彼女達の思惑〜天野美汐編〜
人は見かけによらない、と言うのでしょうか？
私、こう見えてもお菓子が大好きです。
特に甘いもの。
キャンデーとかチョコとか。
そう言うわけで、私がこのイベントを知らないはずがありません。
２月１４日、バレンタインデー。
元はそう言う日じゃなかったらしいですが、この際気にしません。
誰に、と言うわけではありませんが一応ちゃんとチョコも買いましたし・・・。
あ、誰か特定の人に渡すつもりはないんです。
一応っと言うことで。
誰にもあげなければ自分で食べればいいんですから。
「それじゃ後よろしくね〜」
「あ、わかりました」
保健の先生がそう言って笑顔で出ていきました。
これで保健室には私一人きりです。怪我人なんか出ないといいんですが。
ガラガラガラ。
誰か来たようですね。
ひどい怪我とかじゃなければいいんですが。
そう思って顔を出すと、保健室に入ってきたのはなんと相沢さんでした。
話を聞くと、お腹が痛いとか。
私は薬品棚からよく効くと評判の腹痛止めの薬を取り出して相沢さんに手渡しました。
「ありがたい・・・」
そう言ってビンから錠剤を取り出して飲み込む相沢さん。
それから私が出した椅子に腰掛けてため息をついています。
「やっと落ち着いた気分だ」
「チョコの食べ過ぎですか？」
そう言いながら、それなら腹痛ではなくて鼻血かな？と思わないでもないんですが。
祐一さんは女性に結構人気のある人ですから今日一日でかなりの量を貰ったんではないでしょうか？
「アイスの食べ過ぎだ」
は？
チョコではなくてアイスですか？
何となく誰がやったか見当がつきました。
でも、それなら・・・渡しても大丈夫ですね。
「・・・ならこれをどうぞ」
買っておいた板チョコを相沢さんに差し出す。
「折角ですから、一応、と言うことで・・・」
もしかしたら私、ちょっと赤くなっていたかも。
しかも何言っているんでしょうか。
日本語になってないですね、これじゃ。
相沢さんは一瞬驚いた顔になって、板チョコを受け取ると片目をつぶってにっこりと笑って見せてくれました。
「まさか天野から貰えるとは思わなかった。サンキュ♪」
ちょっと気になりますけど・・・まぁ、いいでしょうか？