<とある港町・山林 13:58PM>

「変身!!」

晃は手をベルトに叩き付けると同時にアストに向かって走り出す。

走っている間に晃はクルスの姿に変わり、茂みから飛び出してそのままアストに殴りかかっていった。

「うおおおおお!!」

バキィッ!!

「ぐぁっ!?」

真横からの不意打ちに対処できず吹き飛ばされるアスト。

クルスは着地し、アストへの注意を払いながら周囲を見渡す。

周りにはアストの他に女性が一人、蜂種怪人が二体。

この事からクルスは三対一の状態で女性を無事に逃がすことが出来るかを懸念した。

女性は突然の乱入者に一瞬だけ驚いたような表情になったが、クルスを見るとすぐに口元に手を添えて妖しげな笑みを浮かべて嘲笑う。

「ふふふ…今度の継承者は人の区別が付かないみたいね」

「ぇ?」

その言葉に、クルスは自分を真っ直ぐに見つめて笑う女性に振り向いた。

彼女の瞳はクルスを見据えていた。だが、その瞳の奥からは妖しく薄ら寒さを感じさせる光りが宿っている。

(何だ…この人は……人間じゃない!?)

クルスは今自分が取った行動に後悔を感じた。

彼女から発せられる禍々しい気を感じて彼は少しずつ後ずさる。

視界の端では、二体の蜂種怪人がクルス達に近づいていき、横ではアストも立ち上がって剣を構えていた。

 

関東医大病院 同時刻

病室から見える窓の風景。

そこには雲ひとつ無い、澄み切った青空が広がっていた。

その窓に近づいて女性、伊澄姫悸は快晴となっている空を見上げる。

けれどその瞳には外の景色は写っていない。

その表情からは何を考えているのか、または考えていないのか読み取ることが出来ない。

数瞬後、彼女は視界から太陽を遮るように窓に手を付く。

すると突然彼女の手の甲から鳥が翼を広げた様な紋章が光りを発しながら浮かび上がった。

 

仮面ライダーR【リベンジ】

盟約に縛られし者編

Episode. 8[凱甲]

 

<N県ものみの丘の遺跡 14:00>

二体の甲虫が安置されている一室の暗がりの中、カメラのシャッターを切る音が何回も鳴る。

カメラを取っているのはこの部屋に入った三人の警官達だ。

本来ならこの作業も彼らの作業範囲から少し外れているのだが、この遺跡内部の安全が確認されるまでは正式な鑑識等は派遣されないらしい。

「ん?」

部屋の様子と二体の甲虫を写真に収めていると、一人の警官が何かに気付く。

「大野木さん、どうかしました?」

「いや、今こいつの背中ん所が光ったような」

そう言って大野木と呼ばれた警官が二体ある甲虫の一体、刃のような牙を持つクワガタ虫の姿を模した甲虫に近づく。

すると、その甲虫を乗せてある台座の下から少しずつ光だし、滑走路の灯かりのような道が現われる。

続いて機械的な音がその部屋の中に鳴り響く。

―ウィィイイイイイイイイイイン―

「こ、今度は何だ!?」

突然の事に警官たちが驚きながらその台座から離れる。

そして、滑走路のような道の先にあった壁が、天井部分から倒れるようにゆっくりと開いていく。

壁が完全に開くと、クワガタの甲虫の丸い目に当たる部分がゆっくりと開いて赤い光りを宿す。

甲虫は背中の羽を開いて台座から浮かび上がり、背中と後ろ足から光りの粒子を噴射して遺跡から飛び立っていった。

残された警官たちはその場でただ呆然と飛び立った甲虫を見送るしか出来なかった。

 

<とある港町・山林 14:14PM>

 クルスの乱入によって一時膠着状態に陥るかと思われた戦場は、予想に反して二組に別れての戦闘が行われていた。

「破!」

 アストがセーラー服の女性に灰色の刀身を突き出し、女性はそれを槍で裁いて流れる様な動きでお返しとばかりに槍を突き出す。

アストは前方に跳んでかわそうとしたが、避けきれずに刃が脇腹をかすめて火花が散った。

それを気にした様子もなく、アストは着地と同時に前転し、その勢いを利用して振り返り片膝をついた状態になって身構える。

(何てやつだ…戦闘体にもなれないのにこれだけの力を?)

「どうしたのかしら? もっと私を楽しませてください」

女性が笑みを浮かべながらゆっくりと近づいていく。

その言葉に対して何も答えずにアストは立ち上がり、両手を前に出して交差させて握り拳を作る。

「ハァァアアアアア!!!」

シュアアアア…ギギギギギ!!

気合いと共に大声を上げて両手を振り払うアスト。それに反応して白色の光がアストを包み込み、その姿が変わる。

全身が灰色なのは変わらず、第二装甲が分厚く禍々しいものへと変わっていく。

手に持った長剣も太く大振りのものに変わり、銀の四本角も太くなり、口も禍々しく不気味さを感じさせるものに変化した。

ベルトも少しずつ肥大化し、宝玉を銜えるように四方から灰色の棘が装飾に追加される。

アストは全体的に重装甲な姿へと変化した強化した姿、重鋼体へと強化変身を終えると女性に剣を向ける。

「ふふふ、まだ少しは楽しませてくれるのかしら…?」

そこで女性は人が近づいてくる気配を感じ取り、悪戯を思いついた様に笑みを浮かべる。

「じゃあ…これはどうします?」

そう言うと、女性が持っている槍から目に見えるほどの冷気が溢れ出始めた。

アストは動じずに、大剣を右腰に持っていって下段の構えを取る。

「ハァァァァ……」

アストが気合を込めると、それに呼応するように大剣が青く燃え上がっていく。

女性の方も姿が確認し辛いほど冷気に包まれ、二、三メートルほど周囲の地面が凍りついていく。

そして二人は自分の武器の切っ先を地面につけ、同時に切り上げる。

「破ァッ!!!」

「フッ!!」

グァッ!! シュァアアアアアアーーーーーーーーーーー…ボッ!!!

