仮面ライダーMAKINA

〜蘇る九頭竜伝説〜

 

第三話

  駅前広場の物陰に香里と共に隠れていた智代は考えていた。今日で二度目に眼にする異形同士の戦い。物語の中にしか有り得ない筈の光景の意味を。智代は、いつの間にか恐怖を忘れていた。

  


  十体近いディープ・ワンに囲まれながらマキナは苦戦していた。圧倒的な数の暴力を銃によるリーチの差とその戦闘技術を持って一見互角の戦いをしているが、実際にはマキナが押され始めていた。
  (まずいな・・・もう、息があがってきちまっている)
  つまりはスタミナ切れである。この日二回目の戦闘と言う事もあり、全身の反応が鈍くなり始めているのを感じていた。更に目の前の敵に集中できないでいる。命を賭してでも殺さねばならない相手、ハイドラの存在。そしてそれと対峙するもう一人の戦士、フーガの存在だった。
  (持ち堪えろよ、フーガ)



  フーガは混乱していた。目の前の人に見える存在は何なのか。
  「呆けてんじゃないよ!小娘!」
  マキナがハイドラと呼んだ存在が無造作に双頭の槍を突き出す。それを剣で弾く。
  (速い・・・避けられない)
  本来フーガは相手の攻撃を避ける事を第一に動いていたがハイドラの槍撃はそれをさせないほど速い。
  (でも・・・軽い・・・)
  弾いた時の感覚からしてその一撃はさほど重いものではない。フーガの装甲ならそうそう致命傷にはならないだろう。そう判断したフーガはマキナを見やる。
  ここは何とかしてマキナと合流するべきか。半漁人達との戦いに限定すればマキナは味方と言える。それもかなり協力的な、と言うよりむしろ過保護なまでに守ってくれる。分散よりやはり集中の方が良い。そう判断したフーガは一撃をもらう覚悟で走り出すチャンスを探す事にした。対してハイドラも戦いながら考えていた。
  (思っていたより遅い。この程度の相手に、高だか門番を相手に戦闘になるなんてね〜)
  ハイドラも思う。果たしてこのまま戦いを継続すべきか。このまま戦えば勝ちは絶対であると言う確信がある。だが無傷でいられるかと言うと、否である。フーガ自身無力ではないし、ディープ・ワンに囲まれているマキナも必要とあらば捨て身でフーガを守るだろう。このまま戦えばこれからの事に支障をきたす可能性がある。そして万が一目の前の小娘を守るためにマキナが怪我をしては最悪の気分になってしまう。
  (万全をきたす為にも引くべきか。運と才に恵まれただけの小娘相手に癪だけど。目的は・・・今回は無理そうだしね)
  ハイドラは香里と共に隠れていた智代を一瞥するとフーガに向けていた槍を下げた。
  「・・・なんのつもり?」
  ハイドラの行為を疑問に思い、フーガが問いかける。
  「べっつに〜?やる気萎えたって言うか〜?相手するのも意味ないし〜?」
  ハイドラの口調は智代達と接触していた時の様なくだけたものになっていた。先ほどの威圧感はきれいさっぱりなくなっていた。対してフーガはそのかわり様に困惑しながらも罠である可能性を警戒し、動けないでいた。それに対してハイドラは溜息をつく。とっととマキナの救援に行ってほしいのに。その結果、自分たちを崇拝する仔とも言えるディープ・ワン達が犠牲になるのは心苦しいがハイドラにとってマキナの事こそ大事なのだ。
  「警戒しなくていいよ。すぐ消えるから♪」
  言うとハイドラの体は水のようになり、蒸発する様に消えていった。
  (約束された星辰の日は遠からず・・・)


  視界の隅でハイドラが消えゆくを見てマキナは己の無力を呪った。今なら、完全に力を引き出せない筈のハイドラを討つチャンスだったというのにそれ逃した。
  「ハイドラぁ!」
  間に合わないと分かりつつハイドラに銃を乱射する。当然それが当たる筈もなく無駄に隙を曝す結果になる。その隙を見逃さず鮫型のディープ・ワンが鎚を振るう。それを腹に受け吹っ飛ばされるマキナ。
  「・・・ぐぅ・・・」
  呻きながら立ち上がるが目の前で鮫型が鎚を振り下ろされる。
  「伏せる!」
  声に反応して身を屈める。鋼と鋼のぶつかり合う音が響き次いで鎚がマキナのすぐ横の地面を叩きつけられる。フーガのトゥーハンドソードが鎚の軌道を強引に叩きずらしていたのである。それにより鮫型の体勢が崩れすかさずマキナがその足を払う。
  「がぎ!?」
  マキナに払い倒された鮫型が眼にしたのは側転の要領で宙を舞い、いつの間にか二つに増えていたハンドガンを自分に突き出し、引き金を引くマキナだった。次の瞬間数回の小爆発が鮫型を包み、着地したマキナはそのまま慣性を利用して近くのディープ・ワンを蹴り飛ばす。更に後ろからマキナを襲おうとしたディープ・ワンがフーガの剣で頭を一撃で叩き割る。
  「・・・やっぱり硬すぎる・・・」
  リングメイルの如き鱗の硬さにフーガがぼやく。
  「銃弾弾くんだ。当然だろ」
  面白くなさそうにマキナが憎まれ口を叩く。
  「雑魚は俺が纏めて潰す。鮫頭を頼む」
  「はちみ・・・分かった」
  フーガが、ダメージを負いながらも事も無げに立ち上がる鮫型を見ながらのマキナの言葉に応える。それと同時に駆けただし、跳び蹴りで鮫型をふっ飛ばし他のディープ・ワンと引き離す。それを見て指揮官でもある鮫型を援護する為駆け出そうとするが、それと同時に彼らの足が小爆発で倒される。彼らが振り向くと二のハンドガンを融合させるように一つにし、ベルトの背中のホルスターに銃を収めるマキナがいた。
  「てめえらの相手は俺だ。何、時間は取らせねえよ」
  フーガの方に向かおうとしたマキナは注意深く自分と敵の位置を確認していく。
  マキナやフーガの変身は一種の魔術と言える。それを維持するのには俗に魔力と呼ばれる精神的なエネルギーが消費される。マキナは自分の変身がもう長く維持できないのを分かっていた。よって一気に敵を殲滅しなくてはならない。
  「クリムゾンマニューバー!ウェポンセレクト、フランキ!」
  マキナが叫ぶとマキナの愛車、クリムゾンマニューバーの前輪が独りでに動きライト部分をマキナに向ける。するとライトの正面に魔法陣が現れ、そこから細長い鉄の塊が打ち出され、マキナの手に収まる。
  鉄の塊、フランキ(Franchi)SPAS-12。凶暴なデザインのイタリア製のショットガンである。
  マキナの右手首から触手が伸びこれに巻きつく。すると溶けるようにショットガンと融合し、マキナの紅い魔銃を彷彿させる、生物的なデザインになって行く。そして左手をそのグリップにもっていくとそこから細胞分裂の如く二つのまったく同じ銃になる。
  「一気に行くぜ」
  マキナは最も近くにいた一体のディープ・ワンに駆ける。そのディープ・ワンはマキナに爪を振るうが、マキナはそれをかわしその胸に膝を入れる。肺から空気を追い出され、開かれた口にフランキを突きいれトリガーを引く。魔銃と比較にならない爆発が内部からディープ・ワンの頭を吹き飛ばす。
  「派手な花火だろ?」



  マキナたちと距離を置き、フーガと鮫型が対峙する。
  「るぐぅおおおお!!」
  雄叫びを上げ、鮫型が鎚を振るいフーガに踊りかかる。対してフーガは振るわれる鎚を正確にトゥーハンドソードでそれを叩き落していく。業を煮やした鮫型がフーガの腹を狙い全力の横一薙ぎを振るう。フーガはこれを下から掬い上げるように捌き、逆に腹に蹴り飛ばす。
  「・・・モード、スネークテイル・・・」
  鮫型がよろけている隙にフーガが呟くとトゥーハンドソードがエネルギー状になり、すぐまた蛇腹模様の細身の片手剣として具現化する。フーガがそれを振るうと蛇腹の部分から剣が上下に無数に分かれ、その間をワイヤーが繋げている。それを鞭のように振るい鮫型に巻きつけそのまま投げ飛ばす。
  そしてフーガは更に剣の形を変える。
  「・・・モード、ファイナルスペル・・・」
  フーガは蛇腹剣を無造作に前に放る。それと同時に剣がエネルギー状になり、それが蒼い光のラインとなり空間に走って行く。そして幾何学的な模様の、倒れた円筒状の立体的な魔法陣になる。フーガはその魔法陣の中心に右足を突き出した跳び蹴りの姿勢で飛び込む。魔法陣はそれをカタパルトさながらに超音速で打ち出す。蒼い弾丸と化したフーガのキックはちょうど立ち上がった鮫型の腹に突き刺さり、そのあまりの威力に鮫型の体はそこから両断される事になった。



  
  フーガが鮫型を倒したのにやや遅れてマキナも最後のディープ・ワンを打ち倒した。マキナはすぐさま変身を解き黒ずくめの少年の姿に戻り、それを見てフーガも変身を解く。
  二人は暫く無言で対峙したが、やがて少年が隠れていた智代達に向き直る。一瞬智代が警戒を強ばらせるが、少年がその場を離れるようジェスチャーを送ると、智代は放心気味の香里を連れてすぐに公園を後にした。そして再び二人は向かい合う。
  「何時までその力を振るうつもりだ」
  先に口を開いたのは少年だった。
  「・・・あの魔物たちが居なくなって、この町が平和になるまで・・・」
  女は静かに答える。
  「お前が戦わなくちゃいけない理由なんてどこにもない!」
  少年の声には哀願の色すら見える。
  そして彼女は答える。
  「・・・ここは私の大事な人、祐一が帰ってくる場所・・・それに・・・私は・・・
魔物を狩る者だから
  彼女、川澄舞は言った。












  **後書き**
  量の割にはずいぶん時間が掛かった第三話です。いや〜バイトとか忙しくて・・・最近寝不足でよく電車を乗り越してしまいます。


  それはさて置き、内容の話。
  殆どの方が分かっているように本作の敵はクトゥルー神話の神々です。この先色んな邪神がマキナたちの前に立ちふさがります。
  そして前回から登場のハイドラ。
  古代メソパタミヤで実際に崇められていた神と同一の存在となっています。
  ディープ・ワンたちに‘父なるダゴン、母なるハイドラ’と崇められ、主であるクトゥルー復活の為に、日々その眷属たるディープ・ワンを使役しています。
  クトゥルー神話大系の中ではそれほど高位の神格ではないですが本作では重要なキーパーソンの一人です。

  ついでにマキナの使ったショットガン「フランキ」。イタリアのフランキ社のショットガンです。「ターミネーター」(一作目)に現在の某州知事が振り回していたことで有名なヤツです。

  で、今回明らかになったフーガの正体。結構バレバレだったかな〜、とちょっと不安です。


  それではちょっと与太話。
  最近オーラバトラーのSSが書きたくて仕様がありません。
  と言うのも高校時代に書こうかなと創っていた設定のルーズリーフが見つかったのと漫画で見たリーンの翼にはまってしまって・・・KANONクロスでなんか書こうな?あの和風なメカデザインがなんとも。

  そいと別に九月七日(奇しくも俺の誕生日)にコナミから武装神姫というオンラインゲーム対応のフィギュアが出たのですが、これもはまりました。
  ゾイド感覚で改造でき、ポージングは差し替えなしで体育座りが出来てしまう、そしてかわいいメカっ娘ですよ!これは反則ですよ。生まれて初めてフィギュア買っちゃった。

  と、そんなこんなの丸井でした。それではこれからもよろしくお願いします。

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース