広本さん!早く逃げないと!」
2人は必死になって昇太を呼ぶ。
しかし、昇太は1歩も動かなかった。
「……逃げるのはお前達だけでいい」
「な、何言ってんだ!?ふざけた事言ってないで早く来い!!」
洋介は昇太を連れ出そうと昇太の肩を掴もうとする。
だが、昇太はその手を払った。
そして……昇太は諦めたように溜め息を付いた。
「……俺がここにいる理由……それはこれだ」
そう言うと、昇太はさっと胸の前で腕を交差してその腕を左胸の前に引き、十字を作る。
すると、昇太の腰の部分が光りを発し、ベルトが浮かび上がる。
続いて左手を引き、右腕を真っ直ぐ前に伸ばす。
そして肘をゆっくりと曲げ、右手を胸の前まで引いた。
「変身!!」
そう言って右手を引き、左腕を直角に突き立てる。
するとベルトの中央から光が放たれ、淡く発光し始める。
「!?」
突然の光に、洋介と雅美は訳が分らないまま昇太を見る。
「ギョグソ・カサニシャ・マ!!」
シューヅ・シィバルは昇太に向かって殴り掛かった。
「危ない!!」
思わず雅美は叫ぶ。
しかし、昇太はそれを受け流していた。
その手には……銀の手甲とナックルガードが備わっていた。
昇太は空いた手を使って、カウンターの如くシューヅ・シィバルにパンチを叩き込んだ。
その手にも、銀の手甲とナックルガードが備わる。
『!!』
洋介と雅美は昇太の銀の腕に気付き、驚きの声を上げた。
昇太はよろめいたシューヅ・シィバルに向かってジャンプし、その勢いで右足を振り上げ、続けざまに左足を振り上げて連続キックを叩き込んだ。
今度は両足に銀のサポーターと足甲が備わった。
「何なんだ?一体……」
「どういう事ですか……?」
次々と変化する昇太の体に混乱している洋介と雅美。
やがて、ベルトの光が強く大きく輝き出す。
そしてベルトの光が消えた時、昇太は戦士・ソルンへと姿を変えた。
「なっ……」
「……」
ソルンとなった昇太を見て、洋介は驚愕の表情のまま固まる。
雅美は言葉を失い、体を震わせている。
2人とも信じられない表情でソルンを見ていた。
「これが……その理由だ」
ソルンは2人に背を向けたまま答える。
「何なんだ……何なんだよ!!その姿はァッ!!?」
洋介は体を震わせながら声を荒げる。
しかしソルンは何も答えずにシューヅ・シィバルに歩み寄る。
「ロサレ・ガ……カノンソジョギ・ショリルギャシュ・バ……カノンザ・グヅサジェ・ロサレショ・ラノヲジェギャヅ・オ!!」
シューヅ・シィバルは嘴を軽く擦ると、ソルンに向かって走り出した。
「国崎さん、2人を……頼みます!」
ソルンは往人にそう言うと、シューヅ・シィバルに向かって走り出す。
距離が詰まった時、シューヅ・シィバルが先手を打って腕を振るが、ソルンはそれを躱しながら背後に回り、シューヅ・シィバルの首を締め上げる。
「グッ!?」
シューヅ・シィバルは翼を広げて飛び出し、ソルンを振り解そうとする。
しかしその途中、ソルンは腕を離して側にあった高層ビルの屋上に向かって飛び降りた。
「ノッシィ・ガ!」
シューヅ・シィバルは旋回してソルンに向かう。
ソルンは着地と同時に素早く振り向き、身構える。
「カノンショ・ジョッシィザ・ボメザ・ラヅガマ?」
シューヅ・シィバルはゆっくりと着地して、ソルンに迫る。
ソルンはシューヅ・シィバルのパンチを受け止め、脇腹にキックを叩き込む。
体制が崩れたシューヅ・シィバルに、さらにソルンの回し蹴りが放たれる。
その勢いでシューヅ・シィバルは地面を転がるが、素早く起き上がり翼を広げてソルンに飛び掛かる。
「くっ……!!」
翼で撃たれ、ソルンは数歩よろめく。
さらにシューヅ・シィバルが旋回するのを見て、ソルンは素早く体制を立て直して、迫ってきたシューヅ・シィバルの突進を躱しながら腕を掴む。
そして掴んだ腕を振り回し、地面に叩き付ける。
さらにソルンはパンチを叩き込もうとする。
「!?」
しかし、シューヅ・シィバルのキックを受け、ソルンは怯む。
その隙に、シューヅ・シィバルは一端距離を置き、ソルンに突進する。
「ぐっ!!」
ソルンは吹っ飛ばされてビルから転落しそうになったが、寸前の所で手摺に掴まる。
今度は真下からシューヅ・シィバルが現われ、ソルンに突進する。
ソルンは真上に飛ばされ、ビルの屋上に叩き付けられる。
「ショショセ・ジャ!!」
そう言うと、シューヅ・シィバルは嘴をドリルの様に高速回転させながら猛スピードでソルンに飛び掛かる。
「がぁっ!!」
何とか嘴の直撃は免れたが、それでも突進によってソルンは大きく吹っ飛ばされて地面を転がった。
シューヅ・シィバルの嘴はソルンの右のショルダーアーマーを軽々と突き刺して、抉る様に破壊した。
「くっ……」
ソルンは何とか体を起き上がらせようとする。

