仮面ライダーMAKINA
〜蘇る九頭竜伝説〜

第五話

  アメリカ合衆国、ニューヨークの空港より日本に向かう航空機の中、相沢郁代は憂鬱だった。窓際の席に座り、その隣には誰よりも好きな兄祐一が、その横通路を隔て父祐馬が座りさらに横に母春子がいる。
  兄はマサチューセッツの名門ミスカトニック大学を弱冠十五歳で医学科と考古学科飛び級で卒業した天才で、自分の一番の自慢である。
  父は地質学の博士号を持っており、そのミスカトニック大学で招かれてある研究に参加していた。その内容までは教えてもらえなかったが。
  母はこの二人と比べれば普通の人である。と言っても父と兄が非凡過ぎるだけで、母も料理や家事では近所に並ぶ者なしの腕前を誇り、何よりとても優しい。叱る時は恐いが。
  母はともかく父と兄の仲はすこぶる悪い。理由は分からないが物心付いた頃には父が兄を避けている事は判っていた。兄もそれが分かっているのか必要以上に父には近寄らなかった。正直郁代はこの二人は生きるに必要最低限のコミュニケーションしかとっていないのではないかとさえ感じる。
  この事自体は郁代も気にしていなかった。だが、兄が迎えに来て二日ほどの頃を境にそれが一層悪化した。父はミスカトニック大学での研究素材等を片付ける際に兄だけを呼んだのだ。もしかしたら兄と仲直りしてくれるかも知れない、とも思った。結果として期待とは真逆になってしまった。その晩戻ってきた二人は寮の部屋でなにか口論を始めてしまった。郁代は本気で憤怒の情を顕にした二人を見たことがなかった。それが恐ろしくて郁代は自分の部屋でじっとする事しか出来なかった。そして、今に至る。せっかく兄が横にいるのに望んでいたような会話が出来ないでいた。明らかにあれ以来二人の様子がおかしい。兄が父に対しての感情は無関心、父が兄に対しては忌避。だが、二人の間に憎しみのそれに近い感情が生まれているのではないか?そんな気すらする。
  ふと気が付いた。胸の中のモヤモヤに。これは何だろう・・・

  〜何って、気付いてていないの?〜

  父と兄の不仲には慣れていた筈なのに。何故、こんなに違和感を感じるのか?

  〜本当は解っているんでしょ?〜

  兄と父が何かを言いながら自分たちの席を離れる。場所を変えて話すつもりらしい。ここでは言えないと言うことなのか。行かせてはいけない。何故かそんな気がした。二度と二人に会えなくなるような。

  〜いい加減自分自身を偽るのも大概にしなよ。見てて苛々するよ〜

  分かっているんだ、本当は。私はこの先を知っている。もう何度目になるか分からないこの夢が私に罪を突きつける。あの時、ただ震えている事しか出来なかった私の罪・・・


  
  「・・・未練・・・だな」
  ある一軒家の前でアメリカンバイクに跨った黒いコートの少年は呟いた。
  「良いんじゃないかな?君だって人間なんだし。一応は」
  応えたのは少年がナイアと呼ぶ、黒いスーツに身を包んだ妖艶な女性だった。
  「一応は・・・か」
  「一応は・・・ね」
  ナイアはうっすらと笑みを浮かべる。
  「さっきちょっと夢の中を覗いで見たけど弱い心だね、彼女。いっその事・・・」
  「余計な事はするなよ?」
  話す前に釘を刺されナイアは肩を窄める。
  「お前は・・・頼んだ通りにしてくれればいい」
  「はいはい、頑張るからたまには優しくしてよ。他の女の子に対してみたいにさ」
  少年は応えず黙ってバイクのエンジンに火を点けるとそのまま走り去っていった。
  「・・・難儀な正確だね。ほんとに」
  ナイアは苦笑いを浮べるとその姿は闇に覆われ、やがて日光に溶けていった。


