<文京区内・廃倉庫12:18PM>
相沢祐一は、目の前にいる広本昇太を真剣な表情で見る。
彼もまた、戦士・カノンのベルトを持っていて、変身する事が出来る。
しかし彼は未確認生命体に似た姿から、カノンに似た姿へと変わった。
何故彼はこの事を隠していたのか?
それが気になっていた。
「……話してくれるな?」
「はい」
祐一の言葉に、昇太は頷く。
「とりあえず香里の大学に行こう。この事はあいつにも教えておいた方がいいからな」
「わかってます。それに」
そう言って、昇太は祐一の後ろにいる長森瑞佳を見る。
「相沢さんの事を知っている人には……話しておきたいです」
「そうだな、だがまずは香里の所からだな」
祐一は瑞佳をロードツイスターに乗せ、自分も跨る。
昇太も自分のバイクに跨り、ロードツイスターの後を追った。

<城西大学考古学研究室 13:04PM>
コーヒーを口に含みながら、美坂香里はパソコンのディスプレイを見つめている。
今までカノンのフォームや聖鎧虫の事、そしてベルトの力等様々な事が解読された。
それでも、まだ解読されてない碑文が多くある。
特に現在は少々行き詰まっている。
「ふぅ……」
コーヒーを飲み終え、香里は一息付く。
その時、ドアを叩く音が聞こえた。
「開いてるわよ」
香里の声の後、ドアが開いて祐一と瑞佳、そして昇太が入って来た。
「あら、皆揃ってどうしたの?」
少し驚いた表情で、香里は立ち上がった。
「ちょっと香里にも話しておきたい事があってな、今いいか?」
「ええ、構わないけど……話しておきたい事って何かしら?」
「こいつの事」
そう言って祐一は親指で昇太を指す。
「広本君の事?」
「ああ、こいつが変身出来る理由だ」
「変身って……もしかして……」
香里は目を大きく見開き、昇太を見る。
昇太は無言のまま、ゆっくりと頷いた。
「……わかったわ」
そう言って、香里は3人を部屋に入れた。

仮面ライダーソルン
Episode.7「黒光」


<城西大学考古学研究室 13:22PM>
部屋の中には祐一、香里、瑞佳、そして昇太が座っている。
位置的には3人が昇太を囲むように椅子を置いている。
「それで……何から話せばいいんですか?」
「まずは、生物体の姿についてだな」
祐一の言う姿とは、エニミートカノンの事だ。
「生物体?」
「うん……広本さんね、祐さんみたいな姿になる前は怪人に似た姿になってたんだよ」
香里の疑問的な言葉に、瑞佳が答えた。
「……皆さんは、第0号の事件を覚えてますか?」
「ええ、覚えてるわ」
「あの遺跡の事件だな」
第0号の事件とは、N県の遺跡で起きた殺戮の事である。
「はい、実は……俺もあそこにいたんです」
『!?』
昇太の言葉に驚愕の反応を現す3人。
「そういえば……あのニュースで広本さんの名前があったよ!」
「じゃあまさか……お前は0号と戦ったのか?」
「……はい」
昇太は軽く頷く。
「あの時……俺は以前発見したベルトを着けてカノンに変身しました。だけど全く歯が立たず……逆に、そいつの攻撃をベルトに受けて……闇のカノンの姿になりました。その後、俺はここに来て奴等と戦っていました……相沢さんとは違う場所で」
「そうだったのか……」
祐一は納得したように頷く。
「広本さん」
瑞佳の口が開く。
「どうして……ずっと黙ってたの?もっと早く言ってくれれば祐さんと一緒に戦う事だって出来たのに……」
「正直……恐かったんです……」
昇太の表情が重くなる。
「俺の姿はヌヴァラグに近かったから……奴等と同じ様に見られるんじゃないかって思ってしまったんです。その所為か……言うにも言えなくて……ずっと黙ってました」
「……広本さんも祐さんと同じだね」
「そうね……」
香里は祐一と昇太を見ながら言う。
「あなたも相沢君と同じように戦っていたのね……誰にも解ってもらえなくても、それでも誰かの為に戦う……でも今はあなたの事を理解してもらえる人はいるわよ」
「そうですね……」
昇太は3人を見て頷く。
「広本……昨日はすまなかったな……お前を敵と勘違いしちまって……」
「いいんですよ。覚悟はしてましたから……」
「すまない……」
祐一は頭を下げる。
「それに、俺はもうあの姿にはなりません。俺はソルンとして戦いますから」
「ソルン?」
再び香里が疑問の声を出す。
さらに祐一と瑞佳も質問するような表情だった。
「俺の戦士の名前です」
「そう……でもどうしてその姿になったの?」
「あの時……奴にやられて倒れた時、俺の前に闇のカノンの姿をした石の記憶が現れました。それでそいつが俺の戦士が覚醒している事を教えてくれました……」
「その戦士が……ソルン?」
昇太は無言で頷く。
「そうだ、お前に一族の事を教えとかなきゃな」
「そうね、一緒に戦うなら知っておきなさい」
そして祐一と香里は、昇太に水瀬一族の事を説明する。

<倉田重工第7研究所 13:29PM>
Kトレーラー内で七瀬留美と深山雪見、そして北川潤が向き合っていた。
彼等の目の前には、先程の戦いの映像が流れている。
その中にはソルンの姿もしっかりと映っている。
「3号に似た姿の未確認生命体ね……」
難しそうな顔をしながら留美は溜め息を着く。
「あいつは相沢と面識があるみたいなので……少なくとも敵では無いと思います」
「そう……でも何者なのかしらね。最初は未確認生命体のような姿をしてたのに、途中から3号のような姿になって……彼は3号とはどういう関係なのかしら?」
「それは直接会わないとわかりません」
そう行って潤は雪見に向かって首を左右に振る。
「そいつは警察の中では何て呼ばれるんですか?」
「今対策本部でその事を話してるらしいわ。何でもあの時戦った未確認生命体も今までのと違う所があるらしいの」
「そうですか……」
潤は呟きながら、映像に映っているソルンの姿を見つめていた。

<警視庁未確認生命体対策本部 同時刻>
PSK−03が撮った映像から、今までの未確認生命体と異なった点が見られ、本部長の鍵山は国崎往人、住井譲、神尾晴子を含めた10数名を本部に呼び寄せた。
「今回現れた未確認生命体だが、今までのとは違う点が見受けられた」
そう言って鍵山は隣に立っている警官に指示をする。
部屋の照明が消え、2つの映像が映し出された。
1つは、今まで未確認生命体第3号こと戦士・カノンが倒して来た未確認生命体の数体が映っている。
もう1つは、先程まで現れていたルヅブ・ボバルと、昨日現れたラージ・ゴバルの姿が映し出されていた。
「今まで現れた未確認生命体と、昨日と今日現れた未確認生命体は腰部の装飾品の形状が若干異なっています。断言は出来ませんが、今までのとは違う怪人達と思っていいでしょう。またこの怪人達は人目に現れ難いので見つけるのは困難だと思われます」
その言葉に、全員が少なからず同様していた。
「これらの未確認生命体をC体と呼ぶ事にする。昨日現れたのをC1号、今日現れたのをC2号とする。そして……」
鍵山の言葉に応じて、もう1つの映像が映し出された。
それは、戦士・ソルンであった。
「この第3号に似た未確認生命体を、C3号と呼ぶ事にする」
「……C3号…か」
往人は複雑な表情でその言葉を繰り返していた。

