<要塞艦ヴェルドリンガ 14:21PM>
「はっはっは! 何だ、あのザマは!!」
要塞艦ヴェルドリンガの中央部にある戦略室に豪将軍ゴラドの笑い声が響く。
「あの小娘共にいいようにやられて逃げ出すとは! 流石は獣将軍殿ご自慢の獣人軍団」
続けて馬鹿にしたように言ったのは猛将軍クイーバ。
それを聞きながら獣将軍ガイターは苦々しげな表情を浮かべ、歯を噛み締めていた。
「ぐぬぬ……」
「まぁ、何と言われても仕方ないわね。部下があのザマじゃ」
そう言ったのは姫将軍リオカー。
妖艶な笑みを浮かべ、ガイターを面白そうに見つめている。
「先陣を任されておきながら、あのザマ。どう大元帥様に申し開きするのか、楽しみだわ」
「申し開きなど出来るわけがない。部下が逃げ出したのだ、その責は重い」
「フッ……我が機甲兵団には敵前逃亡するような奴はおらぬ」
他の3将軍にそう言われても言い返す事が出来ないガイターは、そのまま戦略室から出ていった。
「ええい、あの馬鹿者が!! このままでは大元帥様に会わせる顔がないではないか!!」
通路を歩きながらガイターが呟く。
そこにひょっこりと姿を現したのは前回カノンレンジャーに戦いを挑み、あっさりと逃げ出してしまった星獣人ラリリゴであった。
「じゅ、獣将軍様……」
「むうっ!!」
目の前に現れたラリリゴを見た瞬間、ガイターはカッとなり、腰の剣に手を伸ばしてしまった。
「貴様! よくものこのこと姿を見せられたものだな!!」
ガイターが怒鳴るが、ラリリゴは恐れを抱きながらも逃げるような事はなかった。
「お待ち下さい、獣将軍様! この私めに今一度のチャンスを!!」
「敵前逃亡した貴様にチャンスだと!! ふざけるな!!」
そう言って剣を抜き放つガイター。
だが、それを振り上げようとはせず、すっと剣先をラリリゴにむける。
「……ラリリゴ、貴様、チャンスをくれと言ったな。チャンスをやれば勝てるというのか、あの小娘共に?」
「はっ……あの小娘共の弱点、それをつけば必ず勝てると」
ラリリゴがそう言ってガイターを見る。
その目には自信が漲っていた。
「………わかった。もう一度だけチャンスをやろう。今度逃げるようなマネをすればわかっているな」
言いながら剣を鞘に収め、ギロリとラリリゴを睨み付けるガイター。
ラリリゴは深々と頭を下げ、通路の奧へと消えていった。
ガイターはその後ろ姿を見送りつつ、剣を鞘に収め直した。
 
奇蹟戦隊カノンレンジャー
THIRD ACT. 星獣人、逆襲!!
 
<ISDO秘密基地 15:02PM>
星獣人ラリリゴを撃退したカノンレンジャーの面々はISDO秘密基地に呼び出されていた。
「一体何の用事なんだろう?」
椅子に腰掛け、足をぶらぶらさせている月宮あゆが呟く。
今、彼女たちがいるのは基地内の食堂の一角にある喫茶コーナー。
呼び出され、来たのはいいが、とりあえずこの喫茶コーナーで待っているように言われた彼女たちはもう30分以上待たされていた。
「くー……」
テーブルに突っ伏して眠っているのは水瀬名雪。
その隣のテーブルでは美坂栞が嬉しそうにバニラアイスを木のスプーンですくっては口に運んでいるし、同じテーブルで沢渡真琴が飲みきったジュースのコップの中の氷をストローでつついて遊んでいる。
喫茶コーナーではなく、食堂の中では川澄舞が無心に注文していた牛丼を食べていた。
前回、前々回と上手く敵を撃退している彼女たち。どうやらすっかり安心しきっているようだ。
そこにISDOのブルーとホワイトを基調とした制服に身を包んだ倉田佐祐理が現れた。
「あはは〜、お待たせいたしました〜」
笑顔を浮かべてやって来た佐祐理の方に皆の注意が向く。
「カノンレンジャーの皆さんはこっちに集合してくださ〜い」
そう言って手を振る佐祐理。
あゆと真琴が椅子から立ち上がり、栞は食べかけのバニラアイスを持ったまま、舞は一気に牛丼を食べ終え、それぞれ佐祐理の側にまで歩いていく。
「それじゃとりあえず場所を変えましょうか〜」
佐祐理がそう言って歩き出そうとして、すぐ足を止めた。
「……あの、一人足りませんが?」
思わずついてくるあゆ達を数えてしまう。
あゆ、舞、栞、真琴の順で指さし、やはり一人足りない事を確認すると佐祐理は困ったように首を傾げた。
4人も思わず顔を見合わせてしまう。
「あれ?」
「みんな、いましたよね?」
「……いるはず」
「じゃ、何で足りないのよ?」
食堂の入り口辺りでそんな事を言い合っていると、不意にあゆがぽんと手を叩いた。何かを思いだしたらしい。
「もしかしたら」
「もしかしたら?」
栞がわざわざ尋ねる。
「名雪さんかも」
あゆがそう言うと、皆が一斉に喫茶コーナーの方を振り返った。
未だテーブルに突っ伏して眠っている名雪。その姿を見て、皆が一斉に頭を抱えたのであった。
眠っている名雪を叩き起こすのにたっぷり20分以上かけて、ようやく一同は佐祐理に先導されて移動を開始した。
