仮面ライダーSMASH

第二話「恐怖! 夜道の危険な出会い!!」 

 

 

 

 

蜘蛛男との戦いのあった人気の無い採掘場から少し離れた森の中。

そんな常人では認知できないような夜の森の中を、祐輝はスタスタと進んでいく。

目的地がある訳ではないが、祐輝は確かに自分の行く先に何かあると確信していた。

暫らく歩いていくと目の前に壁の様に密集した草木に道を阻まれる。

普通の人なら別の道を探して迂回するのだろう。だが、祐輝はこの先に何かがある事を確信していた。

(…これは何だろう?)

それは草木の壁に対してではなく、その中にあるものに対しての疑問であった。

祐輝はゆっくりと草木の壁に右手を入れていく。

―ガサガサ、パキパキッパキ、ガサ―

そして、草木の壁の中に自分の肩まで入った時、不意に木とは違う鉄の塊に手が触れる。

祐輝はそれをしっかり掴み、もう片方の手も入れてソレを引き抜く。

「これは」

引き抜いたそれは小枝や葉っぱまみれになりなっているが、紛れも無くバイクであった。

何故こんな場所に置かれているのか一瞬分からなかったが、不意に一つの考えが頭に浮かぶ。

(これも僕の力の一部って事なのかな)

自分を謎の施設から逃がしてくれた人は、力の出し方が分かるようにしたと言っていた。

実際、このバイクを見つけたのは本当に直感の様なものだ。

ならこれは自分のものと考えても良いのかもしれない。

バイクに付いた枝や葉っぱを掃いながらそう結論付ける。

一通り枝等を取除くと、後部に鉄製の鞄が取り付けられている事に気付く。

「これは?」

怪訝な顔をしながら、祐輝はその鞄を手に取る。その瞬間性電気が起こったような感覚が起こった。

「!? なっ?」

突然の事に驚き手を引っ込め後ずさる。同時にカチッという音の後、勢い良く鞄が開く。

祐輝は警戒しながら近づいていって鞄の中を見る。

その鞄の中には黒い財布と着替え、カードや手帳など日常で生活するのに最低限必要なものが入っていた。

それらの上、鞄の中心には一枚の手紙が置かれていた。

祐輝はその手紙を手に取って読み始める。

それには次の様な事が書かれていた。

自分の本名は神銅祐輝であるということ。

免許証などは財布に入っているが、身元を示すものは全て偽りのもの。

貯金を下ろす時は近場ではなく遠く、そして銀行内などは危険だから止めた方が良い。

自分の体の事や力の使い方にバイクの名前と機能。

そして、自分達がいた組織は世界中に拠点を構えている為、絶対に自分から戦いを挑んではいけないという事が書かれていた。

 

この手紙を見て祐輝は自分を逃がした人物について考える。

あの人は何がしたかったんだろう?

自分に何かしてほしかったのだろうか?

なら何故奴等と戦うなという伝言を残したのだろう?

鞄の中の荷物は非常に有り難いけど本当に受け取ってしまって良いのか?

それにこの話を全て鵜呑みにして良いのだろうか?

 

その場で少しの間迷っていたが、考えても答えは出ない。

祐輝は手紙を鞄にしまい、蓋を閉め元の場所に取り付けて自分もバイクに跨り走り出した。

暗い、道の無い森の中。迷いと恐怖から逃れるように。

 

 

時と場所は変わってとある住宅街。

その一角にある、看板にアミーヤと書いてある一軒の喫茶店で談笑する声が聞こえてくる。

だがそれはお客による談笑ではなく、店主兼家族たちの談笑なのだが。

「今日もさっぱりお客さん来ないねー」

そう言ったのはカウンターの前の席に両膝を乗せてカウンターに両手を付きながら話す少女だった。

金の長髪を三つ編みに結んでいて、活発そうな印象を与える明い笑顔と頭からピョコンとはねた触覚のような二本の癖毛が印象的だ。

「馬っ鹿やろー姫里。今日もって言うな、今日もって」

金髪の触覚少女、姫里に対して頭にタオルを巻いた中年男性が気だるそうな、落ち込んだような声で叱る。

「でも事実じゃない」

「そういう事いうんじゃないよもー」

「まぁまぁ、お父さんが頑張ってるのはみんな知ってるから」

そう言いながら男性に近づくのは青色の長い髪を腰まで伸ばした大人しそうな少女だった。

どこと無くおっとりした印象があり、姫里と同じく頭から髪の毛が二本アンテナのように立っている。

「空〜。お前だけだな〜俺の事を分かってくれるのは」

「え〜? あたしだって分かってるもん。お父さんのヘソクリの場所とか、パチンコで大負けした事とか」

「馬っ鹿やろう、俺はパチンコなんて行ってないぞ」

父親と姫里が話していると空が店から出ようとする。

「あれ? 空ちゃん、どこか出かけるの?」

「うん、シャーペンの芯がなくなっちゃったから買ってくるね」

「おいおい、一人でか? 外はもう真っ暗だぞ」

「じゃあ、あたしと一緒に行こう空ちゃん」

「うん」

「こんな時間に女の子だけじゃ危ないだろ」

父親の心配ももっともだ。

最近では所々で神隠しや行方不明などの事件が相次ぎ、頻繁に殺傷事件が起こっていると世間で話題になっている。

「そんなに心配なら、お父さんも一緒に来る?」

「よし、ならついでに温泉にでも行くか?」

「本当!?」

父親の提案に姫里が目を輝かせながら聞き返す。

「まあな、二人だけってのも心配だし、と言ってもただコンビニまでついて行くのもばからしいからな」

「わーい! 泳ごー!!」

「お姉ちゃん、前みたいに本気で泳がないでね?」

「大丈夫だよ空ちゃん、あたしだってもう子供じゃないだから」

手を振りながら話す姫里に二人は疑惑の眼差しを向ける。

彼女が得てして子供っぽい性格で、その明るさがよくよく周囲を巻き込む事が多い事を分かっているからだ。

「な、なに? 二人とも、そのザ・■―ルドが発動した様な間は?」

「う、ううん。何でもないよお姉ちゃん」

「じゃあ店の戸締まりして行くか」

「「うん!」」

その後の三人の行動は素早く、半分店終い状態だったのもあって戸締まりにはあまり時間を掛けずに出発する事が出来た。

 

 

ヴオオオン

その頃、祐輝は当てもなく住宅街でバイクを走らせていた。

今は兎に角ジッとしているのは嫌だった。

これからの事を考えていても頭の中で堂々巡りを繰り返すだけに終わってしまう。

だから今は何も考えずに、肌に触れる心地よい風を感じる為にただひたすら走る。

そんな中、突然バイクの前に一つの人影が飛び出してきた。

「うわっ!?」

祐輝は危険を察知すると直ぐに回避行動に移る。

キキィー!!

幸いそれ程スピードが付いていた訳でもなかったのでバイクはすぐに止まった。

突然の事で驚いたが、そのお陰で半分霧がかった思考が覚醒する。

祐輝の目の前には、一人の男性が倒れていた。

どうやら飛び出したのではなく倒れ込んだようだが、危険な事に変わりはない。

「大丈夫ですか!?」

バイクから降りて倒れている男性に近寄った。

その時、祐輝の鼻頭がその男性から違和感を感じ取った。

この男性からは異臭が漂っている。

 

…そう、肉が腐ったような異臭が!!

 

「ガアアアアアアアアア!!!」

「なっ!?」

バッ!!

倒れていた男と祐輝が動いたのはほぼ同時だった。

男は口を目一杯広げて噛みつこうとし、祐輝は後ろに飛んでそれを交わす。

異臭に気づいたお陰で逃れる事が出来たが、一瞬遅かったら男の牙の餌食になっていただろう。

「なんだ、こいつは?」

距離を取った祐輝は男の全体を注意深く観察する。

男は口を半開きにしてヨダレを垂らし、腕をダラリと下にさげたままこちらを見ているが半分白目になっていて全く生気が感じられない。

いや、目だけでなく顔や体が痩せこけているその様子はゾンビに近いものがある。

男は生気を感じさせないまま祐輝に襲いかかっていく!!

祐輝は異質な雰囲気を醸し出す男に戸惑いを感じながらも迎え撃つ為に拳を握る。

「はっ!」

「グエ!!」

祐輝の拳が男の腹部を捉え、男は苦悶の声を出して前のめりに崩れ落ちる。

それを腕で受け止めてゆっくり地面に寝かせようとした時、ふと男性の首筋に何かの歯形が目に入った。

「これは? …!?」

祐輝が男の首筋を触ろうとすると、突然男の体がドロドロに溶け始めた。

祐輝が何をするでもなく、男はあっという間に服だけを残して完全に溶けて無くなってしまった。

「これは…いったい!?」

目の前の不可解な現象に困惑する祐輝。

そんな彼の様子を笑うように、蝙蝠が夜空を飛び回っていた。

『キキキ…キキ…!!』

 

 

 

人通りの無い路地裏。

そこに幾つかの人影が集まっていた。

それらは円を作るように集まり、その中央では一つの影が屈んでいる。

その影は、自分の腕に先程まで人であったものを抱え、その首筋に噛み付いている。

少しすると影はソレから離れ、支えの無くなったソレは地面に転がった。

影はマントを翻す様に腕を振り、ソレに背を向けて歩き出す。

円を作っていた影の進む側の人影は道を空け、後ろ側にいた人影達はゆっくりと後に付いていく。

そんな中、首筋を噛み付かれ、地面に横たわっていた人影がゆっくりと起きあがって他の人影と同じように影の後に付いていく。

その集団の上空を、人影の数だけ蝙蝠が円を描きながら飛び回っていた。

『キキキキ…キィ…キィ! キィ!!』

 

 

 

 

「ふぃ〜、気持ちよかった〜」

「本当だね〜」

「年寄り臭い声だしてるな〜姫里」

「いーじゃない、そんな事気にしてるとお父さんの残り少ない毛が一気に死滅しちゃうよ?」

「余計なお世話だ!! それにまだ髪の毛には困っていない!」

二人のやり取りに笑顔を見せる空。

温泉を出てから人通りの無い道を三人で談笑しながら歩く。

そんな彼らの前方に道を塞ぐ様に横に広がった集団がふらふらと歩いて来ていた。

「なんだなんだ? あんなに広がってちゃ通れないじゃないか」

「本当だ。人の迷惑考えてほしいわ。まったく」

「でも、あの人たち何だか様子が変じゃない?」

集団に気づき文句を言う父親と姉に対し、空はその集団の妙な雰囲気を感じ取っていた。

普通なら集団で行動していれば、一人二人は談笑している者がいても良い筈だ。

しかし、この集団は全く話をせずに、ただふらふらと歩いているだけで目もどこか虚ろだった。

「団体さんで夢遊病にでも罹っちゃったのかな?」

「んな訳ないだろ」

こんな場面でも惚けた事を言う実の娘に呆れながらも、娘二人の前に出て脚を止める。

父親が前に出て足を止めたので姫里と空もそれに倣う。

三人が足を止めると、集団は歩きながらその虚ろな目を全員がゆっくりと三人に向ける。

「ねえ、空ちゃんにお父さん。何だかあたし嫌な予感がするんだけど?」

「さすがマイサン、俺も嫌な予感がしてる所だ」

(サンは男の子なんだけど…)

理由は分からないが、あの集団は自分達を狙っている。

全員が視線を自分達から離さずに歩いてくる事からそれは確実だろう。

一旦引き返そうかと考えながら一歩後ずさる。

「お、お父さん、お姉ちゃん…後ろ!」

「なに!?」

「ウソ?」

空の声に振り返ってみると、何時の間にか後ろからも前方の集団と同じような虚ろな集団が道を塞ぐように近づいてきていた。

その先頭には蝙蝠の姿を擬人化したような化け物の姿があった。

「あ、あれ…なに?」

空が恐怖で震えながら自分の近くにいる二人に聞く。

その様子とは反対に父親は呆れたような表情になって頭を掻く。

「なんだよ、テレビの撮影か何かか? だったら注意書きとかしてくれよな」

「テレビ?」

父親の考えももっともだろう。異形の怪人なんてテレビのように現実にいる訳が無い。

父親はこの集団もかなり経験を積んだ演技の賜物だろうと考え、紛れ込んだ事に謝罪しようと異形の怪人、蝙蝠男に近寄っていく。

「いやー撮影中ですか? すみません紛れ込んじゃって、でも撮影ならもうちょっと人が入らない様にお知らせしてくれても―」

だが、姫里と空はこの集団の普通とは違う異質さを感じ取っていた。

「お父さん!! ダメ!!」

「離れて!!」

「ザワルナ!!」

ブゥンッ!!

二人の声と蝙蝠男の声が同時に響き、父親は怪人の振るった腕に吹き飛ばされる。

ドサッ!!

「がっ!?」

「お父さん!?」

「大丈夫!?」

自分より後ろの方に吹き飛ばされた父親に駆け寄って声をかける。

「ぐぁっ!! 腰!! 腰打った!!」

普段なら笑い飛ばせる内容だったが、痛みに歪んだ顔と声が悪ふざけではない事を物語っている。

「ボウ、ダジュウバヌゲナガジダガ」

蝙蝠男は珍しいものを見たように話す。

自分の一撃を受ければ大抵の人間はただ呻くだけだったが、この男はまだ少し余裕がありそうだ。

その様子をもう少し楽しみたいが、上から仕事は迅速に終わらせる様に言われている。

ついでに言えば出来る限り五体満足なまま連れて来いとも言われているから、手荒な事は出来ない。

蝙蝠男は釈然としないものを感じながらも、仕事を完遂させる為の行動に移る。

実際にはこの集団の半分近くはその目的から外れてしまっているのだが蝙蝠男は気にしていない。

「−゛−゛−゛−゛!!」

「ア゛…ア゛ア゛ア゛…ア゛…」

歯を噛み締め口を広げて普通の人間の耳には全く聞こえない超音波を発生させる。

そして、蝙蝠男の超音波によって虚ろな集団が動き出す。

ザッザッザッザッザッ…

「姫里…空……逃げろ」

「そんな、お父さん」

「何言ってるのよ、逃げる場所なんてないし、こんな状態のお父さんを見捨てるほど親不孝じゃないわよ」

話しながら親子は三人身を寄せ合って体の震えを止めようとした。

だが、身を隠しているならまだしもこんな状態では何の意味も持たなかった。

「お…お姉ちゃん…」

「大丈夫よ空ちゃん、こうゆう乙女がピンチな時はヒーローが助けに来てくれるものなんだよ?」

「ふぇ?」

突拍子も無い姉の言葉に呆ける空。姫里も自分自身ありもしない馬鹿な事を言っていると思う。

前後とも逃げ道が塞がれ、父親も動けないから逃げ切ることは無理。

けれど、ほんの少しでも妹の不安を取除いてあげたいという思いから出た話なのだろう。

何の解決にもならない話、それでも姫里は家族を守ろうと必死に頭を働かせる。

(あたしが秀才だったらババーン!! って解決できたのかなぁ?)

いくら考えても良い案が浮かばず、時折どうでも良い事も考えてしまう。

そして、何も考え付かないまま異形の集団が自分達の周囲に集まってくる。

「サッザトカエッテ、チョウセイステモラウカ」

蝙蝠男はそう言って後ろに振り返った時。

ヴォオオオオオオオン!!

一台のバイクが現れ、蝙蝠男の数メートル前で止まる。

「何をやっているんだ?」

ヘルメットを外しバイクに乗った男、祐輝が蝙蝠男に尋ねる。

彼からは集団に隠れて姫里達の姿が見えないので、今現在何が起きているのか分からない状態だった。

それは姫里達も同じだったが、第三者が現れた事に僅かな希望が出来た。

「誰かそこにいるのか!?」

「お願い助けて!!」

その声に祐輝は蝙蝠男が何の関係も無い一般人に危害を加えている最中だと分かった。

「あなた達はまたこんな事をして…!?」

「…マタ?」

(…こんな事?)

蝙蝠男は男の「また」という言葉に反応し、祐輝は集団の奥から聞こえた声に対して反射的に答えた内容に疑問が浮かぶ。

蝙蝠男は祐輝が自分達に関わった者、もしくは活動中の目撃者と判断し、なら、ついでにコイツも捕らえて行こうと考えた。

「−゛−゛−−゛―!!」

超音波を出しながら祐輝に向けて腕を降り出す。

指示に従い、蝙蝠男側の集団が祐輝の周りを素早く囲んでいく。

そこでようやく姫里達から祐輝の姿が見えるようになった。

「まだ子供じゃないか」

父親がそう言って落胆する。姫里と空も同じ気持ちだ。

助けが来たと淡い希望を持ったが、姫里たちとそう変わらない年の少年一人で囲まれてはどうしようもないだろう。

そんな彼女達の事にも気付かず、祐輝は落ち着いた様子でバイクから降りて足を開き両手を前に突き出す。

そして、両腕を真っ直ぐ伸ばしながら左手を右上、右手を左下方の位置に着き出してゆっくりと時計回りに弧を描く。

そして、左腕が左上、右腕が右下方にくると左手を握り腰に構えると同時に右腕を素早く左上に真っ直ぐ伸ばす!!

「変身!!」

目映い光が祐輝を包み込み、光が収まった時そこには青い姿に銀色のベルトをつけた戦士の姿があった。

「えぇ!?」

「なっ!?」

「ニィ!?」

祐輝の変化に虚ろな集団以外は驚きの声を上げる。

「バ…ン゛ン゛…ナンダ、オマエハ?」

『コード:SMASH・BEG−…』

「仮面ライダー!!」

スマッシュの言葉を遮って、彼の姿を見た姫里達が何かと騒ぎ始める。

「うおー! 本物だ!! モノホンの生ライダーだ!!」

「ね!? 言ったでしょ!? こうゆう時はヒーローが来てくれるって!!」

緊張の糸が切れたのか、錯乱しているのか良く分からないが姫里と父親のはしゃぎ様に空は少し引いている。

「カメンライダー? ブザケタコトヲ」

「いや、そう言われても…」

騒いでいる姫里達と蝙蝠男の言葉に少し戸惑うスマッシュ。

スマッシュにしてみれば、自分自身の事が分からないのに質問された事も、勝手に仮面ライダーにされた事も答えようがない。

今回はつい奇怪な現象が気になって来てしまったが、戦うかどうかはまだ決めてはいなかった。

「マァイイ。ヒマツブシニアソベ!! ――!!」

蝙蝠男は超音波で集団を操り、スマッシュに襲いかからせる。

それに対して身構えるスマッシュに蝙蝠男が嘲笑うように話しかける。

「コイツラハタダノニンゲンダゾ? カイゾウタイノコウゲキヲウケレバソクシスル、ゼイジャクナナ、サァ、ドウスル?」

本当ならこのまま基地に連れ帰らなければならないのだが、相手の力量と性格を知るには何の関係も無い市民を使うのが一番だろう。

その考えは、別にここで操っている人間がどうなろうと構わないというものでもある。

「……」

スマッシュは迷った。

彼は別に正義の味方を気取るつもりはないが、無関係な人を闇雲に傷つけるような冷酷さも持ってはいなかった。

だが、迷っている間にも集団は一斉にスマッシュに向かってくる。

「くっ!!」

迫りくる集団を飛び越えてやり過ごしスマッシュは姫里達の側に着地する。

「きゃっ!?」

突然自分達の近くに着地されて驚く空の声にスマッシュはやっと姫里達の事に気付き、姫里達を守るように集団に向き直る。

その様子を見て蝙蝠男は愉快そうに顔を歪めて笑みを作る。

「ハハハ! サ、ドウスル? セイギノミカタ? ―――!」

蝙蝠男は虚ろな集団を自分とスマッシュの間に壁を作るように密集させる。

その様子を見てスマッシュは自分がどの様に行動すれば良いのか考える。

そして、蝙蝠男の後方に自分のバイクが止めてある事を思い出す。

「ランドスマッシャー!!」

シュイイイイイイイイン!!!

「ヌ!?」

「ん?」

「なに? この音?」

どこからか聞こえ始めた何かの機械のシャーシが回るような音に全員の意識が周囲に移る。

そして次の瞬間、激しい衝撃が蝙蝠男をはじき飛ばした!!

ドガァアン!!

「グエエエエエエエ!!?」

何が起こったのか分からないまま吹き飛ぶ蝙蝠男。

姫里達も蝙蝠男が何故吹き飛んでいるのか認識しかねている所だ。

だが、その中でスマッシュだけは集団を飛び越え、蝙蝠男に飛び掛かっていった。

「はっ!!」

ドガァ!!

「グブェ!!」

スマッシュのキックが蝙蝠男の顔面を捉える!!

弾き飛ばされた勢いも追加された蹴りの威力に蝙蝠男の牙が何本か砕け飛んだ。

そして、蝙蝠男は元の位置より数メートル後方の地面に叩き付けられ、スマッシュは自分の愛機の隣に着地する。

「あれ? あのバイク」

空が自分の頭によぎった疑問を口にする。

今、スマッシュの隣にあるバイクは先程、スマッシュに変身する前に祐輝が乗っていたものであんな場所にはなかった。

「もしかして」

蝙蝠男が自分の前に集団の壁を作った時、予め止めてあったバイクからは障害が無くなった。

これだけなら別にどうしようもなかっただろうが、スマッシュの愛機「ランドスマッシャー」はスマッシュからの特殊な波形を関知して単体でも行動する事が可能なのだ。

ちなみに、ランドスマッシャーは隠密性を考慮して開発された為、スマッシュからの波形を関知した時に機体色を変化させたり、エンジン音を最小に押さえての走行も可能である。

その為、蝙蝠男はバイクの存在に気付くのが遅れて弾き飛ばされたのだ。

ガキン!!

空かさずスマッシュはベルトのレバーを叩き付ける様に下げて必殺の体勢を整える。

『チャージ』

ピュィィィィイイイイイイイーーーー!!!

ベルトから白いラインを通って白い輝きが右足に到達し、力強い赤き光を放つ!

「ギッグ…ィ

蝙蝠男は超音波を出して集団を操ろうとしたが、顔面のダメージが大きく、牙も砕かれた為に超音波を発する事ができなくなっていた。

スマッシュはよろめいている蝙蝠男に向かって一気に駆け出し、勢いをつけて跳躍してキックを放つ!!

「ツァアアアアアアアアアーーーー!!!」

ドガァアアアアアアアアン!!!

「ギァアアアアアアアア!!」

蝙蝠男は為す術無くスマッシュの赤い必殺の蹴りを喰らい、再び大きく吹き飛んで地面に叩き付けられる。

同時に、周りの虚ろな集団も次々に倒れていく。

地面に着地したスマッシュは蝙蝠男を油断無く見据える。

「ウ…グググ……ゥ! ィヤダ…イヤダ!! マダ……まだ!!!!」

蝙蝠男はヨロヨロと起きあがるが、その胸は赤々とした光が輝き膨張して今にも破裂しそうだ。

−ピピー−

その時周囲には聞こえない、蝙蝠男の脳裏に警告のような音と声が鳴り響く。

−セントウフノウ−

「あ…アアァアアァアアアーーーー!!!」

ドグァアアアアアーーーーーーン!!!!

蝙蝠男は痛烈な叫び声を上げながら仰け反り倒れて爆発した。

『コード:SMASH・COMPLET』

蝙蝠男の最後を見届けると、スマッシュは祐輝の姿に戻って一息つく。

「あ、あの…」

祐輝がその声に振り返るとと、後ろから空と姫里が近づいてきていた。

(さて…どうしよう?)

祐輝は自分の体の事は一般市民に知られては不味い事であるとも考えている。

迂闊に動いて多くの人に目撃されれば、蜘蛛男や蝙蝠男のような奴らに狙われる可能性だってある。

この場合直ぐに姿を眩ました方が得策なのかもしれない。だが、彼は自分自身の事を知らない。

だから、祐輝は二、三言葉を交わしたら直ぐに立ち去る事に決めた。

「怪我はない?」

「あ、はい。私は大丈夫です」

「あたしも全然平気」

「そう、良かった」

出来る限り警戒されないように優しく語りかけ、姫里と空もその様子に少し安堵する。

「危ない所を助けてくれてありがとう」

「あの、私からもありがとうございます。本当に助かりました」

そう言って二人ともペコリと頭を下げる。

全く同時に乱れる事無く揃って行う事に少し面白さを感じる。

「あ、それと…ちょっと聞きたい事があるんだけど…良い?」

お辞儀した後、姫里が少し萎縮しながら上目遣いで祐輝に訪ねる。

その言葉に祐輝と空は驚いた。

両方とも一体何を聞くつもりなのだろうと姫里を見る。

祐輝はあまり長話はしたくなかったが、聞かれたからには答えないと行けないのだろう。

それに自分が知ってる事も本の僅かだから大して時間も取られないか、と結論づける。

「…良いよ」

「じゃぁ…名前教えて!!」

「「……え?」」

空と祐輝の声が重なった。

「えっと…駄目かなぁ?」

「いや…駄目じゃないけど…」

どうして名前から聞くのだろう? 普通は先程の姿や怪人に関する事を訪ねるものではないだろうか?

この少女が変なのか、それとも自分の知識が可笑しいのか祐輝は少し混乱した。

「じゃあ教えて!」

空も姉の質問に呆れと驚きの混じった顔をしているが、等の本人は全く気にしてはいなかった。

「一応………神銅祐輝」

「一応って何?」

「僕は記憶が無いんだ」

祐輝はここに着くまでの事を簡単に話した。

覚えている事が少ないからかなり薄い内容になってしまったのだが、話を聞いた姫里と空は非常に辛そうな表情になる。

「自分の事が分からないって…怖くないんですか?」

「うん…少しね」

「住む所はあるの?」

「…無い…かな」

そう言った時、遠巻きに様子を見ていた麻宮父の目がキュピーンと輝いた。

「なら家で住み込みで働いてみないか?」

「…え?」

その時の祐輝の返事は疑問と返事の混ざったようなものだった。

「でも…」

「ん、嫌か?」

「いゃ…その」

言いよどみながら、祐輝はちらりと姫里と空を見る。

「あたしは構わないよ」

「私も」

祐輝の視線に気付いた二人は笑顔で答える。

「本当に良いんですか?」

「別に気にするこた〜ねーよ」

「そうそう! 気にしなくても大丈夫よ。何なら一緒の布団に入っても良いよ?」

「「ぇえ!?」」

姉の発言に驚きの声を上げる空。

祐輝も呆れに似たような驚きの声をあげて、少し萎縮しながら後ずさっていく。

「も〜。冗談よ! 二人ともそんな露骨に引かないでよぅ!!」

只の冗談なのだがこの二人にはウケが悪かったようだ。

二人の反応に少々焦って弁解する姫里。その様子に父親も呆れている。

その様子を祐輝は微笑ましく思えた。

この人達を見ていると何処か懐かしい、そんな気がする。

「で…お前さんはどうなんだ? 家で働いてみる気は?」

「…出来る事があるか分らないし…迷惑ばかり掛けてしまうかもしれない…」

「そんなもん構やしない」

「そうそう、分からない事はこの姫里お姉さんに聞いて良いからね?」

「少しずつ、ゆっくり思い出していけば良いと思います」

それぞれが、思い思いの事を伝える。

「ありがとう…ございます」

そう言うと祐輝は深々と頭を下げてお辞儀する。

「おう、俺は麻宮武志…おやっさんと呼んでくれ」

「あたしは麻宮姫里。これからよろしくね、」

「私は妹の麻宮空です。よろしくお願いします」

姫里達も自己紹介をして、改めて祐輝を迎える。

この暖かい家族達との出会いにより、祐輝は護る為の戦いを強いられる事になる。

その事に、祐輝は今はまだ気付かない。

 

 

 

この時に新たなる仮面ライダーの物語が、ゆっくりとだが動き始めたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

<つづく>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

後書き?

姫里「コンニチワ〜!! 本日からこのssの司会を務めるキィちゃんこと麻宮姫里でーす☆!」

姫里「で、隣にいるのは私の最愛の妹。空ちゃんこと麻〜宮〜空―!! ドンドンパフパフ〜!!」

空「始めまして、お姉ちゃんと一緒に司会を任されました麻宮空です。」

姫里「今回は初の顔出しだからあんまり長話は出来ないけど、皆楽しんでってね〜!」

空「ところでお姉ちゃん」

姫里「なぁに? 空ちゃん」

空「どうして私達が司会なの?」

姫里「空ちゃん、それはね…作者さんの悪あがきなの」

空「え?」

姫里「一向に文章能力が上がらないから、キャラで読む人を掴み取ろうって」

空「それって良いのかな?」

姫里「全国の姫里、空ちゃんファンにごめんなさいって土下座してるって言ってたけど?」

作者:心の中でだけどね

姫里「うぅ…どうせ同じ新米ならうめたろさんの方が良かった(泣)」

作者:まったくだ!!

空(汗;&苦笑い)

姫里「そんなんでこれから大丈夫なの?」

作者:う〜ん…努力はしてるつもりなんだけど…駄目だね

姫里「言い切っちゃったょこの人」

空「このssはどんなストーリーになる予定なんですか?」

作者:取り敢えず一話につき必ず一回は戦闘を入れる。他のもそうだけど…

姫里「本当に戦闘モノ好きなんだねー」

空「私は争いとか悲しい話は苦手です」

姫里「空ちゃんそうゆうの見てると涙ぐんじゃうもんね?」

空「お姉ちゃん!」

作者:ふ〜…まぁ、あれですよ。

姫里「なに?」

空「どうかしたんですか?」

作者:ブッチャけ自分、何か残したかったんよ

姫里・空「?」

作者:特に不自由なく過ごして来たけど、特に何かやりたい事もなく過ごして来て…

これ(今公開してもらってるss)以外にもネタは湧き出るほど妄想に耽ってる毎日でさ。

折角思いついたネタも時間が経って忘れ去って、ただその日が過ぎていくだけの毎日。

そんな中、学校のパソコン使ってライカノ呼んで、またネタが出来た。

姫里「はーい。ちょっと質問。今までやらなかったのに、どうしてDO−DOさんの所に投稿しようって思ったの?」

作者:それはね、随時受付中って書いてあったから

姫里「うわぁ…」

作者:その時は今より凄いぞ? データの圧縮の仕方も知らなかったし、メール送るのも初体験だった!!

空「どうして、今その事を?」

作者:いや、これを見て他の人がこんな奴がss書いてるなら自分も出せるんじゃねーの?

   って思ってくれれば良いなって…

姫里「本音は?」

作者:やっぱネタは有るけど出すのは…て言う人にも投稿してもらいたい。

   自分と同レベルの人出てこないかなぁ〜…てのもあるけど

姫里「悪どい…」

姫里(と言うより二番目のが本音っぽい)

空「でも、自分で何かを残したいっていうのは良い事だと思います」

作者:まぁ、今は自分が楽しんでて打っ飛んでるような状態だけど、何時か管理人さんの様に書ける様に努力します。

姫里「まずは後書きが異様に長いのを直そうね?」

作者:そうね (汗)

空「それでは今日はこの辺りでお別れですね」

姫里「まだ×200未熟なssだけどこれからもよろしくね!!」

空「それでは次回のお話で会いしましょう」

姫里「それじゃ、まったね〜☆」

 

ここまで読んでくれた皆様。

そして、掲載してくれる管理人様。

本当に有り難うございます。

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