<N県ものみの丘の遺跡 20:22PM>
N県に現れた遺跡。
その内部も大部分県の警官が調査し終え、今日は数人の警官が最終的な確認をしに来ていた。
「今日でやっとここの調査も終わりますね、大野木さん」
「そうだな」
「でも、未確認とか出なくて本当に良かったですよ。これ以上あんなのが出たらどうしようもないですから」
「同感だ」
この遺跡が出現したという連絡を受けたほぼ全員が新たな未確認生命体の出現を危惧していた。だが、そんな不安とは反対に遺跡の調査は何事もなく進んでいた。

二人の警官が調査が終わる事と新しい未確認が現れなかった事に安堵している頃。
彼等より一足先に遺跡の奥に進み、新しい部屋を見つけた警官がいた。
「ここは…なんだ?」
その警官は、他の部屋も特に問題なく調べられた事から何の警戒もなく部屋の中に入っていく。すると、警官の目に妙な紋章らしいものが刻まれ、人一人納まりそうな石棺が安置されていた。
その石棺には上半分あたりに、大き目の剣が突き刺さっているように見える石像とも言えそうな石飾り。
鍔のように見える部分が何重もの鎖に絡められ、鎖は部屋の別々の方向に隅々に繋げられている。
「まさか、この中に未確認がいる…なんて事ないよな?」
他の部屋と違う異質な空気に恐怖し、そう呟きながら振り返る。

「ギャァアアアアアーーーーー!!」
「何だ今の悲鳴は!?」
「奥からです!!」
遺跡の奥から聞こえてきた悲鳴に、談笑していた警官達は驚き現場に向かって走り出す。
走っている途中、分かれて調査していた班員と鉢合わせになる。
「どうした!? 何があった?」
「俺達じゃない! あっちだ!!」
慌てながら警官達は悲鳴が聞こえたであろう道に顔を向ける。
それに合わせるかのように、通路の奥から一人の警官が歩いてきた。
「山崎! なにかあったのか!?」
「…ナニも、タダ、転んだダケ…です」
その言葉に警官達は呆れながらもホッと胸を撫で下ろす。
そして、今度は全員そろって遺跡の調査を進めていき、特に異常なしと判断して解散となった。
だが、彼らは気付かなかった。
隠し部屋にあった石棺が何重もの鎖諸共消えていた事に。
そして、山崎と呼ばれた警官の足元に影が無く、人知れぬ場所で灰化した事さえも。

仮面ライダーR【リベンジ】
魔を知る者編
Episode. 9[想魔]


<N県ものみの丘の遺跡 9:48AM>
警官達が安全を確認した日の翌日。
新たに出現した遺跡の存在を察知した国島浩輝は、人のいない時を見計らって遺跡へと赴いていた。
「予想以上に人がいないな」
実際は先日の夜に調査を一旦終わらせている事を知っているから悠々とこの遺跡にやってきたのだが、仕切りのロープや立ち入り禁止の表記があるだけで、見張りどころか人の気配もない。
その事に少々気抜けしながら、浩輝は眼前に見える遺跡へと足を踏み入れていく。
(…め……げて)
「?」
遺跡の入り口と思われる場所に入った途端、微かに人の声が聞こえた様な気がして立ち止まる。だが、人の声は聞こえず、代わりに妙な感覚が全身に付きまとう。
それは彼にとって懐かしい感覚だった。
浩輝は気を引き締め、ポケットに入れてある∀の刻印が入った黒色のホルダーケースを取り出す。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか…」
懐からライトを取り出し、通路を照らしながら進んでいく。

