仮面ライダーMAKINA
〜蘇る九頭竜伝説〜



第一話

  11月、日本、青森県。その県境の峠道を一台のオンロードバイクが走っていた。
  ヘルメットの後ろから長く流れる銀髪と身に纏った白いライダースーツのシルエットが女性を主張していた。
  彼女の名は坂上智代。東京の大学生である。民俗学専攻の一年生で、冬休みを利用して民間伝承と都市伝説の関係に関するレポートの調べ物のために青森県に暫く滞在すると言って家を出たのが三日前のことだった。
  目的の町まであと一時間もないだろう。雪の積もった峠を駆けながら智代はそんな事を考えていた。
  

  智代が青森県に、正確にはその中の華音市に向かっているのにはもう1つの理由があった。
  智代は一月ほど前からある悪夢を見続けるようになっていた。内容に関する記憶は酷く曖昧だが暗闇の中、自分の姿が違うものに変わってしまうことだけは憶えている。そんなある日、ニュース番組で北の町の連続失踪事件を知った。その時は数ヶ月前に似たような事が東京近辺であり、そのときの失踪者はどうなったかな?程度にしか思っていなかった。問題はその後、その事件と同時期に囁かれ始めた都市伝説だった。
  曰く、人を攫っているのは半漁人のような化け物だ、それと戦い人々を守る異形の戦士がいる。
  それを聞いた途端いてもたってもいなれなくなった。なにかの強迫観念のようなものに突き動かされ、今に至る。


  ふと、智代の視界のガードレールが途切れる。車かなにか、谷を突き破ったみたいになっている。
  智代はなんとなくバイクを止め、その場所に近よ寄るって行く。
  「・・・いやな感じだな」
  身を乗り出してガードレールに下を覗くと一両の乗用車が転落していた。どうやらガードレールはこの車が原因らしい。警察に連絡すべきか、と思い携帯を取り出すが峠は圏外だった。仕方ないので、一先ず自分で怪我人がいるか確かめるために谷を降りてみることにした。幸い谷の傾斜はそれ程でなく、雪を踏みしめながら難なく降りてゆく。車はフロントが木にぶつかり凹んでいる。ドアの窓から中を覗くが中に人はいなかった。だが車内は酷く荒れていた。シートにはまるで獣が暴れたような傷まである。
  「これは・・・レスキューも呼ぶべきなのか?」
  智代が悩んでいると、上の道の方からエンジン音が聞こえてくる。音はすぐ上で止まり、一人の少年が降りてくる。
  酷く目立つ、奇妙な少年だった。黒髪を目が隠れるほど伸ばし、顔の半分近くを蔽う様な大型のサングラスを掛けている。黒いレザーコートに身を包み、漆黒に統一された姿は酷く見た目の年に合わない得体の知れない威圧感に包まれていた。
  少年は智代がそうしたように車の中を見回す。途中、智代は少年に声を掛けようとしたが、何故かできなかった。
  智代はかなりのお人好しである。そのため、大小多くの騒動を経験してきた。その間培ってきた勘が告げていた。この少年は危険だと。
  車内を見終え、少年は智代に向きなおす。対して智代は身構えてしまう。
  「消えろ。ここで見たのも忘れろ」
  「・・・どういう事だ?」
  少年に対する警戒心を隠し切れない。態度に出さないように努めるが、そうするには少年の気配が強すぎるのだ。
  少年「お前には関係ない。早く消えろ」
  「馬鹿を言うな!怪我人が居るのかも知れないんだぞ!どちらかが警察と救きゅ・・・」
  救急車を呼ばなくては。と、言おうとしたが、言葉が続くことはなかった。拳銃が眼前に突き付けられていたのである。
  奇妙な銃だった。所々が木材で造られており、そして何より口径が異常に大きい。一センチ以上ある。実際には14mmという、ハンドガンとしては出鱈目な口径である。通常拳銃やアサルトライフルで9mm、戦闘艦船等の機銃で17mmが一般的(口径が大きすぎると反動も大きくなり扱い辛い)であるのでその出鱈目さが解るだろう。
  「・・・消えろ。そして忘れろ。お前の為でもある」
  「それは・・・どう言う・・・」
  言葉の途中で頭に妙な感じがした。ノイズが走った、そんな感じだった。それと同時に少年が突然智代から視線をはずし谷の林に目を向ける。
  「兎に角ここから離れろ!いいな!」
  それだけ言うと少年は林へ走り去っていった。


