<昇太のアパート 22:35PM>
静かな部屋の中で、パソコンのキーを叩く音だけが聞こえる。
「……よし、大体まとまったな」
作業を終えて、昇太は一息つく。
昇太は戦いを続ける中で、遺跡にあった古代文字の解読を行っていた。
その中の、カノンの色についての解読を終えた。
「さて……もう一度確認するか」
そう言って、昇太はパソコンの画面を見る。

『白き戦士は光の戦士、まばゆき光で邪悪を討ち倒せ』

『青き戦士は水の戦士、流れる水の如く邪悪を受け流し、溢れる水の如く薙ぎ倒せ』

『緑の戦士は風の戦士。遙か彼方の敵を知り、疾風のように撃ち落とせ』

『緑の戦士、長き時を置かず、風の如く素早く射抜け』

『緑の戦士、敵をそばに寄せず、彼方より射抜け』

『紫の戦士は大地の戦士、怒れる大地の牙持ちて、邪悪を切り裂け』

『紫の戦士、堅き鎧に身を包み邪悪の力を跳ね返す』

『赤き戦士は炎の戦士、烈火の如き拳を用いて邪悪を討ち滅ぼせ』,

それぞれの姿をイメージしながら読み上げる。
「今の所、これで全部か……」
そう呟いた時、彼の頭の中にカノンの姿をした者が映し出される。
しかし、それは戦士と呼ぶにはあまりにも違い過ぎるもの。
むしろ猛獣のような姿をしていた。
「今のも……カノンなのか……?」
それを近いうちに見るとは、全く思ってもいなかった昇太だった……。

仮面ライダーソルン
Episode.4「降臨」


<喫茶店ホワイト 11:40AM>
昇太は少々驚いていた。
中に入った途端、瑞佳が驚いたような表情で自分を見たからだ。
「……どうしたんですか?」
「それが……その……」
瑞佳は言いにくそうに言葉を濁す。
「所で、マスターと祐さんは?」
「マスターは上で休んでるよ」
「風邪?」
「ううん……ちょっと座って」
そう言われ、近くの席に座る昇太。
瑞佳も昇太の隣に座る。
「実は……祐さんの記憶が戻ったんだよ」
「本当か!?」
思わず聞き返し、立ち上がる昇太。
「うん……でも今の祐さん、相沢さんだけど……何も憶えてないの……」
「何もって……どういう事ですか?」
「祐さんは……昔の記憶を取り戻した代わりに……今までの記憶が無くなっちゃったんだよ」
「!?」
昇太は驚愕の声を上げる。
「それじゃあ……今までカノンに変身して戦った事も……」
瑞佳は黙ったまま頷く。
(だけど、それなら5年前の戦いは思い出した事になるか……)
「それで……相沢さんは?」
「香里さんと一緒に城西大学に行ったよ」
「そうですか……」
昇太はふと外を見る。
「瑞佳さん、後で行きましょう」
そして瑞佳に振り返り、まるで励ますかのように言う。
「……そうだね。うん、行こう」
「じゃあ俺、一旦戻ります」
そう言って昇太は店から出た。

<廃ビル 13:20PM>
廃ビルの中の一際広い部屋に数人の人達の声が聞こえる。
「ウリツヲ・ベッシャマ……」
小柄な男が回りを見る。
これまでいた怪人の殆どがエニミートカノンによって倒されている。
「ラモ・カノンソジョギザ・ゴゴサジェ・ギャヅショバマ」
長髪の男も驚いているようだ。
「ゴモササ・リガニシェ・ログヴァゲミバ・リガマリ」
「マダ・ヴァシャニミ・ギャダネシェ・グデマリ?」
首輪をした女性が立ち上がる。
「ソニガニシャダ・ラモロショゴソ・ギャデヅ・ガダ」
「……リリジャ・ドル」
そう言うと首輪をした女性は部屋から出ていった。