<警視庁未確認生命体対策本部 10:28AM>
警視庁未確認生命体対策本部。今ここではN県に突如現れた遺跡についての会議が行われていた。
「…という事で現地の警官達の調査では、この遺跡には未確認生命体は出現はしないものの…妙な仕掛けが少数施されているようです」
現地から送られてきた資料を見ながら説明する男性に警視庁の幹部が神妙な顔つきになる。
幹部だけでなく他の署員も態度は様々だが、同じ疑問を抱いていた。
「仕掛けと言っても命を取るようなものではなく、部屋の開閉などが殆んどのようです。そして、もう一つ気になる事を現地調査した警官から連絡がありました」
「気になる事?」
「こちらの写真を見てください」
そう言うと男性はホワイトボード上にある数枚の写真を指差していく。
それ等はものみの丘の遺跡内部にあった二体の甲虫が映し出されているものだった。
「これは新たに現れた遺跡に二体置かれていた建造物ですが、この内片方が調査中、華音遺跡にあった建造物のように何処かへと飛び去っていったとの事です」
「片方だけって言うと、もう片方はどうしたんだ?」
未確認対策本部内において、未確認生命体第3号・カノンの正体を知る国崎往人が尋ねる。
「はい。残った一つは本日発掘作業員等が現地に赴き、N県立大学研究室に運び込む予定で…その後より詳しく遺跡内部の調査も行うそうです」
引き続き遺跡内の調査内容が報告される中、国崎は報告に会った二体の聖凱虫について考えていた。
(前に見たヤツは祐の字が近くにいた時に反応していた…そして、あいつが危なくなった時、あいつを助けに現れていた)
彼は以前華音遺跡から発掘された聖凱虫を目の当たりにしている。
一度は報告にあった様に何処かに飛び去り、その後は第3号・カノンが窮地に陥った時に現れた。
(だが今回のヤツは、あいつがいない時に動き出した…しかも、美鈴の件の後にも未確認とやり合ったらしいがその場には現れなかった)
色々と考えてみても明確な答えは浮かばず、ただ困惑するばかりだった。
(またあいつに聞いてみるか)
国崎の頭に古代文字の解読をしている美坂香里の存在が浮かぶ。
少し気が乗らないが自分だけで考えても埒が明かないし、古代文字の新しい解読結果が聞けるかもしれない。
問題は以前置き去りにした事をネタに、何かしら文句を言われないか。それが心配だった。

<N県ものみの丘の遺跡 10:41AM>
(何だ…ここは?)
遺跡内部を調査しつつ、浩輝は奇妙な存在を感じ取っていた。
その所為で身体全体が緊張しきっていて少し疲れが出てきていた。
コッコッコッコッコ…
暫らく通路を歩いていると壁に阻まれ行き止まりになってしまう。
浩輝は仕掛けが無いか、ライトを適当に移動させて内部を調べていく。
「シャァ」
「ん!?」
不意にライトに黒い影が映り、それを正体を追って照らし出そうとする。
「グァァアアア!!」
影は横から奇声を上げながら浩輝に飛び掛かっていく。
寸前で気付き、前のめりに駆け出し影の腕をかわすと手に持ったホルダーケースを左手に持って目の前にかざす。すると何も無い空間から機械的なバックルのようなベルトが出現し、回転しながら浩輝の腰に装着される。ベルトが装着されると浩輝は右腕を曲げ指は伸ばした状態で左肩に持って行き、左手は腰に落とした感じで構える。
「変身!」
一言叫んでから左手に持っていたデッキホルダーを腰のバックルに差込み、その直後に右手でバックルのレバーを引く。
『SET IN』
すると機械的な声がするのと同時にデッキを差し込んだ部分が回転し、∀の刻印の変わりに丸い鏡が前面に出され、さらにその鏡から浩輝の全身を覆う程の鏡が正面に現われる。
浩輝はその鏡に飛び込むと浩輝の身体が鏡に吸い込まれ、同時に鏡は一回転して砕け散り、中から銀色の鎧に身を包み、赤い鋭く尖った目をした銀色三本角の仮面をつけた戦士・ファングが現われる。
「さて、やりますか!」
ファングは自分のベルトの後ろ腰に取り付けてある、箱のように収容されている長双の鎌を取り出す。
影は再びファングに飛び掛るが、それを長双鎌で弾き切り付け弾き飛ばす。
だが影、イモリの様な姿をした怪人は物ともせずにファングに肉薄していく。
「っく!!」
しつこくしがみ付いてくるイモリ怪人を長双鎌で裁き、背後を取って脇腹を突いて壁に叩きつけそのまま押さえ込む。
そのまま流れるような動きでファングはベルトのバックルからカードを三枚取り出す。
―キィィィィン…ィィィィィン…ィィィィン―
「?」
一瞬、脳裏に人外の者を感知した警告音が鳴り響く。
ファングは横に飛び退きながらカードを鎌の峰部分にある溝、カードリーダーにスライドさせていく。
『ショット、ファイヤー、ストライク』
三枚のカードはカードリーダーを通り、青く燃え上がる。
だが、その三つの炎はファングの元に集まらず、それぞれ別方向に近くの壁画に吸い込まれていく。
「!?」
突然の事に驚きの声を上げるファング。
更に驚く事に炎が吸い込まれた場所の怪人の絵が燃え上がり、絵が徐々に厚みを増してついにはそれらが三体の怪人となって壁から剥がれ落ちる。
新たに生まれ出たソレ等は、着地すると二、三度首を左右に動かして互いの姿を確認して頷き合い、ファングに襲い掛かっていく。
「これは!?」
これまでに起こり得なかった出来事に困惑しながらも、ファングは長双鎌をバトンの様に振り回し怪人達を裁いていく。
牽制しつつバックルからカードを引き抜こうとして動きが止まる。
もし、カードを読み込む度に先程の様に怪人が増えてしまったら。そんな考えが頭を過ぎる。
だが、その一瞬の迷いが隙となり、怪人の拳が叩き込まれてファングはよろめく。
「ちっ!!」
更に左右から二体の怪人がファングに飛び掛る。
大してダメージが無かった為にファングはすぐに反応し、体ごと回転して長双鎌を振るう。
鎌の刃と接触し、怪人達は腹部から火花を飛び散らせながら弾き飛ばされた。
だが致命傷には至らず、すぐに立ち上がり今度は四体揃ってファングに迫っていく。
(これは不味いな…)
カードの力が使えなければ自分の力の大半が無くなったも同じ。
この状況を打開するにはカードが使える場所まで移動する必要がある。
「面倒だが仕方ないか」
結論付けたファングは一先ず遺跡から抜け出る事にした。
原因が何かは分からないが、この遺跡に入った時から感じる妙な感覚を感じているから遺跡内では使わない方が得策だろう。
頻繁に後ろを確認しながらファングは出口まで走っていく。
迷路の様な通路の所為で度々追いつかれたが、固体によって素早さが違う為に一対一の戦闘になるので二、三回攻防を凌げばすぐに逃げられた。
だが、徐々に怪人達もタイミングを合わせてファングに飛び掛っていき、やがて取っ組み合いとなる。
「くぉの野郎オオオオオ!!!」
ファングは腕に全力を込めて力任せに長双鎌を振るう。
その所為で全体のバランスが崩れ、回転しながら壁にぶち当たり石垣の壁が砕かれる。
ドグァアアアン!!
パラパラと音と砂煙を上げながら怪人達とファングは転がり込むように遺跡の外に飛び出していく。
「いったた…ここは…外か!? ここなら…」
頭を抑えながら周りを確認すると、ファングはバックルからカードを引き抜きスライドさせていく。
『サンダー・セイヴァー・ソニック』
三枚のカードが青く燃え上がり、長双鎌の鎌が折りたたまれるとそこに青い炎が宿り、新たに大振りの刀が装着される。
「ハァアアアアアア…」
長双刀を両手で構えると、両方の刀から青い放電現象が発生する。
怪人達が足を縺れさせながらもファングに向かって飛び掛りに行く。
「セィィヤアアアアアアアーーー!!!」
ファングが長双刀を大きく振るうと、青いエネルギー刃が二つ弧を描き放電現象を起こしながら打ち出される。
そのエネルギー刃は四体の怪人を切り裂き、怪人達は身体全体に電撃を帯びて数瞬よろめいた後、爆発四散した。
「フゥ…」
一息つくとファングは遺跡へと顔を向けた。
最初のはともかく、自分の力に反応して現れた怪人。それは彼が人知れず戦っていたものと酷似していた。
「ここが化け物のアジト…なんて事はないか」
そう呟きながらファングは砕けた壁から、再び遺跡内部へと入っていった。

