「イヤーーーッ! お母さん、お母さん!!」
玲奈は、倒れている綾乃にすがり付いて必死に揺さぶった。すると綾乃が僅かに顔を上げた。
「れ……な、に……げ…………」
それだけ言うと、綾乃は事切れた。
「あ……あ、ああ……」
「フフフ。親子仲良くあの世へ行け」
蟷螂男がゆっくりと近づいてくる。
「おとうさん……おかあさん……」
玲奈は座り込んで、既に死んでいる両親を見ていた。優しかった両親の事が頭に浮かぶ。そして……
「後は貴様だけだ……」
「ヒッ……」
蟷螂男は玲奈のすぐ側まで来ていた。涙目のまま見上げる玲奈。蟷螂男が左腕を振りかぶる瞬間、玲奈は叫んでいた。
「お兄ちゃんっ!!」
Kanon 〜MaskedRider Story〜
第五話
「お兄ちゃんっ!!」
その声は祐一の強化された聴覚に届いていた。
「玲奈! くそっ、間に合ってくれ!」
ようやく自宅の前に到着した祐一はバイクから降りると玄関を開けて、靴も脱がずに上がりこんだ。嗅覚がリビングから
血の匂いを感じたので、そこへと走っていった。
「父さん、母さん、玲奈っ!」
開け放たれたドアを通って室内に入り、家族の無事を祈って見回す。そこには……
ガラス窓は破られて、入り込む風がカーテンを揺らしていた……
滅茶苦茶に荒らされたリビング。家族が談笑していたソファーやテーブルは壊され、無残な姿を晒している……
そして……室内に倒れている3人。
「とう、さん……」
うつ伏せに倒れている父。背中に傷は無いが大量の血が流れ出ているところからみて、身体の前面に致命傷となる
傷を負ったのだろう。
「かあ、さん……」
母も父と同じくうつ伏せに倒れていた。だがこちらは背中に大きな傷があり、そこから流れる血が周辺を赤く染めていた。
「れい、な……」
そして妹は、仰向けに倒れていた。胸の辺りが赤く染まり、無残な姿を晒していた……
「そ、そんな……」
祐一は、力尽きたかのように膝と両手をつく。最早家族の内の誰のものか判らない血が祐一の手と膝下を濡らす。
「……ぉ」
「!!」
その時、玲奈が微かに動き声を出した。
「玲奈! しっかりしろ!」
玲奈の身体を抱え起こすと、玲奈の目が僅かに開く。
「玲奈!」
その声に反応して顔を向けるが、その瞳に既に光は無く、笑おうとしていたが口元が少しゆがむだけだった。
「お……に……ちゃ……」
それだけ言って目を閉じる。と同時に首から力が抜けてガクリと折れる。
「……おい、玲奈? 嘘だろ? なぁ?」
玲奈の身体を揺するが、祐一の問いかけに反応する事は無かった。
「うぅ……あ、ああ……」
まだ仄かに暖かい妹の身体を抱きしめて嗚咽を漏らす。悲しみにくれる祐一だったが、背後に殺気を感じていた。
玲奈の遺体をゆっくりと横たえると、今度は素早く背後の気配に飛び掛り、壁に押し付けた。
ドンッ
「ぐぇっ」
祐一を殺そうと背後に忍び寄っていたのは、全身黒尽くめのカノンの戦闘員だった。
「貴様らだな? 俺の家族を殺したのはっ!?」
そう言って戦闘員の首を押し付けている腕に力を込める。
「く、苦しい……」
「俺自身どこまでの力があるか分かってないんだから手加減出来ないぞ。さぁ言え! 俺の家族を殺した奴はどこだ!?」
「そ、それは……イ゛ーッ」
何か言いかけた戦闘員だったが、突然悲鳴をあげると、ガクリと項垂れた。
「!?」
よく見ると、戦闘員の腹部から何か刃物のようなものが突き出ていた。祐一が戦闘員から離れると刃物も戦闘員の
腹部に引っ込み、戦闘員は床に崩れ落ちる。刃物が突き出ていた辺りの壁には穴が開いていた。祐一が廊下に出るとそこには
戦闘員を殺した怪人、蟷螂男が居た。
「ギィーッ!」
「カノンの怪人! 父さんたちを殺したのはお前かっ!?」
蟷螂男は祐一の問いには答えずに、身を翻すと外へと逃げ出した。
「待てっ!」
祐一は蟷螂男を追いかけて外へと飛び出すと、玄関を通った所で待ち伏せしていた戦闘員が短剣を突き出した。祐一は
寸での所で仰け反ってかわし、戦闘員の腕をとって裏拳を顔面に叩き込み投げ飛ばした。そして再び蟷螂男を追いかける。
静かな住宅街を走って行くと、戦闘員が次々現れて祐一の行く手を塞いだ。
「クッ、どけぇ!」
バキッ、ドガッ!
「イ゛ーッ」
打ち倒して進む内に、祐一はいつしか町外れにある廃工場にまで誘い込まれていた。月明かりの中、打ち捨てられ
錆び付いた滑車やコンテナが無残な姿で残されていた。祐一はその中を気配を探りながら進んだ。
「(誘い込まれたか……)」
シュッ
「!!」
祐一の耳に、空気を切り裂いて何かが飛んでくる音が聞こえた。回避するとそれは、祐一が一瞬前までいた空間を通って
近くのコンテナに突き刺さった。それは蟷螂男の左腕だった。祐一が鎌の飛んできた方を見るとそこには腕を飛ばした
蟷螂男が居た。蟷螂男は腕を振るって鎖を巻き取り、鎌を戻した。
「貴様、カノンの怪人だな?」
「そうだ。貴様を抹殺する為に送り込まれた怪人、蟷螂男だ!」
「蟷螂男……なぜ俺の家族を殺した!」
「我らに逆らうものには死あるのみ。その家族とて例外では無い、キサマへの見せしめも兼ねてこの俺様が殺したのだ!」
「クッ……」
許せなかった。目の前のこの怪人が、カノンという組織が。自分の大切な家族の命をいとも簡単に奪ったこいつらを
断じて許す事など出来なかった。
「心配しなくとも、すぐに家族の所へ送ってやる……戦闘員ども、コイツを殺せ!」
「イーッ!」
蟷螂男の合図で、周囲から戦闘員が現れて祐一に襲い掛かった。祐一は目の前の戦闘員を飛び蹴りで倒すと、後ろからの攻撃を
しゃがんでかわし、振り向きざまの肘打ちで相手を倒す。次いで向かってきた蟷螂男の鎌の攻撃を腕を掴んで防ぐが、相手の力が
強く鎌が徐々に近づいてくる。祐一は相手の腹部に膝蹴りを叩き込み、蟷螂男が怯んだ一瞬の隙をついて転がして間合いをとった。
そして……
足を開いて左腕を握り腰に構える。右腕は指先を揃えて左上に真っ直ぐに伸ばす。
「ライダー……」
右腕を時計回りに旋回させて右上に来た辺りで止める。
「変身ッ」
今度は逆に、右腕を腰に構えて左腕を右上に真っ直ぐ伸ばす。すると祐一の腰にベルトが現れて中央の風車が回転する。
「トォッ!」
祐一が高くジャンプするとベルト中央の風車が発光し、その光は祐一の全身を包み込んだ。光に包まれた祐一が、
置かれていたコンテナの上に着地すると光も消えた。
そこには祐一の変身した戦士−−仮面ライダー−−がいた。
「キサマは!?」
「俺はお前達カノンと戦う戦士、仮面ライダー! いくぞ!」
ライダーはコンテナから飛び降りざまのキックを戦闘員に当てると、そのまま蟷螂男に立ち向かって行く。蟷螂男の振りかざす
左腕を掻い潜って背後に回りこみ、掴んで投げ飛ばした。ライダーは倒れている蟷螂男に走り寄るが、蟷螂男は左腕の鎌を
飛ばしけん制する。飛ばした鎌は避けたライダーの脇を通過して戦闘員に刺さり、その命を奪う。
鎌を引き抜いた蟷螂男は、左腕を戻さずに振り回して攻撃してきた。
「いくぞ、ライダー!」
ブンッブンッブンッ!!
振り回される鎌の速度は凄まじく、更に鎖の長さも変化する為ライダーは中々近寄れずに、回避と後退に専念するしか無かった。
「どうだライダー、手も足も出まい!」
途中、鉄骨で組んである支柱の影に身を隠すが蟷螂男はそれすらいとも簡単に切り裂いてしまう。
「クッ……」
だが、ライダーは後退を続けていく中で鎌の軌道パターン、速度を計算していた。
「……今だ! トォッ」
ライダーは間合いを計ると、鎌の根元にパンチを当てて鎌をはじき飛ばした。更に詰め寄り蟷螂男に掴みかかると膝蹴りを
打ち込んだ。だが、蟷螂男も腕を元に戻してライダーに突き出してきた。
シュッ
ライダーは攻撃をかわすがバランスを崩してしまい、次いで蟷螂男の足払いをくらって倒れてしまった。
「死ね、ライダー!」
ザクッ! ザクッ! ザクッ!
ライダーは、連続で突き出される鎌を転がって回避していく。だが、ついに壁際まで追い込まれてしまう。
「止めだ!」
「させるか!」
鎌を大きく振り上げた隙をついて繰り出した蹴りは、相手の腹部に当たって蟷螂男を後退させた。ライダーは立ち上がる
と蟷螂男に向かってゆく。
「おのれぇ!」
「ライダァーッ チョォップ!!」
互いの攻撃が激突する。そして
バキィッ!!
ライダーの繰り出した手刀は、蟷螂男の鎌を根元の辺りから切り飛ばしていた。
「グアアァァーッ!」
「トォッ!」
ライダーは高く飛び上がり……
「ライダァーーーーッ」
空中で一回転すると、強烈なキックを打ちはなった!
「キィーーーーック!!」
ドガァァッ!!
「ギィーッ!!」
キックが命中した蟷螂男は宙を舞って地面に激突し、爆散した。
蟷螂男を倒した祐一は自宅へと戻って行く。嘘であって欲しかった、今までの事は全て悪い夢であって欲しい。
家に戻れば両親と妹が、帰ってくるのが遅いと文句を言いつつも暖かく迎えてくれる。そう信じたかった。
だが、祐一が戻ってきた自宅で見たものは、先程と変わらぬ光景だった……
荒れ果てたリビングに倒れ付す家族の姿。流れ出た血は既に赤黒く固まり、仄かに暖かかった身体も冷え切っていた。
その光景が、眠っているような妹の顔が、全て現実だと教えていた。
「父さん……」
『ねぇ父さん。なんでこんな格闘技なんかしなきゃいけないの?』
『ハッハッハ。強くないとイザというとき大切なものを護れんぞ。それにな、強いと女の子にモテるぞ!』
『僕……強くなるよ!』
『ハッハッハ、それでこそ俺の息子だ!』
「母さん……」
『ホラホラ祐一。昔の制服出てきたからさ、着てみたんだけど。どう? まだあたしも現役でイケるわね〜』
『母さん……やめてくれ……』
『あらあら……似合うって言ってくれないの? 綾乃ちゃん悲しいわ……』
『違和感がなくて逆にコワイんだよ! 只でさえ玲奈と並んでも姉妹にしか見えないってのに……
見た目はともかく、実年齢考えてくれよ』
『ほほぉ、そういう事言うかね、この息子は……今度この格好であんたの学校前で待ち伏せして、出てきたら皆の見ている
前で「ゆ〜いちく〜ん」って笑顔で走ってきて、抱きついてあげようかしら?』
『お願いですから、それは止めてくださいお母様』
「玲奈……」
『あれ、お兄ちゃん。何処か出かけるの?』
『あぁ、ちょっと遠乗りに』
『一人で?……誰か女の人と一緒なんじゃないの?……ホラ、前に来てたクラスの女の人達の誰かとか』
『生憎と一人だ。それにあいつらは只のクラスメイトだよ』
『そ、そうなんだ……じゃあさ、私を連れてってよ。後ろに乗せてさ』
『お前さ、何時も俺について来たがるけどお前の方こそいないのか? その、彼氏とかさ』
『えっ!……い、いないよ、そんなの……(お兄ちゃんより素敵な人なんていないし……)』
『ん、何だ?』
『な、何でもない! それよりさ、私も連れてってよ!』
『あ〜また今度な。帰ってきたら乗せてやるからさ』
『本当? 約束だよ、お兄ちゃん』
「う……う、うう……ああああああああああああああーーーーーーーッ!!!!」
祐一の叫びが響き渡る。
それからは、まるで他人事のように過ぎていった。どうやら付近の住人は眠らされていたらしく怪人達の事は何も知らなかった。
祐一の叫びで気が付いた人達が相沢邸で見たものは、血だまりの中で死んでいる相沢家の人たちと、ただ泣き叫ぶ祐一の姿だった。
警察による現場検証、事情聴取などが行われたが祐一は何も答えられなかった。カノンの事を説明できるはずもなかったし、