<新宿内某所 18:23PM>
その頃、往人は洋介達が昇太とどういった関係なのか聞いていた。
「お前達は広本の知り合いか?」
「ああ……静岡の大学で同じサークルだ」
「皆で……一緒に古代の研究をしていました」
2人共落ち着きを取り戻して、往人の質問に答えていた。
「今度はこっちが聞く……アイツが……広本があんな姿になった理由を知らないか?」
往人は直接聞いた訳では無いがと言い、言葉を続けた。
「N県の遺跡で見つけたベルトを着けてあの姿になったそうだ」
「N県の遺跡って……」
「まさかあのベルトを!?」
洋介と雅美は戸惑いの声を上げた。
昨年に自分達が見つけたベルトを昇太が着けている事に。
「で、でも……私達が見つけたベルトは石で出来ていた筈です!」
「それを着けたら金属質のベルトに変わったと言っていた」
『!?』
2人共信じられない顔をした。
「そんな……アレが……」
「広本を……あんな姿に……」
2人は戸惑いを隠せないでいた。
その時、1台のバイクが往人達に近づいて来る。
それはロードツイスターに乗ったカノンだった。
「祐の字!」
往人はカノンを呼びながら近付く。
「さ、3号!?」
突然のカノンの出現に、洋介と雅美は体を硬直させている。
カノンも2人に目が行く。
「そこの人達は?」
「広本の本来居るべき場所にいる友達みたいだ」
「……そうか」
『本来居るべき場所』の意味に気付き、カノンはロードツイスターから降りて2人を見る。
「…それで広本は?」
「あのビルの屋上で戦ってる」
「わかった、あと銃を貸してくれ」
カノンの言葉通りに、往人は懐から拳銃を取り出してカノンに手渡した。
「フォームアップ!!」
声と共に、カノンの色が白から青へと変わる。
カノンはまず近くにあるビルに跳び、そこからソルンのいる高層ビルへと跳び移った。
「広本!」
ソルンを見つけ、カノンはソルンに駆け寄る。
「相沢さん……」
「大丈夫か?」
「直撃は免れたので何とか……」
そう言ってソルンはゆっくりと立ち上がる。
「サッシェシャオ・カノン!」
カノンの姿を見て着地するシューヅ・シィバル。
「ゴヲジョ・ゴノ・ロサレン・ゴドヌ!」
そう言うと同時に、シューヅ・シィバルは2人に迫る。
2人は左右に転がり、それをかわす。
シューヅ・シィバルは素早く旋回してカノンに標的を向ける。
鋭い嘴をドリルの様に回転させて真っ直ぐカノンに迫った。
カノンは素早く体制を整えてシューヅ・シィバルの突進を難無く躱した。
(あの嘴に当たったらひとたまりも無い……紫の防御力で防げるか!?)
回転する嘴を見て、カノンは僅かに戦慄した。
ソルンもそれに気付く。
(あの嘴を何とかしないと……だけど紫のカノンの装甲でも防げるかわからない……どうすれば……)
その時、ソルンは先程見た深く赤い装甲のソルンを思い出した。
(……試してみよう、それしか方法がない!)
「サショセシェ・ニメ!」
シューヅ・シィバルは旋回して再び2人に迫る。
「来たかっ!」
カノンは紫に変わろうと構えと取ろうとした。
しかし、それをソルンが制する。
「広本?」
「1つ試したい事があります、俺に任せて下さい」
そう言ってソルンは振り向くと、右腕を真っ直ぐ前に突き出した。
すると、右の手首にある緑の宝玉が真紅の宝玉に変化して、その石が一回り程大きくなった。
そこから真紅の光が放たれ、ソルンの右腕を包んで行く。
やがて真紅の光がソルンの胸部にある透明な石に流れ込むと、その石も真紅の光を発光し始めた。
さらに真紅の光はソルンの体・右足を包んで変化をもたらす。
銀のボディアーマーが真紅の色に覆われ、その装甲は銀の時と比べて厚くなっている。
また、右腕に黒いラインの流れる真紅の装甲が追加され、右のショルダーアーマーが大きく広がり、シールドのような形に変わる。
さらに右足にも黒いラインの流れる真紅のレッグアーマーが備わり、右半身が重量的になる。
それは、まるで右腕・上半身・右足が全身鎧を纏ったかのような姿だった。
「変わった……」
変化したソルンを見て、カノンは呟いていた。
「スジャジャッ!」
自信万々に言いながら、シューヅ・シィバルは嘴を回転させて迫ってくる。
ソルンは右のショルダーアーマーを前に出して防御の姿勢を取る。
「ニメ!カノンソジョギ!!」
シューヅ・シィバルの嘴がソルンのショルダーアーマーに直撃した。
「!?」