地面を擦りながら白い冷気と青い炎がほとばしり、ぶつかり合って激しい爆発が起こる。

激しい光の後に白い煙と爆風が当たり一面を被い尽くしていった。

「きゃああああ!?」

 

(なんだ!?)

誰かの悲鳴が聞こえたような気がして、クルスは反射的に身体を強張らせた。

だが、今は二体の蜂種怪人と戦っている最中、しかも相手の強さに苦戦を強いられている状態なので確認する事は出来ない。

「ニメ! カノンソジョギ!!」

「フッ!」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは太く重量のありそうな錫杖を大きく振り回しながらクルスに襲いかかっていく。

クルスはそれを屈み、仰け反り、後退しながら避ける。

しかし、その巨体からは想像しがたい動きで巨棒を操る為に中々近づくことができない。

攻め倦ねているクルスの横から、ラニマ・ヴァ・ゴカパが左腕の鋭い爪を振り上げて飛びかかる。

「くっ!」

咄嗟に左腕を横薙ぎに振るい、ラニマ・ヴァ・ゴカパの手首を打ち据えて爪を防ぎ、空いた右手で殴り掛かるが右手で防がれ取っ組み合いになった。

そんな二人の組み合いにラタシィ・ヴァ・ゴバルが近づき、手に持った大きめの錫杖を思い切り振るった。

「なっ!?」

「マミ!?」

ドガァッ!!

「ぐあぁッ!?」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルの行動に気づいたがすでに遅く、二人は錫杖に打ち据えられ大きく吹き飛ばされてしまう。

クルスは地面を転がりながらもすぐに立ち上がり、ラニマ・ヴァ・ゴカパも木に激突して苦悶の表情を浮かべながらラタシィ・ヴァ・ゴバルを睨み付ける。

睨まれている本人は元の仲間ごと攻撃したことなど、気にした様子もなくクルスに掌を向ける。

その姿にクルスは以前戦い、掌から攻撃してきた怪人達の事が頭によぎった。

「ハッ!!」

咄嗟にクルスは横に飛び退き、ワンテンポ遅れてラタシィ・ヴァ・ゴバルの掌から何かが打ち出され、射線上にある木に穴が空く。

「これは!?」

相手の攻撃方法に驚くクルス。息つく暇もなくラタシィ・ヴァ・ゴバルは高くジャンプし、錫杖を思い切り振り降ろす。

「うぉ!」

さっと横に飛び退くクルスだが、ラタシィ・ヴァ・ゴバルが空かさず掌を自分に向けているのを知って、今度は大きく跳躍して距離をとり攻撃をかわす。

「…ぅ」

「!?」

突然聞こえた声に思わずクルスが周りを見渡すと、彼の足元に一人の少女が倒れていた。

(この人か…さっき悲鳴を上げたの)

そう判断して身構えようとしたとき、クルスはその女性の顔に見覚えがある事に気付く。

(あ…い……かわ?)

ほんの少しだけ、違っていて欲しいと思いながらもう一度顔を確認してみる。

何度見てもそこにいるのは晃が会って謝りたい人の一人、相川未来という少女だった。

(相川…何で!?)

クルスは内心動揺しながらも、未来を背中越しに庇うように蜂種怪人に向き直り構える。

未来が無事なのか調べたいが、これ以上グズグズしている暇は無い。

「……クソ!!」

自分は確かに友人達に会いたいと思ってはいた。けれど、こんな形の再開なんて望んではいない。

理不尽だ。そう思いながらも怒りを感じずにはいられなかった。

クルスは苦しさを振り切る様にラヌヂ・ヴァ・ゴバルに飛びかかっていく。

その時、クルスは気付かなかったが未来の瞳がゆっくりと開かれクルスの後ろ姿を映し出す。

「…せん……ぱ…い?」

「ウォオオオオオオオ!!」

クルスは左右に動いてラタシィ・ヴァ・ゴバルが照準を合わせられないようにしながら殴り掛かっていく。

思い切り力を込めて殴り掛かるが錫杖によって捌かれてバランスを崩し、背後に回られ背中を打ち据えられてしまう。

「っく!」

何とか反撃しようとするが、体格差と大振りの錫杖によって巧みに防がれて攻撃が届かない。

逆にラタシィ・ヴァ・ゴバルの攻撃を腕で防いでも、相手の力と錫杖の硬度が強く段々と痛みが響いてきた。

「クソッ!! お前等に」

腕の痛みに耐えながら呟くと、横からラニマ・ヴァ・ゴカパが飛びかかってくる。

それに対してクルスは身を低くして足を踏み出し、ショルダータックルを仕掛けて迎え撃つ。

「構ってる時間は無いんだ!!」

それで怯んだ隙にアッパーカットを叩き込む。

ドグァ!!! バキッバキバキパキッピキ!!

「グゥエエ!!」

そのアッパーカットは、丁度凍り付いていた腹部の傷口にクリーンヒットし、氷が少しずつ砕けるのに近い鈍い音が響く。

傷口に響いたのか、口から体液を吐き出しながら吹き飛ぶラニマ・ヴァ・ゴカパ。

クルスは気を緩めずラタシィ・ヴァ・ゴバルに向き直り必殺のキックの構えをとる。

一瞬だけクルスの足下に十文字に似た浮かび上がり消え、ベルトから金の模様を伝って右足にオレンジ色の炎が宿る。

そして、助走をつけて素早くジャンプした。

「ハッ!」

勢いよく体を錐揉み回転させながらキックを放つ。

バシィ!!

