「せーのでポーズ行くか!?」
「良いよ?」
「「じゃ、せーの!!」」
そう言いながら二人は姿勢を低めにする。
「ほ、本当にやるんですか!?」
「姫悸、付き合わなくて良い」
そしてあと少しでカウントが終わると言う時に男二人は動いた。
「「フェイク(ント)!!」」
シャッターが光る直前に二人はほとんど同じタイミングで肩を抱き合った。
「きゃぁ!?」
突然の二人の行為に驚く姫悸。瞬間、シャッターを切る音がした。その後彼女は取り直しを希望したが多数決で却下されてしまった。
その後、四人は何時もの様に話しながらそれぞれ帰宅する。それからも、四人はいつもと同じ付き合いをしていった。
そう、以前と変わらない…束の間の平和な日常を…
仮面ライダーR【リベンジ】過伝
FirstEpisode.2 [束間]
一年後、武志の一つしたの妹の相川未来が入学し、彼等は顔合わせに学食で昼食をとっていた。
「ねえ。兄(あに)さん、それ頂戴よぉ」
「やだよ」
「うわ〜、意地悪兄貴ぃ」
武志と未来が弁当の取り合いをしてじゃれあう。
「…仲の良い兄妹だな」
「そうですね」
「な〜」
あまり無駄に体力を使いたくない雫と晃は兄妹のやり取りを傍観する。姫悸は純粋に微笑ましい光景として二人を見ている。
「あ、そうだ」
唐突に晃が何かを思い出したように言う。
「あのさぁ。この中で今日暇な奴いるか?」
「特訓か?」
晃が尋ねると、未来と格闘していた武志が聞き返す。晃が変身できると話してから、三人は晃に出来る限り協力すると約束した。
特訓では晃が怪人との戦いに詰まった時、三人が知恵を出し新しい戦い方、必殺技を編み出してきた。
未来も偶然三人が特訓をしている場面を目撃した為顔見知りとなり、晃の変身能力も知りながら協力を申し出たのである。
「そうそう、今日はバイクテクを上げたくてさ」
「すまん。俺は吹奏楽部の練習があるから無理だ」
「私もだ」
武志と雫が申し訳なさそうに答える。雫の表情は特に変わらない様に見えるが。
「私は大丈夫です」
「はーい! はい! 私今日空いてますよぉ!!」
姫悸と対照的に元気よく手を上げて答える未来。武志と雫、晃は少し不安そうな表情になる。
何故なら付いていける二人はバイクに対しては晃と同じく素人だったからだ。
「やめとくか?」
「えっと・・・」
「あ〜! しず姉ぇ酷―い!?」
雫が不適な笑みを浮かべながら尋ねたのに対し、未来が講義する。
「ヒノッチ先輩もー! 私じゃ不満だって言うんですか!? 先輩が編み出した技は私が昭和ライダーから平成、新世紀物のビデオをテスト勉強とかすっぽかしてまで研究して発案したモノなのにぃ!? そこまでしてくれる健気な少女が手伝うと言っているのにヒノッチ先輩は何が不満なんですか!? あ、それとも先輩女の子と一緒が恥ずかしいとか? も〜、そうならそうと言ってくれれば良いのにぃ。そしたら私だって無理強いしませんよ〜」
「なあなあ、そういや次なんだっけ?」
「次は授業変更で美術室だってよ」
未来が自分の世界に入ってるのを無視して晃たちは次の授業の話をする。
「う〜…武兄ぃもヒッキー先輩もひどい〜。ツッコミの無いボケはすっごく辛いのに〜…」
「ならやらなければ良いだけだろうに…」
落ち込んだ未来を雫がなだめる。姫悸はその様子が可笑しくて微笑んでいた。
「ぅおっひょおおおお〜おお!!」
とある大きな川の近くにある、イク練習場の様な場所で、晃はかなり間抜けな声を上げてバイクを走らせている。
人目が無い場所だからか、それとも事故を起こした時の為なのか、晃は緑の戦士に変身してバイクの練習を行っていた。
「がんばれ〜」
「気を付けてくださ〜い」
未来と姫悸が声援を送る。等の晃は荒地を走らせるのに必死で二人の声を聞く余裕は無いようだ。
次はカーブを曲がる練習をしようと思い、荒地の中スピードを上げようとする。晃がスピードを上げてのを見て、未来はある事を思いつき悪戯を思いついた子供の様な笑みを浮かべる。そして晃がブレーキを駈けるであろう場所を見計らって大きな声を出す。
