幻想の鍵

プロローグ1.the missing

「2分27秒の遅刻よ、蓮子」
  宇佐見蓮子が、待ち合わせ場所である神社に着いて聞いた第一言がそれだった。
  「貴女の時計は早急にオペが必要ね。私の遅刻は2分32秒よ、メリー」
  そんな蓮子は夜空の星と月の位置を確かめつつメリーことマエリベリー・ハーンに返した返事はそんな言葉だった。

  青森県の割と内陸の方に有る守郭(かみかく)市。ついでに言うと割かし古く、色々な伝承の有る町でよく休みの時期には民俗学をやっている学生が来たり、そうゆうのが好きな人間が来たりする、そんな土地である。と、言っても、まあそのての場所は殆どそのまま残っているが、基本的には結構近代化した普通の町である。
  その守郭市に有る唯一の大学、私立夢違(むい)大学(この珍妙な名前の由来は同名の沼を埋立てて出来た土地だかららしい)にオカルトサークルがある。『秘封倶楽部』。そんな微妙な名前のサークルのメンバーは二人。蓮子とメリーである。
  宇佐見蓮子は項より少し長い程度の栗毛の髪を白いリボンで纏め、焦げ茶のポークパイソフトハットを被っている。夢違大学の一年で超統一物理学を専攻している。頭の回転は速いがそれが変な方向に向く、ある種の問題児であり、秘封倶楽部のリーダーにして創始者である。
  メリーことマエリベリー・ハーンはボリュームある金髪を腰まで伸ばし、ちょっと変わった形のヘーローハットを被っている。同大学の一年で専攻は相対性精神学。蓮子にくっ付いて行動を共にする秘封倶楽部のメンバーにして蓮子の親友兼ストッパーである。ハーフらしいが何処と何処の国のハーフかは蓮子は聞いた事がないしメリーも言った事がないので少なくとも蓮子は知らない。それどころかメリーのフルネームもマエなんとかハーンと言う具合にしか覚えてない。戸籍の上での呼称などという如何でもいい事よりメリーが自分にとっての親友である事の方が大事、と言うのは蓮子談。
  で、二人は目的地に向かって歩き始める。と言ってもメリーは場所を知らないので蓮子に着いて行く。
  「で、今回は何処に行くのよ?」
  今回もサークル活動と称して心霊スポットかそのての伝承の有る所かを回るのかとメリーは思った。
  「私立鹿音(かのね)高校よ」
  なので蓮子の返事に肩透かしを喰らった様な気分になった。
  「今回はえらく曰くのなさげな名前ね」
  前回行った、妖狐の伝承の有るものみの丘で狐の大群に追い回されたことを思い出して、メリーは思い切り溜息をついた。狐は数が減って大変なのではなかったのか。
  「名前はね。でもあそこって学校建てる前は神隠しの名所だったのよ」
  「嫌な名所もあった物ね」
  「で、割かし最近近くで行方不明者が出てる事がネットで分かってね?鹿音高校の卒業生としては調べないては無いとね?」
  「貴女自分の母校すらそう言う対象で見るのね」
  メリーは最早呆れるだけだ。対して蓮子はそれを気にした様子も無く続ける。
  「で、今回は現役女子高生の鹿音秘封倶楽部の後輩達と共同活動よ!」
  「高校でも創ってたの!?」
  「もちろんよ、小中でも創ったわよ?秘封倶楽部。今でも有るし。メンバーが常に二人以上集まらないのは小学校の時からの伝統よ」
  嫌な伝統もあった物ね、とメリーは言おうと思ったが話が進まないのでやめた。
  「それはそうと学校って見えてきたアレ?」
  メリーはどうしようもなく聞きたくない話題に流れかけていた話を見えてきた学校らしき建物で無理矢理変えることにした。
  「そうそう、この学校。私の様な人材を世に送り出す素晴らしい学校よ」
  「それは素晴らしく世の為にならない学校ね」
  「ちなみに正門はこの裏、後輩もそこで待ってる筈よ」
  メリーの皮肉を華麗にスルーして蓮子はメリーを案内する。回り込んで正面に出ると正面門が目に入る。そしてその横にこの高校の物らしい制服に身を包んだ二人の女子高生が立っていた。片方は長いウェーブの掛かった茶色がかった髪の大人っぽい雰囲気の少女。背は蓮子たちと同じくらいで標準的といったところか。もう一人は同じ色の髪をややショートにした、小柄で華奢なな少女だ。
  「お〜、久しぶりカオリン、シオリン」
  蓮子は片手を振り上げて正門前の二人を呼ぶ。
  「相変わらず元気そうですね、宇佐見先輩」
  ウェーブの少女、美坂香里がある種の疲労感すら感じられる声で応える。鹿音高校の二年で、高一の時に蓮子の謀略で(詳しい事は本人が頑なに隠し続けている)秘封倶楽部の部員になった、割かし常識人の女の子である。
  「お久しぶりです。先輩」
  もう一人の少女、香里の妹である美坂栞は無邪気な笑顔で応える。
  挨拶を交わした後、蓮子は二人にメリーを紹介する。そして挨拶も酣に早速学校に入って色々調べる事にした。
  「で、どうやって中に入るのよ?」
  メリーが蓮子に尋ねると蓮子は正門の前に行くとそっと門を押す。すると門の下の車輪が回る音と共に門が開き、蓮子は悠々と校門を通ってグランドに入っていく。その後を栞が楽しげにくっ付いて行く。
  「・・・ウチの学校管理が雑なんですよ、すっごく」
  呆然としているメリーに香里が声をかける。メリーは理解する。彼女も自分と同じだと。
  「貴女とはいい友達になれる気がするわ、香里さん」
  「私もです。メリー先輩」
  宇佐見蓮子被害者同盟結成である。
  「私のことはメリーでいいわ」
  「なら、私も香里で」
  二人が握手を交わし友情を深めていると、蓮子と栞が二人を呼ぶ。二人は苦笑いをを浮かべると先にいる二人の許へ歩いていく。
  異変が起きたのはその時だった。
  稲妻が奔った。雷鳴が轟いた。四人は一瞬そう思ったが、すぐに夜空に雲すらない星空だということを思い出す。
  四人が音の方向、校舎正面のグラウンドの真上を向くとそこに光が在った。水面越しに見える太陽のような青い揺らめく光だった。
  他の皆がその幻想的な光景に見惚れている中、蓮子はネットで調べたある情報を思い出していた。

〜夢違の沼、物見の丘は神隠し伝承の宝庫である。またこの地の神隠しは青いゆらめきと呼ばれる現象を伴うとされている〜

  そんな蓮子の思考を断ち切ったのはメリーの絞り出すような声だった。
  「ねえ蓮子、あの校舎の屋上に誰かいない?」
  メリーが屋上の一角を指し、その先を視線で辿ると確かに香里たちと同じ制服に身を包んだ少女がいた。
  「ねえ、お姉ちゃん。あそこに居るの、三年の川澄先輩じゃない?」
  栞もそれに気が付いたらしい。姉にそれを告げる。
  四人の位置からはよく見えないが、屋上の少女は手摺に掴まり光の揺らめきを見つめているようだ。
  不意に揺らめきが激しくなり、次いで揺らめきの一部がまるで何かが浮上する時のように盛り上がる。そして盛り上がりが爆ぜ、光の飛沫を纏いながら白い、人の形をした巨大な異形が現れた。
  「・・・虫の・・・ロボット・・・?」
  誰の声かは判らなかった。もしかしたら自分を含めた全員が思わず呟いでしまったのかもしれない。
  一対の目を持つ西洋兜を連想させる頭部。甲虫のような外骨格。身体のサイズにしては細く長い四肢。昆虫のように区切られた胴体と腹。凄まじい速度ではばたき、蛍火を撒き散らす光彩ある虫の羽。それらは生き物としか見えなかったが、一つだけそれを裏切る物があった。腹部にある、レシプロ機のそれを連想させるキャノビー。この異形が人工物である事を物語る唯一の物だった。
  光の揺らぎから現れた7m以上は有ろう異形はよろよろと頼りなく僅かな距離を飛ぶと、校舎の屋上に何とか着地するがすぐに片膝を付いて倒れ込んでしまう。屋上に居たあの少女のすぐ横に。






  **後書き**
 え〜、最後の部分書いてる途中で晩めの晩飯食ってたらもう更新されててこれ掲載されるのは結構先か・・・な丸井です。

  さて、始めてしまいましたオーラバトラー(以降AB)物・・・大丈夫か俺?
  ネット上ではあまりカノンとのクロスを見かけないあのAB物を無謀にも東方まで加えて・・・大丈夫か俺?
  この話、一種のパラレルワールド物で、元のAB物とはクロスしませんし、ストーリーの都合上、前半カノンメンバーの登場も制限されるし・・・大丈夫か俺?
  公式資料ないし、ネット上にも少ないので独自解釈多いし・・・大丈夫か俺?
  蓮子とメリーのやってる超統一物理学や相対性精神学の内容全然解らんし(現在はまだ存在しないはず)・・・大丈夫か俺?

  てな感じでライフカードな後書きになりましたか・・・ほんと大丈夫か俺?な、丸井奈仁華でした。


  追記 作中の珍妙な地名などについて
  夢違:蓮子とメリーの登場作品「夢違科学世紀」より。ちなみにこの二人は音楽CDのみの登場。東方で数少ない「こっち側」の世界の人。
  守郭市:そのままズバリ。作中でカノンメンバーが住んでいる町。
  鹿音:カノンの漢字化が華音ばかりなのでちょっと変えてみた。鹿のほうが実際に有りそうかな?
  

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