・・・

 

 

三人のライダー達は荒野を走り抜け、半分孤島と化している島を疾走していた。

荒野を走りながらライダー達はここに来る前の事を思い出す。

 

 

―――

 

「つまり、あいつ等はこれが無いと勝手に死ぬって事か?」

「いや…エナジーコアは一つだけでも強大なエネルギーを持っている。だから上手く使えば奴等の半数以上はふつうに生きられる」

話しながら老人は声のトーンを下げていく。

「もう何をしても無駄なのかもしれん」

「ふざけんな!!」

弱音を吐く老人に一人の青年が掴みかかる。

「何をしても無駄なんて最後までやってみなけりゃ分からねぇだろうが!! 少しでも希望があるなら最後までやり通して見せろよ!!」

「その通り」

「無駄に足掻くのが人間の本懐ってもんだしな」

青年達の言葉に老人は心が奮い立たされるような気持ちになった。

同時に一つの確信が老人の中に生まれ始める。

「そうだな…その通りだ」

「そうそう、年寄りにしては物わかりが良いな」

そう言って引っ張り上げていた手を離す。

「それで、あいつ等の本拠地はどこにあるんだ?」

「なに?」

「さらわれたお姫様も助けないといけねぇからな」

「…分かった。だが、ここからは遠い、私が開発したバイクに乗っていくと良い」

付いて来いと言って老人は外のガレージまで歩き、入り口を開ける。

中には数台程まったく同じタイプのバイクが安置されていた。

三人はそれぞれバイクに跨り、エンジンをかけてからポーズを取る。

『変身!!』

その声に遅れて光がその場を包み、青年達の体が変化する。

クルスの跨っているバイクは彼の変身と共に専用のバイク、グロウチェイサーに変化していた。

「憑凱!!」

セルは指先で札を持ち、額の前に持ってきて念を込める。すると、札が青い炎を発して燃え上がりながら焼き消えていく。

その青い炎はすぐに狼のような姿から薄い壁のような形を作ってセルの跨っているバイクに覆い被さりバイクの姿形を変える。

バイクは銀狼を連想させる様な姿、ハリケーンヴォルフへと生まれ変わった。

「凄いな」

スマッシュは二人がバイクを変化させる様を見てそう呟く。

「ん? 何だ、お前は変えないのか?」

「そういった機能は付いてないんでね」

「ふーん」

世間話をするように話し、三人のライダーは正面に向き直る。

「それじゃぁ、行ってくるぜ」

「安全な場所で隠れていてください」

「じゃ、行くか」

「待ってくれ…これを持っていくと良い」

そう言って老人は三つの宝玉を小さな袋に入れて、三人に一つずつ手渡していく。

「これは」

「エナジーコア?」

「何で俺達に渡すんだ?」

「私が持つより君達が持っていた方が良いだろう…きっと何かの役に立つはずだ」

「…分かりました」

老人から受け取った宝玉を袋に戻して紐で腕に縛り、改めて心に誓いを立てる。

そうして、ライダー達は走り出した。

 

―――

 

 

「あの森から突き出てるのが本拠地か?」

「多分」

「このまま一気に突っ込むか!」

「……そうは行かないみたいだ」

セルの言葉をスマッシュが否定する。

彼等の目の前からは、数台のバイクに乗った黒尽くめの集団が迫ってきていた。

「あれは何?」

「敵…と考えるのが妥当だろうね」

「同じ出迎えなら可愛い女の子が良かったんだがな」

そう言い終えるとセルは右へ、スマッシュは左へと進路を変更し、クルスはそのまま黒尽くめの集団に向かって走っていった。

ライダー達の動きを見た黒尽くめの集団は、そのまま直進する者と左右に散る者に分かれた。

「ハァッ!!」

集団に向かっていったクルスは前輪をスピードを上げて集団に突っ込み、前輪を大きく持ち上げてジャンプする。

それに対して、先に進ませまいと集団の中心にいた者達も大きくジャンプして体当たりを仕掛け、グロウチェイサーと集団のバイクが激しくぶつかり合う!

グロウチェイサーは全てのバイクを蹴散らして地面に着地、集団のバイクは地面に激しく激突し爆発する。

「危ない事するなよ! 馬鹿野郎!!」

着地してUターンしながら顔を集団に向けてクルスは叫んだ。

ジャンプしなかった集団は爆発に驚くような仕草をしながら、慌ててバイクをUターンさせてクルスを追い掛けようとする。

そこへスマッシュが集団の横から疾走してきてバイクのハンドルを片方外す。すると、ハンドルが拳銃の様な形に変形し、スマッシュはその銃口を集団に向ける。

「ガン・スマッシャー!!」

スマッシュの叫びと共にベルトから光が放たれ、腕のラインを通って銃に注ぎ込まれその威力を高める。

エネルギーが注ぎ込まれるとスマッシュは連続して引き金を引く。銃口から放たれたエネルギー弾はUターンしようとしていた集団を次々と打ち抜く!

スマッシュは銃を乱射しながら集団の間を通り過ぎていく。

「一気に決めるぜ!」

スマッシュが集団を通り過ぎ、浮き足立っている所にセルが指先で札を取り出し突っ込んでいく。

「神風特攻! 獣牙封臨撃!!」

セルが気合いを込めて叫ぶと札が青く燃え上がり、それがハリケーンヴォルフを包み込む。

炎に包まれていくと共にハリケーンヴォルフは加速し、やがて炎はセルも包み込んでいく。

まるで炎の狼が獲物に襲いかかるように、黒ずくめの集団に突っ込んでいき、炎が集団の中心に到達したとき大爆発を起こして集団を焼き尽くした!

チリチリと残り火を体に纏いながら、炎の中から飛び出すセル。

「よし、行くか」

セルの姿を確認した二人はそのまま敵の本拠地に向かう事にした。

そして、三人が並び、スピードを上げようとした時、目の前に突然光の壁が現れる。

「な!?」

「うぁ!?」

「どわぁあ!?」

突然現れた光の壁を避けきれずにぶつかり、弾き飛ばされるライダー達。

衝撃でバイクから振り落とされ、地面に叩き付けられる。

「っく…何だ!? 今のは?」

そう言ったクルスの目の前には二体の色違いだが、全く同じ姿をしたジャッカルの様な姿をした怪人とクワガタ怪人、ジェノシザースが待ち構えていたと言わんばかりに立ち誇っていた。

「まさか、直接我等の基地に来るとは思わなかったが…すぐにエナジーコアを返してもらおうか」

「誰が渡すかよ!!」

「…全く、この世界に残っているのは馬鹿ばかりか」

ジェノシザースの言葉に叫びながら応えるセル。

その様子に呆れながらジェノシザースは片手を揚げて指を鳴らす。

すると、ジェノシザースの頭上に大きな映像が映し出される。その映像には十字架に四肢を縛られたルナが映し出されていた。

「!?」

「どういうつもりだ!?」

「そういった趣味か」

クルスとスマッシュは映し出された映像を歯痒く思うのに対し、セルだけは場違いな感想を口に出す。

「これから間もなくあの娘は処刑される。その様子をこの世界全土に送り、お前達の様に抵抗する意志を無くす」

「なに!?」

「我々に逆らった者には死有るのみ。せめてもの慈悲だ…あの娘より先に葬ってやろう」

ジェノシザースがそう言うと、二体のジャッカル怪人が前に歩み出す。

「くそ、時間制限付きかよ」

「どうする?」

「……ここは、オレが食い止める」

クルスの言葉に二人は驚きながら振り向く。

「本気か?」

「全員で掛かっても互角かどうか−」

「分かってるけど…時間が無いだろ」

クルスも相手の力量は分かっているつもりだった。三人掛かりでも勝てるか分からないのに、たった一人で他の二体も相手にして勝てる見込みは無い。けれど、それでもやらなくてはならない時だと思ったから自分から相手を引き受けようと名乗り出たのだ。

その時、その気持ちを感じ取るかの様に袋の中のエナジーコアが淡い光を放つ。

「よし、分かった。じゃあ任せた!」

「え?」

そう言うとセルはさっさと迂回して先に進んでいこうと走り出した。

あまりにもアッサリと行ってしまったので、二人は戸惑いその場に固まってしまう。

「………良いよ…行っても」

「え…あ、ゴメン」

謝りながらスマッシュはセルの後を追う。その後ろ姿を見ながら、クルスは沈みかけた気を持ち直し、ジェノシザース等に向き直る。

「随分あっさり行かせてくれたな」

「ふん。雑魚が先に進んでも、すぐに貴様を倒せば済む事だ…たった一人で我等に勝てると思っているのか?」

「そんな事…ある訳無いだろ」

クルスは自分の力を高く評価していない。いや、自分の力ではなく、自分自身を低く評価している。

それ故に人の為に戦わず、自分を守る為に戦う事を誓った。自分は他人を護れる程強くない。自分の事で精一杯だと思っている。

なら、この場は逃げ出しても良いのではないかと思う。だが、彼は逃げない。

「なら、何故我等に刃向かう?」

「…何でだろうな?」

そう呟きながらも彼は何となくだが、答えを知っていた。

関わってしまったから、どれ程薄くとも彼女という存在と繋がってしまったから、だから彼は逃げる訳にはいかない。

「けど、約束したんだ」

逃げる事を止め、自分の新しい名前に誓った。

自分に関わる者、自分と繋がりを持った者を守れる様にと願いと想いを込めて拳を握る。

「だから…こんな所で止まりたくないんだ」

クルスがそう呟くと、袋に仕舞っていた黄色の宝玉が目映い光を放ちながら袋を突き破って空中に浮かぶ。

「なんだ!?」

「エナジーコア!?」

ジェノシザースが咄嗟に手を伸ばすが、黄色の宝玉は吸い込まれる様にクルスのベルト手前に降りてくる。

そして、少し後退すると今度は一気にベルトの中心部に入っていく。まるで融合する様に、元からあった二つの赤と青の宝玉が歪み中心に移動していく。

「ぐっ!? っがぁああああアアア!!!」

ベルトが奇妙に変わるのと同様にクルスの体も歪んで変化を起こし、やがて目映い光がクルスを包み込む。

「…何だ、貴様は?」

光が収まった時、ジェノシザースはクルスに向かって話しかける。だが、その姿は先程とは違うものに変化していた。

全身の黒い第二皮膚は変わらないが、前面が白だったボディアーマーは全身が分厚い黒く金色の紋様を持ったプレートアーマーに変わり、左右の手甲とナックルガードは銀色に変化し、手甲は肘まで届く程になっている。膝も同色のサポーターがあり、そこに届く様に銀色の足甲が強化されている。

頭の黒い仮面のつり上がった眼は強くオレンジ色に輝き、牙の様な形に変わったマウスガードで覆われた口、額は中心が金色の一本角、そこから左右に伸びる銀色の二本の角に変わっていた。