<??? 11:19AM>
何所とも知れぬ薄暗い部屋。
そこには、ものみの丘の遺跡に安置されていた棺が安置されていた。
棺上半分あたりに刺さっている大き目の剣の鍔が何重もの鎖に絡められ、部屋の別々の方向隅々に繋げられている。
全く違う場所だというのに、まるで最初からその場にある物の様に鎮座している石棺。
その異質な空気を放つ部屋に幾つかの人影が集まっていた。
「これがそうなのか?」
眼鏡を掛けた男、黒沼が訝しげに周囲の人影に問いかける。
「はい、その通りです。この棺に本当の我々が封印されているのです」
「本当のキミ達?」
ブレインの言い方が引っ掛かり、視線を向けるがブレインは小さく笑みを浮かべるだけで答えない。
「まあ良い…今回のデータがあれば世界を繋ぐ扉を完成させる事が出来そうだ」
「出来るだけ早くしてくださいよ…それが無いと我々が表立って暴れる事が出来なんですから」
「随分楽しそうね…ブレイン?」
暗い部屋に響く女性の声。
それを聞いた事で黒沼を覗いた部屋にいる人影の体が強張る。
「ぉぉ…もうこちらの世界に来れたのですか?」
普段偉そうにふんぞり返っているブレインが目を見開き、崇める様に話し掛ける。
近づいてくる女性の足元には毛むくじゃらのボール、ポールが付き添うように歩いていた。
「申し訳ありませんム〜。報告が遅れましたム〜」
「な〜にをやってたんだい? ポール〜?」
「セ、セイ様!? こっこれは直接報告したほうがいいかな〜ってぇ〜…って何かあった…ムゥ〜!?」
セイは無言でポールを持ち上げて両脇をつねって引っ張り始めた。どうやら何か嫌な事でもあったらしい。
そのやり取りを無視して鎧の男、ナイトは突如現れた女性に目を向ける。
(何だ? この女…この薄ら寒い気配は?)
ナイトの視線に気付いた女性は何も言わずに微笑み、ブレインは『ああそう言えば』と彼女について話していない事に気付く。
「フフフ…そんなに怖がらなくても殺したりしないから安心なさい」
「そうですよナイト。彼女は我等の長の一人なんですから」
「何だと!?」
ナイトは驚きの声を上げながら、信じられないといった様子でブレインと女性を見比べる。
「ま、それは置いとくとして…どうでしたこの世界は?」
「平和で退屈するかと思ったけど…面白い人に会ったわ」
「ほう、それはそれは」
と相槌を打ちながらブレインは多重の鎖に絡め置かれている石棺に目を移す。
「この封印…貴方の力でも壊せませんかね?」
「無理ね。例え完全な力が戻ったとしても、私が生きてる間はこの封印は解けない」
「やはりそうですか」
「まずは、私の力を封印している要因…封印されたクラウドと新しいデーヴァの戦士をどうにかする事ね」
最後の言葉を言った時、女性の表情が僅かに曇る。
(けどなにかしら…あの力は確かにデーヴァのものだった……けど)
彼女の脳裏に以前の戦士の姿と今代の戦士・クルスの姿が映し出される。
(不安定すぎる…気の所為かしら?)
「どっちも大丈夫だよ。クラウドは次元の扉が繋がれば僕等の力と一緒に解放されるし、今のデーヴァは前より雑魚だからね……いつでも殺せる」
女性が顎に手を添えて考え込んでいるのをセイが笑って一蹴する。
「兎に角、今は次元の扉を開いて仲間達をこちらに呼び寄せることだ」
「そうですね。私もそろそろ思い切り体を動かしたいですし…彼等を試す事も出来ませんからねぇ」
それ以降、誰も話すことは無いとばかりに黙り込み、一人一人そこから出て行った。
最後に女性が残り、石棺に近づいてゆっくり手を伸ばす。
バチン!!!
激しく火花が飛び散り、触れてもいないのに物凄い衝撃で手が弾かれる。
女性は黒く焦げた手を擦りながら石棺を見つめる。
「妙な気分…これは……貴方はなんと言うモノか分かるのかしら?」
女性は呟きながら自嘲気味に笑う。
何をしても満たされない。満たされないが故に快楽を求め戦っている自分。これが虚しさと言うものなのか、はたまた別の勘定なのか。
女性は指を広げ、氷の十字剣状の槍を作り出しそれを床に突いて自分は壁にもたれ掛かる。
そして、顔を上げて天を仰ぎゆっくり目を瞑っていった。