「なっ!?」

それに対し、ラタシィ・ヴァ・ゴバルはクルスの足目掛けて錫杖を回転に合わせて振るってキックの威力を殺し、クルスの体を回転させながら地面に叩きつける。

「ぐあ!?」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは間髪入れずに錫杖を突き下ろす。

クルスは地面に叩きつけられ、一瞬なにが起こったのか分からなくなったが、辛うじて腕で錫杖の軌道をずらす。

「クッ!!」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルの攻撃を受け流すと、クルスはストレートパンチを顔面に叩き込み、思い切り腹を蹴り上げて吹き飛ばす。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルを引き剥がすと、クルスはすぐに立ち上がり駆け出そうとする。

「!?」

追い討ちを掛けようとしたクルスは人の声が聞こえたような気がして素早く周囲を見渡す。

未来のいた場所に目を向けると、そこに二人組みの少女が未来に呼び掛けている姿が見えた。

「おい! 早くその人をつれて逃げろ!!」

「え?」

クルスの呼び掛けに気付いた二人組みの少女は今始めてクルスの存在を知ったようだ。

彼女達の驚いてる様子に気付くまでもなく、クルスはラタシィ・ヴァ・ゴバルの姿を探す。

見るとラタシィ・ヴァ・ゴバルはすでに二人組みの少女に掌をかざしている。

「クソッ!」

クルスは全力で駆け出し、少女達に向かう。

少女達はアストの様子に身を強張らせ、ラタシィ・ヴァ・ゴバルは掌から何を打ち出す。

(やらせるか!!)

その時、ベルトの二つの宝玉が強く輝き、同時にクルスは視界が明るく、より広い範囲を見渡せるような感覚に苛まれる。

身体全体に力が満ちていく様な感覚。そして、体中の神経が鋭くなったような不可解な感覚だった。

それは、打ち出された何かの起動がハッキリ分かる程に現実的なものになった。

「ハッ!!」

バキッ!

少女達とラタシィ・ヴァ・ゴバルの間に拳を突き出し、打ち出された何かを叩き落とす。

しかし、予想以上に威力があり、かなりの腕の痛みと手甲に小さめの窪みが出来てしまう。

「っく! …大丈夫!?」

クルスが尋ねると少女達はおどおどしながら無言で頷く。

「なら、早くその子を連れて逃げろ!」

腕を押さえながら、そう言い切るとクルスはラタシィ・ヴァ・ゴバルに駆け出していく。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルも一発ずつ打ち出すより、錫杖で一気に殺した方が良いと判断して錫杖を構えて走り出す。

人が増えてしまい、これ以上被害を出したくないクルスは短期決戦を決める事にした。

「ウオオオオオオ!!」

助走を付けて再び勢い良くジャンプし、体を錐揉み回転させる。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは先程と同じ様に迎撃しようと一旦立ち止まり身構え、タイミングを計り始める。

一、二、三回転した所で右足を出し始め、ラタシィ・ヴァ・ゴバルはその足元目掛けて錫杖を振るう。

「フンッ!!」

だがクルスは無理やり身体を捻って右足を引っ込めて、左足を突き出した。

「バッ!?」

タイミングをずらされたラタシィ・ヴァ・ゴバルは左の蹴りをモロに喰らい大きくよろめく。

「ウォアアアア!!」

クルスはそこで休まず左ストレートから左右のジャブ、両肩を掴んでからの膝蹴りとラタシィ・ヴァ・ゴバルを追いやっていく。

その様子を遠目で見ていた少女達はようやく我に返り、未来を連れてその場から離れた。

何時しか組み合いラタシィ・ヴァ・ゴバルをどんどん押しやるクルス。

「マセヅ・マ!!」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルはクルスのわき腹を強く蹴り付け、その後背負い投げの如く投げつけ引き剥がす。

クルスは上手く着地し、すぐに向き直るとラタシィ・ヴァ・ゴバルの錫杖が眼前に突き出される。

「フッ!?」

反射的に両腕をクロスさせて錫杖を左に受け流し、すかさず右手で突き出された錫杖を掴む。

「轟力…変身!!」

言いながら縦にしていた左腕の手首を返して掌を前に見せ、その後左腕を腰に叩きつける。

すると、ベルトの左側に埋め込まれた赤い宝玉が肥大化、赤く目映い光を発しながら中心部に移動する。

その光りがクルスの身体を包み込み、クルスの姿を轟力の赤、ラーヴァフォームへと変化させた。

「ヌゥウウウ!!」

「!!」

クルスは両手で錫杖を掴み力を込めてその形状を専用の武器、ブレイズセイバーに変化させる。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは咄嗟に手を離すが、間に合わず大剣の切っ先が右手の指を二本ほど切り落とす。

「ウグ!?」

「ウォオオオオオ!!」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルが怯んでいるうちに一気に大剣を二振り振るうクルス。

それを紙一重でかわしつつ、ラタシィ・ヴァ・ゴバルは空中に飛び上がる。

ついでに掌から何かを打ち出すが、クルスはそれを強化された左腕であっさりと弾く。

「カノンソジョギ…ギナサバ・ゴモ・ラタシィガ・ガマダウ・ゴドヌ!!」

右手を押さえながら忌々しげに言い捨てると、ラタシィ・ヴァ・ゴバルはそのまま飛び去っていこうとする。

「フゥンッ!!」

ブン!!