「ふわあぁぁ……」
名雪が大きく口を開けて欠伸をする。
「うにゅう〜……」
眠たそうに目をごしごしと擦る。
「あれだけ寝て、まだ眠たいんですか?」
栞がそう言って名雪の顔を覗き込むと、名雪は半分瞼を閉じかけていた。慌てて名雪の肩を掴み、前後に揺する栞。
「わ〜、寝ちゃダメですっ!!」
そんな栞の努力をよそに他のメンバーはどんどん先に進んでいく。
「栞〜、早く来ないとおいていくよ〜」
真琴が振り返ってそう言い、栞は半分眠りかけている名雪を押して急いで後を追うのであった。
 
<カノンベース 15:34PM>
その場所に案内された5人(と言っても一人は半分寝ているようであったが)は、ぽかんとした顔で周囲を見回していた。
「ここが今日からあなた方の拠点となるカノンベースです」
佐祐理がそう言って5人を振り返る。
半分寝ているような名雪以外の4人は半ば呆然としていた。
「敵の分析や情報などの収集、あなた方のサポート、新装備の開発、トレーニングなども全てここで出来るようになります」
手に持った資料をめくりながら佐祐理が言うと、真琴が彼女に詰め寄ってきた。
「ねぇねぇ、肉まんとかおいてある?」
「へ?」
「それってとっても大切な事なの! おいてある?」
「あ……多分おいてあると思いますよ、食堂とかに行けば……」
ちょっと戸惑ったように答える佐祐理。
「それじゃバニラアイスとか」
「たい焼きもあるかな?」
いつの間にか真琴と同じように側に詰め寄ってきていた栞、あゆが口々に言うので佐祐理は困ったような笑みを浮かべて舞を見た。
「……牛丼とか納豆巻きとか……」
指をくわえてそう言う舞。
それを聞いて思わず佐祐理は泣きたくなった。
取り合えず、先に5人をカノンベース内の食堂へと案内する事にし、佐祐理は5人を引き連れて歩き出した。何故か泣きたそうな悲痛そうな顔の佐祐理を先頭にぞろぞろと5人が食堂に向かっていく。
「ここが食堂です……」
何故か激しく疲れ切ったように言う佐祐理に対し、5人は嬉しそうに食堂の中に入っていき、全員揃ってぴたと足を止めた。
「……あれ?」
そう呟いたのは果たして誰だったのか。
ISDO基地とは違い、そこには誰の姿もなく、テーブルの上に椅子が逆さまに乗せられている。厨房の方にも人の気配はなく、まだ稼働しているような感じは全く無かった。
「……ああ、言い忘れていましたけど、まだここは開店していませんので」
呆然としている5人の後ろから佐祐理が笑みを押し殺したかのような声をかけてきた。どうやら彼女は知っていたようだ、この事を。先程までのあの疲れたような表情は演技だったのか。
舞がムッとした顔をして佐祐理を振り返る。
だが、佐祐理はそんな舞をあっさりと無視して歩き出した。
「さて、道草はここまでにして、司令室に行きますよ〜」
立ち止まりもしなければ振り返りもせずにそう言う佐祐理。実は怒っているのかも知れない、この我が侭5人組に。
先に歩いていく佐祐理を追って、慌てて5人も歩き出した。
佐祐理に案内され、5人がようやく司令室へとやって来た。
それを今や遅しと待っていたのはISDO副司令である水瀬秋子であった。
秋子は入ってきた5人を見ると、今まで座っていた椅子から立ち上がり、いつになく厳しい表情を見せた。
「随分と遅かったですね」
その一言に思わず佐祐理が直立不動の姿勢をとってしまう。
「申し訳ありません、副司令!」
秋子に向けて敬礼しつつ、そう言う佐祐理。後の5人はぽかんとした顔でその様子を見ていた。
「倉田さんに落ち度はないと思いますが? 実はモニターであなた達の様子をずっと見ていました。全く……」
そう言って秋子は思わず額を指で押さえてしまう。
「あ、あの……お母さん?」
何時の間にやらちゃんと覚醒したらしい名雪がそう声をかけると、秋子がキッと自分の娘を睨み付けた。
「ここでは”副司令”と呼びなさい!」
「は、はいっ!!」
母親から思わぬきつい言葉を浴びせられ、とっさに”気をつけ”の姿勢をとり返事してしまう名雪。
「……今まで甘やかしてきましたが、今日からはもっと厳しく行きますからそのつもりで」
そう言うと、秋子は佐祐理の方を見た。
頷き、佐祐理は名雪達5人の方を振り返った。
「あなた方カノンレンジャーは今日この時間より正式にISDOのメンバーになります。所属部署は特別作戦部。活動拠点は先程も言った通りここになります」
手元の資料を見ながら説明する佐祐理。
「これからは生活の中心もここに替えて貰う必要性がありますので引っ越しなどの準備はこの後すぐに行ってください。それぞれに個室をちゃんと用意させて貰っていますので」
それを聞いた5人がどよめきの声を上げる。
「後、皆さんの普段の生活についてですが今までと同じく、それぞれの仕事をなさってください。尚、カノンレンジャーとしての招集があった場合はそれを優先する事」
「それって仕事ほっぽり出してでも来いってこと?」
真琴が手を挙げてそう言うと、佐祐理は少し困ったような顔をして秋子を振り返った。
「……真琴は今何をしているの?」
優しい口調で秋子が問うてくる。
「あ、えっと……保育園でお手伝い……」
「正式な保母さんじゃないんですよね」
「そこまで学がないんだよ、真琴ちゃんは」
真琴の横で栞とあゆが小声でそう言いあっている。小声ではあるがすぐ側でやっているので真琴にはまる聞こえであったが。
真琴が二人を睨み付ける。
「あんた達に言われたくないわよ……入院患者に喫茶店の役立たずバイト」
ぼそりと呟く真琴。勿論二人に聞こえるように。
ピシッと固まる栞とあゆ。
栞は元々病弱なのでよく入院していたりする。この日の朝の出動の時も病院から抜け出してきたらしい。
あゆはバイト先である喫茶店「子猫亭」で、何時もカウンターに座っていて、ほとんど何もしない。少なくても同じ「子猫亭」で働いている天野美汐から真琴はそう聞いていた。
「入院ばかりしていてもそれなりに学はありますから」
引きつった笑みを浮かべながら栞がそう言う。
「でも健康なのが一番大事なのよね〜」
同じようにやや引きつり気味の笑顔をして真琴が言い返す。
「ふふふふふふ」
「あははははは」
互いに引きつった笑みを浮かべて笑う真琴と栞。何かとっても怖い光景である。
それを呆れた表情で見ていた秋子が、ようやく口を挟んだ。
「真琴、あなたがそのお仕事が好きだって事は知っているわ。でもね、あなたが頑張って敵を倒さないと子供達が危ないのよ。わかるでしょ?」
秋子の言葉に真琴が小さく頷いた。
「仕事を放り出せとは言わないわ。でも大切なものを守る為に我慢して欲しいの」
それは真琴だけではなく、他の4人にも同じ事である。
まぁ、この面々の中できっちりと仕事をしているのは真琴と名雪ぐらいなものだが。舞はフリーターだし、栞は入退院が多いので未だ学生、あゆに至っては子猫亭の住み込みの役立たずである。
「え〜、話を続けてもいいですか?」
佐祐理がそう言うと、秋子が大きく頷いて、話を続けるよう促した。
「皆さんがISDOのメンバーになるに当たり、きちんと給料が払われる事になりました。明細についてはこの後経理担当者から説明を受けて下さい」
また手元の資料をめくり、佐祐理が事務的に話を続けている。
「尚、敵による破壊工作はともかく、あなた方の失敗で破壊、または破損したものはあなた方の給料から天引きされるのでお忘れなきよう」
「え〜!!」
「なんですか、それ!」
たちまち上がる非難の声。
「そこまでISDOもフォロー出来ないと言う事です。さて、話はここまでですが何か質問があれば副司令かあなた方の直属の上司に聞いて下さい」
非難の声を無視して佐祐理はそう言いきり、秋子に向かって一礼する。
「ご苦労様です、倉田さん」
秋子にそう言われた佐祐理が司令室から出ていく。
「あ……佐祐理……」
舞が声をかけようとしたがどうやらどうやら佐祐理は気がつかなかったらしく、手を伸ばしかけた舞の目前でドアが閉じられた。
「舞さん、どうかしたの?」
そう尋ねたのは名雪だった。
後の3人は未だぶーぶー言い続けている。
「……直属の上司って誰?」
舞が声をかけてきた名雪に向かって尋ねる。
その舞の問いに名雪は一瞬驚き、そして首を傾げた。
「……誰だろう?」
そんな二人を見て、秋子は思わずため息をついていた。
「ハァァ……」
「副司令、しっかりしてください!」
「そうです、取り合えず後1週間の辛抱ですから!!」
「主任が帰ってきたら後はこんな連中全部押しつけちゃえば良いんですから頑張りましょう!!」
司令室内のいたオペレーター達が振り返って秋子に向かってそう言う。
ISDO副司令の秋子の人気はここでも絶大のようだ。それに比べてカノンレンジャーの面々は酷い言われようであるが。
「失礼します」
そんな騒ぎの中、自動ドアが開いて中に入ってきた一人の女性がいた。その女性を見て、騒いでいた真琴、あゆ、栞の3人が固まる。
「丁度良いところに来てくれました。彼女が取り合えずあなた達のトレーニングスタッフのリーダーになる七瀬留美さんです」
秋子が入ってきた女性、七瀬留美を見てそう言う。
「げげっ!?」
「うそ!?」
「うぐぅ」
上から順に真琴、栞、あゆである。
留美はそんな3人を見ると、にやりと笑って見せた。
「主任が帰ってくるまでビシバシしごいてあげるからね、覚悟しておきなさいよ〜!!」
何とも楽しそうに言う留美。
不段から彼女に厳しく特訓などをさせられている3人はげんなりした顔で頷いていた。
「あ、あの、七瀬さん……」
おずおずと声をかけたのは名雪。
彼女は元々陸上部だったと言うこともあり、体力もあるのでそれほど特訓などさせられたことはない。だから真琴達程彼女に対して恐れを抱いてはいないのだ。
「何かしら?」
名雪の方を振り返る留美。
「さっきから思っていたんだけど、主任って誰?」