<城西大学考古学研究室 13:34PM>
「さて……」
学生に聞きながらドアの前まで来た昇太と瑞佳。
「瑞佳さん……すいませんが……俺、ここにいます」
「えっ?入らないの?」
昇太の意外な言葉に瑞佳は驚く。
「今考えたら、記憶が戻ったから、相沢さんは俺を知らない筈です。その中で相沢さんの前に立つのは……さすがに……」
「そういえば、そうだね……じゃあ、私が入るよ」
「……すいません」
昇太は頭を下げ、ドアの横に立つ。
瑞佳は遠慮しがちにドアをノックする。
「開いているわよ」
香里の声がして、瑞佳は中へ入る。
「あれ?祐さ……違った。相沢さんは?」
「出ていったわ」
香里の素っ気無い声が昇太にも聞こえる。
「そう、出ていったわ。……止める間もなく……」
(出ていった……?)
昇太はその言葉を繰り返す。
「どうして?」
咎めるような声で言う瑞佳。
「……さぁ……私には解らないわ。でもね、幾つか言えることがあるの。彼は……カノンになるつもりはなかったって事。そして……怖くて逃げ出したのよ」
(怖くて逃げ出した?)
ここで疑問を感じた。
今まで祐を見てきた中で、恐怖を感じるような仕草は一度も無かったからだ。
(って事は……5年前の事で恐怖したのか?)
「何が……信念よ……」
小さい声で香里が呟く。
その時、携帯電話の呼び出し音が鳴った。
(待てよ!……こんな時に……)
昇太は慌てて携帯電話を取り出そうとする。
「はい、美坂ですが……ああ、あんたね」
「……」
どうやら香里の携帯電話が鳴ったようだ。
「いないわ。どうかしたの?」
「無駄よ。もう二度と彼が未確認と戦うことはないわ……多分ね」
(未確認って事は……相手は国崎さんか?)
「言葉通りよ」
香里はそう言って通話ボタンを切り、ため息をつく。
「どうしたの?」
「何でもないわ」
「……未確認が出たんだね?それで祐さんを……」
「……もう無駄よ。彼は……相沢君は戦わない。戦う勇気を彼は失ってしまった……そう、あの時に……」
(あの時って事は……5年前か?)
「もうあいつには期待しないわ。あいつは逃げ出したの……そんな奴に……」
そう言っている間に、キーボードを叩く音がしたのを昇太は聞き逃さなかった。
「……違うな」
「……嘘」
昇太の呟きと瑞佳の声が重なる。
「嘘だよ。祐さんを見限ったのならどうして古代文字の碑文の解読を続けているの?」
「そ、それは……」
香里は答えに詰まっているようだ。
(やはりな……)
「香里さんは解っているんだよ。祐さんはきっと帰ってくるって。またみんなの明日を守るために戦ってくれるって」
昇太は瑞佳の声に大きな優しさを感じた。
(凄いな……瑞佳さんは)
思わず感心する昇太。
「探しに行こう?祐さん、そう遠くに行ってないと思うんだよ」
そう言って少しして、2人は部屋から出て来た。
「広本君!?」
外にいた昇太を見て香里は驚きの声を上げる。
「すいません……相沢さんがいると思ってここにいました」
「じゃあ話は聞いたわね?」
「はい、俺も手伝います」
昇太は頷く。
「じゃあ行こう」

<文京区内 14:30PM>
昇太はバイクで祐一の行きそうな所を廻っているが、未だ見つからない。
「ここら辺だと思うんだが……」
一旦バイクを止めた。
その時、携帯電話の呼び出し音が鳴る。
「はい……あっ、瑞佳さん」
『うん……さっき祐さんに会ったよ』
「そうですか……それで相沢さんは?」
『大丈夫……祐さんは戦いに行ったよ。みんなの明日を守る為に』
「そうですか……」
瑞佳の言葉に、昇太の顔が僅かに沈む。
(俺には……無理だからな)
『……広本さん?』
「いえ、何でも有りません。じゃあ俺も戻ります」
そう言って、通話ボタンを切る。
「!?」
その時、昇太の視界が揺らぐ。
「俺は……俺に出来る事をやるしかないか……」
そう呟き、バイクを走らせる。

<台東区上野公園付近 15:12PM>
怪人の気配を感じた所に着いた昇太。
(あれは……相沢さん!)
そこから少し離れた所にロードツイスターから降りる祐一と、それを見て止まった未確認生命体第21号、ギャサメ・ボバルが見えた。
祐一はさっと腰の前で両手を交差させた。
すると、腰にベルトが浮かび上がってくる。
交差させた両腕をそのまま左の腰へと持っていき、右腕だけを伸ばし、空に十字を描く。
「変身っ!!」
そう言って腰に残していた左手を挙げ、顔の前で右腕と交差させてから一気に左右に開く。
彼の身体が変化を始める。
しかし、その様子がおかしかった。
ベルトの中央の光が鈍く、変化も生体的なイメージを持つ。
それに生体装甲も現れず、分厚い筋肉が鎧のように身体を覆う。
その姿は本来とは違うまやかし。
祐一はまやかしの力を持った姿・ブートライズカノンへと変わってしまった。
「!?」
その姿を見て昇太は驚愕した。
さらに、その姿は昇太の頭の中に映し出された物と全く同じだった。
「あれがカノン……なのか?」
ブートライズカノンへ変わった祐一を見て、昇太は思わず言葉を無くす。
「マヲジャ?ラモ・カノンバ」
「!?」
突然の声に昇太は振り向く。
そこにいたのは、キリギリスの姿をした未確認生命体、ジヂヌ・ゴバルだった。
「ラデイャ・サヅジェ・シャジャモ・ゲソモ・ジャ」
ジヂヌ・ゴバルはブートライズカノンを見て笑っている。
「サラリリ・ショヂラレウ・レゾモン・ガヅガ」
そう言うと、ジヂヌ・ゴバルは昇太の方を向き歩み寄ってくる。
昇太は一歩さがると、意識を集中した。
すると、腰からベルトが浮かび上がる。
ベルトの中央から発する黒い光に包まれ、昇太はエニミートカノンへと姿を変える。
「ボル……カノンショジョギジャッシャ・ガ」
ジヂヌ・ゴバルは慌てる様子も無く、エニミートカノンを見る。
「ビサシュツニミバ・マヅガマ?」
そう言ってエニミートカノンに向かって跳び掛かる。
エニミートカノンは腰を落とし、それを正面から迎え撃つ。
「リリ・ジョギョル・ジャ!」
ジヂヌ・ゴバルはそのまま飛び込み、右足を前に出す。
エニミートカノンはそのキックをガードし、右腕の刃を大きく振る。
ジヂヌ・ゴバルは素早く後ろに飛ぶが、胸部に僅かな傷を残していた。
「ヌギニ・シェン・ムギヌジシャ・ガマ?」
そう呟いたと同時に、ハンミョウ怪人の姿が消えた。
「!?」
驚きつつも、辺りを見回すエニミートカノン。
途中、僅かな気配を感じ左を向く。
「!!」
その瞬間、エニミートカノンはジヂヌ・ゴバルのタックルを受けた。
咄嗟にガードしたが数メートルまで突き飛ばされる。
「グッ……」
ゆっくりと起き上がるエニミートカノン。
「!?」
突然気配を感じ、振り向く。
そこには、ジヂヌ・ゴバルではなく首輪をした女性が立っていた。
「シシュゲシャオ!カノンソジョギ」
そう言った時、女性の姿がツバメのような姿、シュタセ・シィバルへと変わる。
「ヴァシャニバ・ゴルノグモ・バガリニャ、シュタセ・シィバルジャ!」
シュタセ・シィバルは翼を広げ、物凄い速度でエニミートカノンに襲い掛かる。
咄嗟にそれをかわすエニミートカノン。
「!!」
しかし、かわした先にジヂヌ・ゴバルのタックルが迫る。
それを避けるが、無理に動いた為バランスを崩してしまう。
そこにシュタセ・シィバルが高速で突っ込んで来た。
エニミートカノンは直撃を受け、成す術もなく吹っ飛ばされる。
「グッ……」
起き上がったエニミートカノンだが、ダメージは相当な物だ。
「ギャバヂ・カノンボジョモ・シィガダバ・マリマ……」
シュタセ・シィバルは降下しながら呟く。
「ソル・ロヴァヂ・ガ……」
よろめいているエニミートカノンを見てつまらなそうに呟くジヂヌ・ゴバル。
「マダ……ショジョセショ・リグガ!」
言いながらジヂヌ・ゴバルはエニミートカノンに向かって突っ込む。
「ロヴァヂジャ!カノンソジョギ!」
叫びながら右足を前に出す。
「!?」
しかし、それと同時に真横からバイクのエンジン音が鳴る。
ジヂヌ・ゴバルは突然現れたクラシカルホワイトのオンロードバイクに吹っ飛ばされた。
バイクに乗っている青年は、そこから降りヘルメットを外す。
その青年の首元には、奇妙なタトゥーが刻まれていた。
「ロサレバ……ギムリ!」
青年の姿を見て驚きの声を上げるシュタセ・シィバル。
「シィザル!!」
ギムリと呼ばれた青年はそう言うと左手を腹部の前に据え、右手で左胸に印を結び、左腕を立て剣指にし、右手をそのまま腹部へ動かす。
すると、彼の腰にベルトが出現した。
しかし、そのベルトの中心にはヌヴァラグのバックルが聖石を覆っていた。
そのまま右手を横に突き出し、空を切るように腰に引いた左手に宛がう。  
そして右手を腰に引きつつ左手を逆剣指で前にゆっくり突き出す。
「変真!!」
そう言って左手を反し腰に引き、右手を剣指にして左上に掲げる。
バックルが左右に開き、現れた霊石から光が放たれ青年の体が変わる。
生体装甲は現れず、分厚い深緑の筋肉が全身を覆い、硬化し始める。
その左胸には深い傷痕があり、頭部は深緑の仮面で覆われる。
さらに銀の牙が並ぶ口、王者の冠のような金色の角、2本の触角。
背中からは昆虫の羽を思わせる赤い2枚の布が流れる。
「俺はギムリじゃない……俺はゼルバだ!」
深緑の戦士・ゼルバはそう言うと、エニミートカノンの方を向く。
「……」
そして何も言わずに頷くと、シュタセ・シィバルの方へと歩き出す。

<台東区内 15:32PM>
住人はやや焦りの表情のまま車を走らせている。
その原因は、隣の座席で気を失っている祐一にあった。
さっき見た異形の姿をしたカノン───
何故あんな姿になってしまったのか、何故自分が不安になってしまったのか。
「どうしちまったんだよ……祐の字!」
何も分からず、悔しそうに言う住人。
車の行く先には、関東医大病院が見えた。

<台東区上野公園付近 15:56PM>
ゼルバはシュタセ・シィバルの前に立つ。
「ルダジヂソモザ、マミニミ・ギシャ?」
「ロデバ・ルダジッシャ・シュソヂバ・マリ」
シュタセ・シィバルの問いにゼルバは間を置いて答える。
「ロデバ・ジャデミソ・ニヲジェソダリシャグ・マリジャゲジャ……ゴゴバ・ビリシェ・グデ」
そう言うと、ゼルバはシュタセを見据えた。
「マミン・リルガショ・ロソレバ……グジャダマリ・ゴション」
シュタセ・シィバルはつまらなそうに言う。
「ノルギュル・ギャシュガダ・ニムショ・リルモミ……」
どうやらかなり呆れているようだ。
「ギャバヂ……ニサシュ・ニマギャメ」
言いながら翼を広げる。
「……ノルガ」
右手を開いて、握り締める。
「マダ……ニガシャマリ」
ゼルバが構える。
「リシィジョ・シィン・マザニデ・バヲネリニシェソダル!」
「ノルジェ・マゲデバ・ロソニドグ・マリ!」
ゼルバの殺気が気に入ったのか、満足げに言う。
そして、シュタセ・シィバルは高速移動でゼルバに突っ込む。

その頃、エニミートカノンは防戦一方だった。
ジヂヌ・ゴバルの驚異的な脚力に、体が追い付いていない。
せいぜいガードするのがやっとの状態だ。
「ジョルニ・シャ?ソル・ロヴァヂガ!」
その声と同時に、ジヂヌ・ゴバルのタックルが迫る。
「ガッ!!」
ガードが遅れ、数歩よろめく。
そこへ再びジヂヌ・ゴバルが突っ込む。
「グガッ!!」
ジヂヌ・ゴバルのパンチをまともに受け、吹っ飛ばされる。
「……」
エニミートカノンは起き上がるが、肩で息をしている。
「ノドノド・ゼヲガリモ・ギョルジャマ」
そう言ってジヂヌ・ゴバルはゆっくりと構える。
エニミートカノンは後ずさりながら思考を巡らす。
このままでは勝てない、何か方法は無いかと。
その時、建物の壁の間にある細い通路が目に映る。
「……!」
何か気付いたように、その通路の中に入る。
「ミザナヲ!」
ジヂヌ・ゴバルもその中に飛び込む。

ゼルバとシュタセ・シィバルは、ほぼ互角の戦いを繰り広げていた。
しかし、ゼルバの攻撃には覇気が感じられない。
むしろ打撃で防御しているに近い。
「マエ!マエ・ヴァガダリ!?」
シュタセ・シィバルは叫ぶ。
「……」
ゼルバは答えない。
「ビサンマヲシェ・シャジャモ・ゼースモ・レソモ。マモミ・マエ・ソデン・ガタル!?」
「シィザル」
シュタセ・シィバルの言葉を否定するゼルバ。
「スリシマ・ナグヂシュバ・ガマニシンギョツジャゲジャ……ジャデミソ、ジャデミソシャミヲン・ナタグゲヲヂバ・マリ!」
ゼルバは強く言い放った。
「……アヲメヲメ」
シュタセ・シィバルは呟く。
「ノゴサジェ・リヴァデシャダ……ソル・ゴドヌニガ・マリメ」
そう言ってゆっくりと羽を広げる。
「ニメ、ギムリ……リギャ、ゼルバ!!」
シュタセ・シィバルは物凄い速度でゼルバに飛び掛る。
「ヴァヅリマ。ゴゴジェ・ニムヴァゲミバ・リガマリ!」
ゼルバは前に跳び込みそれをかわす。
そして、壁を蹴り飛ぶ。
その右足は、黄色く発光し始める。
シュタセ・シィバルも旋回して、ゼルバに向かう。

「ハアアァァァァァッ!!」
ゼルバの回し蹴りがシュタセ・シィバルを捕える!

「ガアアァァァァァァァァッ!!」
エニミートカノンはジヂヌ・ゴバルを待ち構え、黒い刃で切り裂く!

シュタセ・シィバルは吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられる。
起き上がろうとした時、古代文字が浮かび上がり光を発する。
そこから黄金の炎が発生し、シュタセ・シィバルを包む。
「汝の魂に……幸いあれ」
その言葉と共に、シュタセ・シィバルは炎の中に消えた。
「……」
ゼルバはそれを見届けた後、エニミートカノンの方へと向かう。

ジヂヌ・ゴバルは、斜めに切り裂かれ地面に落ちる。
その部分から古代文字が浮かび上がる。
「サ……サジャジャッ!サジャジャァァァァァッ!!」
叫んだと同時に、ジヂヌ・ゴバルは爆発四散した。
エニミートカノンはその通路から出た時、昇太の姿に戻る。
「くっ……」
急に昇太はしゃがみ込む。
この戦いで受けたダメージは相当な物だった。
「大丈夫ですか?」
「!?」
突然の声に振り向く。
そこにいたのは、ゼルバだった。
「お前は……?一体……」
そう言った時、ゼルバの姿が人の姿へと変化する。
「あなたと同じ、石の力を持つ戦士……ですよ」
ゼルバから変わった青年は昇太を起こす。
「しかし……先程の姿は?」
「闇のカノン……って所だな」
昇太はその時の事を説明した。
「成る程……だからあのような姿に……」
青年は目を伏せる。
「今度は俺の質問だ。お前も奴等と同じなのか?」
「はい。でも僕は『人間』のつもり……ですよ」
苦笑しながら答える。
昇太は、青年の言葉に疑念を抱きながらも、問いを続けた。
「……お前等は何故、何の罪もない人達を殺すんだ?お前等の目的は何なんだ?」
「ヌヴァラグに目的はありません」
「なんだと!?」
思わず聞き返す昇太。
「……ヌヴァラグは、ただゼースを行うため。目的があるのはむしろ彼女達です」
青年の語調が下がる。
「彼女達?」
「その話をすると長くなりますけど……そうですね、カノンの生まれた理由から話しましょう」
青年は昇太を見る。
「……古代、僕らの種族は好戦的でヌヴァラグと呼ばれ恐れられ、各地を渡り殺戮を繰り返していました。そして、ビサンという種族に矛先を向けたのです。その中、ビサンはカノンを作り出した」
「つまりカノンはヌヴァラグに対抗するために作られたのか?」
「その通りです……しかしビサンの中にいた特殊な力を持つ者達がカノンを殺し始めた。その者達がヌヴァラグの天敵であるカノンを次々と殺していることを知り、ヌヴァラグも手を出さず協力関係が成り立った」
「じゃあ……お前が言ってた彼女達って……」
「……ヌヴァラグに手を貸した者達です」
「でも何故お前はヌヴァラグを裏切ったんだ?」
「ヌヴァラグや彼女達の行動に疑問を感じたからです」
「行動?」
昇太は聞き返した。
「彼女達の目的は……ビサン……今で言う人間を減らす事……それだけです」
「なっ!?」
昇太の表情から血の気が引いていく。
「そう……増えすぎたビサンを適度な数に減らす。その為に彼女たちはヌヴァラグに加担した」
「じゃあ……何だ?そいつらにとって俺達はただ増える虫だとでも言うのか……?」
「……」
青年は昇太から視線をそらす。
「ふざけんな!!」
昇太は思わず怒りを露にする。
「今まで何の罪もない人達を殺しておいて……それがただの減らしに過ぎないだと……人間は……そんな事の為にいるんじゃないんだぞ!!……それを……」
昇太は拳を強く握り締める。
「勿論です……僕もそう思いました。だから僕はビサンに協力し、石の力を使って残ったカノンと共にヌヴァラグを封印したんです」
「……それで……奴等は?」
「その後の事は解りません……恐らく息を潜めていたんでしょう。今まで」
「そして……封印は解かれて……」
「彼女達も行動を開始した。僕はそれを止める為に、ここに居るんだと思います」
「そして俺は……古代の力を受け継いだ」
青年は頷く。
「だけど……僕は出来る事なら誰にも死んで欲しくはない……例えそれが憎むべき敵だとしても」
青年はそう言って下を向く。
「確かに……そうだな」
昇太は呟く。
「俺だって出来れば戦いたくない。でも誰かがやらなきゃまた何人もの人々が死んでしまう……俺やあなたにはそれを止める力がある……だから戦うんじゃないのか?」
昇太の言葉を聞いて、ゼルバは顔を上げる。
「そうですね……」
「って、これほとんどカノンの受け売りだけどな」
昇太は頭を掻く。
「それは第3号の事ですか?」
「ああ、一応知り合いだ」
「そうですか。一度お会いしたいですね」
「そういえば……あなたの名前は?」
「僕はゼルバ……この姿では鹿塚直樹と名乗っています」
「鹿塚さん……か。俺は広本昇太だ」
そう言って右手を出す。
「共に戦ってくれ。そして少しでもカノンの負担を軽くしよう」
「はい。こちらこそよろしく。昇太さん」
ゼルバ・ 直樹は笑顔でその手を握り返した。
「でも必ず昇太さんを助けに来れる保証はありませんよ」
「それはこっちも同じだ」
仲間となった2人は、その場を去った。
互いの場所で戦う為に。

<喫茶店ホワイト 11:06PM>
「いらっしゃいませ!!」
いつものようにホワイトに来た昇太。
もうすっかりここの常連さんになっている。
「いつものかい?」
「はい、あとサンドウィッチも頼みます」
「はいな」
そう言ってマスターは厨房に行く。
「どうしたの?昨日、一昨日と来てないけど」
「俺にだって来れない時だってありますよ」
昇太は言葉を濁す。
「所で……相沢さんは?」
「まだ帰って来てないよ。連絡もないし……」
「そうですか……」
「祐さん……大丈夫だよね?」
心配そうに言う瑞佳。
「大丈夫ですよ。あの人はカノンなんですから」
「……うん」
「もしかして瑞佳さん……相沢さんの事……」
「えっ!?」
突然の言葉に顔を赤くする瑞佳。
「ち、違うよ!!そうゆうんじゃなくて……ただ心配なだけで……」
慌てている瑞佳を見て、昇太はやっぱりという顔をする。
「それに私には……人を好きになる資格なんて……ないんだよ……」
「えっ?」
昇太は瑞佳と最初に会った時の事を思い出した。
「それは……浩平って人と、関係あるんですか?」
瑞佳は黙ったまま頷く。
そして昇太はその時の話を聞いた。
昔、彼女が救う事の出来なかった幼なじみの事。
そして彼女の前から消えてしまった幼なじみの事を。
「あの時、浩平が助けを求めていたような気がしたんだよ……でも何も出来なくて……それで……いつの間にかいなくなっちゃって……」
話しながらその時の事を思い出しているのだろうか、瑞佳は何時しか泣きそうな顔になっていた。
それを見て、昇太はそっと瑞佳の肩に手を置く。
「瑞佳さん……これだけは覚えておいて下さい」
そう言って、瑞佳を見る。
「人が人を好きになるのは当たり前の事なんです。それに資格なんてありません。その人が好きならそれでいいんです。それを資格なんかで押さえていたら……きっと後悔します」
その時の昇太の表情は、怖いくらいに真剣だった。
「もし……その人を探しているなら俺も手伝います。そして、その人を救ってあげて下さい。その人も……瑞佳さんを待っているかもしれません。いや、待っている筈です」
「広本さん……」
瑞佳は大きく頷いた。
そして昇太も頷く。

食事を済ませ昇太は外へ出た。
その時の昇太は、悲しそうな目をしていた。
「瑞佳さんを救えるのは浩平って奴だけか……。俺じゃ……駄目なんだな……」
実は昇太は少なからず瑞佳に惹かれていた。
しかし、なんとなく無理だとゆう予感はしていた。
それが今日、確実となった。
(今……俺が瑞佳さんに出来る事は……)
そう思った時、視界が大きく揺らぐ。
(浩平を探して……瑞佳さんの心を救う!)
昇太は停めてあったオフロードバイクに乗り、走り出した。
新たな目的を見つけて……。

Episode.4「降臨」Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRiderSorun


次回予告
瑞佳を介抱したのが浩平だと知り、その足取りを追う。
瑞佳の心を救って欲しいと願って。
聖「顔が君によく似ていた」
栞「……そうですよね!」
祐一を襲った27号を迎え撃つ昇太。
だが彼の力では全く歯が立たなくなっていた。
秋子「あなたの力は……衰えてます」
昇太「俺は……もう駄目なのか?」
彼の嘆きを嘲笑うかのように新たな未確認生命体が現れた。
もはや昇太は未確認生命体を止められないのか!?
香里「……諦めたら駄目よ」
次回、仮面ライダーソルン「限界」
運命からは逃れられない……。



設定資料

ジヂヌ・ゴバル

キリギリスの姿をした未確認生命体。
30mのジャンプ力を持ち、素早い動きでエニミートカノンを翻弄した。
パワーは高くは無いが、脅威のスピードでそれを補っている。

シュタセ・シィバル

ツバメのような姿をした未確認生命体。
時速280kmの飛行速度で相手に突進する攻撃が得意。
その嘴は鋭く、岩をも砕く事が出来る。

鹿塚 直樹(かづか なおき)
年齢不詳(推定20代前半)
元々、古代でヌヴァラグの頭の3番目の息子として生まれた。
『ギムリ』と呼ばれ、カミキリムシに似た姿に変身する力を持つ。
しかし命を軽々しく奪うヌヴァラグの中で疑問を感じ始め、ビサンに協力する。
その時、霊石を体内に移植し、当時のカノンと共にヌヴァラグを、そして自らも封印した。
そして現代に覚醒し人々を襲うヌヴァラグを止める為、争いを留める為、人間として闘うことを誓う。
線の細い好青年で礼儀を重んじ真面目。
誰にでも敬語で優しく接するがヌヴァラグに対しては語調が変わる。
1〜2ヶ月で日本語を理解できるほどの社会適応力をもつが現代の常識に疎い一面もたまに見受けられる。
仮面ライダーゼルバに変身する。

仮面ライダーゼルバ

『ゼルバ』とはヌヴァラグ語で『超越』の意味。
ギムリとしての力と、霊石の力が均衡し発現する現時点で最も戦闘に適した姿。
その力は黒カノンをも凌駕し、第0号にも匹敵する物と思われる。
また、ゼルバは空を舞う『飛翔』と転生を促がす『浄化』の能力を持つ。
決め技(必殺技ではない)は、右脚に気を集中させて放つプライマリーキック。
ちなみに『ゼルバ』の名は、ビサンの巫女に与えられた。

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