クルスは持っていた大剣を当てるつもりで思い切り投げつけたが掠りもせず、やがて二つの影は見えなくなった。

クルスは大きく息を吐くと元の人間の姿に戻る。

(相川…)

複雑な思いを抱えて俯く晃はやがてゆっくりと空を見上げた。

その左目は赤色に変わり、両目が左右対称の色になり若干異質さを放ち始めていた。

空はただ、どこまでも青く澄み渡り広がっている。

 

<霧島診療所 15:07PM>

昼とも夕方とも言いがたい、俗に言うおやつの時間。

祐一たち喫茶ホワイトのメンバーはスイカ割りを楽しんでいた。

どうして家でやるのか祐一たちが疑問に思ったが、そこは女医の力で一蹴された。

「佳乃ちゃん、右! みぎ!」

「あ、今度はひだり!」

「よぉ〜し、いっくよ〜!」

ブンっと勢い良く木刀を振り下ろし、見事にスイカを割る事に成功した佳乃。

全員が喝采を送り、平和な時を楽しんでいた。

そこに突然診療所の扉が乱暴に開け放たれる。

「す、す、す…すみません! 急患! 見てください!!」

「お願いします!!」

三人の少女が互いに方を貸し合って入り口に立っている。

突然の来訪者に全員なにが起こったのか分からずに動きが止まる。

「とにかく落ち着きなさい。急患とはその子の事か?」

そんな中、急患と聞いて聖が一歩前に出て少女たちに冷静に対応する。

「は、はい。実はさっき未確認に襲われて」

「なんだって!?」

未確認に襲われたと聞いて祐一たちは驚いた。

少し前に倒し損ねた蜂種の残り、または他の未確認がまだこの付近に潜んでいたのかと様々な疑惑が過ぎる。

「それで、君達は怪我はないのか?」

「あ、私達は大丈夫です」

「第三号に助けてもらいました」

「第三号に?」

その言葉を聞いて聖は祐一を見た。当然祐一は首を振って知らないと伝え驚いた表情をしている。

詳しく話しを聞きたかったが、未確認に襲われたとあっては一刻を争うかもしれない。

その事もあり聖はすぐに少女達を診察室まで案内していった。

診察室に行く途中、聖は気絶している少女に見覚えがある事に気付く。

(この子は確か…)

四人が部屋を離れた後、瑞佳が祐一に話しかける。

「祐さん…今の話」

「分からない」

未確認の事もそうだが、あの子達を助けたと言う第三号の存在も気になる。

この時、祐一はもうじきこの休みも終わる。そんな気がしていた。

 

神奈川県上空 15:27PM

都心のはるか上空。

そこにはステルス戦闘機のような形をした何かが高速で飛行していた。

それは飛行機と言うには小さすぎるものであるが、性能はそう呼ばれる物よりも遥かに優れたものである事を今は誰も知らない。

[ко#к:ξ…〜Γλ〜……¥*?.]

その物体は鳴き声のように機械の様な音を立てて一直線に進んでいく。

 

<霧島診療所 15:32PM>

特に怪我の無かった二人の少女は聖に待つように言われ、待合室で待機していた。

しばらく待っていると診察室のドアが開き、中から聖が出てくる。

「先生、未来ちゃんは?」

「大丈夫、外傷はないし意識も取り戻した」

その言葉にほっと胸を撫で下ろす二人の少女。

遅れて診察室から未来がおぼつかない足取りで出てきたのを聖が支える。

「無理はしない方がいい。ショックでまだふら付くだろう」

「はい、すみません」

「未来ちゃん!」

「大丈夫!?」

駆け寄った二人に未来は笑顔を作って大丈夫と答えた。

「喜んでる所に申し訳ないが、よければ君達が未確認に襲われた時の状況を教えてくれないか?」

本当はこのような事は警察がやるべき事なのだが、新たな第三号の存在について聞いておいた方が良いと判断したためだ。

診察の時に聞かなかったのは、祐一に聞いてもらう二度手間を無くす為でもある。

二人の少女は頷いてくれたが、未来だけはどうしようか迷っていた。

「すみません、人を探したいんです」

「人探し?」

「はい。ずっと探してる人なんです」

「よければ、その事も聞いていいかな? 私でもしかしたら知ってるかもしれないし」

「わたしも医者の端くれだ。それなりに多くの人の顔は知ってるつもりだし、何なら知り合いの警察を紹介してもいい」

それぞれの話しを聞いて、未来は話をする決心が付いた。

 

<とある港町・山林 16:11PM>

ラニマ・ヴァ・ゴカパはクルスに殴りつけられた腹部を押さえながら、一人苦痛と屈辱に耐えていた。

なぜ自分がこんな風に地面に這い蹲らなければならない。自分は力を持つ狩る側のハズ。

なのに何故こうまで無様な姿を晒しているのか分からなかった。

「勿体ないわね…アナタ」

「!!」

自分の背後から声を掛けられ過剰に驚き腕を振るうラニマ・ヴァ・ゴカパ。

腕は虚しく空を切り、すぐ隣から冷気の槍を持った女性が全く恐れずに自分の顎をラニマ・ヴァ・ゴカパの肩に乗せる。

「アナタは十分に持っているのに…それの本質を分かっていないみたいね」

「マミ?」

女性の言葉にラニマ・ヴァ・ゴカパは初めて興味を覚える。

「狩りと殺し合いは全くの別物…けれど完全に別のものではない」

「ジョルリル・イシジャ?」

「アナタが求めているのは弱者が見せる苦しみ、恐怖、絶望。自分は一方的な暴力、殺傷、快楽に酔いしれたい。その思いが強くて力を存分に出せてないのね」

そう言うと女性は回りこんで正面から真っ直ぐ、その冷徹で妖面な瞳をラニマ・ヴァ・ゴカパに定める。

「死ぬ事に恐怖は要らない。私達に必要なモノは他にあるでしょう?」

言いながら女性は両手をラニマ・ヴァ・ゴカパの頬の辺りに置き、顔の向きを変えられないようにする。

いや、すでにラニマ・ヴァ・ゴカパは彼女の瞳に魅入られたかのように、視線を変える事ができなかった。

「怒り、憎しみ、裏切り、妬み、恨み、嫉妬、憎悪、嫌悪、憤怒、復讐、強欲、暴力、対抗、抗争……数多くの破壊衝動の中で保身は邪魔なだけ、あるのは殺すか死ぬか。だけどそれだけじゃつまらない」

女性の言葉に反応するかのように、徐々に速いスピードで腹部の傷口が癒えていく。

「なら楽しみなさい…相手の足掻く様を……自分の命がどうなろうと…楽しければそれで良い…そういう存在でしょう?」

「ああ、その通りだな」

腹部の傷が完全に癒えたラニマ・ヴァ・ゴカパはカウボーイ風の男の姿になる。

その目には先程とは違ったモノが宿り、女性は妖面な笑みを浮かべてその場を去っていった。

 

<とある港町・山林 16:15PM>

「くそ…どこだ?」

晃はラタシィ・ヴァ・ゴバルを探して森の中バイクを走らせていた。

店長に拝み倒してバイト代を手に入れて燃料の問題が解決し、蜂種怪人達を探しているのだが今一つ不安が残る。

蜂種怪人との戦いと未来の状態がどうなのかという事だ。

何所の病院に運ばれたか分からないので、取り合えず店長から一番近くの病院の場所を教えてもらったから良いだろう。

蜂種怪人との戦いは辛いものになると覚悟しないといけないだろう。

赤い姿はまともに戦えば負けないだろうが、長時間空中に滞在されたら何もせずとも自分の方がバテてしまう。

(とにかく、アレを見つけるのが先だな)

今晃は自分が錫杖を投げた方角を重点的に探して走っていた。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルが自分の武器を取りに一度降りてこないかという事を少し期待してのことだ。

やつ等がそう簡単に新しい武器を調達できるとはあまり思えないし、当てもなくうろつくよりは良いだろう。

不安を抱えながらも開けた道を進む晃。そんな彼を上空から睨みつけている影があった。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルである。

彼は晃の予想通り自分の武器を探していたのだが、見つけた時にそれは岩石に根元まで突き刺さっていて抜く事が出来なかったのだ。

指を切られた事も相まって、ラタシィ・ヴァ・ゴバルの怒りは頂点に達していた。

「カノンソジョギ…ギナサヴァ・ゴドヌ!!」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルが掌を晃に向ける。同時に晃も脳裏に敵の存在を知覚する。

(どこだ!?)

周囲を見回しながら道をそれて気の影にバイクを止める。

直後、荒れ道に何かが破裂するような音がして穴が開く。

「上か!!」

晃はすぐバイクから降りて上空のラタシィ・ヴァ・ゴバルの姿を確認する。

そして両腕を前に突き出し、手を握り拳のまま交差させ、次に手首を反して両腕を腰に引く。

すると、光りの帯が二つの宝玉の埋め込まれた黒いベルトを形作る。

「変身!!」

そう言いながら左右の手を右肩まで挙げて交差させ、手首を反し指を少し開いて腰に叩きつける。

光りの帯が晃の全身に駆け巡り、その姿をクルスのものに変化させた。

「ギジュガデ・シャガ」

舌打ちしながらラタシィ・ヴァ・ゴバルは晃の姿が確認できる場所に移動し何かを打ち出す。

クルスは木に隠れながら射撃をかわし、移動して相手の様子を探る。

(全然降りてこねぇ…コリャ完全に警戒してるな)

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは空中をホバリングしながら射撃を繰り返し、下に降りて来る気配はない。

一応青い姿に変われば空中でも戦えるが、それだと自分がかなり不利になるだろう。

だが、これでは何時まで経っても何もしようがない。

「やるしかない…か」

クルスは覚悟を決めると左手は腰に、右手を左側前に伸ばして右側に水平に移動させる。

そして、右手を右腰に叩きつけ、同時に左腕を思い切り右前方に伸ばす。

「翔力変身!!」

その掛け声と共に、ベルトの右側に埋め込まれた青い宝玉が輝き、肥大化しながら中心部に移動していく。

そして、その光りはクルスを青い生態装甲の姿、フロートフォームへと変化させる。

「いくぞ! ハァッ!!」

気合を入れて思い切りジャンプし、木の隙間を潜り抜けるついでに枝を折って青いロッド・ブルーアームズを形成。

そして、背中の生態装甲から白い昆虫羽を広げて一気にラタシィ・ヴァ・ゴバルに突っ込んでいく。

「マミ!?」

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは予想外の事にうろたえる。

長引けば不利と覚悟していたクルスは、ブルーアームズをそのままスピードを維持して突き出す。

ドッ!!

ブルーアームズはラタシィ・ヴァ・ゴバルの胸に命中し、そこから青い炎が浮かび上がる。

「っく!!」

そのまま攻撃の勢いでラタシィ・ヴァ・ゴバルを後方に押やりながら力を込めるが、ラタシィ・ヴァ・ゴバルも負けじと全身に力を入れて痛みに耐える。

次第に勢いが無くなると同時に炎が薄まり、やがて完全に消えてしまう。

「なっ!?」

一撃で倒せなかった事に動揺した隙に、ラタシィ・ヴァ・ゴバルは顔面を殴りつける。

その一撃を受けて地面に落下していくクルスに目を向けながら、ラタシィ・ヴァ・ゴバルは胸を擦り問題なしと判断した。

クルスは地面に落ちる前に体制を整えて、ホバリングしながらラタシィ・ヴァ・ゴバルを見上げる。

(こりゃ、やばいな)

自分には今以上の攻撃方法はない。だが、この姿になった以上この状態で切り抜けなければならない。

早まったかと思いつつクルスはブルーアームズを構え直し、改めてラタシィ・ヴァ・ゴバルに向かっていく。

 

<霧島診療所 16:36PM>

祐一達は未来達から未確認に襲われた時の状況を聞いていたが、未来がすぐに気絶してしまったので詳しい事は分からないとの事だった。

唯一知った事は第三号に似た姿の戦士が未確認と戦い、この少女達を守ったと言う事だ。

その事から祐一は恐らく敵ではないだろうと考える事にした。

今は未確認についての話を終えて、未来の探し人についての話を聞いている所だ。

「で、どんなやつなんだ? お嬢さんの恋人かい?」

マスターがそう尋ねると未来は沈んだ表情になり、その事でその場の全員から睨まれてしまうマスター。

これでは話が進まないと思ったのか、聖が改めて未来に話しかける。

「君は確かよく伊澄さんの見舞いにきていたな」

聖の言葉に未来が顔を上げて驚いた表情を見せる。

「伊澄?」

「関東医大にちょっと変わった患者がいて、一緒にこの子の兄とその友達がよく見舞いにくる」

そう話している内に未来の表情が少し暗くなってきている。

「もしやと思うが、彼女に関係しているのか?」

そう尋ねると未来は少し考えてからこう答えた。

「わたし…ある人に謝りたいんです」

 

<とある港町・山林 16:44PM>

ラタシィ・ヴァ・ゴバルとの戦いは場所を変えて地上戦になっていた。

「ハァ!!」

バシバシッ!!

すれ違いざまブルーアームズをトンファーに変えて攻撃するが、先程より炎が薄くすぐに消えてしまう。

ラタシィ・ヴァ・ゴバルは恨みを込めるようにストレートパンチを叩き込む。

トンファーでガードするが、腕力の差でかなり後方まで吹き飛ばされるクルス。

(っく…このままだと…やばい!!)

ブルーアームズを構え直しながら焦りを感じた時、不意に自分のバイクが眼に映った。

 

<霧島診療所 16:48PM>

未来はゆっくり、ポツポツと自分の事を話し始めた。

昔、何も知らずにその場の怒りだけで大切な人を突き放してしまった事。

それを謝りたくて未確認の現れる場所を時々探しにでている事。

他にも、探し人への懺悔とも言える事なども話した。

それらを聞いて、祐一達も力になりたいと思っていた。

「未来ちゃん、ちょっと聞いていいかな。どうしてその人が未確認のいる場所に行ってると思うの?」

佳乃に聞かれた事にどう答えるべきか迷う未来。

「えっと、上手く言えないけど…あの人が昔と変わってなければ……きっとそうゆう所に行くと思うんです」

この時、未来が思っていたことで言わなかった事がある。

それは、その人が第三号として戦っているのではないかという事。

もう一つあるのだが、それは彼女だけしか分からない淡い思い。

祐一達は何となく彼女の思いに気付き、一層合わせたいという気持ちが強まった。

「じゃぁ、なにか顔が分かるものとか無いかな?」

「はい、まえに皆で取ったのを切り取って…」

未来はロケットペンダントを取り出し、更に中から一枚の写真を全員に見せる。

「楽しそうだね」

「男二人は何やってるんだ?」

「あ、右にいる人がそうです」

そう言って未来が指を刺して示したとき、祐一達は怪訝な顔をする。

ホワイトのメンバーが考え始めた中で瑞佳が声を上げた。

「この人、昼間の!?」

 

<とある港町・山林 16:55PM>

ヴォオオオオオオオオオン!! ドォン!!

「グバ!!」

激しい音を立てながらラタシィ・ヴァ・ゴバルを吹き飛ばすグロウチェイサー。

グロウチェイサーに乗ったクルスは、ブルーアームズをロッド状に戻し、果敢に攻めていた。

手放しや荒地の運転はほとんどやっと事が無いが手段を選んでいる余裕が無い為、そこは気合と根性でカバーする。

フォンフォン…チャキ! ヴォオオオオオオン!!

ロッドを振るって構え直し、再びバイクを走らせていくクルス。

果敢に攻めているクルスだが、今一歩力が足りない。

止めを刺すにはこの姿では明らかに力不足なのだ。

(くそっ! どうする?)

このままやってても相手が空中へ逃げてしまえば勝ち目はほとんど無いし、相手が空中戦に切り替えるのも時間の問題だろう。

そうなれば今の状況も逆転されるに違いない。

(どうすりゃ良いんだよ!!)

決め手が無いままクルスは愛機に跨りラタシィ・ヴァ・ゴバルに立ち向かっていく。

その時、彼の後方上空で黒いステルス戦闘機の様な物体が、クルスの後を追うように飛行していた。

 

<関東医大病院 16:59PM>

病室のベットに座っていた少女はゆっくりとベットから降り立つ。

「あ…き……くん」

僅かな時間、その場で佇んでいた伊澄姫悸は窓の外に向かって手を翳す。

すると、その手に数時間前に浮かび上がった紋章が現れ光り輝きだした。

 

<とある港町・山林 17:00PM>

シュゥゥゥウウウウウウウウーーーー…

ラタシィ・ヴァ・ゴバルとクルスの戦いの場に、鳥が翼を広げた様な光りの紋章が浮かび上がる。

それはグロウチェイサーの進路上に現れ、クルスはそれを知らずに紋章の上を通過する。

すると、グロウチェイサーに紋章が吸い込まれるように吸収される。

「ん…ぬ!! なんだ!?」

突然ハンドルが効かなくなり困惑するクルス。

それを見たラタシィ・ヴァ・ゴバルは掌をクルスに向けて何かを打ち出す。

「ハッ!?」

辛うじてラタシィ・ヴァ・ゴバルの動きに気付き、ジャンプして攻撃をかわす。

その時を見計らったかのように、ステルス戦闘機の様な物体が変形し始め、クワガタを象る甲虫に変わる。

グロウチェイサーも光りを発しながら基本色が黒く黄金のラインが入ったオフロードバイクに変わる。

さらに機体がスライドするように伸びてボード状にかわり、タイヤがホバー装置の役割を果たす。

そこへ甲虫の飛行物体が前後二つに分解されて、ボード状になったバイクと合体する。

全ての工程が終わった時、それの上に着地するクルス。

「こ、これは何だ??」

愛機の変化に戸惑っていると、何故か始めて見るこの形態の能力、使い方が何となく解ってきた。

何が起こっているのかは分からないが、新しい力を手に入れたクルスはラタシィ・ヴァ・ゴバルに猛スピードで向かっていく。

その姿はまるで黒き竜を従える青き賢者のごとく。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…ダァ!!」

フィイイイイイイイイイイイイイ…ダン!

ボードの前面を高く上げて車体を斜めにしながらのホバー走行で敵から自分が見えないようにしつつジャンプする。

「グズガ!!」

ボードは猛スピードで突進するのを見てラタシィ・ヴァ・ゴバルは身構えるが、その手前でボードは急カーブして上空に舞い上がる。

先に上空へ行ったクルスは武器を捨てて、遅れてきたボードを上空で両手を挙げて捉える。

クルスからエネルギーを受け取り、前面の牙の様な部分が光り輝く!!

そして、クルスは太陽を背にするよう弧を描いて一気に突っ込んでいく。

「ウォオオオオオオオオオオ!!!!」

「マミ!?」

ギュオ!! ドパン!!

クルスの雄叫びを聞いてラタシィ・ヴァ・ゴバルは居場所を掴んだ。

だが、気付いた瞬間には超高速からくる超硬度の黒竜の体当たりで身体を砕かれていた。

シュタ、ザザザザザザザザ………パシッ!

地面に降り立ったクルスは上空で捨てたブルーアームズをキャッチし、一回転させて地面に突く。

「カ…ゴ……?」

何が起こったのか知る暇も無く、右肺部分を粉々に砕かれたラタシィ・ヴァ・ゴバル。

そこから鳥が翼を広げたようなオレンジ色の紋章が、劫火で罪人を焼き尽くすように轟々と燃え広がり、爆発を起こした。

「…ッグ!」

その爆発を背に、クルスは膝を突く。

すると、見る見るうちに青い姿が変わり、体はやや水色を含んだ灰色のボディアーマーに、左右の手も同色の手甲とナックルガード、膝には同色のサポーター、足にも同色の足甲に変わり、頭部の左右に伸びる角も短くなっていってしまう。

やがて、クルスは晃の姿に戻るが、かなり疲弊していて大量の汗を掻いている。

「うっぐ…うぅ」

晃は左手を押さえて、湧き上がる痛みと脱力感に耐えると、左手が干乾び、崩れ落ちそうな感じになる。

しばらくして、ようやく痛みが治まり一息つこうと木に背中を預けた。

一瞬、変身の後遺症が治ってなかったのかと思ったが、今の戦闘で思い当たる節が一つだけあった。

「もう二度と使わねぇ…」

無我夢中だったから気付くのが遅れたが、今の攻撃にはかなりのエネルギーを消費するようだ。

その問題の物体、バイクの方は所々から白い煙を上げながら元の古い型の市販バイクに戻っている。

もう一つの謎の物体は何処かへ行ってしまったようだ。

(もう少ししたら探しに行こう)

友人がどうなったのか知りたいが、今のでかなりの体力を持っていかれた様でしばらく休む必要がある。

そう考えて晃は少しだけ眠る事にした。

 

<浜辺 10:28AM>

結局日も遅いとの事で、未来の人探しは一日置いてからとなった。

そして、晃が働いていた海の家に喫茶ホワイトのメンバーも揃って案内してきたのだが。

「いない?」

「川口さん、それ本当?」

「ええ、なんだか昨日大事な用ができたって言って…必死そうだったからって店長が言ってたもの」

成美の言葉に意気消沈する一同。特に未来は期待していた分落胆が大きいようだ。

その様子を見た瑞佳が何とか居場所だけでも知れないか尋ねる。

「あの、その人が今、どこにいるか分かりませんか?」

「私が直接聞いた訳じゃないから…ごめんね」

申し訳なさそうに話す成美に瑞佳もそれ以上何も言えなくなる。

「ありがとうございます…あの人が元気でやってる事が分かっただけで…十分です」

「あ、ちょっと待って」

未来が店を出ようとした時、成美がハッと何かを思い出す。

「ここで働いてる時に彼が言ってた事なんだけど、友達に謝りに行く為にガソリン代を貯めてるって言ってたわよ」

「え?」

「だから下手に探し回るより、帰りを待ってあげた方が良いんじゃない? 多分そんなに掛からないと思うから」

そう言って笑いかけると、少し呆けていた未来が笑顔で答える。

「はい」

その笑顔を見て成美は思う。

(男ってよく分からないものよね)

自分の家に居候していた男も置手紙だけ残してどこかに行ってしまった。

別に長く引き止めるつもりは無かったが、彼は何処か儚さと弱さがあり、すぐに消えてしまいそうな印象を受けた。

その彼が残した手紙には宿泊と服の事や突然いなくなった事への謝罪。

そして、端的なお礼の言葉だった。

(一言でも良いから口で伝えなさいよね)

何も言わずにいなくなると、その人がいたという実感が薄れていってしまう。

今度会ったら文句の一つでも言ってやろうと思いながら、成美は目の前の人達に食事を進めて売上げにしようと考えた。

 

<海沿いの道路 10:35AM>

東京へ向かう海沿いの道路を一台のバイクが進んでいた。

少し進んだ所でバイクを道恥に止めてヘルメットを取る。

銀澪はその場所で長い髪を風に揺らしながら、海沿いに見える町を眺める。

「もう時間が無い」

そう呟くと銀澪はヘルメットを被り、一目海沿いの町を見やるとバイクを走らせ始めた。

 

<とある町の病院 10:56AM>

「ここじゃない…か」

晃は教えられた病院に来ていたが、緊急の患者はいないと知らされて少し複雑な気分になる。

未来が運ばれて無くて良かったが、ならあの後どうなったのかと気になってくる。

だが、何所にいるかは自分には分からない。

「どうすっかな」

しばらく迷った挙句、最初の目的どおり元の県に戻ってから考えることにした。

友人達の家に行けば、どうなったかも分かるだろう。

その時の事を考えると少し気が重くなりそうだが仕方ない。

「もってくれよな」

自分で根性で点検、調整したバイクに跨りながらそう呟く。

専門の店で見せた方が良い気もするが、そんな事をしたら金が足りないのがオチだ。

数回バイトで働いた程度の知識で何所まで持つのか。一種の賭け事をしてる気分になりながら晃はバイクを走らせ始めた。

 

他人を思うが故にすれ違ってしまった事に気付く事も無く彼は目の前の道を必死に走っていく。

だが、何であろうと人の命が儚いものだという事を思い知らされる時は必ずくる。

その事を彼自身まだ知らない。

 

 

Episode8[凱甲]Closed.

To be continued next Episode. by MaskedRider Revenge

Asuto&ross story changed next Episode. Fang story 

 

 

次回予告

N県に現れた遺跡を調べに行く浩輝。

そこに現れる異界の生命体にファングに変身して対抗する。

しかし、その力に反応し壁画から新手が現れ困惑するファング。

「ここは…まさか!?」

遺跡を調べていくうちに、ファングはある部屋に辿り着く。

そこで彼が見たものとは!?

 

次回、仮面ライダーR【リベンジ】

魔を知る者編 Episode.9「想魔」

想いの力よ解き証せ。その謎を…

 

 

 

設定資料

 

仮面ライダーアスト:デュエルスタイル

 

全体の筋肉や装甲が強化されたアストの強化形態。(激情体ホースオルフェノクと似た様なものと思って下さい)

自身の力を解放してこの姿に変わることが出来る。(バトルスタイルに戻ることは可能)

強化された剣、デュエル・ゲイザーを専用武器に持つ。

必殺技は体内のエネルギーを剣に宿して敵に切りつけるデュエルスレイヴ。

 

 

聖凱虫:ハリケーンスタッガー(甲虫形態)

 

最高速度600km

N県に新しく出現した遺跡内に二体いた聖凱虫の内、クワガタを模した一体。

特殊融合エネルギー粒子によって飛行、前後の足からエネルギー弾を打つことも可能。

ライダーを乗せて飛行したり、融合合体して強力な装備形態にもなる。

バイクとの融合合体では高速で敵に体当たりを仕掛けて敵を粉砕。

ライダーの意思に呼応して動くサポートマシンである。

 

 

聖凱虫:ハリケーンスタッガー(高速飛行形態:別名ステルスタッガー)

 

最高速度700km

聖凱虫にある変形機能の一つ。

ステルス戦闘機の様な形になりスピード使用の形態。

翼にきた牙の部分にエネルギーを宿して敵を切り裂く。

ライダーの意思に応じて変形・行動する。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ふー、後書きです。

晃「結局、オレ会えなかったんだな」

そうですね〜。

未来「私…何の為にでてきたの?」

さぁ?

成美「私の出番は?」

今回は聖凱虫出したかっただけだから後は知らん。

晃「その聖凱虫の登場のさせ方捻りないな」

いや〜、何か良い方法無いかと思ったんだけど…拙者には無理ダァ...

もう一体いるし、他にも機能付いてるし、ネタ全部出し切るのはまだまだ先だな。

晃「オレの目が変色したのは何かあるのか?」

それはキミの体が蝕まれてる証拠さ。

言ったはずだよ? キミのベルトぶっ壊れてる状態だって、その反動が知らない内に現れてんすよ。

フォームチェンジしてくと身体に負担が掛かるから、人間の面からの危険信号ってやつだ。

晃「たしかに、今回オレ3タイプ出揃ったな」

そういやそうだな。細かく言えばリダクションフォームも出たから4タイプ。

でもラーヴァフォーム以外活躍してるとは言い難いぞ。

晃「いや、アンタが言ったらお終いだろ?」

一応そのフォームが一番破壊的なエネルギーを受け継いでるからねぇ。

晃「何から受け継いでんだよ」

そりゃ前のキミの力です。

晃「訳分かんねぇって」

それが戻ればキミの力はそれはもう凄い事になるよ。

取り合えず、今後もパワーアップ予定多いから忙しくなると思う。

晃「ところで何で元の力が無くなってるんだ?」

それは過去の出来事に関わってるから今は言わない。というか説明が面倒難しい。

10話いったら過去話出してみようかと思ってるから、それの後書きで出すかも。

と、言っても原案はもうほとんど出来てるから、後は文節を調整するだけで投稿できるんだけど…それが一番の課題とも言えるね。

晃「そうか」

成美「そんな事より私の出番は?」

さて、次回は久しぶりにファングを書くぞ〜!

晃&銀澪「オレは?」

分からん!! と言う訳でワタシはこれからネタ出しの瞑想に入る!

アデュー♪

銀澪「逃げたな」

晃「オレもそう思う」

成美「あ・た・し・の・出・番・は・あ・る・の・かって・聞・い・て・る・ん・だ・け・ど?」

ゴキゴキゴキゴキゴキゴキ!!!←(絞めてます)

ギブギブグォアアアアアアーーーーーーー!!

 

晃「え〜、ここまで読んでくださってありがとうございます」

銀澪「只今後ろの方で妙な事が起きていますがお気になさらず」

それでは、又のお越しをお待ちしております。

成美「誰か私の出番を訴えて〜!!」

銀澪「やれやれ」

何とかならないかなこの絞め方。

 

 

 

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース