作者注1:天野美汐ファンはやっぱり見ない方がいいかと思われます。
   注2:美坂栞ファンも見ない方がよかれと思われたり。
   注3:ギャグのつもりが単なる壊れになったような気が果てしなくします。
   注4:これを見ても私にウイルス入りのメールやボムはどうかご遠慮願います。
   注5:誰が一番壊れているかというと美汐か栞のどちらかです。両方という気もしますが。
以上の注意書きを読んでからご賞味下さい。

みしおんいんぽっしぶる(後編)

act.1 水瀬家 18:38PM

ぴんぽ〜〜〜〜ん。
門柱に突いているインターホンのボタンを押しながら・・・私は泣きたい気分を必死にこらえていました。
どうしてこう言うことになったんでしょう?
思い出してみると・・・あの人と知り合ったこと自体が問題だったのかも?
『美坂さん、聞こえますか?』
そもそも同じクラスになったことから間違いが始まったような・・・どうして私の秘密まで知っているんでしょうか、あの人は?
『もしもし、美坂さん?』
あの上品そうな笑みの下で何を考えているのやら・・・はっきり言って怖いです。
『何かものすごく失礼なことを考えていませんか?』
こんな事を考えるなんて・・・それに有無を言わせず私を巻き込むなんて・・・なんて恐ろしいんでしょうか?
『考えているようですね・・・』
一体睡眠薬なんかどうする気なんでしょうか・・・何か犯罪めいた予感がしてならないんですけど・・・・。
『聞いていないならそれで良いんですが、一応言っておきます。あなたの行動、及び言動は全てこっちでモニターしています。だから余計なことをしたらすぐに例のことをばらします』
「そんな事言う人、嫌いです」
すかさずいつもの決め台詞。
今までも一応聞こえていたんですけど、何となく反応したくなかったんです。
だって下手に反応してまた彼女のペースに巻き込まれるのはイヤですから。
『そちらが嫌いでも結構ですが・・・こっちには・・・』
「わかりましたっ!!」
思わず大きい声で言ってしまいます。
周りに人が居たら一人で何を言っているんだろう?な少女に見えてしまいますが。
実は今日の放課後、彼女に呼び出された私は彼女から耳栓のようなものを渡されたんです。それが今私の耳に付けられているもので、これから彼女の声が聞こえてくるんです。イヤーレシーバー、と言うんでしょうか・・・こっちの声も拾えるように小さいですがマイクもついています。
『とにかく、上手くやって下さい。・・・ちゃんと見ていますから・・・』
はぁ・・・私って不幸・・・。
『自分に酔うのは勝手ですが任務を忘れないでくださいね』
容赦ない一言・・・。
その時です、がちゃりと言う音と共にドアが開かれました。
中から顔を出したのは髪の毛を左右に分けて結んでいる私と同じかそれより年下の女の子。
「こ、こんばんわ・・・あの・・・」
私が話しかけると、その子は警戒するように私を見、中に戻っていきました。
呆然とその場に残される私。
少しの間呆然としているとまたドアが開いて、今度はこの家の主である秋子さんの娘さん、私の学校の先輩でもある名雪さんが顔を見せました。
「何だ、栞ちゃんだったんだ?」
そう言って名雪さんが微笑みます。
はぁ・・・いつ見ても綺麗な人だなぁ、と思う。
うちのお姉ちゃんも美人で評判良いけど・・・それ以上に怖いから。
こんな事聞かれたらまた怒られるだろうけど。
「どうしたの、こんな時間に?」
名雪さんはそう言ってにっこりと笑みを浮かべました。
「あ、あ、あの、きょ、きょ、今日、学校で、ク、ク、クッキー焼いたんですけどっ!!」
そう言って手に持っていた包みを差し出す私。
「・・・私に?」
首を傾げる名雪さん。
しかも少し困ったような顔をしています。
「あ・・・そ、そうじゃなくって・・いえ、あの、その、そうでもなくって・・・えうー、何言っているんだろう、私」
思わず泣きたくなってきました。
「ふふ、冗談だよ。ここじゃ寒いから中に入って。お茶入れるから」
名雪さんはそう言って玄関の中に戻っていきました。
私もそれに続いて中に入っていきます。
『美坂さん・・・絵だけじゃなくって演技も下手ですね』
耳からは例によって容赦のない一言。
はうう・・・私って不幸・・・・。