<千代田区日比谷公園 14:07PM>
「……こりゃ思ったよりずっと大変な事態だな……」
祐一達から水瀬一族の話を聞いた昇太はかなり驚いていた。
ヌヴァラグに手を貸している者の血が祐一にもあると言う事に。
「何が大変なんです?」
昇太は咄嗟に声のした方に向く。
そこに立っていたのは鹿塚直樹。
彼はかつてヌヴァラグでギムリと呼ばれていたが、水瀬一族の目的を止める為にビサンの側に着いて、ゼルバの力を得てヌヴァラグらと戦っている。
「とりあえず、順を追って説明する」
そう言って、昇太は祐一達の話を直樹に話す。
「成る程、水瀬ですか」
「ああ……その一族が、鹿塚さんの追っている奴等だよな?」
直樹は頷く。
「会ってどうなるかは判りませんけど」
「それと……俺、やっと光を取り戻せた」
そして昇太はソルンの事を話した。
「そうですか……」
直樹はそう言うと、何か考えるような仕草をする。
「鹿塚さん?」
「……意志……ですか」
直樹はそう呟き、昇太を見る。
「意志?」
「はい、ヌヴァラグ語の……この場合は古代語の事ですが……その中には特殊な意味を持つ単語があるんですよ。今で言うと特殊発音とでも言い替えられますね」
「特殊発音?」
「そうです。古代語の中には常用語とは違う意味を持った特殊な単語があります。例えば僕の名前はゼルバですが、古代では『超越』と言う意味を持った単語になります。ちなみにカノンは『戦士』ですね。それで、広本さんのソルンですが、これも特殊な言葉で『意志』となるんです」
「意志か……」
しばらくの間、昇太と直樹の話は続いた。

<洋介の家・洋介の部屋 14:57PM>
自分の部屋で、石山洋介はいつものように未確認生命体関連のニュースを見ている。
留まる事のない未確認生命体の被害。
その度に昇太の安否が気になっていた。
「……」
ニュースを見終えると、洋介は東京の地図のページを開き、何かを調べて始めた。
10数分程そのまま地図と睨めっこして、今度は携帯電話を取り出す。
『もしもし?洋介さんですか?』
数回のコール音の後、 木下雅美の声が洋介の耳に入る。
「ああ、すまないが明日空いてるか?」
『……もしかして洋介さん……広本さんを』
雅美は何か気付いたように昇太の名前を出す。
「……ああ」
洋介は驚いた様子もなく頷いた。
「手掛かりがある訳じゃない……だけど動き出さないと広本が見つからない気がしてな……」
『そうですね……彩さんには伝えおきますか?』
「いや……今回は黙っておこう。もし見つからなかったら……余計なショックを与える可能性があるから」
『わかりました。じゃあ明日、駅で……』
「ああ」
そう言って、洋介は通話を切る。
その手は、強く握られていた。
「広本……今度こそ……見つける、見つけてやるからな!必ずこっちに帰らせてやるからな!!」
洋介の目は、決意に満ちていた。

<都内某所・とあるビルの屋上 20:46PM>
摩天楼の屋上に、1人の老婆が地面を見下ろしている。
「どうやら……邪魔者が増えたようじゃな……」
老婆はそう呟きながら外を見渡している。
「カノン程の力は無いじゃろうが……このまま生かす訳にはいかん」
そう言うと、老婆はビルの中へと歩く。
その中で、不気味な笑い声が響き渡っていた。

<新宿区新宿御苑 21:20PM>
公園内でジョギングをしている中年男性を木の影から覗く男がいる。
「ナラ・バイセヅガ」
そう呟くと、その男の体が変わり出す。
男は、鶴のような姿をした未確認生命体、シューヅ・シィバルへと変化した。
シューヅ・シィバルは翼を広げると、その鋭い嘴をドリルの様に回転させて男性に突き刺した。
「!?」
嘴は何の抵抗もなく男性の体を貫いた。
男性は自分の身に何が起こったのかも解らないまま、命を奪われた。
シューヅ・シィバルは男性を振り払うと、ビルの屋上へと飛び、着地した。
「シュジモ・レソモバ・ジョゴガマ?」
そう言いながらシューヅ・シィバルは地面を見下ろす。
「ラノゴバ」
次の獲物を見付けると、シューヅ・シィバルは翼を広げ次の標的に向かった。