しかし、嘴はショルダーアーマーを貫けず、滑る様にショルダーアーマーを伝い、軌道がずれて地面に激突した。
「タ、タガマッ!?」
起き上がりながら、シューヅ・シィバルは信じられないような表情でうろたえていた。
それが大きな隙となり、白に戻ったカノンが飛び掛かった。
カノンは鋭いパンチを何度もシューヅ・シィバルに叩き込んで行く。
シューヅ・シィバルは防戦一方となっていて、反撃が出来なかった。
「ノヲマバニバ・マリ……ロデモ・グシィタニ・ザ……サゲヅバウバ・マリ!!」
カノンの攻撃を受けながらシューヅ・シィバルは震えを堪えて叫んでいた。
「ハァッ!!」
カノンの渾身のパンチが叩き込まれる。
シューヅ・シィバルはビルの外へと落ちるが、地面に着く前に飛び上がる。
そしてカノンとソルンを睨み付ける。
「ゴドヌ……ガマダウ・ゴドヌ!!」
そう言いながらシューヅ・シィバルはビルから離れて行く。
「逃げたのか……?」
ソルンはシューヅ・シィバルの飛んで行った先を見て呟く。
「……いや、違う!」
カノンの声と同時に、シューヅ・シィバルが旋回してこちらに向かって来るのが見えた。
ソルンはそれを見て、右手をベルトの右側部に添える。
すると、そこから先端に真紅の宝玉の付いた棒状の物が現れる。
それを手に取り、天に翳す。
右手の宝玉と棒の先端の宝玉が共鳴して、斧へと形を変えた。
「あの嘴は俺が破壊します、相沢さんはその隙を狙ってください!」
「よし、フォームアップ!!」
カノンは自らの色を白から緑に変え、往人から借りた拳銃を緑のボウガンへと変化させた。
ソルンはビルの端へと走り出し、シューヅ・シィバルの正面に立つ。
そして斧を下げて、腰を落とす。
すると右手首の真紅の宝玉が光を発して斧を包む。
斧は黒いオーラを纏い、鈍く輝き出す。
その間に、カノンは膝を着いてボウガンの後部にあるレバーを引き、狙いを定めている。
シューヅ・シィバルは今まで以上のスピードでソルンに迫る。
嘴も自分の限界にまで高速回転させている。
「サウバ・ロサレジャ!!カノンソジョギ!!」
シューヅ・シィバルがソルンの目の前まで来る。
「ハァッ!!」
ソルンの振り上げた斧がシューヅ・シィバルの嘴を捕える!
「!!」
金属音の衝撃とともに、シューヅ・シィバルの嘴を砕いた!
その瞬間、カノンが動いた。
「今だッ!!」
カノンはボウガンの引き金を引いた。
放たれた大気の矢がシューヅ・シィバルの腹部を的確に貫く!
力を失ったかの様に地上へ転落するシューヅ・シィバル。
そのまま住人達の近くの地面に叩き付けられる。
「!!」
慌ててライフルを構える往人と身体を硬直させている洋介と雅美。
そこに、白に戻ったカノンと真紅のソルンもビルから飛び降りて住人達を庇うように前に出る。
「……サ……ジャ、ジャ……」
シューヅ・シィバルはふら付きながら起き上がる。
その体には2つの古代文字が焼き付けられていた。
そこから光の罅が流れ出して、1点に集中する。
「ロデバ……サ…ジャ……ニサ……アアアアアアアアアアアッ!!!!」
そして大きく叫んだ瞬間、シューヅ・シィバルは爆発四散した。
爆発で残った炎を見て、カノンとソルンは構えを緩める。
そしてカノンは祐一の姿に戻る。
「それが、お前のフォームアップか」
「はい」
改めて真紅のソルンを見る祐一。
全身の装甲の色と形を買えるカノンとは違い、ソルンは胸部及び半身のみの変化となっている。
その証拠に、左腕・左足は銀の時と全く同じのままだ。
「見るからに重装備だな」
「カノンで言う紫みたいなフォームでしょう」
そう言うと、ソルンは銀の姿に戻り、洋介と雅美の前まで歩み寄る。
「わかっただろ?俺がここにいる理由が」
ソルンの言葉に、2人共頷くしかなかった。
「でも……教えて下さい。あの時……あの遺跡で何があったのですか?」
雅美は前に出ながら口を開く。
ソルンは昇太の姿に戻り、その時の事を語り始めた。
カノンに変身して第0号と戦ったが、全く歯が立たなかった事。
その後闇のカノンになってしまったが、その姿で戦っていた事。
最近になってソルンの姿に変身出来るようになった事。
「……」
洋介も雅美も言葉が無い。
2人は信じられない表情をしていたが、これが現実なのである。
「……早く帰った方がいい。ここにいたら何時またヌヴァラグに襲われるかわからない……俺は大丈夫だから」
「……」
それから2人は終始、黙ったままだった……。