「頑張って! お兄ちゃん!!」
その言葉を聞いた晃は思い切りバランスを崩してしまう。
「うぉおおおおおおお!!?」
必死にバランスを建て直し、ドリフト走行してバイクを止める。余程驚いたのか晃は肩で息をしている。
「な、何だよオイ!?」
「あはは! やっぱり先輩も妹属性ですか〜? 萌えてますね!? やっぱり男はみんな狼ですか!? きゃー!!」
「み、未来さん」
悪戯に成功した未来は楽しそうに笑うが、姫悸は苦笑することも出来なかった。悪戯された本人も笑う気にはなれなかった。
「ホンっとやめてくれ…これ以外と…つかマジで怖いんだから」
晃は変身を解いてから二人に近づいて頼み込む。いくら変身したからと言ってもいきなり運転技術が身に着くわけではない。だから元から出来ない事は変身しても出来ない。だからこうして練習している。ついでに言えば変身しても痛いものは痛いし、怖いものは怖いのだ。
「大丈夫ですか?」
晃を心配して姫悸が声をかける。それに晃は苦笑して返事を返す。
「すみませ〜ん。でもヒーローはどんな恐怖や誘惑にも負けちゃいけないんですよ?」
「いくら何でもお兄ちゃんとか言う怪人は居ないだろ…て言うかオレはヒーローじゃないって」
「え〜。じゃあ私達がピンチになっても助けてくれないんですか〜?」
「…未来さん」
「は、はい!?」
子供のように話す未来に姫悸が静かに語りかける。
普段から小さな声で話す姫悸だが、その静けさは背筋に薄ら寒さを感じさせ明らかに怒っているものだと分かった。
その雰囲気に驚きつい気を付けの姿勢になる未来。
「駄目ですよ…これ以上日月さんに無理させるような事を言うのは良くないと思います」
「ご、ごめんなさい」
冗談で言ったのだが姫悸の勢いに押され、しゅんとなって落ち込む未来。そんな未来を見かねて晃が二人の間に入る。
「良いって…別に最初から助けに行く気無いから」
「う〜二人とも…か弱い後輩虐めて楽しいですか〜」
「か弱いって? って冗談だよ冗談」
惚けた様に話す晃に続いていじけた様に返す未来。姫悸はその二人のやり取りを見て少し沈んだ表情になる。
お互い本気で言っている分けではないが、相手と親しくなければ出来ない会話。姫悸は晃とそんな会話が出来る未来を羨ましく思っていた。
「日月さん」
唐突に姫悸が晃に話し掛ける。
「ん?」
「本当に無茶はしないでくださいね」
「…って言っても、もう危なくなったら普通に逃げてるけど?」
苦笑を浮かべながら答える晃。その為冗談に聞こえるが、実際晃は少しでも分が悪くなると即行で逃げていた。
「それって情けなくないですか?」
半分呆れ気味に言う未来。一度だけ晃が戦っているのを見ているのだが、彼が逃げ出していると思っていないからこそ冗談ぽく話しているようだ。
「元がヘナチョコだからな」
「そんな事ないですよ。日月さんは凄いです」
「…本当にそう見えるんだったら…この宝玉の力だろうな」
晃は自分の腹部に手を当てて言う。
「それって自分の意思がその力に乗っ取られてる〜とか?」
人差し指を向けて冗談半分に聞く未来。
「初めて変身した時はそうだったな」
「え?」
「…それって怖くないんですか?」
晃の答えに不安そうに尋ねる姫悸に対して、晃は少し不思議そうな顔をして彼女を見る。
「自分が自分でなくなるって…怖くないんですか?」
それは未来も聞きたい事だった。
冗談半分で聞いた事が事実とは思わなかったから、軽率だったと少し申し訳なく思ってしまう。
「全然とまでは言わないけどさ…もし乗っ取られたとしても…悪人じゃなければ別に構わないよ」
その言葉に二人は驚く。
「そ、そんな…」
「先輩!もっと自分を大切にしなきゃ駄目ですよぉ!!」
言いながら勢い付けて晃に詰め寄る未来。姫悸も一緒に詰め寄る。その勢いについ後ずさる晃。
「…オレってさ…何かきっかけが無いと行動できないんだ」
「どういう事ですか?」
言ってる意味が分からず首を傾げる二人。晃は頭を掻きながらどう伝えようかと少し考え込む。
