別にそう言うつもりじゃなかった。
それだけは信じて欲しいんだが・・・まさか機嫌を損ねるとは思っていなかった。
「でも・・・名雪の気持ちも分からないでもないわ・・・」
そう言ったのは香里だ。
確かに最初は名雪と二人だけのつもりだった。
だが・・それが出来なくなったのも・・元はと言えば・・・。
「さぁ、張り切って行こうぜぇっ!!」
一人張り切っているこの大馬鹿野郎のせいだった。
これで俺と名雪との間に何かあったら・・・北川・・・コロス。


温泉へゆこう♪
第二話「デートは二人っきりの方がいいに決まっているでしょ!!」


相沢祐一と水瀬名雪は自他共に認める恋人同士である。
学校内でもその熱々ぶりはかなり有名で、はっきり言って馬鹿ップルそのものだという噂もある。
それが今、たった一人の男によって危機を迎えていた。
「そんなに大げさなものでもないでしょ?」
あきれたように美坂香里が言う。
彼女の後ろには不機嫌そうな名雪と何故か小躍りしている北川潤がいる。
「しかし・・・あそこまで不機嫌になられると・・・」
そう言った祐一の顔に焦りの色が浮かんでいる。
「いちごサンデーで許して貰えるだろうか・・・」
「きっとそれですぐに機嫌直るわよ」
香里は先程からあきれっぱなしであった。
元々今日は祐一と名雪が実は久しぶりのデートの日だったのだがそこに北川と香里がいるのにはこんな理由がある。

(回想始め)
ちょうど祐一が商店街の福引きを当てる一日前のことだった。
授業も終わり、みんな帰りだした時に北川がわざわざ祐一を呼び止めてこんな事を言いだしたのだ。
「そろそろクリスマスの時の分とバレンタインの時の分の借りを返してもいい頃だと思うがな、相沢よ」
「クリスマスの時のことは自業自得で消え去ったんじゃなかったか?それにバレンタインの時に借りなど作った覚えはないぞ」
「何を言うか、相沢よ。お前がわざわざ俺にくれたチョコのお陰で俺は生死の境をさまよったのだぞ。それを俺は借りというレベルで勘弁しておいてやろうと思ったのだ。感謝しろ」
「怪しいと思ったら食うなよ。・・・で、何をしろと言うのかな、北川君は?」
「ふっふっふ・・・クリスマス以来の雪辱を果たすのだよ、相沢君」
「ほほう・・懲りない奴だな、北川君。また玉砕したいのか?」
「とにかく相沢君、君は美坂と俺が上手くデートできるように計らいなさい」
二人の間には何か緊迫した空気が漂っている。
その証拠にお互いに普段つけない「君」をつけて話している。
「・・・仕方ないな。香里に暇な時間を聞いておいてやるから」
「それだけじゃ駄目。ちゃんと約束を取り付けるんだ」
「・・わかったよ。何とかやっておいてやるから後で電話するよ」
祐一は面倒くさそうにそう言って立ち上がった。
「もうじき卒業で会う機会が減るからな。しっかり頼むぞ、相沢君」
そう言って北川が先に教室を出ていく。
残された祐一は後頭部をぽりぽりとかきながらこれからどうすればいいかを考えた。
「とりあえず・・香里を探すか」
(回想終了)