<ものみの丘の遺跡 11:31AM>
ファングは変身を解かずに遺跡の中を調べていく。
彼は意識しながら人でない者を感じ取る事の出来る能力を使い、遺跡の中で妙な感覚を捉えその場へと向かっていた。
やがてやや広めの個室に辿り着くが、部屋の中に何も無く、行き止まりになっている。
「この奥か」
自分の感覚がその奥に何かがある事を伝えている。
ファングは正面の壁に手を当てながら左右に腕を動かし、何か無いか探っていく。
すると、壁の端に辿り着いて所、肘の高さ辺りで他の部分と違う感触がする事に気付き指を動かす。
そこは小さいがスイッチらしいものが三つあり、その内真ん中にあるスイッチを押し込む。
―ゥ…ウーーーーン―
妙な機械音と共に通路から見て正面の壁が、横にスライドしながらゆっくり開いていった。
ファングは先程のような奇襲を警戒しながらその部屋に入っていく。
「?」
そこで、赤外線センサーの役割も出来るつり上がった赤い瞳が、部屋の中央に在る石版を捕らえた。
「これは?」
そこには様々な人型の動物・獣人と、人間が争っている様子が描かれていた。
左側に獣人、右側に人間が陣取り、石版の中央には太陽の様な輝きを背に持った者とそれに付き従う者達。
「ん?」
そのまま下の方に顔を向けていくと、石版の手前に写真起てのような物がある事に気付く。
「これは鏡…いや、カードか?」
台座に立てて置かれたソレは明かりの無い部屋にあるにも拘らず、太陽の光りを反射しているように輝いていた。
ファングはそのカードに惹かれる様にバックルから一枚のカードを取り出す。
そして、腰から取り出した長双鎌のカードリーダーにスライドさせて、台座のカードに向ける。
『REALIZE』
青い炎が長双鎌のカードに向けた部分に吸い込まれ、そこから青い光線が伸びて鏡に吸い込まれる。
「!?」
青い光りを受けたカードは目映い光を放ち、それはやがて部屋全体を包み込む。
光に飲まれる中、ファングは自分の身体がその部屋とは別の場所に吸い込まれていくような感覚を覚えた。