宝玉が入ったベルトは赤と青の勾玉が重なった様に一つの円を作り出し、金の装飾はそれを巻き込む様な渦をあしらったものに変化していた。

これぞクルスの新の基本形態、黒金の戦士クルスバトルフォーム。

「まあ良い…やれ! ダブルジャッカル!!」

クルスの変化に若干戸惑ったが、ジェノシザースは二体の怪人に指示を出す。

それを聞き取ったダブルジャッカルは水平に並んで光の壁を発生させながらクルスに向かって突進する。

それに気付いたクルスは左掌を上に向けて前に出し、右手を腰に落として叫ぶ。

「…転身!!」

叫びながらクルスは右手を前に突き出し、左手を外回りに動かして左腰に叩き付ける。

すると、重なった勾玉が転回しながら左右にスライド移動し、その奥から赤々とした宝玉が姿を現して目映い灼熱の輝きを放つ。

赤々とした炎がクルスの身を包み、その姿を大きく変えていく。

全身の黒い第二皮膚は変わらず、ボディーアーマーは分厚い灰銀色のものに変わり、所々に血管の様な黒い筋が見える。

両手の指先から肘までの第二皮膚は赤色に変化し、灰銀色をした大きなナックルガード、炎の様な金色の鋭い鰭のある、炎を象った様な金の装飾をした大きな深紅の二重の手甲。下の銀の手甲は肘まであり、両足も鰭が無い事以外同様の足甲に変化する。

両肩は分厚い角の様な形に変化したショルダーアーマーとなり、全身の筋肉が異様なまでに盛り上がる。

そして頭部はつり上がった眼が赤々と輝き、額の三本角も赤々とした太い四本角に変化する。

「フン! ハァアアアア………」

両手を素早く前に伸ばし、ゆっくりと両脇に引いていって握り拳を作る。すると、その動作に合わせる様に全身から灼熱のオーラが吹き出す。

その姿は、まるで火山に流れる溶岩の様だった。そう、この姿こそ真の大地の轟炎……ボルケニックフォーム!!

「「シャアアアアアアア!!」」

ダブルジャッカル等はクルスの変化を気に止めずに突っ込んでいく。

彼等は自分達が張るバリヤーを破れる者などいないという絶対の自信がある。

「フンッ!!」

クルスは向かってくるダブルジャッカル達に向かって思い切り左拳を突き出す。

その拳は光の壁を容易く突き破り、轟音を揚げて一体のダブルジャッカルを吹き飛ばす!!

「!?」

「ハァっ!!」

空かさずクルスは引いた右腕をもう一体のダブルジャッカルに叩き込む!!

「ギャァ!?」

「グギ!?」

二体のダブルジャッカルはジェノシザースの眼前に叩き付けられ、力尽き爆発四散した。

「バ、バカな!? 奴等のバリアーが破られるなど!?」

ジェノシザースはそれに驚愕し、信じられないものを見た様な表情になる。

ダブルジャッカルのバリヤーは自分でも打ち破るのに相当の力を使う。なのに、目の前にいる奴は一撃でバリヤーを破壊し、ダブルジャッカルを葬った。

その事が信じられず困惑しながらもジェノシザースは背中から二本、大降りの青龍刀のような武器を取り出した。

「フッ!!」

敵が武器を取ったのを見たクルスは、腹部に力を込めて目の前に右腕を立てて左手を腰に落とす。

すると、ベルトの宝玉から赤い光の線が棒のような形を作り出し、それを引き抜いて振るうと両端の部分が強く輝き、刀身が黄金色、峰が銀色、先端が両刃の刀剣で形成され、両方の鍔の部分に赤々とした宝玉の施された大振りの薙刀となる。

「ハァアアア!!」

「ぬぅ!!」

クルスは大振りの薙刀を軽々と振り回し、ジェノシザースはそれを受け止め捌くが、ボルケニックフォームの超パワーは片手で押さえられるものではなく、両手の刀で受けなければならない為に徐々に押されていく。

そして、クルスが上段から振り下ろした薙刀をジェノシザースは刀を交差させて受け止める。だが、クルスは空かさず密着してジェノシザースの腹部に膝蹴りを食らわせる。

「ぐうぅ!?」

腹部を押さえながらジェノシザースは後退して距離を保つ。クルスは威嚇する様に薙刀を頭上で回転させてから身構える。

そして、クルスは止めを刺そうと構え、ジェノシザースに向かって走り出す。

「舐めるな!!」

ジェノシザースは怒り、二本の刀を頭上で交差させてエネルギーを送る。エネルギーを送り込まれる刀は黒い放電現象を起こして破壊の時を持つ。

そして、エネルギーが貯まったジェノシザースは交差させた刀を振るい、クルスは轟く炎を宿した薙刀を力の限り振るった。

「ぬぅおおおおおお!!」

「ハァアアアアアア!!」

二つの力がぶつかり合い、激しい爆発が当たり一体を覆った。

 

 

先に進んでいたスマッシュとセルは森を抜けて湖のある場所に辿り着いていた。

「何だよこれ!?」

「湖か」

彼等の眼前には敵の本拠地が確認できる。だが、その手前に大きな湖が彼等の行く手を阻む。

「どうする? 泳いでいくか?」

「迂回する時間もないし、仕方ないか」

セルの提案に頷くと、スマッシュは湖に飛び込もうと準備をする。

そして、二人が飛び込もうとした瞬間、湖の中から鞭の様な物がもの凄いスピードで二人の首に巻き付いた。

「なっ!?」

二人は驚きの声を出す間もなく鞭の様な物に引っ張られて、為す術無く湖の中に引きずり込まれる。

(なんだ!? こいつは?)

(ヒトデ?)

湖の中には三本の触手を生やした海星の様な怪人が待ち構えていた。

『フォッフォッフォ…こんな所まで来るとは…久々に楽しめそうな獲物が来たデェー』

(ヒトデだからって…デェーはねぇだろ。デェーは)

海星怪人の語尾に呆れながら、セルは少し焦っていた。

いくら人より強化されたからと言っても彼は水中で呼吸が出来る訳ではない。息継ぎをしなければ普通の人間と同じように死んでしまう。

だが、首に巻き付いた触手は幾ら引っ張ろうとも千切れない。

『ハァアア!!』

スマッシュの方は触手を掴み、手にエネルギーを集中させて一気に放出して触手を焼き切った。

『何ぃ!?』

今まで切られた事のない触手を焼き切られて驚きの声を上げる海星怪人。

『大丈夫か!? 今助ける』

水中でも息が出来るのか、ごく自然にセルに話しかけるスマッシュ。

触手を焼き切った事で自由になったスマッシュはセルの触手も切る為にセルに近づこうとする。

『舐めたマネをするんじゃあらへんデェー!!』

触手を切られて怒りを覚えた海星怪人は、体を本当の海星の様に広げて腹部から怪光線を放った!!

『ぐああああ!!』

水中では素早い動きが出来ない為に、直撃を受けて湖の底に吹き飛ばされるスマッシュ。

その様子を見て、仮面ライダー、ヒトデの触手に捕まり溺死。そんな言葉がセルの頭に浮かび身震いする。

(冗談じゃねぇ!! そんなアホな死に方してたまるか!!)

セルは集中して腰に力を送る。すると、両腰の黄金の輪が広がりベルトから外れ、光りながら高速回転を起こして手裏剣の様に動き、セルを捕らえている触手を断ち切った。

そして、触手を断ち切った黄金の輪はセルのベルト両腰に収まり、セルは急いで水面に向かう。

スマッシュは海星怪人と同じように水中でも喋っていたから、おそらく溺死の心配はないだろう。

『逃がさんデェー!!』

(くっ!!)

セルの行動を阻止しようと海星怪人は再び腹部から怪光線を放つ。

水面に向かっていたセルは無理に避けようとせず、体制を変えて防御の姿勢を取り、怪光線を真っ向から受ける。

怪光線を真正面から受ける形になったセルは、衝撃に乗って一気に水面まで上昇していって湖から弾き出された。

外に弾き出されたセルはバク転しながら地上に着地して辺りを見渡す。

「ん? ここは…」

セルが顔を向けた先には、敵の本拠地がかなり近くまで見えていた。どうやら自分が思っていたよりも遠くに弾き飛ばされていたらしい。

「さて、どうすっかな」

また湖に戻ってスマッシュに加勢するか、このままルナを助けに行くか考える。

「よし、ここはやっぱりお姫様を助けに行くか!」

そう言って走り出すセル。

かなり早い決断だが、何も考えていない訳ではない。

スマッシュに加勢しに行っても限りなく不利な戦いを強いられるだろうし、スマッシュは水中でも呼吸が出来るようだった。

なら自分が加勢に行っても邪魔になるだけだろう。それに、ルナの処刑時間も長くはないだろうという考えがあったからだ。

決して、どうせ助けるなら女の子の方が良いという理由からではない筈だ。

 

『しまった。逃がしてまったデェー!!』

湖の中で海星怪人が頭を抱えて悔しがる。スマッシュの事はもう頭に無いようだ。

スマッシュは湖の底で体制を整えると、両手を変身する時の様に前に伸ばして円を描く様に動かし、右手を腰に、左手を頭上に掲げながら叫ぶ!

『バトルアァーーップ!!』

スマッシュの叫びと共にその体に赤いラインが広がり、スマッシュの体を目映い紅の光が包み込み彼の姿を変えていく。

『…なに!? 何が起こったんデェ!?』

海星怪人は光に驚きスマッシュのいる水底を見る。

光が収まった場所には、赤いフルフェイスマスクに丸い赤い目、金色の根本から繋がる二本の角の様な触覚、そこから後部に掛けて白いラインが広がっている。

口元は銀のレギュレイター、体は赤いプロテクター、方には赤いラインの入った白いショルダーガード、逆に足は赤く、白いラインの入った足甲ブーツ、手も同様のナックルガード付きの手袋を付けている。

体を覆う強化皮膚は濃い青色に変わり、肩から手足の先まで二本の赤いラインが繋がっている。

腰の小さなレバーの付いた銀色のベルトは中心部が右側にスライド移動し、中から赤い宝玉が出現していた。

その姿こそ紅の剣聖、仮面ライダースラッシュ!!

スラッシュは腰の後ろに右手を持っていく、するとベルト後ろ腰の部分から一本の剣の柄の様な物が飛び出す。

『スラッシュソード!!』

スラッシュはそれを勢い良く引き抜き、前に構える。すると、抜き放たれたソレは刀身が目映い光を放つビームセイヴァーを形成する!

『タァアアアアアア!!』

スラッシュはビームセイヴァーを下段に、刀身を後方に持っていく構えを取り、エネルギーを放出し、推進装置代わりにして海星怪人に向かって水中を高速移動する。

海星怪人は腹部から怪光線を放って迎撃しようとするが、スラッシュはそれをビームセイヴァーで切り裂く!!

『オノレ!!』

怪光線が通じないと知った海星怪人は背中から数発のミサイルを打ち出す。スラッシュは巧みにセイヴァーを動かしてかわし、切り裂く。

ミサイルが後方で爆発し、その衝撃で更にスピードを着けて海星怪人に向かっていくスラッシュ。

『スラッシュ・ソード…チャージ・ァアアーーーーップ!!』

そう叫びながらビームセイヴァーを掲げると、腕の二本のラインを伝ってエネルギーがビームセイヴァーに伝わり、炎が吹き出す様に刀身がさらに濃く赤く光り輝く!!

そして、両手を肩に添える様にビームセイヴァーを突き出すかの様に構え、海星怪人に突っ込んでいく。

『オオオオオオオオオオオ―――――――…ジェリャァアアアアアア!!!』

炎の様にエネルギーを放出しながらビームセイヴァーは海星怪人の体を切り裂く!

『ガアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーー!!!』

切り裂かれた箇所でエネルギーが燃え上がり、バチバチと音を荒げ、海星怪人は爆発した。

スラッシュはビームセイヴァーを一降りして、ベルトの後ろ腰に納め、気合いを入れ直す様に両手を握り拳にして素早く腰に引く。

それに呼応する様にベルトの宝玉は一瞬勝利を称えるかの様に、水中の中で光を反射する様に小さく輝いた。

 

 

・・・

 

怪人達の本拠地最上階では、ヘルズゼウスが目の前にあるモニターでライダー達の活躍を見続けていた。

祭壇の上で十字架に貼り付けにされているルナは映し出される映像を見て喜びの表情を浮かべ、ヘルズゼウスは苦渋を噛み殺した様な表情を浮かべている。

それもその筈、ライダー達の一人はすでに本拠地の中に突入していて、怪人達を薙ぎ倒しながら自分達のいる場所に向かっているのだ。

「おのれ…たかが三匹の虫けら如きに!!」

明らかに気分を概して叫ぶヘルズゼウスは祭壇から離れて近くのコンピューターを操作し始める。

「なにをやってるの!?」

「ふん、これ以上虫けらが私の住処に入れない様にするだけだ」

ヘルズゼウスがそう呟いた時、大きな地響きがその基地全体に響き渡る。

「これは!?」

「見てみるか? 今、この場がどうなっているか」

そう言うと、返事も聞かずにモニターの画像を切り替える。

「!?」

映し出された映像にルナは驚き目を見開く。

モニターには巨大な建物が、大地を引き千切って空中に浮かんでいく姿が映し出されていた。

 

 

「な、何だったんだ? 今の揺れは!?」

内部に突入していたセルは、突然の揺れに驚きながらも先に進む。

内心一人で戦えるか不安だったが、内部の怪人達はここに来る前に戦ったジェノシザースに遠く及ばないもの達ばかりだった。

そのお陰で順調に進めている様に思うが、それでも数が多く、全て倒してきた為に体力もかなり消耗していた。

だが、さすが本拠地と言うべきか、怪人達は彼に休ませる暇を与える間もなく次々と現れる。

「いたぞ! 侵入者だ!!」

「くそっまたか!? しつこいんだよ、お前等!!」

文句を言いながらセルは向かってくる怪人達を殴り、蹴り飛ばし、蹴散らしていく。

しかし、怪人達も負けじと数で押し、その場にいる者達を総動員してセルに組み掛かる。

やがて、数多くの怪人達に組み掛かられてセルは身動きが取れなくなってしまう。

「くそ!! 離しやがれ!!」

『ご苦労、衛兵の諸君』

セルがもがいていると、所々に設置されているスピーカーからヘルズゼウスの声が聞こえてくる。

「ヘルズゼウス様!!」

『諸君、そのまま虫けらを押さえていろ』

「誰が虫けらだ!! このハゲ!!」

セルは顔も知らぬ敵のボスに罵声を飛ばし続ける。

その様子をモニターで見ていたヘルズゼウスは、コンピューターの一つのスイッチを押した。

すると、セル達のいるフロアの床がガコンッという音がして一気に抜け落ちる。

「「うわあああああああああああ!?」」

誰の者ともつかない悲鳴が響き渡り、いくらか落下した所で床に激突する。どうやら基地の外に排出される仕掛けではない様だ。

「落とし穴って…いつの時代だよ?」

「ヘルズゼウス様! これは一体!?」

怪人の一人が起き上がり、天を仰いでヘルズゼウスに問い質す。

「貴様等では束になってもその虫けらには敵わんだろう。そいつ諸共死ぬがいい」

「テメェ!?」

「そんな!? ヘルズゼウス様!!」

怪人達が次々と懇願する様に叫ぶ。しかし、次の瞬間には部屋一帯に稲妻のような電流が放出される。

それは、セルだけでなく、一緒に落ちた怪人達全員を焼き尽くしていった。

「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!?!?」」

「あ…の……野郎ぉお〜〜!!」

セルは電流の痛みに耐えながら敵のボスに怒りを露わにする。

そんな彼の心に反応する様に、彼の持っていた緑色の宝玉が稲妻を吸収しながら輝き出し、セルのベルトの宝玉に吸い込まれる様に収まる。

セルは体中に力が漲るのを感じて、頭に浮かんだ言葉を叫びながら拳を天高く突き上げた。

「龍・神・光・雷!!」

叫びに応じる用に天空から一筋の強大な稲妻が、建物を破壊ながらセル目掛けて落ちる!!

稲妻に包み込まれながらセルの姿が次々に変わっていく。

ベルトの宝玉は龍の鉤爪なような装飾品で守られる様に覆われ、体は龍の顔を連想させる様なアーマーえと変化を起こす。

黒い皮膚は変わらないが全身の筋肉が盛り上がり、両肩、両腕、両足、にも龍を連想させる角や棘が施された装甲に強化されていく。

頭は緑色の眼と中心の赤いラインは変わらず、金色の鋭い角の左右にさらに炎の様な角が一本ずつ、計四本の角が放電しながら出現する。

これぞ我身降神法・龍神一体!!

天空の荒ぶる竜が其の身に宿り、天を切り裂く力を解放させる!!