<喫茶店ホワイト 10:08AM>
「C3号か……」
今朝の新聞を見て、昇太は軽く息を着く。
「どうした?」
昇太の声が気になり、祐一が近寄る。
「ソルンなんですけど、警察では未確認生命体C3号と呼ばれるそうです」
「カノンに似てるからか?」
「たぶんそうだと思います」
「警察もいい加減だなぁ……」
そう言いながら祐一は頭を掻く。
『!!』
その時、祐一と昇太の頭の中に何かが走った。
素早く外に出ると同時に、ロードツイスターの無線が鳴り出した。
『祐の字、聞こえるか?』
「ああ、奴等が出たんだろ?」
『そうだ、場所は港区の有栖川宮記念公園付近だ』
「相沢さん」
昇太はヘルメットを手に取り、いつでも出られるように準備している。
「ああ……行けるか?」
「もちろんです」
祐一の言葉に、昇太は強く頷いてヘルメットを被る。
「じゃあ急ぐぞ!」
祐一は素早くロードツイスターに跨る。
「はい!」
昇太も停めてあったオフロードのバイクに跨り、エンジンを掛ける。
そして2台のバイクはホワイトから出る。
その光景を、瑞佳はそっと見送っていた。
「頑張ってね……祐さん、広本さん」

<新宿区内某所 10:24AM>
新宿区内を移動中、2人は往人の車と合流する。
「広本……」
昇太の姿を見て、往人は僅かに戸惑っている。
昨日の戦いで、往人はエニミートカノンの姿をした昇太を撃ったからだ。
いくら未確認生命体と同じ様な姿をしてたからとはいえ、自分の良く知る人に向かって引き金を引くというのは、彼にとって良い気分ではない。
「あいつも戦うのか……」
そう呟いた時、何かから逃げるように走る女性が目に入った。
往人は車を止め、その女性に近寄る。
それを見て祐一達もバイクを止める。
「どうしたんだ?」
「み、未確認生命体が……」
「何っ!?何処にいたんだ!?」
「あっ、あっちの方です……」
そう言って女性は自分の走った方を指す。
女性の指した先には、人目の着かない廃倉庫がある。
距離もそれ程離れてはいない。
「は、早く……あの人を」
「あの人?」
「わ、私をを庇ってくれた人が……まだ……」
その言葉に昇太が反応する。
(まさか……鹿塚さんが……)
昇太はすぐさまバイクに跨る。
「相沢さん、俺はそっちに行きます!」
「解った。頼むぞ!」
頷きながら昇太は進路を変え、バイクを走らせた。

<都内某所 10:32AM>
都会から離れた廃倉庫に昇太のバイクが現われる。
「この辺りか……」
バイクを止め、昇太は辺りを見渡す。
その廃倉庫は意外に広く、身を潜める場所は幾つもある。
「……」
昇太は意識を集中する。
すると、腰の一点が光り、ベルトが現れる。
「変身!」
昇太の言葉と同時にベルトから光が発せられる。
その光が昇太を包み、昇太は戦士・ソルンへと姿を変えた。
すると、何処からか殴る音、蹴る音、壁にぶつかる音が聞こえた。
ソルンに変身した事により、彼の聴覚は常人の数十倍にまで向上している。
(音は……あっちか)
その音のした方へと走る。
「!!」
音の発生源の近くまで来た時、前方の建物の壁が砕け、中から怪人が飛ばされて来た。
「くっ……おっ……おのれ……」
その怪人は羊のような姿をしていた。
羊怪人は体のあちこちに火花を散らしている。
(こいつは…未確認亜種体…か?)
ソルンは構えを取るが、羊怪人はもう立てない状態だった。
「奴は…ば……化け物だ……」
そう言い残すと、山怪人は爆発した。
「?」
爆発を見てソルンは構えを緩める。
(この倒し方……鹿塚さんじゃない…のか?)
爆発で残った紅蓮の炎を見て疑問に思いながら、ソルンは砕けた壁から中に入る。
「!?」
目の前の光景を見て、ソルンは思わず驚きの声を上げた。
まず目に映ったのが、4体の未確認亜種体。
それぞれ鰐、蟻地獄、ザリガニ、カナブンのような姿をしている。
そして……もう1体の姿がわかった。
4体の未確認亜種体に囲まれている黒い姿をした者だった。
全身が黒いボディアーマーで覆われ、間接からは生体筋肉が現われている。
左胸には文字のような物が刻まれており、首には赤いマフラーのような物を巻いている。
頭部は黒い仮面で覆われており、目は赤く光っていた。
さらにクラッシャーで覆われた口、頭部にある2本の触角のような物。
そして腰に着いているベルト。
その姿は、ヌヴァラグよりもカノンのような戦士に近かった。
「あいつは……」
そう呟いた時、鰐怪人が口を大きく開け黒い戦士に迫る。
黒い戦士はその口を受け止めると、鰐怪人に膝蹴りを叩き込む。
「がはっ!!」
さらに黒い戦士は腹部にパンチを放ち、前方にいた蟻地獄怪人に向かって突き飛ばす。
そこにザリガニ怪人とカナブン怪人が同時に飛び掛かる。
黒い戦士は迷わずカナブン怪人の方へと走る。
そしてカナブン怪人の胸部に強烈なパンチを叩き込む。
「ぐっ!?」
そのパンチはカナブン怪人の体を貫き、カナブン怪人は爆発した。
「死ねっ!!」
そこにザリガニ怪人のハサミが振り下ろされる。
しかし黒い戦士に受け止められ、さらに黒い戦士はそのハサミを握り潰した。
「何っ!?」
驚いている間に、ザリガニ怪人は黒い戦士のパンチを受け吹き飛ばされた。
「この……図に乗るなぁっ!!」
今度は倒れていた鰐怪人と蟻地獄怪人が同時に黒い戦士に迫る。
先に蟻地獄怪人が飛び掛かり、黒い戦士と組み合う。
そこに鰐怪人が飛び掛かり、黒い戦士の顔に噛み付こうとした。
しかし、黒い戦士はそれに反応すると素早く蟻地獄怪人を振り払い、蟻地獄怪人の首を掴んで迫ってきた鰐怪人の口に押し込んだ。
「ぐぶぅっ!?」
予想にもしなかった黒い戦士の行動に、鰐怪人は慌ててしまい、すぐに蟻地獄怪人を取り出せなかった。
その隙を突いて、黒い戦士は鰐怪人の口に押し込んだ蟻地獄怪人の頭を狙って鋭いキックを叩き込んだ。
槍の様に放たれたキックは正確に蟻地獄怪人の頭と鰐怪人の口を貫き、2体の未確認亜種体は同時に爆発した。
「おのれええぇぇぇぇぇっ!!」
そこに残りのザリガニ怪人が飛び掛かる。
黒い戦士はザリガニ怪人のハサミをかわすと、顎にアッパーカットを叩き込む。
たまらずザリガニ怪人は上へと飛ばされる。
さらに黒い怪人も上に跳ぶ。
その右足は紫の光に包まれた。
「ハッ!!」
そして黒い戦士は身体を捻り、右足を上げ、剣を振り下ろす様にザリガニ怪人に叩き込む!
ザリガニ怪人は地面に叩き付けられながら転がり、壁にぶつかる。
しかし、それは身体だけ。
転げ落ちた身体にザリガニ怪人の首が落ちる。
その首が身体に当たった瞬間、ザリガニ怪人は爆発した。
「つ、強い……」
ソルンは唖然と立ち尽くしたままだった。
未確認亜種5体をたった1人で、しかも全くの無傷で倒したのだから。
おそらくこの黒い戦士の力は自分でも歯が立たないかもいしれないと思った。
「……中々シッポを掴ませねえな……」
黒い戦士は誰に言うのでも無く呟いていた。
そこに、1つの影が黒い戦士に飛び掛かる。

<港区有栖川宮記念公園付近 10:41AM>
既に地元の警察が展開しており、未確認生命体、シューヅ・シィバルを人のいない場所へと誘導し終えている。
しかし、例によって拳銃などでは通用せず、警官隊は1人、また1人と吹き飛ばされてしまう。
「……シュサダヲ」
シューヅ・シィバルはそう呟くと、翼を広げ警官隊の集中している所に向かって飛び出し、嘴を回し始めた。
「!?」
しかし、横から来た衝撃で軌道がずれ、誰にも当たらなかった。
衝撃のした方を向くと、ブレイバーバルカンを構えたPSK−03が立ちはだかっていた。
「ラデザ・ビサンモネヲニ・ガ」
シューヅ・シィバルはPSK−03の方を向くと、一気に飛び出した。
「くっ!」
PSK−03は横に転がりながらシューヅ・シィバルの突進をかわす。
そこに、ロードツイスターと覆面パトカーが到着する。
祐一はロードツイスターから降りると、さっと両手を腰の前で交差させた。
そして素早く胸の前まで腕を上げ、左手を腰まで引き、右手で十字を描く。
「変身っ!!」
そう言って右手を顔の横まで引き、一気に払う。
身体に浮かび上がったベルトの中央部が光り、祐一は戦士・カノンへと姿を変える。
「大丈夫か?」
そう言いながらカノンはPSK−03に駆け寄る。
「ああ、所であいつは?」
「広本は別の所で現われた未確認の方に行ってる」
カノンはシューヅ・シィバルを見ながら言う。
「カノンザ・ギシャガ・ヌガニバ・ロソニドグ・マヅガマ?」
シューヅ・シィバルはそう呟くと、2人に向かって飛び込む。
「来るぞ!」
「わかってらあっ!」
カノンとPSK−03は身構え、シューヅ・シィバルに迫った。

<都内某所 11:08AM>
突如現われた怪人に、黒い戦士は反応が遅れ突き飛ばされる。
蛇の姿をしたヌヴァラグ、ベーチ・ババルは余裕の表情で黒い戦士を見る。
「ジョルニシャ?ソル・シュガデシャモガ?」
ベーチ・ババルは起き上がろうとする黒い戦士に迫る。
「待て!!」
「!?」
ソルンは咄嗟に飛び出し、ベーチ・ババルにパンチを叩き込む。
さらにソルンは回し蹴りを放ち、ベーチ・ババルの腹部に叩き込んだ。
「ウゴッ!!」
そのまま吹っ飛ばされるベーチ・ババル。
「……」
黒い戦士はソルンを見ると、彼に近寄ろうとする。
その時、ベーチ・ババルが鞭のような右手構え、飛び掛かる。
ソルンは鞭の攻撃をかわし、反撃とばかりにパンチを放つ。
しかし、そのパンチを防がれ、ベーチ・ババルの鞭を受ける。
「ぐっ!!」
鞭は刃の様な切れ味でソルンの生体装甲を切り裂いた。
ソルンはその攻撃で怯み、ベーチ・ババルはさらに鞭を振るう。
そこに黒い戦士が入り、鞭を弾く。
「カサジャッ!」
今度は黒い戦士に鞭を振るうベーチ・ババル。
その鞭は黒い戦士の腕に巻き付く。
ベーチ・ババルは鞭を引き、黒い戦士の体制を崩す。
ソルンはその鞭を切ろうとするが、ベーチ・ババルの蹴りを受け、吹っ飛ばされてしまう。
「ぐぁっ!!」
壁に叩き付けられ、地面を転がるソルン。
その隙に、黒い戦士のパンチが入る。
「!?」
ベーチ・ババルはそれを受け止めるが、腕に強い衝撃を受け、怯む。
さらに黒い戦士は素早く腕に巻き付いている鞭を手刀で切り落し、ベーチ・ババルを蹴り飛ばす。
(何て力だ……明らかに俺以上の力を持っている)
ソルンは黒い戦士との力の差を感じた。
黒い戦士は、自分以上の力を持っている。
明らかに自分では敵わないと思っている。
黒い戦士はベーチ・ババルに接近し、上に殴り飛ばす。
さらに黒い怪人も上に跳ぶ。
「ハッ!!」
その右足が紫の光に包まれ、ベーチ・ババルに振り下ろされる。
そのままベーチ・ババルは地面に落ちる。
「ノモ・シェリジョガ?」
「!?」
しかし、ベーチ・ババルは地面に手を着き、立ち上がる。
「シャジャ・シィガダサガネミ・ギャッシェソ・ゴモベーチ・ババルミバ・ガシェマリエ」
そう言って余裕の笑みを浮かべるベーチ・ババル。
「ちっ!」
黒い戦士は思わず舌打ちする。
先程ザリガニ怪人の首を蹴り落とした程のキックが、ベーチ・ババルにはあまり効いていない。
しかし、ソルンは気が付いた。
蹴った部分から古代文字が浮かび上がっていない事に。
(まさか……あいつには俺達の様な力は無いのか……?)
「ゴマリマダ・ゴシィダガダ・リグオ!」
そう言い、ベーチ・ババルは切れた右手を前に出す。
すると、切れた部分から鞭のような尾が現われ、黒い戦士に向かう。
「!!」
黒い戦士は咄嗟にかわし、ベーチ・ババルと距離をとる。
その隙に、今度はソルンがベーチ・ババルに飛び掛かる。
ベーチ・ババルは素早く鞭を振るうが、距離を詰められ力が入らない。
「ハッ!」
ソルンは鞭の着いた腕を掴み、空いた手で渾身のパンチを叩き込んだ。
強烈な一撃にたまらず吹っ飛ばされるベーチ・ババル。
(あいつに敵う力が無くても……奴等を倒せる力があるならそれで十分だ!)
起き上がったベーチ・ババルは鞭を槍のようにソルンに突き出す。
ソルンは体を回してそれを躱しつつ、その勢いを使ってベーチ・ババルに裏拳を叩き込んだ。
その直後に、黒い戦士は素早くジャンプして右足を突き出し、ベーチ・ババルにキックを叩き込む。
ベーチ・ババルは大きくよろめきながらも踏ん張り、鞭を構えた。
「ナラ・ゴリ!」
ベーチ・ババルは2人に向かって手招きする。
どうやら相手に先手を打たせてカウンターの要領で攻撃するつもりらしい。
それを見て、黒い戦士が僅かに後ろに下がり、赤い目を光らせた。
「アクトレイサー!!」
黒い戦士の声と同時に、ベーチ・ババルの後ろの壁が砕けて漆黒のオフロードマシン・アクトレイサーが現れた。
「マ、マミッ!?」
アクトレイサーの出現に戸惑うベーチ・ババル。
アクトレイサーは猛スピードでベーチ・ババルに体当たりをした。
ベーチ・ババルはそのままアクトレイサーに押され、無防備のままソルンに向かっている。
ソルンは黒い戦士の考えがわかり、ゆっくりと構えと取る。
そしてある程度近づいた時、ソルンは真上にジャンプ。
「ハアッ!!」
左足を突き出しベーチ・ババルに叩き込む!
その一撃にベーチ・ババルは大きく吹っ飛ばされ、地面に落ちる。
アクトレイサーはソルンの後ろを過ぎて、黒い戦士の前に止まった。
「ロ……ロモデ……ッ!」
ベーチ・ババルは起き上がろうとするが、焼き付けられた古代文字によって思い通りに動けない。
そして古代文字から流れるひびが一点に達して、ベーチ・ババルは爆発四散した。
ベーチ・ババルの爆発を確認すると、ソルンは黒い戦士の方を振り向く。
「お前は……一体?」
「……」
2人の間に沈黙が流れる。
「君は……カノンなのか?」
暫くして、黒い戦士の口が開く。
「……いや、俺はソルンだ」
「ソルン……?」
聞いた事のない名に、黒い戦士は疑問の声を出した。
そのまま暫く考え込むようだったが、やがて顔を上げた。
「……俺は……ネオだ」
黒い戦士・ネオはそう言うと、アクトレイサーに跨り走り去って行った。
(ネオ……)
ソルンの姿が昇太に戻る。
(とにかくここは終わった……相沢さんの所に行こう)
昇太も素早くバイクに跨り、祐一達の所に向かう。

<港区有栖川宮記念公園付近 11:39AM>
こちらの戦いは、カノン達が押されていた。
肉弾戦では、明らかにカノン達の方が上回っていた。
しかしシューヅ・シィバルはそれで形勢不利と見たのか、空中からの攻撃を繰り返している。
そのため、2人は上手く攻撃に移れない。
「このっ!!」
PSK−03は先程からブレイバーバルカンを使用しているが、速すぎて追い付かない。
シューヅ・シィバルは高度を下げると、一気にスピードを上げ2人に迫る。
(今だっ!)
カノンは素早くジャンプ。
空中を1回転して、光に包まれた右足を突き出す。
しかし、シューヅ・シィバルはそれをかわし、旋回してカノンを突き飛ばす。
「ぐっ!!」
壁に叩き付けられ、地面に落ちるカノン。
今度はPSK−03に向かって旋回する。
PSK−03はそれをかわそうとするが、ブレイバーバルカンがかすり、落としてしまう。
ブレイバーバルカンは僅かに火花を散らしている。
どうやら何処かが破損してしまったようだ。
「くそっ!」
咄嗟にブレイバーショットを引き抜き撃ち込む。
しかしシューヅ・シィバルのドリルの様な嘴に全て弾かれ、そのままPSK−03の装甲に嘴が当たる。
「ぐっ!!」
咄嗟に上半身を反らして直撃は免れた。
しかし、嘴を受けた装甲は抉り取られたような後を残していた。
(何て嘴だ……装甲を簡単に抉られるなんて)
PSK−03は何とか起き上がろうとするが、今の攻撃で上手く立ち上がれないでいた。
「ラショバ・カノンジャマ!」
PSK−03が動けないのを見ると、シューヅ・シィバルはカノンに標的を向けた。
カノンは先程の衝突で落ちたブレイバーショットを拾う。
「フォームアップ!!」
カノンの色が聴覚・視覚・射撃性能の増す緑に変わり、ブレイバーショットを緑のボウガンに変える。
「ゴリ!」
ファルギ・シィバルは高度を上げる。
カノンはボウガンの後部にあるレバーを引き、上空を見る。
「そこか!」
緑のカノンは素早く振り向き、レバーを放し、同時に引き金を引く!

Episode.6「黒光」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderSorun


次回予告
シューヅ・シィバルは逃走し、祐一達は病院へ。
そこで見た昇太の身体に起こっている事態。
聖「君の身体は……危険な状態だ」
雪見「……凄い覚悟ね」
戦いの中で再開した友人。
2人は信じられない現実を見て苦悩する。
雅美「どういう事ですか……?」
洋介「冗談だろ……」
しかし、回り始めた運命の歯車は誰にも止められない。
再び現われたシューヅ・シィバルにソルンの力が発動する!
昇太「自分の運命は……自分でカタを付ける」
次回、仮面ライダーソルン「重腕」
解き放て!その力!!



設定資料

山羊怪人・鰐怪人・蟻地獄怪人・ザリガニ怪人・カナブン怪人

それぞれ山羊、鰐、蟻地獄、ザリガニ、カナブンの姿をした未確認亜種体。
全て改造レベル3.
殺人を行おうとした所、突如現れた黒い戦士(ネオ)に全滅させられる。

ベーチ・ババル

蛇のような姿の未確認生命体。
鞭のような右手で、敵を攻撃する。
鞭は千切れても瞬時に再生する事が出来る。
しかし、距離を詰められると弱い。

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