幻想の鍵

プロローグ2.the nature days

ジリジリジリジリ・・・・・・
  「・・・うるさい・・・」
  寝惚け眼のまま目覚まし時計をチョップで止めると少女は部屋を出る。
  洗面所で顔を洗い、腰まで届く漆の様な長髪を紫のリボンで纏める。
  台所で食パンを古びたトースターにセットし部屋に戻りパジャマを脱ぎ、通っている高校の赤い制服を身に着ける。そして台所に戻り焼けた食パンを何も塗らずそのまま食べる。何時もの様に一人で。
  簡素な食事を終え、鞄を手に玄関に出る。
  「・・・行ってきます」
  返事は無い。当然である。この家には彼女以外誰も居ないのだから。少女が出た扉の横の表札には「川澄」と書かれていた。


  鹿音高校への道の途中の通りで親友の佐祐理と待ち合わせる。
  「あ、おはよう。舞」
  「・・・おはよう、佐祐理」
  挨拶を交わし二人は一緒に学校に向かう。
  

  学校で二人は有る意味校内一有名なコンビである。学校一の才女であり、国会議員でもある父を持つ名家のお嬢様、さらにやさしい笑顔の美少女なのだからその人気は学校でもかなりの物だ。
  対して舞は佐祐理とは真逆の意味で有名だった。容貌は整っていて凛とした印象を与えるが、無口で無表情で人を寄せ付けないものがある。その容貌ゆえに数人の不良に絡まれた事もあり、その際に一人で撃退してしまった事が根も葉もない噂を作り、さらに尾びれ背びれが付き、自分たちが勝手に創ったイメージで彼女を見る。
  そんな周囲からは不釣合いにしか見えないコンビは周りからは色々と興味の対象になっている。もっともそんな事を気にする二人ではないのだが。


  授業はそこそこ真面目に受け、昼は屋上にシートを敷いて佐祐理の作った弁当を一緒に食べる。舞にとって一日で一番幸せな時間である。舞が無言でいそいそとおかずを摘み、佐祐理がそれを見て嬉しそうにする。舞の動きがまるで小動物のようで微笑ましく、佐祐理の笑顔が優しく満ち足りた物だった。
  午後の授業も適当に済ませ、登校時と同様に一緒に下校する。二人とも部活に入っていないため二人の都合が会わない日は稀だった。


  家に帰り、先ずは部屋で服を着替える。冷蔵庫からレトルトのカレーとコンビニのご飯を温めて早めの夕食にする。一緒に食事する相手はいない。
  食事を終え、食器を片付け学校の宿題を適当に済ませる。日常を終え、次の日の準備を終えて、一日の一番大事な時間を漸く始められる。


  制服に着替え、クローゼットに置いてある竹刀袋をとる。家を出て毎日二度目の登校を始める。
  高校へ着くと裏の体育館側の塀に竹刀袋を立て、結んである長い紐を握り締めながら中身の鍔を足場に塀の上まで駆け上がっていく。塀の上で立ち、紐を引っ張り上げ舞い上がった竹刀袋を掴み取る。庭に飛び降りて鍵の掛かっていない玄関から校舎に入る。階段を上り昼に親友と共に弁当を食べた屋上に出る。
  雲ひとつ見つからない満月の浮ぶ星空。低く大きい満月に酷く圧迫感を感じた。
  「・・・祐一・・・」
  幼き日の唯一、友達と言えた存在。奇怪な青い光に包まれて消えてしまってからもう10年も経つ。今は自分達の通うこの高校が出来る前にあった金色の麦畑。共に遊び、思い出を紡いだ。初恋だったのかも知れないが、今となっては舞にはもう分らなかった。
  神隠しという言葉を知ったのはそれから一年ほどしてからだった。
  古くから鬼、天狗、もしくは祟り神の類が行う人攫い。この町に伝わる神隠し伝承によく現れる青い光。幼い頃の友達が消えた時の光と同じではなかったか。ならあの友達は神隠しに遭ったのか。
  もし神隠しならそれをやった犯人がいるということである。ならばここで待てばいい。必ず犯人はここに戻ってくるはず。なんかのドラマも犯人は犯行現場に戻ってくると言ってたから。そしてその犯人から友達を取り戻すのだ。その想いで舞は何年もの間、それこそ今の学校が建てられる以前から毎晩ここに通ってきたのだ。
  舞は校舎で一番高い場所、貯水タンクの上に立つ。どんな変化にも気が付くように周囲の気配を探る。
  そして、数年間の中で初めての異変が起こった。稲妻と雷鳴。それも空の上からでなく、目の前のグランドの上空から水面越しの太陽の様な奇妙な青い光だった。友達が消えたあの時と同じ光・・・
  舞は貯水タンクを降りると光の方向に移動し、手摺に掴まり、光を睨み続ける。
  光はしばらくただゆらゆらと揺れていたが、やがて光の一部が水面のそれのように盛り上がり、光の飛沫を上げて中から巨大な人型の異形が飛び出してきた。
  「・・・!?」
  7mを超える甲虫と巨人のハーフのようなそれはまるで酔っ払っているような感じでよろよろと飛んでいたが、すぐに力尽きたのか屋上の舞のすぐ横に不時着しそのまま片膝を着いてしまう。
  舞は恐る恐る近ずいてみると人間の口吻部に当たる部分から呼吸音が聞こえ、更には肩で息するような動きすら見せる。
  「・・・生きてる?」
  そして近ずいて見て初めて腹部にキャノピーがあり、中に人がいることに気が付いた。
  そして人型が動かないようなのを見ると今度はキャノピーに近ずいてみる。その際、背中に異形との比率にして長太刀と小太刀ほどの刀を×字に背負っている事、右肩に筆時のような漢字で祐、左肩に桜の花弁を模った紋様があるのに気が付いた。そして、近くに着いた時突如キャノピーが開かれる。中から現れたのは和風の、白を基調に黒の意匠の施された戦装束に身を包み、首から古風なゴーグルを提げた漆の髪の小柄な少年だった。
  「こ・・・ここは・・・地上界に出ちまったのか?」
  「・・・あ・・・あ、ゆ・・・ゆ・・・」
  少年の容姿に舞は驚きを隠せなかった。幼き頃の友達の面影を残したその姿に。
  「・・・祐一!」
  10年ぶりの再会だった。




  **後書き**
  え〜、就職してからSSに回す時間がめっきり減ってきた丸井です。

  いや、誠に申し訳ないのですが仕事の後、どうも身体に力が入らないと言うか上手く書けないと言うか。
  で、今回はまたABのプロローグですが、後1,2個ほど続きます。マキナとどっち先にやろうか考えてますけど。
  まあ、内容はオーラバトラーの名前が悩みの種だったりしますが・・・

  とまあ、今回はこんな感じで。ちょっと、色々書きたい事あるんですが、書くだけのHPが残ってないというか。と、言う感じな丸井でした。

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