「…例えば…自分が電化製品とかを修理できるとして、電化製品が壊れて従兄弟や友人が困ってたらどうする?」
「どうって…?」
「修理しようとするんじゃないでしょうか?」
「だろ? 自分の場合それが戦う為の力だって事。もしこの力が無かったら…誰かが困っていても何もしない根暗な奴のままだったと思う」
今もあんまり変わってないけどな、と付け加えて苦笑する。
「私は・・・・その力が無くても日月さんは今と変わらなかったと思います」
「そうか?」
「だって…どれだけ技術や力を持っていても、それを無償で他人の為に使う人はそうはいません」
微笑みながら誇らしげに話す姫悸。
「日月さん優しいから…困っている人を見過ごせないから…だからその力は日月さんを選んだんですよ」
「もっと他に良い奴いただろうに…かなり人を見る目無いなコレ」
そう言いながら自分の腹を撫でる。
「先輩って自分に素直じゃないですよね〜」
未来は呆れ気味にいう。
「だって、この世で一番嫌いなものが自分だから」
「そう言えばヒノ兄って好きな人いないんですか?」
「いないよ」
即答だった。
「早! 速すぎですよ先輩! コンマ一秒も掛かってませんよ!?」
実際、未来が言い終わると同時に返答していた。二人は返答の早さに驚いたが、姫悸の方はどこか安心したような、少し残念そうな表情だった。
「自分の性格分かってればそんな希望は無いって」
「そんなに自分を卑下しなくても」
姫悸はそう言うが本人は本当に諦めているようだ。
「でも、私は先輩の事、結構好きですよ?」
唐突に笑みを浮かべながら言う未来。晃は興味なさそうにしていたが、姫悸はその言葉に動きを止める。
「み…未来さん…それって?」
顔を赤くし、うろたえた様に聞く姫悸。晃は特に動じた様子は無い。
「あ、別に深い意味はありませんよ〜!」
その言葉に「だろうな」、と言って苦笑する晃にほっと胸を撫で下ろす姫悸。
ちょうどその時、夕刻の時間を知らせるメロディーが流れる。
「…そろそろ帰るか」
「それじゃあ先輩!護衛よろしく!!」
勢い良く敬礼のポーズを取る未来。
その様子に疲れたような、それでも楽しむような不思議な気持ちを晃は感じた。
(…まぁ・・良いか)
「良いよ」
少し迷った後苦笑しながら了解する。
「え? 本当に良いんですか?」
「あ、あの…私は大丈夫ですから」
本当に了解してくれるとは思わなかったらしく聞き返す。
姫悸の方は最初からその気は無く遠慮する。
「練習に付き合ってくれたし…送るぐらいはするよ」
「ありがとう、流石あき兄ぃ! やっさしーね!!」
「本当に良いんですか?」
未来は乗り気なのに対し、姫悸は遠慮がちに聞き返す。対照的な反応を返す二人の対応に晃は少し困りながら苦笑する。
「それじゃ、帰ろう」
そう言って歩き出す。
二人がバイクを持っていないので晃はバイクを押しながら、歩きで家まで送らなければならなかった。
「ところでジョー先輩」
三人で歩いている途中、未来が尋ねる。ちなみに真ん中が晃、左が姫悸で右が未来という並び方である。
「ん?」
「さっきの話なんですけど…私達が襲われても、本当に無理しないで良いからね?」
そう言うと少し俯いてしまう。その様子から彼女も晃の事を心配しているのだろう。そんな未来のを見て、一旦顔を逸らして晃は頭を掻く。
「…まあ、保障は出来ないけど気が付いたら助けに行くよ」
「先輩…無理しなくて良いって言ってるのに」
「大丈夫。無理だって思ったらそこら辺のハムスター投げて囮にするから」
「何故にハムスター!?」
晃のボケに質問する未来。本気で聞きたい訳ではなく、次に繋げる為の弱い突っ込みをいれたのだ。
姫悸はいつも通りのそのやり取りに微笑み、しばらくの間彼等はくだらない事を言い合いながら歩いていく。
「あ、先輩…ここまでで良いです」
「別に近いから家まで送っても良いけど?」
「そうしたら、姫姉と二人っきりになっちゃうじゃないですか」
「み、未来さん!?」
「それで?」