「……知らないの?」
「誰も教えてくれないし」
「………」
思わず沈黙する留美。そして、秋子の方を見ると、秋子は謎の微笑を浮かべていた。それでだいたいのことを察してしまった彼女は頷くと、名雪の方を見た。
「水瀬さん」
「はい?」
「主任のことはまだ内緒にしておくように言われているので私の口からは何も言えません」
そう言って笑みを浮かべる留美。
その様子からして、どうやらその主任という人は自分達の知り合いらしい。だが、特に思い当たるような人を名雪は思い出せなかった。
一人、首を傾げている名雪。その後ろをこそこそと移動している真琴、あゆ、栞の3人に留美が気付かないはずがない。
「さて、そこの3人。今日はまだ訓練していなかったわよね……」
留美はこそこそ逃げ出そうとしていた3人を見てにやりと笑った。
「あう〜」
「えう〜」
「うぐぅ」
3人が3人なりの声を上げる。
「さぁ、それじゃ行きましょうか。ここの新しい施設を思う存分使わせてあげるわよ!!」
留美がそう言って3人を引き連れ、司令室から出ていく。
それを呆然と名雪と舞は見送っていた。
 
<市街地 10:32AM>
平和な市街地。
そこに向かって空から火の玉が落ちてきた。
その火の玉は地上に激突すると派手に飛び散り、近くにあったものを燃え上がらせる。更に火の玉の中から星獣人・ラリリゴが姿を現した。
「フフフ……カノンレンジャー共め、出てこい! 今度こそ決着をつけてやろう!!」
自信たっぷりに言うラリリゴ。
しかし、今度こそ決着と言っているが前回一方的にやられて逃げ出しただけのような気もするのだが……。
とにかく街中で吼えるラリリゴ。
「パッタシー!!」
更にまた吼えるラリリゴの周囲に雑兵パッタシーが出現する。
パッタシーは周囲のものに無差別に攻撃を開始し始めた。路上駐車している車などが爆発し、吹っ飛ぶ。逃げまどう通行人達。
街はあっと言う間に戦場と化した。
 
<カノンベース 10:42AM>
市街地に現れた星獣人・ラリリゴの情報はすぐにカノンベースにもたらされていた。
街のあちこちにある監視カメラや外に出ているISDOの情報部員がそれをすぐに知らせてきたのだ。
カノンベースの司令室では秋子がその報告を受け、カノンレンジャーの面々を招集するようにオペレーターズに命令していた。
「すぐにカノンレンジャーを集めてください!」
「あの……それが……」
少し戸惑ったように一人のオペレーターが振り返った。
「舞さんは朝早くから行方不明でして、あゆさん、真琴さん、栞さんの3人は昨日の特訓の所為で未だ引っ越しもならず、それぞれの家にいると思いますが連絡が取れません」
それを聞いて思わず頭を抱える秋子。
何と言うか、これでは今までと余り変わらないではないか。無理を言ってでも昨日のうちに全員を引っ越しさせておくべきだったかも知れない、と今更ながら後悔する。
「それと名雪さんですが、出てきません」
「……出てこない?」
「一応さっき起こしに部屋まで行ったんですが、全然起きてくれませんでした」
「………ハァァァァ」
思い切り切なそうなため息をつく秋子を見て、オペレーターズは思わず皆立ち上がっていた。
「大丈夫です、副司令!!」
「きっとその内良いことありますから!!」
「とりあえず頑張りましょう!!」
オペレーターズに励まされ、どうにか気を取り直す秋子。
「情報部に連絡して川澄さんの現在位置をすぐに確認、それと手の空いている人を真琴、あゆちゃん、栞ちゃんの家に派遣して叩き起こしてきなさい!」
手早く指示を出す。
「名雪に関しては……私が直接行きます」
そう言って秋子は壮絶な笑みを浮かべ、司令室から出ていった。
それから5分もしないうちに秋子は満面の笑みをたたえて、何処かうつろな表情の名雪を連れて司令室に戻ってきた。
「さて、他のメンバーはまだですが、名雪には先に敵の現れた場所に行って貰います。他のメンバーもすぐに来るとは思いますが、やられないように気をつけなさい」
自分の後ろについてきた名雪を振り返り、秋子がそう言う。
「……気をつけなさいってそれだけ?」
やや不服そうな顔をする名雪。
「他に何かして欲しいの?」
「やられないようにバックアップとか」
「名雪、戦えるのはあなた達だけなの。だから頑張って」
やっぱり笑顔のまま、秋子がそう言ったので、名雪は仕方なさそうにため息をついた。
こうなったらもうどうにもならない。秋子の言うことに従う他ないだろう事は娘である自分が一番よくわかっている。
「行ってくるよ……」
本当に仕方なさそうに言う名雪。
がっくりと肩を落としているのは気のせいではないだろう。もっとも肩を落としている理由の大半は寝ているところを無理矢理起こされたものによるのだが。
「……あ、そうだわ。丁度完成したばかりのものがあるけど使う?」
とぼとぼ司令室から出ていこうとする名雪の背に秋子が声をかける。