  智代は林の中を歩いていた。少年の後を追ってきたはいいが見失ってしまったのである。
  「何をしているんだ、私は」
  思わずぼやいた。本気で自分の行動が理解できない。少年の事を含め警察に連絡するのが最もいいだろう。だが自分はあの少年を追っている。理由もわからず。それに頭に走るノイズのような感覚も途切れ途切れではあるが止まらない。本当におかしい。
  それでも歩みは止めない。何かに突き動かされていると思う。それが何なのかは解らないが。
  「ん?」
  ふと、どこからか金属同士のぶつかる音が聞こえた気がした。智代は耳を澄ます。確かに音がする。智代は音のする方に言ってみる事にした。

  
  目の前の光景は何なのだろうか。逃げろ、この場を離れろ、と本能が訴えている。
  化け物がいる。青い鱗に身を包んだ半漁人だ。ぎょろりとした二つの目玉、蛙のような分厚い唇。鋭い爪を持ち、水かきに覆われた手足。生理的な嫌悪感を刺激する容貌である。
  それと人型の何かが戦っているのである。
  人型のそれは人に中世の騎士の鎧を模したプロテクターをライダースーツの上に着けたようなシルエットの群青の剣士だった。それが剣を振り、化け物と戦っていた。
  「これは・・・」
  「人外の姿にて人外の力を振るう。要するに化け物さ。人間にとってのな」
  呟きに、まさか返事があるとは思わずとっさに声の方に振り向く。そこにやたら銃口の大きな銃が突き付けられていた。先の少年だった。右手に先ほどは着けていなかった十数個の銃弾の括り付けられたレザーグローブを着けている。
  「消えろと言った筈だが?」
  智代は何も答えなかった。答えられなかった。有り得なさ過ぎる現実に脳が追いつけないでいる。
  「まあいい。女、今から起こる事をよく記憶に刻み付けろ。そして、二度と関わろうと思うな」
  そう言って銃口を智代から僅かにずらし、
  ガン!!
  鼓膜を破らんまでの銃声が響く。
  ドサッと智代の後ろで何かが倒れた。
  「立て。後ろに下がってろ」
  言って智代の手を掴み投げるに近い勢いで下がらせる。その際智代は自分のいた場所のすぐ後ろにもう一匹の半漁人が倒れているのを見た。ソレは呻きながらのそのそと立ち上がる。右目が潰れ、血を流していた。
  「常識から外れた異常な、異形の、世界の良識の裏の世界だ。銃弾の一発、目玉に当ててもたいした傷にならない。こういう存在が闊歩する」
  智代に説明するように語りながら銃身を折り、薬莢を捨て右手のグローブから次の弾を込める。少年の銃は単発だった。
  「人が常識の範疇に居る限り、奴らに抗う術はない。だから、異形に身を堕とす!」
  銃を背に隠し、右手を鷹の鉤爪のようにし掌を上に、左肩の前に持っていき左手を腰に構える。すると、少年の腰に紅いベルトが現れる。長方形の中央に赤いルビーのような宝石の塊があり、その中に火を表す三角の紋様が浮んでいる。
  「異形を狩る為に!異形の力を持って異形に堕ちる!あの蒼い剣士もそうだ!
           変身!!
  ベルトから無数の細い触手が生え、少年に巻き付き、一部の隙もなく覆い隠し、それと同時にベルトから炎が広がり触手の更に外を覆う。そして炎の下から現れたのは紅き蝗の皇とも言うべき戦士の姿だった。
  黒のライダースーツの上に筋肉を模した紅いプロテクター、巨大な一対の複眼の眼と甲虫のような口、そして二本の炎の柱のような角。それは先の群青の剣士に似ていた。
  その姿に智代は驚き口を開く。
  「・・・な・・・にが・・・」
  そして、半漁人も狼狽しているのが分かるほどあとずさる。
  「ふんがるあ まきな ふぁだな!」
  半漁人が何かを言う。その声は人が水の中から出した声に似ていた。
  「悪いがお前らディープ・ワンの言葉は俺には分からん。それに興味もない」
  戦士はベルトの背の方から銃を取り出す。先のと違い、紅い有機的なグロテスクなデザインの銃だ。それをディープ・ワンと呼んだ半漁人に向け引き金を引いた。
  ドン!!
  放たれたのは弾丸ではなく炎の矢。それが半漁人に当たり小さな爆発を起こす。
  「るぐうあああ!」
  吹き飛ばされた半漁人がよろよろ立ち上がると紅い戦士が目の前に来ていた。
  「ま、まきな・・・」
  「ふ〜ん、俺の事もそろそろ伝わってるか」
  興味なさげに呟いた後右のフックを入れる。半漁人が堪らず身を折ると今度は顔面に膝を入れる。かなりのダメージがあったのか半漁人はよろめきながら後ずさる。
  「終わりにしようか」
  戦士はそう呟くと左半身を前にし、腰を落とす。戦士の周囲の雪が溶け出し、その下から炎で描かれた魔法陣が現れる。そして炎が魔法陣を崩して戦士の右足に集まる。炎が完全に集まり終え、戦士が半漁人に向け駆け出す。
  「うおおおお!!」
  吼え、体を捻りながら跳ぶ。そして炎を纏った。跳び回し蹴りが半漁人に突き刺さった!半漁人は吹き飛び、そのまま空中で爆散した。
  短いながらも人知を超えた戦いが終わり、戦士は剣士を見やる。どうやら向こうも終わったらしい。半漁人の細切れになった肉塊が溶けて水のようになっていた。剣士も戦士を見やる。
  「その力、捨てろと言った筈だ。フーガ」
  戦士の言葉にフーガと呼ばれた剣士は答える。
  「・・・守るために・・・必要だと言った・・・マキナ」
  女性の声だった。
  マキナと呼ばれた戦士は銃をフーガに向けようとし、やめた。
  「今日はやめとくか。ギャラリーも居るしな」
  そう言ってマキナは後ろでずっと呆然と座り込んでいた智代を指す。フーガは何も言わず頷く。そのまま背を向け、立ち去ってゆく。
  「さてさて」
  マキナは智代に振り向く。
  「解呪」
  マキナの言葉と共にその体が炎に包まれ、炎はベルトに収まりその下から先ほどの少年の姿が現れる。炎が消えるとベルトもすぐに消えた。
  「判ったろ?一般人の入って来れる世界じゃないんだ。このことは忘れろ」
  どこか諭すような響きがするのは気のせいではない、と智代は何故かそう思った。
  「あの・・・車の・・・人達は」
  他に言うなり聞くなりする事もあろうに、彼女の口から発せられたのはそんな言葉だった。
  「・・・見つからんだろうよ。この事は忘れろ。元の日常に戻れ。そして二度と関わるな」
  そう言って少年は智代に手を差し伸べる。
  「立て。途中まで送ってやる」
  智代はただ気の抜けたように頷きながら少年の手をとった。