未来の言葉に顔を赤くする姫悸。
晃はその意味が分からず首を傾げる。
「先輩…鈍い」
そう言って人差し指を自分の額に当てる未来。するとその人差し指を離し、晃に突きつける。
「イチイチ一人ずつ送ってたら遅くなっちゃうでしょう? だからここら辺で先輩が帰れば後は女同士にしか出来ない話をして、ハイさようならって出来るじゃないですか!それともアレですか?興味ない振りして実は送り狼になろうとか思ってたり無かったりするんですか!?それはそれで良いけど」
「まあ、そう言う事なら別に良いけど」
いつものように早口で晃に話す。その速いペースが苦手な晃はたじろぐ。
「じゃあ、気をつけてな」
そう言いながらバイクを反対側に向けてその上に跨る。
「はい、有り難うございます日月さん」
「先輩、また明日ね!」
「ん、またな」
晃はヘルメットを被って二人に手を振り、バイクを走らせて二人の視界から遠ざかっていった。二人はそれに手を振って見送る。
晃の姿が見えなくなると未来は姫悸に向き直る。
「さてと…姫姉ぇ」
「何ですか?」
「ふふ〜ん」
未来は笑みを浮かべる。彼女の考えが分からず、姫悸は首を傾げる。
「さっきの姫姉、恋する乙女って感じで可愛かったよ?」
「え?」
「本当はもっと先輩と話ししたかったんでしょ?二人きりで」
何の事か解らない。といった表情をする姫悸をニヤニヤと面白そうに見ながら未来は言葉を続ける。
未来の言葉にハッとなり顔を赤くする姫悸。その反応を楽しそうに見ながら未来は走り出す。
「い〜な〜。好きな人がいる女の子って可愛い〜なぁ〜」
「ちょっ? まっ! 未来さん何の話しをしてるんですか〜!!」
姫悸は泣き笑いの情けない声を出しながら、楽しそうに大声を出す未来を追いかける。
未来は別に本気でからかうつもりは無かったのだが…ただ、素直に祝福する事も出来なかった。
これはその事に対する仕返し代わりだった。もちろん実際に姫悸は何もしていないのだが、女心は男以上に複雑らしい。
その思いの中心にいる男は単純なわりに、物凄く鈍いというのが問題だが。
「やっばいなー! 早く帰らねぇとロボット有史・乃武ナイガーがあぁぁぁ!!」
当の本人はその日のアニメが始まる前に家に帰る事に必死になっていた。
更に一年が過ぎ、卒業も間近に迫った休日。三年は得にする事も無くなったので、晃たちは卒業祝いに思い切り遊ぶ約束をした。
晃は今バイクを走らせ、武志たちとの待ち合わせ場所に向かっている途中なのだ。晃が信号で止まると不意に携帯の音が響いた。
道路の端に寄って停車してからヘルメットを外し、ポケットをまさぐって携帯を取り出す。
「もしも〜し?」
「アキ兄? 今…どこ?」
電話から未来の声が聞こえる。しかし、その声はいつもの明るさは無く、どこか怯えている様な印象を受ける。
「大体、あと三十分位で約束の場所に着くと思うけど…どうかしたか?」
「さっき…武兄たちが近くのデパートに入ったんだけど…何かおかしいの」
「どういう意味?」
話が掴めず晃は尋ねる。一瞬、悪戯かと思ったが今の未来からはそんな余裕が全く感じられなかった。
「そのデパート…閉店時間でもないのに全部の出入り口を塞いだの」
「何か事故でもあったんじゃん?」
「それだったらお客さんは外に出すと思います。それに…何だかよく分からないけど……凄く嫌な予感がするんです。だから…」
「わかった。なるべく早く着くようにするから、予定の場所にいて」
「はい」
未来の返事を聞くとすぐに携帯を仕舞い、バイクを走らせる。
「…クソ!!」
この時、晃は異様に嫌な予感がした。だからスピードも気にせず早く友人の元に向かう。
でないと…二度と友人と会えなくなってしまう様な…そんな予感があった。
「せんぱーい!!」
ゲームセンターの入り口で未来が手を振って晃を呼ぶ。未来を見つけた晃はそばに寄ってバイクを止める。
「で、場所はどこ?」
「えっと、こっちです」
そう言って未来は走り出す。晃は慌てて近くの駐車場にバイクを止めて後を追う。
(何だこの感覚は?)
走って行く内に晃は例の感覚を捉えていた。しかし、今感じているものはいつもと比べ物にならないほどだった。
例えるなら何重にも音が重なって鳴り響く様な、質ではなく量のある感じなのだ。
「ここです」
あるデパートの前で未来が止まり、晃は無言のままデパートを見る。
晃はそのデパートを見て、今までに無い位嫌な予感がした。いや、見てからでなく、ここに来るまでにも晃は奇妙な違和感に包まれていた。
「先輩…気付いてますか?」
「?」
未来は不安でたまらない表情で晃を見て、晃は何の事か分からずただ未来に振り返る。
「このデパートの周りだけ…人がいないんです」
「え!?」
未来の言葉に驚き、周囲を見渡し、そして晃はようやく先程からの違和感の正体に気付いた。
言葉通り、周りには晃と未来の二人以外誰もいなかった。
そう遠くないゲームセンター周辺から続いていた人波が、このデパートの周辺から消えていたのだ。
「ぅ……」
晃は今までに無い不安に苛まれる。
今までにも、怪人たちが殺人を行っている場所には人が寄り付かなかったが、ここの様に人通りが多い場所で行動する事は一度も無かった。
この事から明らかに今までと違うと考えられる。
それだけでなく、デパートの中から無数の気配を感じる。そんな中で生身の人間が生きていられるだろうかと、晃の中で最悪の想像が浮かぶ。
「先輩…お願い」
ただ呆然とデパートを見ていると、未来が不安げに呼びかける。
「お願い。皆を助けて!!」
未来は涙ぐみながら、晃に縋り付いて頼む。
「…分かった」
晃は不安を拭い去るかの様に未来の頭を撫でる。それで不安が治まるものではない。だが、未来はその手が何より頼もしく思えた。
「何とかする」
そう言うと手を離し、未来から離れて背を向ける。
「…変身!!」
気合を込める様に叫び戦士へと姿を変える。
晃は戦士の姿に変わると、デパートの自動ドアに近づき拳を叩き込む。しかし、その拳は不可視の壁にぶつかったかの様に中空で止まる。
「な!?」
戦士は驚き、拳を弾かれて後ずさる。
「先輩!?」
戦士はもう一度、今度は勢いをつけた蹴りを叩き込もうとする。だが、それもドアに当たる前に中空に止まり弾かれる。
「なんだこりゃあ?」
「…結界ってヤツですか?」
これでは中に入り様が無く、二人はドアから離れて少し考え込む。
「…どうしよう」
この常識では考えられない事態に、未来は更に不安な表情になる。
「多分、大丈夫だって」
「え?」
戦士が未来の頭を撫で、顔を上げてデパートの屋上を見上げる。
「じゃ…行ってくる」
そう言うと戦士は足を高質化させてから大きく飛び跳ね、その足をデパートの壁に引っ掛けて垂直に駆け上がる。
「ッシャァアアアアアアアアアアアアア!!」
戦士は咆哮を挙げながら壁を登っていく。
「お願い…します」
未来はその姿を見ながら四人の無事を祈った。
FirstEpisode. [束間]Closed
To be continued next Episode. by −無情−
設定資料
相川 未来 (あいかわ みき)
当時16歳
うるさいほど良くしゃべる、明るく元気な武志の妹。
武志と同じように広い友人関係を持っているが、事件が起こるまではほとんど武志達四人と一緒に行動していた。
晃のあだ名を変えるのは、彼に特別な感情を抱いていたからなのだが本人は気付いていない。
ボケてはよく晃と武志に突っ込みを入れられた。