「完成したばかりのもの?」
足を止め、振り返る名雪。
「そうよ。敵の出現した場所への迅速な移動、及び高軌道戦闘に耐えうる機動兵器」
「兵器………?」
訝しげな顔をする名雪。
何となくその機動兵器の想像がついたようだ。
「そうよ」
「……私、免許持ってない」
「……取りに行きましょうね?」
笑顔でそう言う秋子に名雪は何も言い返せないでいた。
 
<市街地 11:01AM>
未だ暴れ回るラリリゴとパッタシー。
既に周囲は廃墟同然である。
そこに一台の車高の低いバイクが突っ込んできた。
「うわわわわわ……!!」
かなり慌てた声が聞こえてくる。どうやらそのバイクに乗り慣れてないらしく、その運転っぷりはかなり危なっかしい。
「どいてどいてどいてぇぇぇぇぇっ!!」
そんな叫び声と共に突っ込んできたバイクはパッタシーを跳ね飛ばしながら急停止する。
「……ふぅ、ようやく止まったよ〜」
バイクに乗っていたのは名雪であった。
被っていたヘルメットを脱ぐと、バイクから降り、パッタシーとラリリゴを見る。
「………」
「………」
ラリリゴ達もいきなり現れ、物凄く乱暴な運転で数体のパッタシーを跳ね飛ばした上で急停止した名雪に呆然として声も出せない。
「……えっと、あなた達が悪い人たちだね!!」
ピシッと人差し指をラリリゴ達に突きつける名雪。
「………」
名雪の言葉に再び言葉を無くすラリリゴ達。
しばしの間沈黙が両者の間に流れる。
先に気を取り直したのはやはり名雪だった。
「………違うの?」
「……いや、違わないが……」
思わず名雪の困ったような問いに答えてしまうラリリゴ。
それを聞いた名雪は表情をきりっと引き締め、頷いてから左手を前に突き出した。
「ミラクルチェンジャー、セットオン!!」
そう言って構えた左手首のブレスレットのボタンを押す。すると、ブレスレットが光を放ち、その光の中、名雪の全身を強化スーツが覆っていった。
「カノンブルー!!」
高らかに名乗りを上げるカノンブルーの姿に、思わず怯むラリリゴとパッタシー。
「さぁ、いくよ!!」
走り出すカノンブルー。
「お、おのれ、相手はたった一人! やれ!!」
ラリリゴがこっちに向かって走ってくるカノンブルーを見て、パッタシー達に命令を下した。
パッタシー達が手にそれぞれ大振りのナイフを持ってカノンブルーに向かっていく。
「え〜いっ!」
何か余り気合いの入っているようには思えない声を上げながらカノンブルーがパッタシー達の中に飛び込み、次々と蹴り倒していく。
元陸上部の名雪はカノンブルーとなることでその脚力が更に強化される。彼女の蹴りはコンクリートの壁すら粉砕することが出来るのだ。
その彼女の蹴りを受けたパッタシーは一溜まりもなく倒れていく。
しかし、多勢に無勢、徐々にカノンブルーは劣勢を強いられていった。
「フフフ、流石に小娘一人では勝ち目はないだろう……」
「卑怯だよ、こんなの〜」
カノンブルーが遂にパッタシーに取り囲まれてしまう。
「卑怯でも何でも良いわ。要はお前らカノンレンジャーを抹殺さえ出来ればな」
ラリリゴはそう言ってパッタシーに取り囲まれたカノンブルーを見て、笑った。
「作戦とは違ったが……とりあえずまず一人……」
「そうはさせません!!」
ちょっと弱々しい感じのする声がその場に響き渡った。
その声にラリリゴやパッタシー、カノンブルーが振り返ると、こちらに向かって猛スピードで突っ込んでくるジープが見えた。
それはラリリゴにカノンブルー登場のシーンを思い出させた。ほんのついさっきのことなのだが、もはやそれも懐かしい。そして、やはりと言うか何と言うか、同じパターンがそこに繰り広げられてしまう。
「わわわわわ……っ!!」
「あう〜〜〜〜っ!!」
ジープの中から悲鳴が上がる。
「ま、舞さん、ブレーキブレーキ!!」
「………どれ?」
「誰よ、舞に運転させたら安心だって言ったの!!」
「少なくてもあなた達に運転させるよりは遙かにマシだと思ったんですぅ〜〜〜〜!!」
「……あ、これだ……」
呆然としているラリリゴの前でジープはやはりパッタシーを豪快に跳ね飛ばしながら急停止した。
ジープのドアが開き、中から半ば目を回しているあゆ、栞、真琴の3人がよろよろと降りてくる。運転席からは一人平然とした舞。
「みんな♪」
嬉しそうな声を上げるカノンブルー。
「お、お待たせ、名雪さん……」
ふらふらのあゆがカノンブルーに向かってそう言う。
「と、とりあえず行くわよ!」
やはりふらふらの真琴がそう言い、左手首のブレスレットを構えた。
「ミ、ミラクルチェンジャー」
声までふらふらの栞。
「セットオン!!」
一人だけ元気な舞がそう言い、ブレスレットのボタンを押す。と、次の瞬間、ブレスレットが光り輝き、その光の中、4人の身体を強化スーツが覆っていった。
「カノンレッド!!」
「カノンブルー!!」
「カノンイエロー!!」
「カノンピンク!!」