act.2 水瀬家の正面の家の屋根 18:42PM

天野美汐は少女が水瀬邸の中に入っていくのを見届けると双眼鏡を降ろしてにやりと笑った。
どことなく上品そうだが、何か含んだようなそんな笑み・・・。
うーん、恐るべし。
「・・・・・・」
う、前編に続いて後編でも睨まれてしまった。
話を進めよう。
今の美汐の格好はまるで某スパイ映画に出てくるスパイが何処かに潜入する時のような格好である。
黒のタートルネックのセーターに黒いズボン、それをやはり黒いサスペンダーで吊っている。更にサスペンダーには自分で作ったのかいくつものポケットが付けられており、何か異様にふくらんでいた。足下は運動性を重視してか黒いスニーカー。まだ雪が残っているので滑らないでもないが音を立てずに歩くならこれの方がいい。それに何より履き慣れている。
「さて・・・いきますか?」
美汐はそう呟くと屋根の端に立てかけてあった梯子にそっと近寄っていった。
勿論、この屋根の上に登るために立てかけた梯子である。
「・・・やっぱり寒いですね、この格好・・・」
時折吹く風に身体を震わせながら梯子を下りていく美汐。
梯子を下りきると素早く周囲を見回し、梯子を横に倒す。それから足音を立てないようにその家の庭を抜け塀を乗り越え、道路に着地しようとして、地面に残っていた雪に足を滑らせ、思い切りその場にすっころんでしまった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
余りもの痛さに思わず涙目になってしまうがとりあえず必死で声を押し殺す。
何とか立ち上がるが、思い切り打ったお尻はおそらく真っ赤になっているだろう。何か歩くのにも支障がでそうだ。
二、三歩歩いてみるとやはりお尻が相当痛い。歩き方が変になってしまう。かといって座っているわけにもいかない。と言うか座れない。
何時少女から連絡が入るか解らないため、そろそろ移動した方がいいのだが今の状態だと水瀬邸の側まで行くのがやっとかも知れない。
「ううう・・・何でこんな目に・・・」
涙目でそう言いながら美汐はよろよろと歩き出した。
これをあの少女が聞いたら何と思うだろうか?
「自業自得ですよ」
とでも言うだろうか?
「言わしませんよ、そんな事。何せ、こっちは彼女の重大な秘密を握っているんですから」
またこっちを睨みながら美汐が言う。
何でこっちの言っている事が解るのか疑問だが、聞いても答えてくれるとは思えないので気にしないでおこう。
とりあえず美汐はひょこひょこと道路を横切り、水瀬邸の側まで行くと壁の側にしゃがみ込んだ。
「後は彼女からの呼び出しをまつばかりですね・・・」
そう呟いて腕時計を見る。
時刻は18時47分を指していた。

act.3 水瀬家リビング 19:24PM

え〜と・・・私、悪くないですよね?
全部あの人に言われただけなんです、だから私悪くないですよね?
あの人が私を脅迫して全部やらせたんです。
私はイヤだって言ったんですよ。
でも・・・まるで悪魔のようなあの人は私の弱みにつけ込んでどんどん悪の道に引きずり込んで・・・すっかり共犯にされてしまって・・・うう、こんな事がばれたら何て言い訳すればいいんだろう?
今、私の前では祐一さんや名雪さん、それに秋子さんがすーすーと寝息を立ててソファにもたれて眠っています。これも私が持ってきたクッキーの中に入っていた睡眠薬の効果です。流石は私が持っていただけあって強力・・・予想以上の効き目でした。
もっともこのクッキー自体を作ったのはあの人ですが。
この家にはもう一人いるはずなんですが(だって玄関で始めに出てきた子がいたし)彼女はこの場にはいません。名雪さんが私が持ってきた睡眠薬入りクッキー(もちろんそうとは知らないはずなんですが)を分けてあげたらそれを持ってさっさと二階に上がっていったんです。
物音一つしないところを見ると彼女もクッキーを食べて今頃おねんねでしょうね。
・・・はっ!何かあの人に毒されてきたような気が。
と、とにかくさっさと私の役割を済ませて皆さんを起こさないと・・・。
私はそっと立ち上がるとリビングから廊下へと出ていきました。
三人とも眠っているから多分大丈夫とは思ったのですが、何となく聞かれたくなかったんです。だって、あの人との通信ですし・・・なんか祐一さんを裏切るような気がして。
リビングから廊下に出ると耳から外していたイヤホンを(だってコードとか見えていたらあからさまにおかしいじゃないですか。私、耳は特に不自由じゃありませんから)もう一度取り付け、マイクに向かって話しかけます。
「あの・・聞いていますか?」
・・・・・・・・・・・・・・どうしてだろう、返事が返ってこない。
さっきまでは必要のない事まで聞いていてわざわざつっこみをいれてくれたのに。
「あの・・・もしもし?」
電話じゃないんですけど、つい・・・。
『・・・・・・はっ!!余りもの寒さに今意識が何処か遠くに行っていたみたいです』
少しの沈黙の後、ようやく反応が返ってきました。
ちなみにそのまま意識が遠くに行ったままだと良かったな、などとは考えていませんからね。あくまで一応ですが。
『本音は?』
「ちっ・・・」
『そうだと思いました。明日の朝、楽しみにしておいてくださいね』
「あああ、冗談です!!ほんの冗談じゃないですか!!ユーモアのセンスって大事だと思いますよ、ねぇ?」
思いっきり慌てる私。
『・・・・冗談ですよ。貴女が言った通り、ユーモアのセンスは大事ですからね』
絶対嘘です。
さっきのは本気の声でした。
そう心の中で呟く私。
『冗談にしておいて欲しくはないんですか?』
「・・・私が悪かったです」
泣きそうな気分で屈服。
ううう・・・やっぱり不幸な私。
って言うか、何で心の中の呟きとかそんなものがわかるんですか!!
『この手のSSではお約束でしょう?』
そう言われると反論出来ない。
ううう・・弱くて薄幸で可憐な私、もっと頑張れ。
自分で自分を励ましておいて、何とか気を取り戻す。
『なかなか便利な性格ですね』
感心されてしまった。
『馬鹿にしたんです。お間違えなきよう』
容赦ないですね、本当に。
それにそっちも完全に回復したようですから。
『準備は整いましたか?』
「あ、はい。皆さん、すっかりおねんね状態です・・・・今気がついたんですが・・・さっきまで私一言も言っていませんよね?貴女に呼びかけた時以外」
『そうでしたか?』
耳から聞こえてくる声に私は首を傾げる。
『そんな事は今はどうでもいい事です。準備の方はいいんですね?』
向こうが急かすように言ったので私は慌てて頷きました。
『わかりました。では廊下の窓の鍵を開けておいてください』
そこまでやらすんですか!?
睡眠薬入りのクッキーを皆さんに食べさせるだけで終わりじゃなかったんですか!?
そこまでやると住居不法侵入の罪に問われてしまうんじゃないんですか!?
『睡眠薬入りのクッキーを皆さんに振る舞っている時点で立派な犯罪ですよ、美坂さん』
ううううううう・・・物凄く痛いところをつきましたね、今。
いいです、もうこうなったら最後まで付き合います。
堕ちるなら何処までも堕ちてあげます、それが望みなんでしょう、貴女の。
『そう言うわけではないんですが、まぁ、そう思うならそれでも構いません。ですからさっさと窓の鍵を外してください』
イヤホンから聞こえてくる指示に従って窓に近寄り、その鍵を外す。
「外しましたよ」
『ご苦労様です。では少ししたら行きますのでよろしく』
そう言って向こうからの通信は切れました。
何となくその場に残って窓の外を見ていると誰かが塀をよじ登ってくるのが見ました。
何やら悪戦苦闘している様子ですが・・・あ、落っこちた。しかも頭から。痛そうだなぁ・・・いい気味。・・・はっ!!違います!そんな事思っていません!!ええ、少したりとも彼女が頭から落ちたのを見てザマァミロとか悪の報いだとか考えていませんから!!
『・・・・そんな事を考えていたんですか?』
物凄く冷たい声が聞こえてきました。
むくっと頭を上げ、窓の内側にいる私をじっと見ているようです。
私は慌てて立ち上がるとすぐさまリビングへと戻っていきました。

act.4 水瀬家の庭 19:32PM

彼女と馬鹿な事をしている間に何とか塀をよじ登った美汐だが、相変わらずお尻が痛いのと、雪に手を滑らせて豪快に頭から雪の積もっている庭へと落下してしまう。
何とか顔を上げると水瀬家の丁度庭に向いている廊下の窓の中に少女がいて、こっちを見て、必死に笑いをこらえているようだ。
・・・何となくだが、美汐には今あの少女が何を考えているかわかってしまった。
これだけ利用し倒してきているのだ、こういう事を思っていても不思議はないだろう。いい気味だとか、ザマァミロとか悪の報いだとか。
そんな事を思って少女を見ていると、彼女は何やら一人でぶんぶんと首を左右に振っている。どうやら今頭に浮かんだ事を必死に振り払っているようだ。
美汐の予想は当たっていたようであり、美汐はふっと冷たい笑みを浮かべた。
「・・・・そんな事を考えていたんですか?」
イヤーレシーバーのマイクに向かって呼びかける。
すると少女はびくっと身体を震わせて、物凄く慌てた様子で立ち上がり逃げるようにリビングの方へと去っていくのが見えた。
「・・・まぁ、いいでしょう」
美汐はそう呟くと何とか体勢を変えようとし、失敗して痛いはずのお尻から思い切り転がってしまった。
「!!!!!」
お尻から来る激痛に必死に声を上げまいとする美汐。目には涙すら浮かんでいる。それでも声を上げないと言うのは凄く立派だと思う。まぁ、ある意味今彼女がやっている事は犯罪チックだからここで声を上げてそれがばれては敵わない、と言うものあるのだろう。
(こ、こ、これも・・・これも・・・目的の為!!)
泣きそうになりながら(イヤ、事実目に涙は浮かんでいるのだが)美汐は何とか立ち上がり、そっと足を踏み出した。
次の瞬間、踏み出した足の下の地面がずっと沈み込んだ。
「え?!」
一瞬何が起きたかわからず、間抜けな声を上げてしまう美汐。
彼女はそこに掘られていた落とし穴に見事に引っかかってしまったのだ。幸いな事に穴が浅かった為に全身が落ちると言う事はなかったのだが、彼女は前のめりに豪快に倒れてしまう。しかも顔面から。
少しの間美汐は動かない。余程痛かったのか、その所為で気を失ったのか。と思ったらいきなり顔をがばっと上げた。
顔中泥だらけ、おまけに鼻の頭は真っ赤である。
「く、くじけません!!これしきの事で!!」
そう言って立ち上がる美汐。
今度は落とし穴がないか気にしながらゆっくりと足を進めていく。と、今度は足下に張られていたロープに足が引っかかった。
「へ?」
美汐が気付いた時はもう遅い。
彼女の真横から何かが彼女めがけて飛んでくる。横っ面にそれを喰らい、吹っ飛ぶ美汐。
ぱたんと倒れ、また動かなくなる。
ちなみにまだ塀から1メートルとして離れていない。
美汐は先程と同じようにがばっと顔を上げ、頬をさすってみた。何が当たったのか知らないが赤くなっている。キョロキョロと周囲を見回すと、堅く凍っている豆腐が目に付いた。どうやらこれが彼女の頬などに当たったらしい。
その豆腐を手に取り、美汐は再び立ち上がった。そして豆腐をぎゅっと握りつぶしながら目に炎を燃やす。
「流石は町内一のトラップマスターと呼ばれた水瀬先輩のお母様です!しかし、私にはやらなければならない事があるんです!!この程度のトラップなど!見事かいくぐってご覧に入れましょう!!」
そう宣言した瞬間、彼女の頭にどうやら残っていたらしい豆腐が直撃した。
綺麗にこめかみにクリティカルヒット。
ぐらりと揺れて、美汐はその場に倒れてしまった。

act.5 水瀬家リビング 19:59PM

あれから30分近く経ちました・・・・けど、あの人が入ってくる様子がまるでないんです。
睡眠薬の効き目は上々で未だ祐一さんも名雪さんも秋子さんも目を覚ます様子はないんですが、私としてはドキドキものです。何時、睡眠薬が切れて目を覚ますか・・・不安でたまりません。それに睡眠薬が切れた後どうすればいいのか・・・考えるだけでも怖いです。
「うう・・・ん・・・」
どきっ!!!!
い、今誰か声を出しましたよね!!
もう睡眠薬の効果が切れちゃったとか?
恐る恐る皆さんを見てみます・・・が誰も目を覚ました様子はありません。どうやら寝言だったようですね。ふう・・・安心です。
その時です。
リビングに続くドアがぎぃぃ〜と言う音を立てて開いたのは。
気のせいか・・・開いたドアから物凄い殺気が感じられます。
私はゆっくりと振り返ろうとして、すぐにやめました。ドアの影からこっちを物凄い視線で見ているあの人がいたからです。
一体入ってくるまで何があったのか顔は赤く腫れていているし、身体も泥だらけになっています。おまけに髪の毛にも泥がこびりついて更に凍っていたり・・・。何というか見るからに無惨な姿です。
「ふっふっふ・・随分とお待たせしました・・・」
物凄く怖いからやめてください、その笑顔。
「さぁ、行きますよ?」
「え?」
私が驚いたようにドアの方を振り返るとあの人はにっこりと微笑みました。
私を見てあの人が手招きをします。
仕方なく私は立ち上がり、あの人の側まで歩いてきました。
ドアを大きく開けると、いきなりあの人が抱きついてきます。
「な、何するんですか!?」
慌てて私はあの人を押しのけました。
ですが時既に遅し、どうやら彼女の目的は達成されたようです。
私が着ていた服に彼女の服についていた泥がしっかりついてしまっています。これが目的だった・・・わけないですね、その顔は。
「ここに何時までもいても仕方ないですから行きますよ?」
「・・・・何処行くって言うんですか?祐一さんならここで寝ていますけど?」
「相沢さんに用がある訳じゃありません。用があるのは・・・
そう言って彼女は上を指さしました。
上?・・・上にいるのは確か・・・。
「・・・祐一さんが目的じゃなかったんですね?」
「何でそんなに嬉しそうな顔をするのかわからないでもないですが・・・まぁ、この際、それはどうでもいい事です。とりあえず今日の目的は相沢さんではありません」
彼女はそう言うとにやりと笑いました。
まるで私の心の内を見透かしているかのように(いえ、今まで何度も見透かされてきたんですが)。
「まぁ、いずれ相沢さんに用が出来るかも知れませんが」
更ににやりと笑って彼女は言いました。
この様子だと完全にこっちの心の内を見透かしているようです。
下手に何か言うと泥沼になりそうです・・・。
「フフフ・・・まぁいいです。さぁ。行きましょう」
彼女はそう言うと私を引き連れて階段を上がっていきました。二階には祐一さん、名雪さんの部屋の他にももう一部屋くらいあったはずですが、確かその部屋は今、もう一人の居候が占拠しているって祐一さんが言っていたような。
あ、もしかしてその居候さんに用があるんですか?
「ふふふふふふ・・・それは内緒です」
そこで内緒と言われても・・・もうバレバレなような気がしますが。
祐一さんに用があるなら祐一さんを眠らせた事自体無意味ですし、まさか彼女が名雪さんに用があるとは思えません。更に言えば秋子さんにも。と言う事で単純な消去法で残ったのは居候さんと言う事になります。これでばれていないと思うのならそれはそれで凄いと思いますが。
「わかっていますよ、そんな事ぐらい」
何か物凄く馬鹿にしたような目で見られてしまった・・・えう〜・・・。
「だいたい美坂さんが考えそうな事くらいわからないわけが無いじゃないですか」
何か激しくショックです。
えう〜〜〜〜。
「ほら、そんな事よりもつきましたよ」
ええ、そうでしょうね、貴女にとっては私の事なんか「そんな事」で済んでしまうんですね。
いいですいいです、もういいんです。
私、こうなったらぐれちゃいますから。
「美坂さんがぐれたところで怖くないから別に構いませんよ」
えうう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
私が半泣きになっているのも構わず彼女はその居候さんの部屋のドアをそうっと開けています。
中を覗き込んで彼女は物凄くにへらっと言う顔になりました。
これは・・・ある意味至福とでもいうのでしょうか、例を挙げるなら・・・いちごサンデーを前にした名雪さんのような、そんな表情?
「ふふふ・・・ふふふふふ・・・ふふふふふふふふ」
不気味な笑い声と共に彼女が中に入っていきます。
私はそんな彼女を見て、中にいる居候さんの身が急に心配になって一緒に中に入っていきました。
そこでは・・・電気もつけっぱなしで(これは仕方ないと思う、まさかクッキーの中に睡眠薬が入っているとは思わないだろうし)すっかり寝こけている一人の少女の姿。確かはじめにピンポンを押した時に出てきた子。
「うふ・・うふふ・・・うふふふふふふ」
また彼女が不気味な笑い声を上げています。
私は半眼になって彼女を見ました。
するとどうでしょう、彼女は何故か上気した顔でその少女をじっと見て、笑っているじゃないですか。
そ、そ、そういう趣味があったんですか!?
「違います!!!」
あ、速攻で否定された。
「そう言う趣味は・・・決してない・・・・と思います・・・・」
何故か語尾が微妙なんですが。
ところで・・・ここには何をしに来たんですか?
「・・・すっかり忘れていました。つい、真琴の寝顔に見入ってしまって・・・」
そう言って彼女は着ているベストから使い捨てのカメラを取り出しました。
それからぱちぱちと角度を変えながら何枚も、それこそフィルムを全て使い果たすかのようにその少女の寝顔を撮しています。
「え〜と、もしかしてこれが目的だったとか?」
私が尋ねると彼女は私の方をうるさそうに振り返ってじっと睨み付けて頷きました。
「それ以外に何があるというのですか?」
はっきりと断言されてしまいました。
えっと・・・どうしましょうか、この場合。
「とりあえず黙ってそこに・・・邪魔にならない位置にいて下さい」
うう、容赦ないです、本当に。
彼女は私の気持ちなどつゆ知らず、せっせと写真を撮っています。一つ目が終わったら二つ目を取りだして、それが終わったらまた次の。
「ううう・・・」
少女が寝返りを打ちました。
そこを狙って素早くシャッターを切る彼女。
その少女はどんな夢を見ているのか嬉しそうな表情です。
4つ目の使い捨てカメラが終わる頃になってようやく彼女は顔を上げました。物凄く満足したような顔です。
「これでいいです。さぁ、帰りましょう」
「・・・そ、そうですね」
彼女がやけにあっさりと言ったので私は少々拍子抜けしてしまいました。
少女の部屋を抜けて、階段を下り、リビングの様子をうかがうとまだ三人とも眠っているようで・・・・あれ?一人足りない。
祐一さんがいて、名雪さんがいて・・・あ・・・あ・・・秋子さんが・・いない?
私が物凄く困ったような顔をして彼女を振り返ると既に彼女は玄関から出て行ってしまったようでした。バタンとドアの閉まる音だけが無情に響きます。
「あ・・・・あ・・・・あ・・・・天野さん・・・・?」
呆然と玄関の方に手を伸ばして言う私。
その後ろに人の気配。
恐る恐る振り返るとそこには秋子さんがいつもの笑顔で立っていました。
「栞ちゃん、どうしたの?顔、真っ青よ?」
そう言って私の肩の手を置いてきます。
秋子さんは笑顔のまま、ですがその笑顔、物凄く怖いです。
えう〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
「クッキーのお礼に栞ちゃんに是非試してもらいたいものがあるんだけど・・・いいわよね?」
一応疑問符がついているようですがそこには何故か否定をさせない迫力というか何というか、とにかく私は頷くことしかできませんでした。
「ふふ、良かった。じゃ、このジャム、たっぷり試していってね」
そう言って秋子さんが出したものは・・・オレンジ色したジャムの瓶。
ああ、そう言えばお姉ちゃんも、祐一さんも、名雪さんでさえも言っていたっけ・・・秋子さんのオレンジ色のジャムには気をつけろって。
・・・お姉ちゃん、祐一さん、先立つ不幸をどうか・・・許してください・・・えうううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

act.6 水瀬家の外 20:31PM

美汐はポケットに収めた使い捨てカメラ合計4個を大切そうにさすりながら雪の残る道を急いでいた。
これでいい。
後は彼女が何とかするだろう。
元々睡眠薬は彼女のものだし、それをいれたクッキーも彼女が持っていったものだし、窓の鍵を開けて自分を招き入れたのも彼女だし、自分はとりあえず真琴の寝顔が撮れただけで満足だし。
後はこれを現像して秘蔵のアルバムに貼っておけば完璧。
真琴のアルバムはこれでまた充実するわ。
何時の日か、そう、あの子が結婚でもする時に見せてあげましょう。
そして思い知らせてあげるんです。
貴女は私の手の内にいるんですよって。
「ふふふふふふ・・・」
不気味な笑い声を残しながら美汐が夜の道を歩いていく。
近くを歩いていた猫がびくっと身体を震わせ、慌てて逃げていった。
それほど今の美汐は不気味なオーラを放っていたのだ。
「えうううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
後ろの方からそんな泣き声が聞こえたきたが彼女はまるで相手にしない。
自分の幸せまっしぐら。
他人の不幸などどうでもいい。
とにかく天野美汐、今回のミッション、成功のようである。

「尚、君、もしくは君の仲間が捕らえられ、もしくは殺害されても当局は一切関知しないので」

「そんなのひどいですううううううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
彼女の泣き声だけは何時までも空しく響いていたのだが・・・。

MISSION COMPLETE・・・・?

戻りますよね?


後書き
作者D「いや〜、やっと完成しましたね〜」
かおりん「毎度の事だけど、前のからどれくらい時間が経っているの?」
作者D「記憶に御座いませんなぁ(笑)」
かおりん「はぁぁ・・・・・何かもう殴り倒す気力もないわ・・・」
作者D「それはよろしい。今回ばかりは身の安全が保証されたわけだ」
かおりん「で、今回は言い訳がないの?」
作者D「これも毎度の事ですが・・・ネタが出来てから書き終わりまで妙に時間がかかったんですね、これが」
かおりん「まさに毎度の事ね」
作者D「その間のこれのぱーと2が考え出されてしまったという(笑)」
かおりん「どうせまた書き始めたら長いんでしょ?平気で3ヶ月くらいはかかるんだから」
作者D「その可能性は否定出来ず。ちょろちょろと書き足していくのが好きみたい」
かおりん「ライダーカノンは妙なくらいハイペースなのにね?」
作者D「今月(作注:今2001年12月です)は色々とやりたい事があるからライダーカノンは少しペース落とす」
かおりん「ほう?」
作者D「今月中に1本?今月は名雪嬢の誕生日も控えているし、クリスマスという俺には全く無関係なイベントもあるし」
かおりん「さりげなく寂しい事言っていたわね。で、今回もまた一緒に?」
作者D「分けたいです。クリスマスはクリスマス、誕生日は誕生日で。ちなみに誕生日は頑張って全員分書くつもり」
かおりん「無理ね」
作者D「ンな無下に否定しなくても(汗)」
かおりん「あんたの書くペースからすると名雪の分も怪しいでしょ?」
作者D「どきっ!?」
かおりん「だいたいホワイトデーのもまだ終わってないし」
作者D「更にどきっ!?」
かおりん「色々と頼まれものも仕上がってないし」
作者D「どきどきどきっ!!!」
かおりん「どうするの?」
作者D「すいません。全部この12月および1月中に仕上げますです、はい。ライダーカノンはしばしお休み、と言う事にして」
かおりん「それはダメ。楽しみにしてくれている人もいるんでしょ?」
作者D「マジッスか!?死んじゃいますよ、俺?」
かおりん「死になさい」
作者D「んな笑顔で言われても・・・(涙)」
かおりん「泣いている暇があったらキリキリ書けぇぇぇぇぇいっ!!!」
作者D「はううううう〜〜〜〜〜〜(涙)」

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