  「ふむ、ここならば存分に動ける」
  呟いたのはショートの金髪の小柄な少女だった。噴水の有る公園に彼女はいた。胴衣をを纏い無人の公園に佇む。
  冬に意味もなく公園に来る人間は少ないのか辺りは無人だった。少女は公園の草むらから適当に木の枝を見つけてきて地面に円形を中心とした幾何学的な魔法陣を描く。そして木の枝を棄てると魔法陣に片手を翳す。少女の手が淡い光を放つ。そしてそれが移るように魔法陣もそれ自身が淡い光を放ち始める。
  「・・・これで人払いは良し。では、釣りを始めましょう」
  言って少女の眼前に周囲の大気から滲んでくるように水が現れ凝縮され一つの形になる。ランス。3メートルを優に超す巨大な薄い青の騎乗槍となり地に突き刺さる。無駄な装飾を一切持たない巨大な実用美の塊をその長さの半分の背もない少女は片手で地面から引き抜くとまるでバトンを振るように弄ぶ。
  「さあ、某の魔を感じらよ!そして参られよ!門番方よ!某と相手していただきます!」
  少女とランスから放たれる邪神の気配。それを餌に少女は魚を待つ。
  そして最初の魚が掛かったのは十分ほど後の事だった。大型のアメリカンバイクが公園の出入り口を無視し道路から植木を間を突っ切って少女の目の前で止まる。それに跨っているのは黒いレザーコートの少年。
  「相も変わらず、ですな。お久しゅうございますな、マキナ。貴殿と再び死合う事、心待ちにしておりました」
  少女の言葉を無視し少年は変身ポーズを執る。
  「変身!」
  「貴殿は、アーカムにいた頃より華奢になられましたか?やつれたとも違う?」
  マキナは少女の言葉に一切の反応を返さずベルトのホルスターから紅い魔銃を手に取り目の前で両手でグリップに触れるとそこから細胞分裂のように増殖し、それを少女に突きつける。
  「そんな話をするために誘き寄せた訳じゃねえだろ」
  「・・・言葉は無粋でしたかな。貴殿も、私も」
  少女は左半身を前に出し突きの構えを取る。
  「知りたくば力ずくで聞き出しなされ!いざ!尋常に勝負!」
  少女は声と共に駆ける。マキナはその動きを止める為足元を狙い魔銃を連射する。
  「無為!」
  少女はランスを地に突き刺し棒高跳びよろしく跳び上がる。そして空中で縦に一回転ランスをマキナに叩きつけようとする。
  「破!」
  マキナはそれを横に跳んでかわし、跳びながら魔銃を撃つ。
  「遅い!」
  少女はそれをランスを盾にして防ぐ。そしてそれぞれ構え直し再び対峙する。
  「相変わらず一々五月蝿い」
  「気合を入れるのは戦士にとって必要な事です。如何な艱難辛苦にも負けぬ精神を形作ります」
  「お前等が復活しなけりゃこっちはこんな艱難辛苦はなかったよっ」
  「それは心苦しいですが此方にも都合がありますので」
  言って少女は再び突撃をかける。対してマキナは魔銃を一つにするとそれを乱射しながら少女に向かって駆け出す。少女はマキナの手前で止まるとランスを左に振り、右手一本で左から右に薙ぎ払う。マキナはこれを這い蹲るに近い体勢で避けると、攻撃の際突き出される形となった左手を掴み、右手の魔銃を棄てる。
  まずい。少女はマキナのこの行動の意味を、海を越えた向こうのアーカムでの戦いの経験で知っていた。狙いは左手の関節。人間ではないとはいえ人間に類似した肉体である今、その構造も大差ない。故に人体破壊に有効な攻撃は現状の自分たちに対しても大いに有効なのだ。
  少女は咄嗟にランスの柄を背中越しに跳び付き十字固めに入ろうとしているマキナと自分の左手の間に入れる。ランスの柄が添木の役割を果たし、マキナの攻撃を防ぐ。
  「ちっ」
  マキナは舌打ちしながら少女の手を離し少女のすぐ傍でジャンプ、ソバットを放つ。少女はそれをランスの柄で受けるがその威力に弾き飛ばされてしまう。
  少女が突き飛ばされた瞬間マキナは右手の触手で棄てた魔銃を回収する。マキナが少女に魔銃を向けると同時に少女も素早く体勢を立て直す。距離を置き二人は対峙する。
  (・・・まだ、これほどの戦いになるとは・・・今までのマキナが弱かったのか、このマキナが特別強いのか・・・)
  少女は高揚していた。戦いの愉悦故に。
  (・・・まだやれる。奴等の復活はまだ二割程か・・・充分に勝ち目はある!」
  マキナは悦んでいた。復讐の機は充分に有る故に。
  「そうですね。有りますよ。貴方にも充分我らを破るチャンスは」
  口に出ていたか、とマキナがぼやく。そして二人は対峙したまま動かない。少女はチャージの体勢を維持し、マキナは魔銃を突き付けながら。次の行動の切欠を待つ。
  唐突にバイクのエンジン音が聞こえた。それは次第に近くなってくる。
  二人はそれが何を意味するのか知っていた。もう一人の門番、フーガ。
  マキナが苦々しく舌打ちする一方、少女は笑った。
  (ハイドラ殿、策は成れり!)
  己が次になすべき事、ここに在るその目的を果たす為、少女は次の行動に移る。








**後書き**


  最近定職探しに忙しい丸井奈仁華です。いや、他の事もやってて時間が取れずに遅れに遅れた第五話です。

  さて本編解説。オリ設定の相沢妹も夢でちょっとだけ事故当時の様子(あくまで夢なので正確な訳ではないですが)がでました。と、言っても今のままじゃ訳分かりませんが。
  で、新キャラの少女はディープ・ワン陣営の邪神です。正体は次回明かすとしてサムライな少女です。クトゥルーの邪神の殆どが雄雌の性別分けがされていないのが多く、なのでこっちでは俺の極個人的なイメージで性別分けします。結果として自分の脳内に女の子化した邪神が大量発生し、今回の金髪サムライガールもそんなヤツです。正体が分かればこのキャラも納得して貰えるかな?理由事態はメチャ安直なので。これで逆に正体が分かっちゃたらその人は凄いと思う。かなりマイナーな邪神のようなので。
  尤もハイドラや、その旦那で名前だけ出てきたダゴンみたいに性別がハッキリしているのはそのとおりにしますが。

  で、前回登場した555キャラ。本格的な活躍はあと二話位先になりそうです。

  時にPS3の発売日は凄い話題になりましたが皆様は買った方いるのでしょうか?徹夜で並ぶだけでなく怪我人が出るような勢いだったとか。俺はまあ、買いませんでしたが。

  さて、他の方の作品と比べるとかなり見劣りしますが今後も見てやってくれると嬉しい丸井でした。

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