「カノンパープル!」
5人が並んで名乗りを上げる。
「天から降り立った5つの希望!!」
バッと5人が揃って右手を天に向かって突き上げる。
「奇蹟戦隊!!カノンレンジャー!!」
5人の声が揃い、一斉にポーズを取る。その背後でタイミングよく爆発が起こった。まるで誰かがタイミングを計っていたかのように。
「遂に揃ったな小娘共! 今日がお前達の最後の日と思え!!」
ラリリゴがそう言ってカノンレンジャーの面々を指さす。
「あれ……よく見たらあんた、この前あっさり逃げてった奴じゃない」
カノンイエローがそう言うと、カノンピンクが大きく頷いた。
「そう言えばそうですね。よく敵前逃亡して処刑されなかったものです」
「きっと優しい人が上司なんだよ」
「そう言う問題でもないと思うな、私」
カノンレッドの明らかに見当違いな意見にカノンブルーがとりあえずのツッコミを入れる。
「……今度こそ倒す!」
そう言ってカノンパープルが自分専用の武器、バニティリッパーを構えて走り出した。
「今回はまだまだ余裕があるから逃がさない……」
カノンパープルがバニティリッパーを大上段に振り上げ、一気にラリリゴに向かって振り下ろした。だが、その一撃をラリリゴはあっさりと受け止めてしまう。
「何度も同じ手が通用すると思ったか……馬鹿にするな!」
ラリリゴはそう言ってカノンパープルを投げ飛ばした。
空中で上手くバランスを取り戻したカノンパープルが華麗に着地する。
「このぉっ!! これならどうだぁっ!!」
今度はカノンイエローが専用武器、バニシングクロウを装備し、ラリリゴに向かって突っ込んでいく。
「甘いわっ!!」
ガシッとカノンイエローを受け止め、そのまま投げ飛ばしてしまうラリリゴ。
「わわわっ!!」
「危ないッ!!」
投げ飛ばされたカノンイエローをカノンピンクがブライトネスストールを広げて受け止める。
「あ……さんきゅ、栞。助かったわ」
「どういたしまして。それより……あいつ、前よりも確実に知恵を付けています。気をつけないと」
カノンピンクがそう言ってラリリゴを見やった。
その横を駆け抜けるカノンブルー。
「ブルースーパーキックッ!!」
「人の話を聞いていなかったんですか、名雪さんっ!!」
カノンピンクが声を上げるが、もうカノンブルーは止まらない。
ラリリゴはカノンブルーのキックをあっさりと片腕で受け止めると、そのまま押し返してしまった。
「これなら!!」
そう言ってカノンレッドがバスターライフルを構えて突っ込んでくる。その真上に落ちてくるカノンブルー。
「うぐぅ……」
「あいたた……あゆちゃん、大丈夫?」
丁度カノンレッドをクッションにしたカノンブルーが下敷きになっているカノンレッドに声をかける。
「名雪さん、早くどいて〜! 重い〜!」
「お、重いってそんな事無いはずだよ! えっとこの前体重計った時、そう変わってなかったし!」
「そう言う問題じゃなくって〜」
「……この前って何時のことですか?」
横からそう尋ねてきたのはカノンピンクだ。
「えっと、確か3ヶ月程前かな?」
未だにカノンレッドを下敷きにしたまま、カノンブルーが答える。
「それじゃ増えたんじゃないですか?」
「え〜、そんな事……」
「無いって言い切れます? 最近、名雪さん、よく百花屋で見かけますし」
「う〜………」
すっかり世間話モードの突入中のカノンブルーとカノンピンク。そのカノンブルーの下ではカノンレッドが未だにカノンブルーのお尻の下敷きになっている。
カノンパープルとカノンイエローはラリリゴとの距離を取りつつ、カノンブルーとカノンピンクの会話に耳を傾けていた。
……随分と余裕あるな、こいつら。
「……お前ら、さっきから俺を無視してないか?」
遂に我慢しきれなくなったかラリリゴがそう言う。
「………あ」
それは誰が漏らしたのか。
5人が一斉にラリリゴを見た。
「……貴様らぁっ!!」
怒りに燃えたラリリゴが吼え、5人に向かってくる。
カノンブルーのキックすら片手で受け止めるパワーでもって一番近くにいたカノンイエローに殴りかかっていく。
「何で真琴なのよぉっ!!」
そう言いながら軽やかにラリリゴのパンチをかわすカノンイエロー。伊達にカノンレンジャーの中で一番身軽なわけではない。
「………!!」
大振りのパンチをかわされ、ラリリゴが体勢を崩したのを見て、カノンパープルがバニティリッパーで斬りつける。
「甘いわっ!! 小娘!!」
ラリリゴはそう言って左手を大きく振り、カノンパープルを吹っ飛ばした。
「こ、これならどう!?」
そう言ったのはようやくカノンブルーの下から解放されたカノンレッド。未だ地面に倒れたままバスターライフルを構えて引き金を引く。
エネルギー弾がラリリゴを襲うが、その直撃を受けてもラリリゴは倒れない。
「あ、あれ?」
「その様なものでこのラリリゴ様が倒せると思ったか!!」