なにより祐一自身が心ここにあらずといった風であったから。その後、通り魔の犯行という判断が下された。
それから近隣の人々の協力を得て葬儀の準備が進められていくのを、祐一は遠い世界の出来事のように見送っていた。
「…………」
夜。
祐一は座敷にある三つの遺影の前で座り込んでいた。今この相沢邸には祐一だけだった。近隣の人々も今は各々の
家へと帰っている。
ピンポーン
玄関のチャイムが来客を告げるが、祐一は座り続けていた。
ピンポーン……ピンポーン
再びチャイムが鳴る。何度も家中に響く音に、祐一はようやく立ち上がり玄関へと向かいドアを開ける。そこに立っていた
のは自分の母と妹に良く似た容姿の女性と少女だった。その二人は祐一のよく知る人達だった。
「祐一さん……」
「祐一……」
「秋子さん……名雪」
自分の叔母、水瀬秋子とその娘の名雪だった。それは数年ぶりの、だがあまりにも悲しい状況下での再会であった。
「祐一さん。お久しぶりです……それと、来るのが遅れてごめんなさい」
「ごめんね……祐一」
そう言って二人は頭を下げる。
「……上がってください」
祐一は秋子達を座敷へ通した。掃除が終わったとはいえ、あのリビングに通す気にはなれなかった。通された二人は線香
をあげ、手を合わせる。暫くそうしていたが、秋子が嗚咽を漏らした。
「う、うぅ……姉さん……なんで……電話の時はあんなに……うぅ……」
あのとき感じた不安はこれだったのだろうか? あの時、姉に説明できていればこんな事にはならなかったかもしれない。
秋子はそう思わずにいられなかった。
「義兄さん、玲奈ちゃん……」
名雪もまた悲しみに沈んでいた。暫くぶりに会えるのを楽しみにしていたのに、こんな形で再会することになろうとは。
「和真伯父さん、綾乃伯母さん、玲奈ちゃん……グス……」
『ねぇ、綾乃伯母さん』
『ん〜、名雪ちゃん。ダレが「オバさん」なのかな〜?』
(むにょ〜ん)
『い、いふぁい。ほっふぇはひっふぁららいでお〜』
『あらあら、秋子に似てよく伸びる頬だこと……で、何だって?』
『うぅ〜、ご、ごめんなふぁい。あやのおねぇふぁん〜』
『わかればいいのよ。あたしはまだ十分若いんだから』
『う〜、痛かったよ〜……お母さんより年上なのに〜』
『ん、何か言った?』
『わ、わわ。何も言ってないよ!』
昔の綾乃とのやり取りを思い出していた。もう一度会いたかった。またあんな風に怒られても構わない、だが写真に写る
伯母達は優しく微笑んでいるだけで何も答えてはくれなかった……
そんな二人を見ていた祐一の心に、次第に強い自責の念が浮かんできた。
「俺、は……まもれなかった……」
最初は小さな呟きだったが、徐々に祐一の声は大きくなっていった。その声に秋子も名雪も祐一の方へ向き直る。
「護れなかった……力がありながら! 皆を護れるだけの力がありながら護れなかったっ!!」
最後は、握り拳を畳に叩きつけながら叫んでいた。
「俺は、おれは……アアアアアアーーーーッ!!!」
「祐一さん……」
秋子は、拳を叩きつけたまま泣き叫ぶ祐一を起こして抱きしめると、子供をあやすようにその頭を撫でる。
「祐一さん、あなたのせいではありませんよ。自分を責めないで下さい」
「そうだよ、そんなに自分を責めちゃ駄目だよ」
名雪もそう言いながら祐一の肩に手を置く。
「間に合わなかった……あの時みたいに……また、俺は……ああああーーーっ!!」
秋子も名雪もそれ以上声をかけようとはせずに、ただ黙って祐一が落ち着くのを待っていた。ようやく落ち着きを取り戻した
祐一は「もう大丈夫です」と言って秋子から離れた。
「すみません……」
「いいんですよ……悲しい事があったんです。泣くのは当たり前ですから」
「名雪も、ごめんな」
「ううん、私より祐一の方がずっと悲しいもんね。もっと泣いたっていいんだよ」
だが……
「いや、今の俺に泣いたり悲しんだりしている暇は無かったんだ。俺にはやらなきゃいけない事があるから」
祐一の瞳には並々ならぬ決意が宿っていた。その決意を読み取った秋子は心配して声をかける。
「祐一さん……それは殺された姉さん達の復讐ですか?」
「秋子さん……」
「いけませんよ。祐一さんにまでもしもの事があったら……」
「そうだよ。綾乃さん達も悲しむよ。それに私だって……」
秋子も名雪も祐一の手を握りながら言った。その時祐一は、秋子の手に指輪が嵌っているのを見た。
「(健吾さん……)」
”健吾さんもあいつらに殺されたんだ!”
そう叫びたかった。だが、それは出来なかった。そうすれば自分が復讐の為に戦うと認める事になるし、この二人を
巻き込むことにもなる。そしてなにより、健吾の死と自分の身体の事を話さなくてはならないから。
告げなくてはいけないこと、だが告げたくはない。そのことが重圧となって祐一を更に苦しめた。
「俺は……どうしたらいいんだ……」
「生きるんですよ……残された人は、死んでしまった人の分まで精一杯生きるんです」
祐一の言葉の意味を誤解したのだろう、秋子はそう言ってきた。
「それは分かってます。俺にはやる事が……」
「一体何を……」
「すいません、今はまだ……でも時期がきたら話します。ただ、復讐とかそんなんじゃありませんから」
「祐一さん……」
秋子の指輪が光る
「(健吾さん)」
確かに祐一の心には家族の命を、そして健吾の命を奪ったカノンへの復讐の気持ちがあった。その点では祐一は嘘をついた。
しかしそれだけでもなかった。二人を護る、カノンの野望を叩き潰す、その為にも祐一は戦わなくてはいけなかった。
「大丈夫ですから……」
「……分かりました。でも祐一さん、無理はしないでください。もうこれ以上大切な人を失いたくありませんから」
秋子は全てを悟ったようにそう言った。秋子は昔から勘の鋭いところがあった。
「(気づいているのか? いや、秋子さんは何も知らないはずだ。……でもこれでいいのかもしれない、
これ以上二人を……健吾さんすいません。今俺はこの人たちに貴方の事を言えそうにありません)」
「祐一……?」
名雪が黙り込んでいる祐一を心配して声をかける。その目には、まだ涙が残っていた。
「大丈夫だ名雪。俺は生き抜いてみせるさ」
それを聞いた名雪と秋子は安心したのか、笑みを見せた。
「祐一さん、私達は暫くこっちにいますね。お葬式の事とかありますし」
秋子達にしてみれば当然の事だった、なにより身内の事である。その申し出は祐一にとってもありがたかった。
「ありがとうございます……その間は家に泊まってください」
「はい」
それからの祐一はいままでとは違って精力的に動いた。動く事で悲しみを忘れようとした。それは秋子や名雪も同じだった。
そして、葬式も終わり一応の落ち着きを見せた頃、秋子が祐一に提案してきた。
「祐一さん。これからの事ですけど……私達の所に来ませんか?」
続く
あとがき
こんにちは。再度カノンMRSを投稿させていただきました、うめたろです。
前回(1〜3話)も感想をいただけて嬉しく思っています。
今回はいよいよカノン本編のストーリーと絡めようか……の前段階です^^;
そちらのほうはもう暫くお待ち下さい。
が……秋子さんと名雪が登場している時点で最早あの最初のシーンはありません(ぉ
今回のお話ですがV3が含まれています(含むどころじゃなくて主成分ですね^^;)
オリジナルな話を展開させていければ良いのですが、いかんせん脳内のシナリオ作成機能が
ヘッポコなため苦労しています><
こんな私ですが、見捨てずにいてもらえればありがたく思いますm(_ _)m
次かその次あたりで他のカノンキャラも登場する予定なのでおまち下さい。
……一話ごとの展開遅いかなぁ? などと思ってみたり
もっと一話の容量を大きくすれば早くなるのだろうけど
文書作成能力&執筆速度も……orz
な、なんとか頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。
最後に
この作品を掲載してくださった管理人様
この作品を読んでくださった皆様に
感謝して後書きとさせていただきます
ありがとうございました。
次もまたなるべく早くに投稿したいと思います。
では。
うめたろ