幾人もの少年、少女達が過酷な運命の分岐点に晒された時。
そこから邪悪を粉砕する新たな戦士が生まれ出でる。
それぞれの場所。
それぞれの時間。
大切なものを守る為。
己の意思を貫く為。
それぞれの信念を持って彼等は戦う。
そして・・・
新たな邪悪が目覚める時。
それを粉砕する新たな戦士が今、覚醒する。
仮面ライダーSMASH
第一話「新たなる衝撃! その名はSMASH!!」
タタタタタタタタターーーー・・・
「ハアッ! ハァッ! ハッ!!」
とある夜の採掘場・・・
この全く人気や明かりの無い採掘場を、一人の少年が走っていた。
少年は、何かから逃げる様に必死に足を前に突き出し走り続ける。
(ここは・・・どこなんだ!?)
少年は必死に走りながら自分の置かれている状況を把握しようとしていた。
だが、自分の身に何が起こったのか知ろうとしても、何も分からない。
自分が何から逃げているのか、自分は何故逃げているのか、そして自分は何者なのか。
少年は自分の名前さえ分からないのだ。
「僕は一体・・・誰なんだ!?」
数十分前・・・
気がついた時、目の前は闇が広がっていた。
周りも見渡せない闇の中、自分の意識が戻ったと思ったのは、動かそうにも動けない四肢を何かに拘束された様な感覚、そして僅かに動く指先が物に触れる感触を感じ取ったからだ。
背中全体の感触から、自分が寝かされている事が分かった。
その時から既に自分の事が全く分からない。
だが、妙に落ち着いた自分がいると心の中で思っていた。
不意に、自分の隣まで何かが近づいてくるのを感じ取った。
全く光のない空間だが、少年とその何かは何となくお互いの姿形だけは把握できた。
少年はその影に不信感を抱きながらも、何が出来る状況でもないので黙っている。
対して影は少年の隣に立つと、少年が横になっている、おそらく台座であろう部分をいじり始めた。
すると、バッ! という音と共に少年は何かが外れるのを感じ取り、四肢を動かし身体を起き上がらせる。
「祐輝・・・」
起き上がった少年に語りかける影、その声から自分の名前と相手の年が自分の倍以上はある男性である事が分かった。
だが、少年・・・祐輝はその声に対して何故か嫌悪感を感じた。
「あなたは?」
「時間がない・・・祐輝、直ぐにここから逃げるんだ」
いぶかしみながら尋ねる祐輝に対し、影は自分の用件だけ伝えようとする。
そして、祐輝の手を引いてさっさと歩き出そうとする。
「ちょ!? ちょっと待ってください!!」
「何も知らないまま殺されたくないだろう!!」
戸惑う祐輝に対し影は有無を言わさぬ勢いで祐輝をどこかへ連れて行こうとする。
不に落ちないものを感じながらも祐輝はその相手に従うことにした。
「一つだけ聞いても良いですか?」
「どうした?」
「僕は・・・一体」
一つだけと言ったが、本当は多くの事を尋ねたかったのだが、相手の様子からそれは認められそうもないので断念した。
しかし、聞きたい事が多すぎてどんな事を聞いて良いのか分からず口ごもる。
「すまない」
「え?」
「・・・詳しい事は話す時間がない。だから自分の身を守る為の力を教える」
そう言うと立ち止まり、何か機会を操作するような音が聞こえる。
そして、目の前の空間が開きほんの少しだけ光が灯った長い通路が現れ急いで中に入る。
その僅かな明かりから、自分はラフなTシャツにジーンズ、男性は足元まである白衣を着た中年の科学者である事が分かった。
「もし、自分の身に危険が迫ったら、自ずと力の出し方が分かる様に調整しておいた」
「調整?」
「私を許してくれとは言わない・・・ただ・・・せめて祐輝だけには生きていて欲しかったんだ」
「・・・・・・」
祐輝はこの人が言っている意味がよく分からなかった。
けれど、何故か胸の奥が不快感が沸きあがってくるような感じがする。
話しながら通路を歩いていると不意に男性が足を止めて表情を強張らせる。
「祐輝・・・ここを真っ直ぐ進めばこの施設から出られる・・・ここからは一人で行ってくれ」
「えっ?――」
バキバキバキバキバキバキィ!!
どういう事か聞く前に二人の目の前の天井が抜け落ち、砕かれたコンクリートの煙が舞う。
そして砕かれた天井から、肉食植物を模した様な人間の形の化け物が二人の前に現れた。
「あぁ・・・あ!?」
目の前に現れたソレを見た時、祐輝は身体全体が言い様もない恐怖に支配される。
自分はこの化け物を知っている。いや違う、自分はもっと深い関わりがあった筈。
どういう事なのか知りたい、けれど心と身体の全が知ることを拒否している。
異なる思考と完全な恐怖で金縛りにあったかのように身体が動かない。
「これはこれは中林博士・・・廃棄物を捨てずにどちらに行かれるおつもりですか?」
植物人間・・・怪人は口元を醜く歪め笑みを作る。
「・・・こういう事だ!!」
言うや否や、中林と呼ばれた中年男性は瞬時にヤギを模った様な怪人に姿を変えて、瞬時に植物怪人に殴りかかる!
バグォオン!!!
「ガボォ゛!?」
「あっ!!?」
「祐輝!! 早く逃げるんだ!!」
一発のパンチで植物怪人を吹き飛ばし壁に叩き込んだヤギ怪人は、様々な感情に戸惑って動けない祐輝に向かって叫ぶ。
「あ・・・」
「頼む!!」
その言葉にゆっくりと祐輝は一歩を踏み出し、まっすぐ続く通路を走り抜けていく。
(すまない・・・祐輝)
走り去っていく祐輝の後姿を見ながらヤギ怪人は心の中で謝罪した。
(こんな事をしても、お前には何の謝罪にもならないかもしれない・・・むしろ)
「ぐ・・・ヌゥ」
壁に突っ込まれた植物怪人はうめき声を出しながら壁から抜け出ようとする。
「裏切るつもりか、中林ぃ!!」
「・・・自分の過ちに気付いただけだ!」
言い終わると二体の怪人は相手を砕こうと同時に拳を繰り出して行く!!
「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
人外の力を持つ異形の怪人達。
自分は彼等と何の関わりがあるのだろう。
様々な疑問に幾度も自問自答しながら休む事無く走り続ける。
その時、突然自分が逃げ出した、施設のある方角から一瞬目映い光が走る。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオーーーーン!!!
「なんだ!!?」
巨大な爆発音に驚き、振り返ると大きなキノコ雲が夜の大空に舞い上がっていた。
自分の身の上の事や突然の事、思いがけない事が続き、暫く呆然とその場に立ち尽くす祐輝。
そんな時、彼が走り、今しがた爆発した施設の方から黒い人影が次々に祐輝の周りに群がってきた。
ハッと気付いた時には自分の直ぐ近くまで黒ずくめの集団が迫ってきていた。
「あなた達は!?」
祐輝の問いにも答えず、黒ずくめの強化服に身を包んだ集団は彼を取り囲む。
そして、周りを囲む黒ずくめの集団を押し退けるように、一人の紳士服を着た男が前に出る。
「コード・H−MS。ナンバー339」
「!!」
紳士服の男が祐輝に向かって何かの番号を伝える。
ソレを聞いたとき、祐輝は全身に鳥肌が立った。
「ここで我等に処分されるか。それとも本部に戻って再利用されるかどちらか選べ」
(処分・・・再利用)
男の言葉一つ一つが妙に気に掛かる。
身体の奥底からの恐怖、だが何かがこいつ等を許せないと言っている。
(こいつ等だけには従いたくない!!)
祐輝の顔つきが変わったのを見て、紳士服の男は抵抗の意思在りと判断した。
「・・・やれ」
「キー!!」
男の指示に黒ずくめの集団は号令と敬礼で答え、祐輝に躍り掛かっていく。
祐輝はその場で思い切り跳躍し、襲い掛かる黒ずくめ達を飛び越えた。
「なに!?」
「キキィ!」
普通の人間を上回る跳躍力を見て紳士と黒ずくめ達は驚きの声を上げる。
―もし、自分の身に危険が迫ったら、自ずと力の出し方が分かる様に調整しておいた―
途中、聞かされた言葉を思い出しながら、囲いから抜け出した祐輝は着地して振り向き、黒ずくめ達と対峙する。
「変身せずにその運動性・・・回路に異常が起きているのか?」
「へん・・・身?」
その単語を聞いた時、頭の中で人影が何かのポーズを取っている映像が映し出された。
すると、映像と共に小さいが何かの声も聞こえ始める。
(スイッチだ)
「?」
頭の中の映像と響く声に戸惑う祐輝。
黒ずくめ達を見ていても、自分を警戒していてこの声は聞こえてないようだ。
(早くして!)
祐輝は謎の声に急かされるまま、頭に浮かんだ映像の通りに足を開いて両腕を前に突き出す。
両腕は指先をまっすぐ伸ばしながら左手が右上、右手が左下方の位置にあり、そこからゆっくりと時計回りに孤を描く。
「フウゥゥ・・・」
そして左腕が左上、右腕が右下方にくると左腕を握り腰へ構えて、右腕を素早く左上に真っ直ぐ伸ばす!!
「変・身!!」
それは相手側から見てSの字を描いた様な動きだった。
―カッ!!―
「ヌッ!?」
目映い光が祐輝を包み込み、その光は徐々に彼の身体を別の形に変えていく。
そして、光が収まった時、そこには青いフルフェイスマスクに赤く丸い目、銀色の根元が繋がっている角の様な二本の触覚、そこから後頭部に掛けて白銀のラインが広がっている。
口元は銀のレギュレイター、身体は青いプロテクター、肩には同色のショルダーガード、足は銀色の足甲ブーツ、手も白色のナックルガード付の手袋を付けている。
他の部分は黒い強化皮膚に変わっている。
そして肩から手足の手袋まで一本の白いラインが繋がり、腰には小さなレバーの付いた銀色のベルトが巻かれている。
「貴様!? その姿は一体!?」
その場の全員が祐輝の変化した姿に驚く。
『コード:SMASH・BEGIN』
対して祐輝、スマッシュは姿が変わると共に、機械的な声を発して黒ずくめの集団を睨みつける。
「ぇえい!! 戦闘員共! 殺れ!!」
「キキィー!!」
紳士服が指示を出し、黒ずくめの戦闘員達が一気に襲い掛かる。
(戦闘員ごときなら・・・いける)
スマッシュは確実に勝てる。記憶が戻った訳ではないが何故かそういう確証があった。
思った通りに向かってくる戦闘員を殴り、或いは蹴り飛ばし戦っていく!
バキッ! ガッ! ゴッ! ガッバキィ! ガシッ ブン! ドガァ!!
「フン!!」
「キキィー!!」
向かってきた戦闘員を全て打ち倒し、スマッシュは残った紳士服と対峙する。
「フン、取り合えず戦闘員を楽に倒せるくらいの戦闘力を身につけたか」
「身に着けた?」
スマッシュの戦いを見て、顎に手を当てて多少感心したように言い放つ。
対してスマッシュはまたしても男の言葉に不快感を覚える。
「その姿も気になるしな・・・少し遊んでやろう」
そう言うと男の紳士服が内側からはじけ、その下の背中から八本の巨大な蜘蛛の足が現れる。
足が生えると男の全身に繊毛が広がり、頭には四つの目と鋭い牙が現れ、男は蜘蛛の姿をした異形の怪人へと姿を変えた。
「シュシュシュシュシュ・・・さあ、掛かって来るがいい!」
「ハアアアアアア!!」
蜘蛛男の誘いに乗って殴り掛かりに行くスマッシュ。
「シャァアアアアアア!!」
「!? っく!!」
突っ込むスマッシュに対して蜘蛛男は、八本の足を巧みに操ってスマッシュの攻撃を防ぎ反撃する。
スマッシュはソレを防ぎ、打ち払って防ぐが反撃の糸口が掴めない。
ガッ! バッ ガキッ ガガッ! ドグァ!!
「グゥ!?」
防御の隙間を縫って蜘蛛男の攻撃がボディを突き飛ばす。
スマッシュは幾らか吹き飛ばされながらも、しっかり地面に足を付けてどうにか踏み止まる。
「どうした? その程度・・・かぁ!!」
「うっ!?」
話しながら蜘蛛男は口から糸を吐き出し、スマッシュの腕に絡みつかせた。
「さぁて、どうする?」
「くぅ!!」
何とか引き千切ろうとするが、この糸はかなり頑丈なようで直ぐには千切れそうもない。
「さあ、来い!!」
糸を無理やり引っ張られ、有無を言わさずに蜘蛛男の間合いに引き込まれそうになる。
「うぅ・・・くっ!!」
負けじとスマッシュも踏ん張りを利かせてこれ以上近づかないようにする。
その甲斐あって引き込んだ所に追い討ちを掛けようとした蜘蛛男の攻撃をかわす事が出来た。
しかし、このまま綱引きをしていても一向に決着が付かない。
「ククククク・・・やはりこの程度か・・・なら、生きていても価値は無い!!」
「・・・何だと!?」
「貴様の様な失敗作は存在する意味も無い!! さっさと廃棄物らしく壊されて新しいパーツの備品になってしまえ!!」
「キサマァ・・・!」
蜘蛛男の言い分に対し怒りを露わにするスマッシュ。
「許さん!!」
そう言い放つとスマッシュは空いた手を腰に持っていき、その手でベルトのレバーを思い切り叩きつけるように下げる!!
ガギン!!
『チャージ!』
ピュィィィィイイイイイイイイーーーーーーー!!!!
機械的な声を出し、白い光がベルトから放たれると、それは白いラインを通って右足に到達すると力強い赤い光に変化する。
「させんわあ!!」
蜘蛛男は危険を感じ、スマッシュの体制を崩そうと糸を引っ張る。
「ハアァッ!!」
スマッシュは踏み止まろうとせず、逆にその勢いを利用して蜘蛛男に飛び掛っていった!!
「しま―!?」
自分の迂闊さに気付いた時には、既にスマッシュがキックを打ち出そうとしていた。
「ツェアアアアアアアアアアア!!!」
ズギャァアアアアアアアアアン!!!
「ギャアアアアーーー!!!」
キックが命中し、命中した部分を赤く燃やしながら蜘蛛男は吹き飛び床に激突する!!
スマッシュは地面に着地し、蜘蛛男を見据える。
(・・・勝った)
「ククク・・・ごふ!! く・・・クハハハハハハハハハ!!! ゴブ!!」
「!?」
勝利したと思った途端、蜘蛛男がゆっくり立ち上がり口から血を吐きながら笑い声を上げ始めた。
「クククク・・・廃棄物風情が我等に逆らって生きていけると思うなよ」
「なに?」
「こんな末端の施設で育ったモノなど・・・所詮尖兵に過ぎん・・・断言しよう。この施設でさえゴミだったキサマはすぐに死ぬ!! 正しくゴミとしてなあぁーー・・・ぁぁ!!」
そう言って蜘蛛男は仰向けに倒れて爆発した。
『コード:SMASH・COMPLET』
蜘蛛男の最後を見届けると、またも機械的な声が出てスマッシュの身体全体が光に包まれる。
光が収まるとスマッシュは元の人間、祐輝の姿に戻った。
祐輝は蜘蛛男が爆発した跡を見続け考える。
「何なんだろう・・・コレは」
何が起きたのか、何が起ころうとしているのか自分には分からない。
何故こんな事になってしまったのか。
自分の事、自分を逃がした研究員らしき怪人の事、そして今、自分が戦った相手の事を。
―こんな末端の施設で育ったモノなど・・・所詮尖兵に過ぎん―
蜘蛛男の言葉から本部が他にあり、ここはそれほど重要な施設ではなかった事が伺える。
そして、蜘蛛男は自分の事を知っていて、自分も心の何処かでヤツを知っていた。
「貴方達は・・・一体なんだったんですか?」
祐輝は心細げに夜空を見上げる。
その表情は今にも泣きそうになっている様にも見える。
自分の記憶、そして力。
それを知る為には奴等と接触しなければならないようだ。
爆破の煙が完全に消えた頃、ようやく祐輝は歩き始めた。
自分自身の事を知る為に、何故自分は奴等を許せないのか知る為に。
失ったものを取り戻す為に、新たな戦士が今、歩き出した。
今ここに、新たなる組織と仮面ライダーの戦いが始まろうとしていた。
<つづく>
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後書きっていうか・・・
どうもこんにちは、文明です。
いやー、やっちゃったよ。
カメリベも本格始動してない状態で別の話て、なんて無謀な・・・(怖!!)
まぁ、このスマッシュ自体はカメリベと同時期に発案してたんですけどね。
どうせならライカノにゲスト出演したいな〜って思ったからカメリベを投稿したんですよ。
取りあえずスマッシュはZERO呼んで生まれたライダーなんですよね〜。(広い目で見れば)
けど、ゲスト出演は狙えないかなって思ったから断念したんですよ。
シュラからの志向はカメリベよりかもしれませんねぇ。
え? じゃ、なんで今出したかって言うと〜・・・
ライカノがAIR編に突入して、KANON MRSを呼んでLEGEND・BLOCKADE思いついたんですよ。
で、他ssの作者様方の作品にゲスト出演させてくれないかな〜って言う悪徳思想がまたも出ちゃったんですよ。
暇が出来たら書きたいなーって思ってたら、出来たんでつい書いちゃいました。
んで、これとLEGEND・BLOCKADE(略称LB)は同時期の話という設定です。
SMASHは昭和寄り、LBは響鬼を自分なりにリメイク?したアニメ風味ライダーになる予定。
でも、あんまり余裕無いんでLBは前、中、後編の三段階+αと短めにする予定でもあります。
(場合によっては四話分+αになるかも)
ちなみにこの二つには時間設定書いてません。
この理由は、ライカノ等どの時空でも出演できるようにする複線?の為です。
(今後の作成状況で色々設定変わる可能性も極有り)
文書能力の低い素人が何を貫かしてやがる、身の程弁えろと思うかも知れませんが、温かい目で見逃してください。
それでは、最後にこの作品を掲載してくださった管理人様。
そして最後まで見てくださった皆様、有り難うございました。
次の話はカメリベになるか、何になるやら・・・
では、次のお話でまた会いましょう。