ラリリゴが吼え、両腕を振り回しながら今度は地面に伏せたままのカノンレッドに向かってくる。
「うわわわっ!!」
慌てて起きあがるカノンレッド。
「死ねっ!!」
「死にたくないっ!!」
間抜けな受け答えをして、ラリリゴの一撃をかわすカノンレッド。その動きはカノンイエローも驚くくらい機敏である。
「あゆって以外と逃げるの上手いわね……」
「感心している場合じゃなりませんよ、真琴さん」
少し離れたところにいたカノンイエローの側にカノンピンクがやってくる。
「さっきも言いましたが奴は確実に知恵を付けてきています。一人ずつ攻撃していたんじゃダメです」
「……じゃ、どうするのよ?」
「一斉に攻撃を叩き込むしかないと思います。奴は前の戦いの時もそうでしたが、異常なくらいタフ、と言うかこっちの攻撃力が低いと言う気もしますが、とにかく一斉に!!」
「一斉に、ね……」
カノンイエローはそう言うと、近くにいるカノンブルーを見た。
話を聞いていたのか、こくりと頷くカノンブルー。更に少し離れたところにいるカノンパープルも同意するように頷いていた。
「それじゃ、行くよ〜」
緊張感のない声でカノンブルーが言い、駆け出す。
それに合わせるかのようにカノンイエロー、カノンパープルも走り出した。
ラリリゴに追い回されているカノンレッド、そしてカノンピンクは何故か一緒に動こうとはしなかったが。
「ブルースーパー」
「イエローバニシング」
「バニティリッパー」
カノンブルーがジャンプしてキックの体勢に入るのと同時にカノンイエローがバニシングクロウを振り上げ、更にカノンパープルがバニティリッパーを振り上げた。
「キック!!」
「アタック!!」
「半月斬!!」
3人の声が重なり、同時に3つの技がラリリゴに叩き込まれる。
流石に吹っ飛ばされるラリリゴ。
「やった……!?」
戦況を見守っていたカノンピンクがそう言う。
「何で栞は見ているだけなのよ!!」
カノンイエローが怒鳴り声をあげると、カノンピンクはカノンイエローの方を見てこう言った。
「私、病弱ですから」
「そう言う問題じゃないでしょ、そう言う問題じゃ!!」
カノンイエローがカノンピンクにツッコミを入れている間に起きあがるラリリゴ。
その身体にダメージらしきものは見当たらない。
「むむっ……まだ足りないようですね」
カノンピンクが起きあがったラリリゴを観察して言う。
「なら倒せるまで何度でも!! さぁ、やってお終い!!」
ピシッとラリリゴに人差し指を突きつけて言うカノンピンク。何かどこぞの3悪人のリーダーの女性みたいなノリである。
「おうっ!!……ってあんたも来なさい!!」
思わず乗ってしまうカノンイエローだが、すぐに我に返り、カノンピンクの手を引っ張ってくる。
「えう〜、やっぱり行かなきゃダメですか?」
「当たり前でしょ!! 何言ってんのよ!!」
「痛いのイヤなのに……」
「そう言う問題?」
「だいたい病弱な私の専用装備がどうして接近戦及びサポート専用のブライトネスストールで、どうして元気一杯有り余りまくっているあゆさんの専用武器がバスターライフルみたいな遠距離用なのか納得いきません!」
力一杯力説するカノンピンク。
「……それだけの元気があればきっと大丈夫よ」
何処かげんなりした様子のカノンイエローが言う。
「まぁまぁ、装備の件に関しては後で上に文句言えばいいと思うよ」
そう言ってカノンピンクの肩に手を置くカノンブルー。
「でも使い慣れたものが一番……」
カノンパープルがそう言って自分の剣を見る。
「うぐぅ、何か酷いこと言われたような気がするよぉ」
バスターライフルを胸に抱えてカノンレッドが言う。
「貴様らぁ!! この俺様を無視するなぁっ!!」
また無視されていたラリリゴが吼えた。
それでようやく5人が揃ってラリリゴを見る。
「……忘れてたよ」
5人を代表してカノンブルーがそう言った。
思わず悔しさの余り地団駄を踏むラリリゴ。
「貴様ら一応正義の味方なんだろう!!」
「一応………」
「だったらもう少ししっかりと俺の相手をしろぉっ!!」
何と言うか切実なるラリリゴの叫び。
それを聞いた5人が円陣を組む。何やら相談をしているようなのだが。
「……な、何を話している?」
気のせいか、不気味なものを感じ、ラリリゴが思わず尋ねると、5人は円陣を解き、ラリリゴの方に向き直った。
「そろそろ決着をつけようじゃない!」
カノンイエローが言う。
「何となくあなたの相手をしているのも飽きてきましたし」
これはカノンピンク。酷い言いようもあったものである。
「さぁ、来い!! 今度こそ叩き潰してやる!」
そう言ってラリリゴが両手をあげた。
(フフフ……小娘共の攻撃などこの俺の身体にはきかん。向こうが疲れるのを待てば良いだけのことだ……)
そう思ってにやりと笑う。
と、そこにギュキュキュキュキュッと凄い音が聞こえてきた。
音のした方をラリリゴが振り返ると、ジープが自分に向かって突っ込んで来るではないか!
「な、何とぉッ!?」
豪快にジープの体当たりを食らい、吹っ飛ばされるラリリゴ。
「ナイスです、舞さん!!」
歓声を上げるカノンピンク。
どうやら円陣を解いた後、カノンパープルだけジープに戻り、その間他の者がラリリゴの注意を引き付け、ジープで思い切り轢いてしまおうと言う作戦だったようだ。
何と言うか、とんでもない作戦である。
ちなみにこの作戦を考えついたのはカノンピンクこと栞であるが。
「ぬおおおお………ッ」
ジープに豪快に轢かれたにもかかわらず、何とか起きあがるラリリゴ。
「……あ、まだ生きてる」
カノンレッドが起きあがろうとしているラリリゴを指さして言った。
「むむっ……しぶといですね」
「栞、それ正義の味方っぽくないよ」
カノンイエローがまたツッコミを入れる。
「舞さん、もう一回!」
「何か物凄く正義の味方っぽくない戦い方だね」
「勝てば良いんです、勝てば!」
カノンレッドのツッコミに律儀に反応するカノンピンク。
そんなやりとりの交わされる中、再びジープがラリリゴを跳ね飛ばした。
吹っ飛んでいくラリリゴを見て、カノンブルーが呟く。
「後何回やれば倒せるのかな?」
「ガソリン無くなるまでやれば多分………」
カノンブルーの呟きにそう答えたのはカノンレッドであった。
 
それから30分後。
さしものラリリゴも足がふらふらになっていた。
「お、おのれ……貴様らそれでも」
「あなたがなかなか死んでくれないからいけないんです!」
はっきりと言い放つカノンピンク。
これでは誰が正義の味方かわからない。
「こ、この程度でやられる俺様では……」
そう言うラリリゴだが、かなりダメージが溜まってきているようだ。足はふらふら、身体もよろよろしている。
「……そろそろ一気に決めましょう!」
カノンピンクがそう言ってブライトネスストールを広げる。
頷くカノンレッド、カノンブルー、カノンイエローの3人。
「同時に行くよっ!」
カノンレッドがそう言って走り出す。
それに続くようにカノンブルー、カノンピンク。
カノンイエローは華麗に飛び跳ねて。
ジープから飛び降りたカノンパープルもバニティリッパーを構えてふらふらのラリリゴに向かって突っ込んでいく。
「必殺!!クロスアタック!!」
カノンレッドが叫ぶのと同時に5人がそれぞれの技をラリリゴに叩き込んだ。そして、一斉にラリリゴから離れる。
「ぬ、ぬおおおっ!!」
天に向かって両腕をあげ、ラリリゴはそのまま仰向けに倒れた。
「まさか……こんな手で……」
その言葉を最後にラリリゴの身体が爆発を起こした。
その爆発を見て、完全に勝利を確認したカノンレンジャー達が飛び上がって喜びを表していた。
「やった〜!!」
「初の完全勝利です!」
カノンレッドとカノンピンクが手を取り合って喜んでいる。
「まぁ、当然の結果よね」
カノンイエローがそう言うと、その隣に立っていたカノンパープルがこくりと頷いた。
残るカノンブルーだけはその場に座り込み、こくりこくりと船をこいでいた。
 
まぁ、経過はどうあれ、とりあえずラリリゴの逆襲は撃退出来たようである。
何か色々と問題あるような気もするが、勝ったから良しとしよう。
これで良いのかどうかは激しく疑問が残るのだが、今日も世界の平和は一応守られたようだ。
 
<要塞艦ヴェルドリンガ 14:32PM>
獣将軍ガイターは配下の星獣人・ラリリゴがカノンレンジャーにやられたと聞いて、小さく頷いただけであった。
「所詮は一度逃げ出した奴、期待はしておらなんだが……」
「でも自分の部下がやられて悔しいんでしょう?」
そう言ったのは姫将軍リオカー。
どうやら今のガイターの呟きを聞いていたらしい。
「その気持ち、わかるわよ」
「フン、何を言うか!!」
ガイターはそう言うと、リオカーをその場に残し通路を歩き出した。
その場に残されたリオカーは謎めいた笑みを浮かべながら去っていくガイターの後ろ姿を見つめていた。
 
This Story Is End.
To Be Continued Next Story. 

後書き
やっぱりと言うか何と言うか、必要以上に苦労したような気もするカノンレンジャー第3話、ようやく完成でございます。
一部激しくキャラが壊れているような気もしますがどうかお気になさらずに。
かおりん「それは気にするでしょ、普通」
まぁ、キャラ壊しはギャグ系の基本とも言えるので、よろしいかと。
かおりん「いつからこれはギャグ系になったのよ?」
今回からです。
かおりん「これはあくまでライトで軽いノリのシリアスじゃなかったの?」
そう言うこと、言いましたっけ?
かおりん「そう言う事言う口はこれかしら〜?」
あうあうあうう〜〜〜〜。

かおりん「さて、今回聞きたいことは……」
毎回、何か聞きたいことがあるんですね……。
かおりん「当たり前よ。ここで聞かなかったらわからないまま行くじゃない」
それで、今回は何ですか?
かおりん「栞達だけど、あれで良いの?」
そんなわけありませんよ。
ちゃんと正義の味方っぽくなって貰う予定です。
かおりん「………予定?」
まぁ、予定は未定と言いまして………。
かおりん「おそらく史上最悪の戦隊になりそうね、栞達は………」

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