「あっさり見つかったんだよなぁ、香里が」
「まるで見つかったら悪いみたいな言い方ね」
「おまけに予定のあいている日が今日だけだったなんて・・・更にこんな条件まで付けるなんて・・・酷いや、かおりん、いじめだ、かおりん」
「その呼び方はやめいっ!!」
香里がそう言って拳を祐一の頭に落とす。
「可愛くて良いと思ったんだが」
祐一がしゃあしゃあと言う。
「あんたね・・さっきから名雪が凄く怖い目でこっちを睨んでいるんだけど」
香里がそう言って名雪のいる方へとこっそりと指差した。
見ると確かに名雪がじっと祐一と香里の方を睨みながら真っ赤になって頬を膨らませている。
「おおう・・これはいちごサンデー一杯だけで済みそうになさそうだ・・・」
名雪の様子を見て、冷や汗を流す祐一。
「早く謝ってきたら?」
「そうする」
祐一は言うが早いか、すぐに名雪のそばに走っていった。
必死に両手を合わせて頭を下げている祐一と拗ねたように顔を背けている名雪を見て、香里はため息をついていた。
どうせすぐに仲直りするのであろう。こういうやりとりさえ、あの二人は楽しんでいる節がある。
「さぁ、美坂、俺達もそろそろ相沢達みたいにラブラブしようじゃないかっ!!」
いきなり北川が香里のそばに出現、香里の肩の手を回す。
一瞬むっとした香里だったが、すぐに笑顔を浮かべて方に回された北川の手の甲を思い切りつねりあげる。
「今の相沢君達みたいにならしてあげるわ、北川君」
そう言って香里は今だ名雪に向かって手を合わせて許しを請うている祐一をちらりと見た。
その姿はかなり情けない。
「とりあえずあの様子なら・・・お昼は北川君持ちね」
香里がそう言ってにこっと微笑んだ。
北川はつねられた手の甲にふーふーと息を吹きかけながらも、香里が微笑んだので情けないほど顔を崩れさせた。
本人的には笑っているらしいが。
一方その頃祐一と名雪の二人は・・・。
何となくどうなったか気になった香里がそっちの方を見ると・・・。
凄い光景が展開されていた。
祐一が名雪の頬に手を当てて挟み、その上で熱烈なキスをしていたのだ。
思わず真っ赤になって顔を背ける香里。
「おお〜、相沢の奴、相変わらずラブラブだなぁ〜」
羨ましそうに言う北川の後頭部を思い切り殴りつけ、香里は気を失った北川を引きずって二人が見えない場所まで移動していった。
「全く公衆の面前で何やってんのよ、あの二人はっ!!」
「実は羨ましかったりして」
ぼそりと北川が言う。
思わず香里は北川の顔と言わず身体と言わず思いきり踏みつけていた。
ドカ!バキ!グシャ!
見る見る間に北川がぼろ雑巾と化していく。
「そろそろその辺でやめておいた方が良いと思うぞ、香里」
後ろから声をかけられ、振り返ると祐一と彼の腕に自分の腕を回している名雪が立ってぼろ雑巾と化した北川を見下ろしていた。
「え〜〜〜〜〜、止めちゃうの〜〜〜〜?」
名雪がいかにも不服そうに言う。
「流石にこれ以上やるとマジで北川が死んでしまうと思うぞ。そうなると香里が捕まるだろ?」
祐一がそう言うと名雪も納得した様子で頷いた。
「そうだね」
誰も北川の心配をしないところがポイントかもしれない。
「ところでこれからどうするの?」
香里が聞くと、祐一は少し考え込むようにして、
「本当ならこれから映画でも見に行こうかと思っていたんだが・・・香里達が一緒なら別の場所にしようかとさっきも名雪と話していたんだが」
「名雪はそれでも良いの?」
香里が名雪を見て聞くと、名雪は祐一と身体を密着させてやや頬を赤くさせながらも満面の笑みで頷いていた。
「私は祐一がそばにいれば何処でも良いよ〜」
「可愛い事言うなぁ、こいつぅ〜」
祐一がそう言って名雪の頭に自分の頬をすりすりする。
その光景を見た香里はげんなりとした様子で顔を背けていた。
(この馬鹿ップルが・・・)
心の中でそう付け加えるのを彼女は忘れなかった。
「とりあえず・・ここに遊園地の招待券がある」
そう言ったのは何故か完全復帰した北川だった。
確かに彼の言う通り、手には遊園地の招待券が四枚握られている。
わざわざ用意したのだろうか?
「・・有効期限、大丈夫か?」
祐一が聞くと、北川がニヤリと笑った。
「ふっふっふ・・・相沢君、この俺がその様なミスをすると思ったか?」
香里と名雪が同時に頷いている。
祐一が顔を北川の持つ招待券に近付けてじっと見てみると・・・。
「有効期限・・・12月末日まで・・・」
ちなみに今は3月始めである。
そう言った祐一の後に沈黙が続く・・・。
北川の笑みが硬直し、香里の顔に青筋が浮かぶ。
「えっと・・・」
「北川君、言い残すことはあるかしら?」
香里がそう言いながら指をぽきぽきと鳴らす。
顔が凄い笑顔なだけに何とも言えない迫力を出している。
「話し合いを望む・・・・ダメ?」
「ダメ」
引きつった顔の北川に笑みを浮かべたまま言う香里。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
北川の悲鳴というか断末魔というかそんな声が響き渡る・・・。



















「やっぱりデートは二人きりの方が良かったよ、祐一・・・」
帰る道すがら名雪がそう言って隣を歩く祐一を見た。
「北川への借りがあったからな。それに香里が北川とのデートの条件に俺達が一緒にいることって言ったし・・・ご免な、この埋め合わせはちゃんとするから」
本当にすまなさそうな顔をして祐一が言う。
そんな祐一を見て首を左右に振る名雪。
「いいよ、今日はそれはそれで楽しかったから。でもね」
そう言って名雪が立ち止まったので祐一も足を止める。
ちょっと名雪より前に出てしまったので祐一が振り返ると名雪がすっと背伸びして祐一の唇に自分の唇を押し当てた。
思いも寄らない名雪の行為に祐一がぎょっとなって硬直してしまう。
少しの間二人は唇を重ねていたが、やがて名雪の方から離れて、ちょっと赤くなりながらにこっと笑った。
「やっぱり二人の方が良かったな」
「・・・わかったよ。今度は二人っきりでな」
少し照れたように顔を赤らめながら祐一がそう言い、すっと名雪に腕を差し出した。
その腕に自分の腕を絡める名雪。
「それではお姫様、参りますか?」
「うんっ!!」
二人の姿が夕陽に消えていく・・・。


次行くよ〜


後書き
作者D「二話目にして既に温泉話じゃねーし(笑)」
かおりん「開き直るなっ!!!」
作者D「とりあえず一話目で名雪が怪しい歌を歌っていたという描写があったのでそこんところを書いてみました」
かおりん「何か私たち、いい当て馬なんだけど?」
作者D「このシリーズ「らぶらぶはっぴねすでいず」では君たちは当て馬以外の何者でもないから安心するように」
かおりん「出来るかっ!!!」
作者D「気が向いたら外伝という形で出してあげよう」
かおりん「(やけに強気ね、今回は・・・)」
作者D「(ふっふっふ・・・こっちが弱みを見せなければかおりんと言えども突っ込むことは出来ないはず)」
かおりん「ふふふ」
作者D「はっはっは」

怪しい笑みが何時までも響き続ける・・・。

戻ります(汗)

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