俺と名雪は必死に駅の構内を走っていた。
この電車を逃せば確実に1時間は遅くなる。
そうなると陽があるうちに宿に着けない可能性が出てくるのだ。
「急げ、名雪っ!これを逃すと大変な事になるぞ!!」
俺がそう叫んで名雪を見る。
「遅いのは祐一の方だよ〜」
呆れたようにそう言い、俺を振り返る名雪。
うむ、流石は陸上部の部長さん。足の速さには定評がある。
「そんな事言っている場合じゃないよ〜。もう電車来ちゃうよ〜」
名雪がそう言って俺を急かす。
そもそも走る原因を作ったのは名雪がさっさと起きなかった所為だと思うのだが。
「だって・・・昨日の夜、祐一がなかなか寝かせてくれなかったから・・・」
真っ赤になりながらそう言う名雪を見て、俺も頬が赤くなるのを感じていた。
確かに名雪の言う通り、少し張り切りすぎたかも知れない。
何せ・・・5回、6回・・・い、いや、まぁ、これはおいておいて。
久し振りだったからなぁ。
最近は秋子さんが遅くなる日もなかなか無いし、それにおまけが二人ほどいるから余計にご無沙汰だし。
いや、だからそう言う問題じゃない。
今、問題とするべきことは・・・。
「あ、祐一!電車来たよ!!」
そうだ。
この電車に乗らないと!!


温泉へゆこう♪
第4話「とにかく行くっきゃない!!」


ぷしゅ〜・・・と何か気の抜ける音と共にドアが閉じる。
祐一と名雪はそれを見るとようやく安堵したかのようにため息をついた。
「これで何とか間に合うね」
名雪がそう言って未だ息の荒い祐一を見る。
「いや、まだだ。お前が準備している間に調べてみたんだがあと3回は乗り継ぎをしなくちゃならない。しかもその全部が今と同じギリギリのタイミングだ」
上着の胸ポケットに入れていたメモ紙を取り出して祐一が言う。
このメモ紙はリビングのテーブルの上に残されていたもので、秋子さん他二人が先に向かっている温泉地への行き方が書かれていた。どの路線のどの電車に乗るのかなど結構細かく書かれている。流石は秋子さんだ。
祐一はそこに名雪が準備している間に調べた時間などを書き加えていたのだ。
「う〜、大変だよ・・・」
少し困ったような顔をする名雪だが、すぐに隣にいる祐一を見てにっこりと微笑んだ。
「でも二人っきりだから別にいいかな?」
その笑顔を見た祐一は思わずドキッとしてしまい、彼女から顔を背けてしまった。
「と、とにかく結構シビアな乗り換えだからな。絶対に寝たりするなよ!」
「うん、頑張るよ」
名雪はそんな祐一に気付かなかったように笑顔のまま頷いた。

その頃・・・。
「ねぇ、秋子さん、名雪さんと祐一君、大丈夫かな?」
あゆがそう言って秋子さんを見る。
何故か頭が少しぼさぼさになってしまっている。
あゆの隣では真琴がひたすらチャーハンを食べていた。
何故か真琴の頭もぼさぼさになっていた。
ちょっと遅いが3人は昼食タイムの真っ最中である。祐一達よりも遙かに早く家を出た3人は、時間的にも余裕がある為、電車の乗り継ぎの間を利用してこうして昼食中なのだった。
「祐一さんがついているから大丈夫よ。名雪一人だと心配だけど」
「名雪さん、寝ちゃったら多分終点まで行っちゃうだろうしね・・・」
いつもの笑顔でそう言う秋子さんにちょっと困ったような笑みを浮かべながらあゆが言う。
その隣では真琴がチャーハンを喉に詰まらせたのか、真っ赤な顔をして苦しんでいる。
「真琴、落ち着いて食べなさい。誰もとったりしないから」
秋子さんがそう言って水の入ったコップを真琴に手渡す。
コップを受け取った真琴が水を一気に飲み込み、ようやく安堵したかのように大きく息を吐いた。
「あう〜〜〜、死ぬかと思った」
「真琴ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫・・・あう〜、あゆに心配されるなんて・・・」
何か激しく落ち込む真琴。
それを見たあゆも何か激しく落ち込む。
「うぐぅ、なんか酷いよ・・・」
「あらあら・・・」
秋子さんはそんな二人の娘の様子を微笑ましく見つめていた。
ちなみに。
何故あゆと真琴の二人の髪がぼさぼさなのかというと。
原因は昨夜名雪から貸して貰った(押しつけられた)とっておきの目覚まし時計のおかげらしい。
名雪本人ですら使った事が無いというとっておきの目覚まし時計。それがどういったものであるかはだいたい想像がつく事だろう。

さて祐一達だが。
「名雪、起きろ〜〜〜〜!!!」
「く〜」
やはりというか何というか。
電車が動き出して間もなくすっかり眠りの世界に落ちていった名雪を起こす祐一の姿があったそうな。

「わ〜〜〜、その電車ちょっと待った〜〜〜〜!!!!」
祐一の叫びが空しくプラットホームに響き渡る。
だが運行時間に正確な電車は容赦なく走り去ってしまう。
「あ〜〜、行っちゃった・・・」
がっくりと膝をついている祐一のすぐ後ろに立っている名雪がのんびりとした声でそう言う。
「お前なぁ!!誰の所為だと思っているんだよ、誰の所為だと!!」
泣きそうな顔をして祐一がそう言う。
「まぁまぁ、とりあえずさっき買ったお弁当食べようよ」
名雪は笑顔で祐一を受け流し、さっさと彼の手を取ると近くにあったベンチに腰を下ろす。
「ううう、これでもう陽のあるうちに追いつけない・・・・」
半泣きの祐一に対して名雪は凄く上機嫌である。
実を言うと、今の電車に乗れなかったのは名雪が駅弁を買っていた所為だったりするのだ。確かに寝坊した為朝食も食べておらず、腹も減ってはいるのだが。それ以上に名雪が駅弁を買う事にこだわったのには理由がある。
「いっちご〜いっちご〜♪」
これでだいたいの理由がおわかりだろう。
ちなみにこの駅弁を見て祐一は一応止めたのだが。
「あれ・・・いちごじゃない・・・」
不意に先程までのテンションが一気に下がる。
蓋を開けてみた名雪が見たものはウニやらアワビやらの海産物のたっぷり入ったお弁当。
「祐一〜、いちごじゃないよ〜」
「だから違うって言ったんだ・・・・ああ、これ買っていなかったらまだ陽のある間につけたのに・・・」
「う〜・・・いちご〜、いちご〜」
半泣きになる名雪、既に半泣きの祐一。
二人の前を風が吹き抜けていく。
何というか・・・空しい光景であった。

「ねぇ、秋子さん・・・」
不安そうな顔をしながらあゆが秋子さんを見上げる。
あまり身長の高くないあゆはどうして秋子さんを見る時はこういう感じになってしまうのだ。
「どうしたの、あゆちゃん?」
自分にもたれかかってすっかり眠ってしまっている真琴を起こさない様気をつけながら秋子さんがあゆの方を見る。
「本当に祐一君と名雪さん、大丈夫かな?」
「祐一さんはああ見えてもしっかりしているから大丈夫よ」
ああ見えてもと言う事は普段は頼りない感じなのだろうか?
ふと疑問に思ったあゆだがあえて口に出さないでおく事にした。
(まぁ、確かにどっちかというと女顔って言う奴だしあまり頼りになるって感じはしないけどね・・・)
不謹慎にもそんな事を考えるあゆ。
「でも名雪さんと一緒でしょ? 祐一君、名雪さんには甘いから・・・」
とりあえず頭に浮かんだ考えを捨てて質問の続きをする。
あゆから見て祐一は名雪には甘いように見えるらしい。
秋子さんからすれば祐一は女の子に対しては基本的に甘いと思うのだが。意地悪するのも子供っぽい愛情表現の一部だと考えればかなりの甘ちゃんである。
「そうねぇ・・・多分大丈夫でしょ・・・」
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ秋子さんの表情が引きつったように思えないでもないあゆだったがあえてこれ以上追求する事はなかった。
大きく欠伸をすると、あゆも秋子さんの肩にもたれかかる。
「あらあら、あゆちゃんも甘えんぼさんね」
そう言って優しい笑みを浮かべる秋子さん。
「ついたら起こしてあげるから寝てて良いわよ」
「うん、ありがとう・・・お母さん・・・」
もう既にあゆは半分くらい夢の中だったようだ。彼女の口から漏れた「お母さん」という一言に小さく頷く秋子さん。

その頃、祐一と名雪は。
「いちご〜、いちご〜」
「ううう、時間が・・・時間がぁッ!!」
未だ来ない電車を先程の駅でひたすら待ち続けていたそうな。


後書き
某所で色々と言われているのでまぁ、とりあえず普通に後書きしてみる。
そろそろ書き始めて一年になるな、これ(爆)
いや、ここまで引っ張るネタじゃなかったんだが。
オチだけは思いついているのにそこに行き着くまでに何というか時間がかかっている。
ちなみに第2話は完全に場違いである。温泉とも関係ないし。
まぁ、後1話、多分今月中に・・・・無理かも(爆)
来年のホワイトデーまで引っ張る気はないから、それまでに。

そう言えば。
まともな名雪萌なSSを書こうとある意味努力中。
ライダーカノンではどうにもこうにも殺伐しすぎ。殺し合う関係だし、たまにこうした甘甘なものをかかないと自分が名雪嬢LOVEだと言う事を忘れそうになる。
ちなみに他のキャラではかおりん様が一押しでその次に天野っちがくるのだが。
ああ、そういえば。
現在脳内保管中(爆)のシリアス恋愛系SSが。
真琴シナリオ後(帰ってこないバージョンだと思いねぇ)の天野、祐一、名雪の三角関係。
勿論真琴の存在は重要なファクターになるんだが、上手く書けるかどうか疑問。
目指すは月9とかのトレンディ系恋愛ドラマ。嫌いなんだが、実際は。
まぁ、これは何時か気が向いたら始めようかと。

この先の予定をあげてみて自分の首を激しく絞めてみる(爆)
その1:あゆ&真琴分岐型お誕生日SS(まだやったんかい!!)
その2:某所で書くと言ってしまった名雪とお風呂なSS(18禁に非ず)
その3:その流れで出てしまった真琴と一緒のおねんねなSS(18禁にはしない)
その4:M;I2(笑)
その1に関しては後は分岐の先を書くぐらいだから今月(’02年3月)中には。
後は不明。
ちなみにクロスオーバー系はこの場では無視。
最低でも年内にはこれくらいは書きたいね〜。

戻りなさい。

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