<??? ???>
「…ここは…どこだ?」
意識が戻った時、そこは真っ暗闇だった。
いや、ただの暗闇ではない。ただの暗闇なら変身している状態なら何の問題も無く周りが見える筈だ。
だが、よく周りを観察してみても、ただ黒一色の世界が広がっているだけだった。
ただ立っているだけでは何も分からないと判断し、ファングは真っ直ぐに歩いていく事にした。
四歩目が出かかった所で目の前の暗闇が灰色掛かり、何かの映像が写しされていく。
「これは!?」
モノクロの映画を上映するように、突如現れた目の前の映像にファングは少しばかり放心状態になった。
映像の中では生物とは思えない異形の怪人を従えた自分と似た姿の、いわゆる仮面ライダー達が争っている。
『ウラァ! くたばれェエエーーー!!!』
『ハァ!!』
『グゥルルルルルルルゥ!!』
『ピィイイイイイイイイイイ!!』
『やめろ! こんな事して何になる!?』
『離して!! 私はまだ死にたくないの!!』
『浩輝、ひとまずブッ飛ばそう! じゃないと話も出来無い!!』

目の前に映し出された光景は、ファング・浩輝が学生の時に起こった出来事に関係している映像だった。

数年前。
この世界で未練を残した者達の想念が生み出した魔物が暗躍していた。
彼らの存在に気付いた者達は、彼らを人の想いが形になった魔物『想魔』と呼ぶようになった。
彼らの存在に気付くと同時にその力を利用しようとする者が現れ、幾つかの擬似戦闘生命体を生み出した。
その後、それらを元にライダーシステムと呼ばれる対想魔専用兵器が生み出され、幾数人もの人に渡された。
想魔を生み出す謎の力。
それは貯まりに溜まった人の想いを、欲求を擬似的に満たし、仮初めの姿を与えるというもの。
―最強の称号を得るほどの心身を持つ者なら、その力をコントロールして如何なる願いも叶えられるだろう。―
そんな言葉に踊らされて始まったバトルロワイヤル。

目まぐるしく変わる映像に浩輝は胸が締め付けられるような、何とも言いがたい感覚に苛まれる。

『広明!! おい…しっかりしろ!! 死ぬな!!』
『…ぁ……ひ…ろ……これで………ぇ…の願い…叶え…ろ……ゃ』
『……!!』

やがて、その戦いに関する映像は彼が知る限り次で終わりになる。
映し出された映像には、昔の自分が戦いの発端となった物体が変化したモンスターを破壊している姿が映し出される。
戦ったライダー達の中で、自分はある意味願いを叶えたと言えるだろう。
普通の人間として、平和に…静かに暮らしていくというささやかな願い。だが、そこで全てが終わった訳ではなかった。
「まさか…ここは」
仮面の下で浩輝が呟く。
戦いが終わった直後、浩輝は妙な空間に放り出された。その妙な空間で、浩輝はある存在と話をしていた。
思い出してみると、あの空間はこの真っ暗闇の遺跡だったのではないかと思う。
この場のように真っ暗な闇の中、一人の少女が自分の目の前に現れて自分に話しかけてきたのだ。
助けて欲しいと。
実際には拙い途切れ途切れの言葉だったが、唇の動きと彼女の表情がそう語っていた。
だから自分は残った資料から数年間掛けてライダーシステムを作り出し、彼女を救おうと決心したのだ。
それが少しだけ、戦いの中で救えなかったライダーや親友に対しての罪滅ぼしになる気がしたから。

―来て…の…ね―
「!?」
突然聞こえた声にファングは瞬時に周りを警戒しながら身構える。
すると目の前の空間が徐々に歪み、そこから一人の少女が現れる。だがその身体はかなり薄く透明で、幽霊の様な存在だった。
「キミは…あの時の」
ファングがそう呟くと少女は嬉しそうに微笑む。まるでようやく気付いてくれた。そう言っているかのようだ。
彼女の雰囲気にファングは何故か、自分でも驚くほどあっさりと警戒を解いていた。
「キミが俺を呼んだのかい?」
―…ぅ…す―
少女はファングの質問に答えるが、どういう訳か声がほとんど聞こえない。
仕方なく、ファングは唇の動きと彼女の表情の一つ一つを注意して読み取っていく。
―アナ…に…ぃが…あ…私……の…世界……光り……石……もつ人……の……に…れて……ぃっ…―
「あなたに…お願いがあります。私を、この世界にいる…光りの……輝石? を持つ人の所に連れて行って?」
ファングが復唱すると少女は首を動かして肯定する。
「連れて行くのは良いけど…俺はその輝石っていうのを持ってるやつが何所にいるのかは―」
―カ……が…ち・いて…す―
「カード? ここに来る前に見たアレの事か?」
―ここ…のカ…のな……しは…ぁる……と…に…ん…て・…す―
「ここは、あのカードの中? 私は…あるものと…共に……封印…されている?」
そう復唱し、少女が頷こうとした時、何所からか奇妙な感覚が押し寄せてきた。

《ヴォォオオオオオオオオ”オ”オ”オ”О―――――――――――〜〜〜〜〜〜〜〜ァ”ァ”ァ”ァ”……》

遅れて、獣とも人の叫びとも機械の音ともつかない奇声が、ファングの身体に妙な衝撃を与えていく。
「!!…今のは何だ!?」
衝撃が過ぎ去ると、腕を振るって痺れの残っている身体に活を入れる。
そこでファングは今身体に感じる震えは衝撃ではなく、恐怖心から来る振るえだと言う事に気付く。
―ココは…キ・ケ・ン……早く…に…げ…―
「ああ、情けないけど、こりゃヤバそうだ」
そう言うとファングはベルトのバックルから一枚のカードを取り出す。
グォン!!!
「!!?」
瞬間、凄まじい殺気が津波の様に押し寄せ、あまりの殺意に身体の動きが止まってしまう。
ファングの様子を見た少女は彼を庇うように、両手を広げて巨大な殺気の波を自分の背中、いや身体全体で止める。
―は…や…く―
ファングは頷き、すぐにカードを背中のボックス状の鎌のカードリーダーにスライドさせる。
『ESCAPE』
機械的な声の後にファングの身体が青い光りに包まれ、飛び去るようにその場から消え去った。
しかし、ファングはその場から離脱する際、その殺気を放つ存在とは別の存在を見つけた。
今の自分はカードの効力で、他人と出会う筈の無い異空間のトンネルを通っている筈。だが、その存在は確実に自分に眼を向けていた。
肩に左右に向かって伸びる羽のような棘が生え、炎の様に天に向かって伸びる刺々しいショルダーアーマー、肘にも同じく棘と黒色の刃が伸び、両手首から赤い鉤爪、二の腕から刺々しい鰭。足の踵には天に向かうような赤く鋭い棘、膝も同じように伸びる赤い刃。
全身が黒く染まっており、まるで爬虫類の目の様な不気味さを表す赤黒く染まった眼に暴君を思わせる禍々しい角。
その存在は人目で幻だと分かり、同時に言葉で表す事の出来無い恐ろしい存在である事が知れた。

<ものみの丘の遺跡 13:10PM>
バシュィイイイイイイイイン!!
「ウォ!?」
弾かれる様にファングはカードの中から飛び出し、激しく床に身体を打ち付ける。
「いってて…!」
ゆっくり身体を起こし、脇の辺りを擦りながらベルトのレバーを引っ張る。
『REVISED』
機械的な声と共にバックル部分が回転し、∀の刻印が前面に出されると体の周りが透明な鏡に覆われ一回転するとファングは元の人間の姿に戻る。
そして、浩輝は振り返って石版に近づき、手前写真立ての様なものに置かれているカードを手に取った。
「…これが全ての元凶なのか?」
カードをまじまじと見ながら呟くと、胸の内に様々な思いが沸き上がり渦巻き、思わず顔が曇ってしまう。
浩輝はそのカードをデッキホルダーケースに仕舞い込み、ズボンポケットから携帯電話を取り出して現在の時間を確認する。
「もう昼過ぎか…流石にこれ以上留まるのは不味いな」
やれやれといった風に携帯を戻しながら溜息をつく。
もう少しこの場を調べれば何か分かるかもしれないが、迂闊に人出くわす危険は避けるべきだろう。
そう判断すると、浩輝は上着の内ポケットからカメラとライトを取り出し、手早くその部屋の要所要所を写真に収めていく。
適当な所で取るのを止めて、浩輝は早足でその場を去っていった。

<城西大学考古学研究室 18:53PM>
パソコンのキーを叩く音が研究室に響き渡っている。
美坂香里はパソコンのディスプレイ見つめ、これまでの古代文字の解読結果を見直していた。
そんな彼女に後ろからズイっとコーヒーを入れたカップを持った手が差し出された。
「ほらよ」
「もう少し気の利いた出し方をして欲しいわね」
「ぐ…今度から気をつける」
ワナワナと肩を震わせながらカップをテーブルに置くのは国崎。
予想通り彼は香里に以前置いていかれた事を引き出して虐められていた。
(もう過ぎたことだろうが!!)
表立って文句を言いたかったが、後が怖いので黙って言う事を聞いているのであった。
「で、なんの用?」
「おい」
「冗談よ」
国崎は新たに出現した遺跡の事を香里に伝えにきていた。
わざわざ研究室まで来たのは、色々と香里に主導権を握られていたからに他ならない。
そして、大まかに現在分かっている事を香里に伝え現在に至る。
「で、コイツの事はどう思う?」
国崎は報告に会った二体の聖凱虫の写真を見ている香里に意見を求める。
「正直分からないわ…でも、この二体の内一体はどこかに飛び去って行ったのよね?」
「ああ、だが行き先は不明で現在調査中。残ったやつは逆に全く動く気配なしだ」
そこで香里は言いよどむように言葉を切り、小さな声で呟く。
「もしかしたら…相沢君以外にもカノンとして戦っている人がいるのかも」
「やっぱりそう思うか」
報告を受けた時、国崎もその考えに行き着いていた。
激化する未確認との戦いの中、新しい仲間が加われば心強く思うのも確かだった。
「以前相沢君が佳乃ちゃんの故郷に行ったときに、第3号に似た戦士が未確認と戦って人を助けたらしいけど」
「そうなのか?」
「聞いてないの?」
香里の言葉に国崎は首を振る。
祐一達が休んでいるとき、彼は蜂種の未確認生命体に対する報告などで忙しかった。
それに未確認の事故処理は自分達の仕事で、余計な事を言って祐一を休みを邪魔するのも気が引けるというものだ。
「っと、そうだ…もう一つ見てもらいたいものがあるんだった」
そう言って国崎は数枚のプリント写真を取り出し香里に渡す。
「これは?」
「ついさっき本部に送られてきた資料でな…その中で一つ気になる物があった」
「気になるもの?」
一枚一枚写真をめくっていく香里。
その手が一枚の写真を見て動きが止まる。
「これ…」
香里が今持っている写真。
そこには浩輝が見た石版の人型の動物・獣人と、人間が争っている様子が描かれていた。
左側に獣人、右側に人間が陣取り、石版の中央には太陽の様な輝きを背に持った戦士とそれに付き従う二人の戦士。
三人を守る様に光りの龍と鳥が翼を広げている様子が描かれている。だが、真に注目すべき所はそこではない。
その絵の上側には悪魔を思わせるようなデザインを施された黒い戦士の絵、その存在を守るように下には5体の戦士の姿が描かれていた。
何故それらを戦士と呼ぶのか。
それは、彼等の姿が戦士カノンの姿と酷似していたからだ。
一番上に描かれている黒い戦士の姿は五年前、黒麒麟と戦ったカノンの姿そのものだった。
すぐ下の5体の戦士はそれぞれ剣を構えた戦士、弓矢を構えた戦士、槍を持った戦士、拳を掲げる戦士の姿、法衣を来た獣人の姿。
そして、中央より下側には太陽の輝きを背負った戦士が、より禍々しい姿のカノンに剣を突き立てている。
それに合わせる様に、絵の一番下の方にはカノンと共に5体の戦士と獣人が地の底へと追いやられていく。
左右では二体の光りの獣がまるで、地の底に落ちていくカノン達を見張るかのように翼を広げ、その下の大地を人々が歩いていく様が描かれていた。
「これは何だ?」
「そんなの、分かるわけ無いでしょ」
そう返しながら香里はこの絵から嫌なイメージしか伝わらなかった。
これはまるで、カノンが悪の根源の様に見えてしまうではないか。
二人は暫らくの間黙り込んで写真を見続けた。


Episode9[想魔]Closed.
To be continued next Episode. by MaskedRider Revenge
Fang story 



次回予告
すれ違いが続き、中々友人と会えない晃。
関東医大病院で彼は電波ジャックの放送を見る。
「よし、来い!!」
現場に向かう決意をする晃の元に聖凱虫が現れ彼を戦場へと導く。
人の命を顧みない怪人達の行為、言葉に晃の中で黒い衝動が湧き上がっていく。
「…この世界も同じか」
「こんな状態じゃ探せやしない!!」
陰で戦う者達はそれぞれの目的の為に戦場へ赴いていく。
住井「危ない!!」
祐一「あいつは!?」
未確認B種を追い詰めていく中で、警官隊とカノンは陰で戦っていた者に出会う。



仮面ライダーR【リベンジ】
Episode.10「遭遇」
聖か魔か…見極めろ! その本質を!!



設定資料

イモリ怪人・ランクW
名前すら思い出せない、この世界に来たばかりの怪人。
その為戦闘力は低く、ほとんど単調な攻撃しかしてこない。

複数の怪人
ファングのカードの力に反応(というより吸収)して現れた怪人。
無理な出現をした為に元の世界の姿ではなく、カードのエネルギーで作った仮初めの身体で活動。
その所為で意思が無く、元の姿が何だったか判別出来無い姿になってしまった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あっと書き〜♪
浩輝「いつもに比べてページ数少ないぞ?」
作者しか分からない微妙な変化を語らんで下さい。
浩輝「確かに、いつも通り訳分からない所は変わってないね」
おふぅ。
すみません。分かりづらくて…
細くしておくと冒頭の消えた部屋にいた影はイモリ怪人じゃありません…と思う。
浩輝「意味解らないぞ…その言葉」
それは今は関係ないので、今回は遺跡の事について話そうか?
香里(逃げたわね)
浩輝「そうだな。色々変な事ばかり出て余計分かり難くなってるからな」
ゴメンなさい。さて、今回出ました遺跡。
これは一話に出た戦士達の決戦の場でした。故にここには色んなモノが封印されています。
香里「石版に描かれて――――」
ストォーーー〜〜〜ップ!!!!
香里「何よ?」
オチ丸解りになる様な発言はもう止めて下さい!!
香里「最初にやったのは自分でしょ? 誰がどう恋してるとか馬鹿な文章書いて」
グハァッ!!
浩輝「仕方ない…じゃあ、どうして俺のカードに反応して怪人が現れたんだ?」
そ、それは昔使われたライダーシステムなど、カードの力は元々彼等の世界の物なんですよ。
今現在使ってるライダーシステムは、貴方が昔なったライダーシステムのデータを応用して作られた物。
自分達の力に反応して飛び出てきた怪人ですが、完全なオリジナルの力ではない為に物凄い中途半端に復活しちゃったって訳です。
浩輝「ふ〜ん…じゃ、このカードの中にいる子は?」
え〜と…ある意味この戦いの発端であり一番の被害者?
香里「何よそれ?」
??「幾世紀も真っ暗闇で退屈でした」
浩輝「幾世紀って…」
それも私の脳内ストーリーの話なんですけどね〜。
彼女が活躍する時この物語は確実に最終話近くです。
浩輝「へぇ〜」
だから暫らくは完全に喋る事出来ません。その前に第一話の戦いに決着付けます。
その時クルスは新の姿を現すだろう。
浩輝「予告みたいな事してると、後でネタ無くなるぜ?」
しまったぁぁあああああああ!!!?
香里「馬鹿すぎ…」
ぅぅ…兎に角次回、カノンは出会いますよ。
香里「誰と?」
出会うっつーか…ただの目撃談になるかな?
香里「だから誰なのよ?」
さて、今回はこれでお開きです。
香里「…」
浩輝「ちょっと待ってくれ、俺の出番は?」
チョイ役で出ると思います。
浩輝「つまり活躍出来るのは今回だけ?」
ウル○ラマン風に頷く。(シュワッチ!!)
ゴキゴキ…スチャ―香里=拳を鳴らしてからカイザーナックル装着。
チャキ、キュィイイイイン…チャキィイイン―浩輝=ホルダーケース構えベルト装着。
え? なに二人とも…なんで殺気立ってるの?
『エクシードチャージ』
『ファイナルキック』
香&浩「「せーの」」
ドゴボクジャアアアアアアアアアァァァァ!!!
爺ちゃんは言ってた…
僕の出来なかった事を…キミが……
浩輝「それじゃ、また次回だね」
香里「楽しみには出来ないわね」
と言うかマンネリ化してるよ、この終わり方…って言ってた。(←まだやってたよ)
浩&香「「今後もよろしくお願いしま〜す♪」」
キャラ変わってるぅうう〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! 


馬鹿なまま終わる。

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