  **後書き**
  お久しぶりです、丸井 奈仁華です。
  いや〜、やっと一話か。我ながらすげ〜遅さだ。
  てな感じでお待ちして下さった読者様、居る居ないか分かりませんがいたらお待たせさせ過ぎました、ごめんなさい。
  さて、いきなり二人のライダーを出してみましたがどうでしょ?見て分かるようにこの二人は対立しています。だからって必ず敵って訳でもありません。まあその辺は後々書くとして、今回はライダーのイメージの補足をしたいと思います。
  先ずはマキナ。
  それなりに詳しく書いたつもりですが、分かり難かったかもしれませんので。
  大まかには紅いギルスです。今回は使用しませんでしたが、手首から親指程の太さの触手を出せ、鞭のように振り回したり巻きつけたりできます。
  で、もう一人のライダー、フーガ。
  こっちは色使いの明るいナイトです。剣はロングソードですが。
  両方とも現段階では正体不明って事で。バレバレでしょうが不明って事でお願いします。
  それと、うめまろさんから台詞の前に名前を入れると読み難いと御指摘頂いたので直してみました。ただ、こうした場合、その内キャラが増えてきた時俺の文章力ではゴッチャにならんか恐いです。
  こっから余談。ワールドカップ日本×クロアチア戦見ながら書き上げたんですがね?いや〜日本勿体無い。凄いプレイばっかだっただけに・・・
  まあ兎に角希望は繋いだので次のブラジル戦、頑張ってもらいましょう。
  では、ワールドカップ期間中に二話が完成するように頑張ります。

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