「グゥルォォオオオオオオオオオオオ!!」

セルは龍が咆吼を挙げるように叫び、それに反応するように腰のベルトの宝玉も白銀の放電現象を起こしながら輝く。

次に宝玉を覆っている鉤爪が外側に開き、宝玉から緑色のエネルギー球が龍の口に銜えられるように目映い放電現象を起こしながら現れる。

そして、両腰部分から黄金の輪が現れ、緑のエネルギー球を輪の中心になる様に移動し、様々な方向に回転し始める。

セルはそれを胸の前まで持っていき、左右の手で回転する二つの輪とエネルギー球を圧縮していく。

「龍・神・轟・来…封吼波ァアアアアアアアアア!!」

そう叫びながらセルは両手を自分の頭上に向けて押し出し、圧縮エネルギー球を打ち出す。

それを追ってセルはジャンプし、回転している二つの輪が重なり合った所に蹴りを突き出しながら通過する。

すると、セルを包んでいく緑のエネルギー球は荒ぶる竜へと姿を変えて、あらゆる障害物を薙ぎ払って天空へと駆け上がっていった!!

その余波によって周りの怪人集団は電流の罠諸共吹き飛ばされる。

「ォオオオオオ……ラァ!!」

一旦上空に抜け出たセルは自由落下しながら敵の基地に蹴りを放ち、壁をぶち破って中に戻る。

「何だ!?」

「爆撃か!?」

轟音が響き、分厚い壁が砕け散り中に待ち構えていた二体の怪人達は驚く。

その刹那、壁が砕けた事によって生じた土煙の中から、光りが伸びて輝く四本の棒の様なものが見えた。

「激・麟・光・陣…封攻牙ァ!!」

次の瞬間、セルの両腕に生えた龍の牙を象った鉤爪が二体の怪人を切り裂く!!

二体の怪人の切り口から龍に近い印字と破の印字が浮かび上がり、何が起こったのか気づく間もなく爆発した。

「雑魚に構ってる時間はねぇんだよ!」

そう言い捨てたセルの目の前に妙に豪勢な装飾を施した大きな扉が備え立っている。

「…絶対この奥だな」

半分呆れながらも確信して扉を開けるセル。

扉の奥には予想通り、十字架に貼り付けにされたルナと、敵のボス、ヘルズゼウスが待ち構えていた。

「よくあの電流地獄から生きて出られたな…誉めてやろう」

「てめぇに誉められても嬉しくないがな」

明らかに不機嫌さを表して言い捨て前に出るセル。その動きに先じてヘルズゼウスはルナの首を鷲掴みにする。

「動くな…この娘の命が惜しければ抵抗するな」

「…チッ」

セルはここに突入する時、扉の装飾を見て敵のボスは馬鹿かと思っていた。

だが、人質がいるのに真正面から突入した自分も同じか、と自嘲気味に笑えてしまう。

「さて、派手に暴れてくれた礼をさせて貰おう」

(クソッどうする!?)

ヘルズゼウスの掌がセルに向けられ、身を強ばらせたその時!!

「スピニング・スマッシュ・キィイイック!!!」

「な−!?」

幾層もの壁を突き破り、高速錐揉み回転したスマッシュがヘルズゼウスの真後ろから現れた!!

予想外の乱入に驚き振り向くヘルズゼウス。だが、その隙を見逃すほどセルは甘くはない。

一瞬の内にセルは距離を詰めてヘルズゼウスに回し蹴りを喰らわせる。

「グハァ!?」

強烈な不意打ちを喰らって吹き飛ぶヘルズゼウス。

セルはその様子を気に止めずにルナの拘束を両手の鉤爪で掻き切る。

拘束が外れ、落下しそうになる所を受け止める。

「っと…大丈夫か?」

「はい!!」

「やったな」

「ああ、お前も有り難な。助かったぜ」

そう言って右手を挙げるセル。それを見て取ったスラッシュはそれに軽く音が鳴るくらいにタッチして答えた。

「それにしても…お前その姿は何だ?」

「そっちこそ」

ほのぼのとした雰囲気が形成されそうな中、部屋の隅ではヘルズゼウスが壁に手を付きながら、ゆっくり起きあがりながら呟く。

「馬鹿な…なぜ……なぜ貴様はこの空中に浮かぶ基地に進入できた!?」

「…協力者のお陰かな?」

「協力者?」

スラッシュの言葉に首を傾げるセルとルナ。

「そんな事より、早く脱出しよう」

「確かに、いつまでもこんな所にいたくねぇしな」

「きゃあ!?」

セルはルナを両手で抱き上げ、ルナは突然お姫様だっこされて驚き顔を赤くする。

そんな事はお構いなしと、二人はスラッシュが開けた穴へ跳躍して外へ出た。

 

「…これは」

「どうやって降りるんですか?」

外に出たセルとルナはスラッシュに訪ねる。

基地は山一つ軽く超えるほどの高さまで浮かんでいた。

それ以前にスラッシュはどうやって、これほど地上から離れた基地に辿り着く事が出来たのだろうか?

「それは、彼にね」

「彼?」

スラッシュが指さした先には数体の鳥形の怪人達が何かと戦っているようだった。

セルとルナは、一人の白い翼を持つ戦士が怪人達と戦っている事に気づく。

その戦士の姿は全身が黒い第二皮膚で覆われ、その上を青いプレートアーマーが覆い、その背中から青いラインの入った白い三対の羽が生え、そこから白い雪の様な光の粒子を撒き散らして飛行していた。

両肩には金の装飾が入ったショルダーガード、左右の手も上が白色、下が肘まである青い二重手甲とナックルガード。膝にも同色のサポーター、足には手と同じ様な作りをした膝まで続く足甲を装着している。

頭は黒い仮面に覆われ、青い大きな目がややつり上がっており、マウスガードで覆われた牙の様な口、額は一本の金色の角から左右に伸びる銀色の二本角を生やした三本角を形成していた。

そして、ベルトは中心が大きな青い霊石が輝き、その左右に赤と青の勾玉が収まった渦を巻く様な金装飾を施された物だった。

その戦士は手に峰が金の装飾で施された両頭に銀の刃を持つ薙刀を持って、敵の攻撃を薙ぎ払っていく。

その姿は戦う天使の如し。そう、この戦士の姿こそ真に天翔ける青き天使、クルスダイヴァーフォーム!!

「ハァアアア!!」

クルスは大空を自由に駆け巡り、怪人達を蹴散らしていく。

そんな中、一体の鳥形怪人が距離を取ってミサイルを両肩からミサイルを撃ち出す。

それに気づいたクルスは薙刀を中心から分割する。すると、薙刀は棒部分が更に半分位折りたたまれ、そこから青い宝玉の様な物が見える。

金の装飾部分が転回し、そこにクルスは持ち手を変えて銃を持つ様に構える。実際、青い薙刀は後方に刃を持った拳銃へと形を変えていた。

クルスが引き金を引いていくと、青いエネルギー弾が次々に打ち出されてミサイルや怪人達を打ち抜いていく。

エネルギー弾では威力が足りないのか、怪人を倒すには至らない。だが、銃を乱射しながらクルスは怪人達に向かって翼をはためかせて肉薄していく。

接近戦まで持っていくと、クルスは持ち手を変えて銃に付いている刃で怪人達を斬り付けていく。

切り裂かれた怪人達は傷口に星の光の様な紋章を浮かべて爆発四散していった。

 

「凄いな」

「ああ」

クルスの重力を無視したような動きに感嘆の言葉を出すライダー達。

戦闘が終わり、基地に顔を向けたクルスは三人の姿を見つけると翼を動かしてすぐそこに降り立つ。

「凄いなお前」

「まぁね」

「一度に何人くらい連れて行ける?」

スラッシュの質問にクルスは少し考えて、その場にいる人数と地上を見比べて答える。

「多分…長時間掴まっていられるなら全員降りれると思う」

「だ…大丈夫なんですか?」

ルナが不安げに尋ねる。確かに、一人で飛ぶ事が出来ても三人も捕まって無事に着地できるのか不安に思っても仕方ないだろう。

「多分」

「多分って」

「お前な」

セルが呆れたように話すと、突然基地が大きく揺れ始める。

そして建物が次々に崩れ落ち、彼等がいる足場もひび割れ始めてきた。

「悠長に話してる時間は無いみたいだ…早くしないと!」

スラッシュがそう言うと全員頷く。

クルスは若干躊躇いながらもルナを落とさないように腕で抱きしめて一旦空中に浮かび上がる。

スラッシュとセルはその左右の足にしがみ付く。

そしてクルスはルナに負担が無いようにスピードに気をつけながら、それでも出来る限り早く地面へと降り立った。

全員地面に足を付けると、すぐに空中に浮かぶ基地を見上げる。

「おいおい…何だよありゃぁ?」

そう話すセルの視線の先では基地の建物がどんどん崩れていく。

だが、セルが驚いたのは建物が崩れる事ではなく、建物の下がゆっくり動いていることだった。

基地は余分な殻を剥がす様に建物を崩しながら徐々にその形を変えていき、やがて四半分が戦車、上半分が人型の巨大な建造物に姿を変えた。

変形を終えた巨大な物体は、数瞬空中に留まったかと思った次の瞬間一気に自由落下して轟音を響かせながら大地に降り立つ。

「うおおおおおおおお!?」

「なぁ!?」

「どわぁああ!?」

「きゃぁああああああ!!」

巨体が落下して降り立った衝撃に大地が大きく揺れて四人はバランスを崩し慌てる。

揺れが収まると、四人は改めてその巨体を見上げてその巨体に半ば放心状態になっていた。

有に40メートルを超えようかという巨体が彼らの目に見える場所で、生き物のように口を動かし、黒い煙を吐き出している。

『ユルサンゾ…ムシケラガ』

「喋った!?」

「この声は!?」

「あの糞野郎!!」

「そんな!?」

巨体の発した声に全員が反応する。

やや機械的な性質に変わっているが、その本質は紛れも無くヘルズゼウスのものだった。

『例エ全テノコアガ揃ワズトモ、一ツ在レバ私ハ生キラレル…ダガ!! 貴様等ハ、粉々ニ螺サネバ気ガスマン』

ヘルズゼウスは巨大な機会の目を四人に向け、下半身のキャタピラを動かして接近してくる。

「おい…どうする」

「あ、どうするって」

「どーするよ」

全員がたじろぎながらお互いに顔を見合わせる。

相手はあまりに巨大すぎる。たった三人で戦って勝てると思うほうが難しい。

だが、そうこうしている間にもヘルズゼウスは木々を踏み砕きながら近づいてくる。

「何にせよ、このままじゃ絶対死ぬな」

クルスの言葉にルナは息を呑む。その様子に気付かずクルスはダイヴァーフォームからバトルフォームへ戻る。

その際身体が光りで覆い隠され、ベルトの勾玉も転回して元の重なり合った状態に戻った。

そして、クルスは左足を半歩後ろに下げ、右手を前に、左手を腰に落とす。

すると中心が点で四方はひし形に伸びる、十文字に似た紋章が浮かび上がる。そして更にひし形の間を埋める様に凸出た弧円が追加される。

「お、おい!?」

「やれるだけの事をやるしかないだろ」

そう話したクルスの足元には四方八方が埋まった、まるで星の輝きの様な紋章が浮かび上がり、吸い込まれる様にクルスの両足に集まっていく。

「…それもそうだな」

クルスの言葉に同意するとセルは緑のエネルギー球を生み出し、両腰部分の黄金の輪でそれを圧縮していく。

「危ないから離れてて」

ルナは頷き小走りで離れていく。それを見送りながらスラッシュはヘルズゼウスに向き直り、右足を後ろに引いて左手を前に、右手を回しながら腰の方へ持っていって構える。

「行くぜ!! 龍・神・轟・来…封吼波ァァアアアアアアアアアアアア!!」

セルが両手を突き出し、雷光の荒ぶる龍がヘルズゼウスに向かっていく。

それを見て取ったヘルズゼウスは前方にバリヤーを張りだす。

雷光の龍は激しい音を立ててヘルズゼウスの作ったバリヤーにぶつかり、激しく火花の様に光を放ちながら清の印字を形成する。

「ハッ!!」

「スーパー・スピニング・スマッシュ・キィック!!」

「ウオリャァアアアアアアア!!」

三人は一斉に跳躍してそれぞれキックを放った。

そのキックは清の印字にぶつかり、強大なエネルギーが反発し合ってより強い反発音と火花を舞い散らす。

「グッ!?」

「!?」

「うおお!?」

しかし、バリヤーを突き破る事は出来ず、逆に三人は思い切り弾き飛ばされてしまう。

弾き飛ばされた三人は激しく地面に叩きつけられ、そこに小規模のクレーターを形成する。

「くっ…そ」

三人は何とか起き上がろうとするが、弾き飛ばされた時の勢いが強く、動く事もままならない。

「コレデ、終ワリニシテヤロウ」

ヘルズゼウスは右腕にあたる部分を三人に向ける。すると、その腕が変形していって巨大な砲塔に姿を変え、その巨大な穴に光が集められる。

その光景を目の当たりにして三人は息を飲んだ。

あれだけ巨大な砲塔からエネルギーを打ち出されたら自分達どころか、この辺り一体跡形も無く消し飛んでしまうだろう。

訳も分からないまま、見知らぬ世界で跡形も無く消し飛んで死ぬのかと三人が絶望に苛まれた時。

「なっ!?」

三人を庇うようにルナが両手を広げて前に立ちヘルズゼウスをキッと精一杯睨みつける。

「ハッハッハ!! ソレデ庇ッテイルツモリカ?」

ルナの姿を見たヘルズゼウスは巨大な顔を醜く歪ませて高笑いする。

「そうだよ何で逃げなかったんだよ!?」

「だって…助けてくれた人達を放って行くなんてできない!!」

大きな声を出して答えるルナ。だが、その小さな身体は恐怖で震えていた。

「ツクヅク人間トハ、無駄ナ事ヲスル生き物ダナ。諦メテシマエバ、幸セナモノヲ」

「無駄じゃない! 最後まで生きようとする事は…生きる為に必死になる事は……絶対に無駄な事じゃない!!」

涙を流し、首を思い切り振ってヘルズゼウスの言葉を否定するルナ。

その姿を見ているライダー達は痛みの走る身体に鞭打ち、ゆっくりと土を削りながら握り拳を作っていく。

「アクマデモ…オ前達ガ生キルコトニ、意味ガアルト言イ切ルツモリカ?」

「当たり前です!!」

「ナラバ、ソレガ間違イダトイウコトヲ、教エテヤロウ!!」

巨大な砲塔に粒子が溜まり、巨大な洸球が熱を帯びる。

そして、次の瞬間洸球が打ち出され…地面に直撃し巨大な爆炎が辺り一面を吹き飛ばした!

激しい衝撃波が円形に広がり遠くの木々まで薙ぎ倒し、余波の熱で爆心地以外の木々も激しく燃え上がる。

爆心地を見下ろすヘルズゼウスは醜く巨大な顔を歪ませて笑う。爆心地は中が確認出来ない程の黒煙で覆われ遥か上空まで広がっていく。

「ハッハッハッハッハ!! 気分ガイイ! 全テガゴミノヨウダ!! ハハハハハ―――…ン?」

ヘルズゼウスは不意に何かが聞こえたような気がして高笑いを止めた。

少しの間集中していると、爆心地から炎が焼けていく音以外にも音が鳴っている事に気付く。

「ナンダ? ナニガ起コッテイル?」

ヘルズゼウスは自分の中に沸き起こる言い知れぬ不安に僅かながら恐怖していた。

自分が放った破壊光線を受けて無事なものなどいるはずが無い。それは目の前の破壊跡からも確かな事だろう。

しかし、いまその爆心地から強大なエネルギーを持った何かが生まれようとしている。

そんな機能が付いている訳ではない。だが、ヘルズゼウスは本能的な面から明らかに恐怖を感じていた。

PIiiiiiiiiiiiiiiiiiYuooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」

「ナッ!?」

爆心地の巨大な黒煙から突然、黄金に燃え盛り長い尾羽を持つエネルギー体の鳥が現れ、ヘルズゼウスは驚く。

黄金に燃え盛る鳥は黒煙の周囲を回りながら上空へと昇っていく。すると、その動きに合わせるように爆心地から黄金色の巨大な竜巻が発生し、黒煙を吹き飛ばしていった。

「ナニィ!?」

そこから現れた顔ぶれに驚きの声を出すヘルズゼウス。

その竜巻の中心には、腰が抜けたのかしゃがみ込んだルナと三人のライダー達が立っていた。

だが、彼らの姿は先程の姿から徐々に新たな姿に変わっていく。

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

三人が叫ぶと呼応するようにその身体が光に包まれ姿を変える。

 


NEXT PAGE

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース