「それじゃ先にお風呂入ってくるね〜」

そう言って真琴が立ち上がる。

リビングのソファに座って雑誌を何気なく見ていた俺は聞くとも無しにそれを聞き、すぐ後ろを駆け抜けていく真琴の足音だけを聞いていた。

そのまましばらく雑誌を見るとも無しに見ていたが、ふと悪戯心が持ち上がった。

相変わらず真琴の悪戯は続いている。

流石に毎晩毎晩と言うことはなくなったが、その手口は最近”あゆ”という下僕を得た所為かより悪質化しているような気もする。ある時なんか・・・いや、やめておこう。最終的に一番酷い目にあったのはあいつらだし・・・・。

それはともかく、俺は雑誌を閉じるとソファから立ち上がった。

「あら、どうかしたんですか、祐一さん?」

立ち上がった俺に声をかけてきたのは台所から顔を出した秋子さんだった。手にお茶の入ったお盆を持っているところを見ると丁度お茶をいれてきてくれたらしい。

「あ、折角だから頂きますよ」

そう言うと俺はソファに腰を下ろした。

どうせ真琴のことだ、お風呂の中で遊んでいるだろうからお茶を飲んでいる間くらいは大丈夫だろう。

秋子さんがいれてくれた絶品のお茶を飲みながら秋子さんと他愛のない話をする。

学校の話やらバイトの話やら名雪の話やら。

どれくらい秋子さんと喋っていただろうか。

秋子さんが聞き上手な為についつい話し込んでしまった。

時間を見ると30分以上経っている。

「じゃ、俺そろそろ上に上がりますね」

「あら、お風呂は? まだですよね?」

「後で入りますよ」

そう言って俺は立ち上がるとリビングから出ていった。

一度二階の自分の部屋に戻り、着替えを手にするとすぐに部屋を出る。

ちょっと急ぎ目に階段を下りるとリビングの手前にある洗面所と続きになっているお風呂場へと向かう。

中に誰か入っていることをドア越しに確認すると、俺はにやりと笑った。

「ふっふっふ・・・」

小さい声で笑いながら服を脱いでいく俺。

この姿を見られたらおそらく「変態」の烙印を押されてしまうであろう事は想像に難くない。

だがこれも復讐の為だ。

我が安眠の時間を奪う真琴に対する。

思い切り恥ずかしい目に遭わせてやろう。

「真琴ー、入るぞー」

そう言って思い切りドアを開けて中に入る。

いつもなら一瞬の沈黙の後、大声でわめき立て、お湯やら洗面器やらが飛んでくるのだが。

浴室中に立ちこめる湯気の所為でよく見えないが相手は湯船の中で俺の方を見て硬直しているようだ。

本当ならそこで気がつくべきだったのだ。

相手が真琴であるなら既に大声を上げているとかお湯とか洗面器を俺に向かって投げてきているはずなのだと言うことに。

しかし、全くその事に思い至らなかった俺はドアを閉めてそのまま浴室内に入ると、椅子に腰を下ろした。

置いてあった洗面器を手にするとお湯をくんで、ザバッと身体にかける。

うん、丁度いい湯加減だ。

「ゆ、祐一・・・」

湯船の中にいる真琴が声をかけてきた。

ん・・・?

真琴にしては随分おとなし目な声だな。

そう思って湯船を振り返ってみると、そこには長い髪をアップした真琴・・・ではなく、従姉妹の少女がいた。

顔を真っ赤にして、少し身体を震わせながら俺をじっと見ている名雪。

それには俺も焦った。

「な、な、な、名雪〜〜〜〜〜!?」

思わず俺は大きい声を上げてしまい、腰を浮かせようとして、思わず足を滑らせてしまった。

はっと思う間もなく視界が回る。

「ゆ、祐一っ!!」

名雪の慌てた声が聞こえる中、俺は豪快に頭を打って気を失っていった・・・。








名雪と一緒に・・・ お風呂Ver.






























何か頭がズキズキするが、同時にふにふにとしたとてもいい感触がする。

ああ、何というか物凄く心地いいような・・・このままずっと居たいような・・・。

そう思って頭をもぞもぞと動かす。

「やだ、祐一、こそばゆいよ〜」

名雪の声が聞こえてくる。

・・・名雪の声?

はて・・・?

「祐一、目が覚めたのなら起きてよ〜」

いや、目が覚めている状態を起きていると言うのだと思うのだが。

この場合、「起きて」と言うのは「身体を起こせ」と言う意味なのかも知れない。

フッ、誰が。

この心地いい感触を失ってたまるか。

「祐一〜〜〜」

困ったような名雪の声。

何となくすりすりと頭をこすりつけてしまう俺。

ああ、何とも言えないこの感触。

「祐一、くすぐったいってば〜」

ちょっと甘い声。

「祐一、馬鹿なこと言ってないでいい加減にどいてくれないと落とすよ〜」

フッ、やれるものならやってみろ。

俺はこの心地いい感触を失うわけにはいかないんだ・・・。

「もう・・・本当に落とすよ?」

名雪の奴がそう言うと、不意に頭が落下した。

ゴンという音と共に俺の頭が固いところにぶつかる。

「うおっ!?」

その痛みに俺は思わず跳ね起きていた。

「おおおっ!!頭蓋骨が陥没したよーに痛い!!」

「祐一、大げさだよ〜」

すぐ後ろから名雪のちょっと困ったようなそんな声。

「何だとっ!!俺は如何に痛いかという事を最もわかりやすい解説の仕方で説明しようとだな・・・」

そう言いながら振り返った俺はそこで思わず硬直してしまった。

な、な、な、な、何と、名雪はバスタオルを身体に巻き付けたままのカッコでその場に正座していたのだ!!

つまり、その白い肌が見放題な上に意外と大きい胸の膨らみとか陸上をやっているせいかむっちりとした太股とかが視界に入りまくって・・・いや、それにお風呂だと言うことなのか白い肌がほのかにピンク色に染まっており、それがまた何とも色っぽいような・・・。

「祐一、鼻血、鼻血」

自分のカッコには案外無頓着なのか、名雪がそう言って俺の顔の手を伸ばそうとする。

そうなるとその胸の膨らみが更に強調されてしまって・・・。

「わ、わかったから!!」

俺は慌ててそう言い、片手で名雪を制止すると顔を上に挙げ、首の後ろ側をトントンと叩いた。

そう言えばこうすると鼻血が止まるって言うが本当なんだろうか?

「ゆ、祐一・・・」

何か焦ったような、戸惑ったような名雪の声。

いい加減このパターンも飽きてきたような気もするが、そうなんだから仕方ない。

俺は上を向いていて名雪の方を見ていないから、名雪がどうしてそう言う声を上げたのか見当もつかないのだが。

しかしながら首の後ろを叩いているのとは別の手。

どうも何かふにふにとした柔らかい感触がするような気がしてならないのだが。

指を動かしてみると更にふにふにとした何とも言えないマシュマロを掴んでいるような感触。

「やんっ!」

ついでに上がる名雪の可愛い声。

あ〜、え〜っと。

何というのか・・・物凄くイヤな予感がしちゃったりするんですが。

いや、でも一応俺と名雪は恋人同士だと言うので別にいいのかなぁとも思うのですが。

でも何かひしひしとした死の予感というものを感じられちゃったり。

「祐一・・・」

「は、はい・・・」

俺は上を向いていた顔をゆっくりと側にいる従姉妹の方に向けた。

その表情を見て俺は激しく焦った。

その愛くるしい瞳は潤み、頬は紅潮していて、口は少し半開きと言う・・・。

これは非常にやばい。

どっちかと言うと自分の理性の方が。

いや、そうじゃなくって。

「・・・あの、名雪さん・・?」

「・・・祐一〜」

名雪の口から出たのは甘〜い声。

潤んだ瞳で俺をじっと見つめ、ちょっとずつにじり寄ってくる。

うう、り、理性が・・・保たないかも・・・。

「・・・祐一が悪いんだよ・・・」

そう言って肌がくっつく程にまで接近してくる名雪。

ああ、マジでこれはやばいかも。

押し流されてしまいそうな理性を必死で食い止める俺。

「な、名雪、落ち着け!」

俺がそう言うが名雪はもう俺の側にべったりとくっついている。

触れた肌が何とも言えなくて・・・ああっ!!

名雪じゃなくって俺が落ち着け。

冷静な俺がそう言う。

「だ〜め。誘ったのは祐一だよっ」

甘えた声でそう言ってくる名雪。

俺にそう言うつもりは微塵もなかったんだが。

と言うかそもそも俺はどうしてここにいる?

日頃の真琴のいたずらに対して少し懲らしめてやろうと思っただけなのに。

「ゆ・う・い・ち・・・」

名雪が顔を俺の側に近づけてくる。

その潤んだ瞳、紅潮した頬、漏れてくる吐息に俺の理性さん、もう限界寸前。

「お、お前、ここが何処かわかっているのか!?」

限界寸前の理性さんが必死に俺が躊躇っている理由を口に出させてくれた。

今俺たちがいるのは風呂場だ。

風呂場というのはなかなかに声が反響する。

歌を歌ったらそれなりに響いていい気分になれるところだ。

しかし、それは何も歌に限った事じゃない。

他の声だって良く響く。

おまけに名雪だが、こいつ、意外とアノ時の声が大きかったりもする。

要するに!!

ここでやれば名雪の声が響いて家にいる全ての人間に聞こえてしまうと言うことなのだ!!!

一応秋子さん公認ではあるが流石に堂々とやるわけには行かないだろう。

普段は秋子さんや真琴、あゆのお子さまコンビがいない時を見計らったり、それが駄目でどうしても我慢できない時は名雪と一緒に布団の中に潜り込んでやったりと・・・ああ、何を言っている、俺!!!

「祐一・・・もう・・・我慢できないよ・・・」

そう言って名雪が俺にもたれかかってくる。

俺がパニックに陥っている間に名雪は完全にソノ気になってしまったらしい。

「だから、ここが・・・」

そう言おうとした俺の唇が名雪のそれでふさがれる。

しばらく互いに口の感触を味わいつつ・・・いや、待て!

俺は消え去る寸前の理性を総動員して名雪の肩を掴み、身体を離れさせた。

「お、お前、本当に・・・」

俺がそう言おうとした時、名雪の身体を覆っていたバスタオルがはらりと落ちた。

しっかり視界に入ってくる名雪の身体。

意外と大きめの胸とかすべすべのお腹とか淡い翳りとか。

「祐一のえっち・・・」

名雪がそう言って力の抜けてしまった俺の手から抜け出し、身体を寄せる。

そしてそのまま、また唇をふさがれる俺。

すいません、もう限界です、俺。

理性が跡形もなく暗黒の闇に吸い込まれていくような気が。

唇が離れると互いの唇の間に銀に光る橋が架かる。

「ゆ・う・い・ち」

名雪の口がそう動き、声を紡がないままに、だけど俺にははっきりと聞こえた。

「しよ・・?」

名雪の瞳はすっかり潤んでいて、頬も真っ赤になっていて、肌もピンク色に上気していて、胸の先とかもなんか自己主張していて、くっついている肌が熱くて、それでいて心地よくて。

あー、もう、何も考えられないっ!!

消え去った理性が何処かで何かを叫んでいたような気もするがもうそれだってどうでもいい。

「今日は私が・・・」

名雪に押し倒されるまま・・・。

END・・・?


後書き
作者D「久々に一日で出来上がってしまった・・・」
こげかおりん「妄想の産物ね」
作者D「本当に容赦の欠片もありませんね?」
こげかおりん「・・・で、これは何禁?」
作者D「15禁くらいにしておきたいなぁと。あの隔離スペースもそれくらいがいいのでは無かろうかと(汗)」
こげかおりん「で、微妙なところで切れているけど?」
作者D「すいません、この先色々と考えたんですが上手くオチそうにないんです。秋子さんが現れるとか、そのまま二人してのぼせるとか、最後までやっちゃうとか考えたんですが」
こげかおりん「最後のは無しね。18禁指定サイトじゃないから」
作者D「個人的には秋子さんにご登場願いたかったのですが。何か上手くまとまらず。と言うか時間切れ」
こげかおりん「書き直そうとか言う気はないの?」
作者D「そもそも一行開けて書くSSと言うもの自体私のやり方じゃございません。読みやすいんですがどうも小説慣れしていると空いている一行が気になってしまうのです」
こげかおりん「誰もあんたの嗜好なんか聞いてないわ。最後まで書く気は無いのかって聞いているの」
作者D「ここから先は読者様の想像にお任せします」
こげかおりん「全く相変わらず馬鹿作者なんだから・・・」
作者D「気が向いたら”秋子さん登場Ver.”とか”二人でのぼせたVer.”とかくっつけます」


戻って(涙)

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