<東京駅 19:45PM>
その後昇太は2人を見送り、駅から出る。
「……大丈夫か?」
外には祐一が立っていた。
「あの2人は大丈夫ですよ」
「いや、お前の事だ」
「俺……ですか?」
「ああ……見てて何か辛そうに見えたからな」
その言葉に、昇太は僅かに反応する。
「……これが俺の運命です、自分の運命は……自分でカタを付ける……それまではここにいます」
昇太はそう言うとバイクに跨り、走り出した。
「運命……か……確かにそうだな」
祐一もロードツイスターに跨り、昇太の後を追う様に走り出す。

<石山宅・洋介の部屋 22:31PM>
洋介は雅美を送った後、自宅に帰り、部屋の中で座り込んでいた。
「……」
今、洋介の心情は複雑だった。
やっと昇太を見つけたのに、昇太はもう人では無くなっていた。
これから昇太とどう接すればいいのか解らなくなっていた。
「どうすりゃいいんだ……俺は……」
そう呟いた時、携帯の着信音が鳴る。
「はい、もしもし?」
『あっ、石山か?』
「広本!?」
突然の昇太からの電話に驚く洋介。
『どうした?驚いてるようだが……』
「いや、何でもない……それよりどうしたんだ?」
『ああ、今の俺の住所と携帯の番号を教えようと思ってな』
電話から聞こえる昇太の声は、普段と何ら変わりは無い。
「何でわざわざ?」
『もしそっちに未確認が現れてもすぐに行けるようにと思って』
「……縁起でもない事言うなよ」
『なに、念のためだ』
そう言って昇太は洋介に住所と携帯の番号を教える。
「……広本」
洋介の表情が硬くなる。
『何だ?』
「もう……帰ってこないのか?」
『……』
昇太の言葉が止まる。
『……もし、俺を拒むならここにいるつもりだ』
「お前を拒む訳ないだろ……たとえどんな姿になろうと……お前はお前なんだからよ」
『……そうか』
昇太は呟くように言う。
「暇があったら帰ってこいよ」
『……多分ないと思うな』
「努力しろ、じゃあな」
『ああ』
そう言って電話が切れる。
その時の洋介の表情は、どこか吹っ切れていた。

Episode.8「重腕」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderSorun


次回予告
洋介と雅美は古代の研究を再開する。
少しでも昇太の力になれればと思いながら。
洋介「俺達に何か出来る事があれば……」
彩「どうすれば……会えるかな?」
昇太の所へ行こうとする彩。
そうとは知らず、昇太は祐一と共に新たなヌヴァラグを追う。
祐一「これは……」
???「見つけたぞ、ネオ!」
さらにネオの前に現れた謎の怪人。
さらなる展開の中、昇太に死の刃が向けられた……。
昇太「変身!!」
次回、仮面ライダーソルン「宣告」
解き放て!その力!!



設定資料

シューヅ・シィバル

鶴のような姿の未確認生命体。
時速310kmの飛行速度を持ち、鋭い嘴を武器に戦う。
嘴はドリルの様に高速回転させる事が可能で、どんなに厚い鋼鉄でも簡単に大穴を空けてしまう。
また、高速回転させた嘴は盾としてでも扱え、どんな銃弾でも弾き返してしまう程の防御力を誇る。


ソルン:グラビティフォーム

真紅の装甲に黒いラインが流れるソルンの特殊形態。
右手首にある宝玉の力が開放された時、この姿になる。
この姿は、右腕のみではあるが重力を自在に操る事が可能で、それを利用して右手のパンチ力を2倍以上に高める事が可能になる。
胸部、及び右半身の防御力が飛躍的に上昇。
特にシールドの様な右のショルダーアーマーは紫のカノンの装甲を上回る程の防御力を持つ。
その分、スピード・ジャンプ力が劣るので、完全な重戦士になる。
専用武器としてヘビーアックスを使用。
必殺技は重力で威力を高めて、ヘビーアックスで敵を叩き斬るグラビティブレイク。

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