作者注1:天野美汐ファンは見ない方がよかろうと思われます。
   注2:美坂栞ファンも同様です。
   注3:爆弾付きメールとかウィルス入りメールとかはどうかご容赦を。
   注4:続きはいつ書くか不明です(爆)


みしおんインポッシブル(前編)

act.1 学校 12:58

「と言うことです」
 話は唐突に始まる。もっとも全ての話は唐突に始まるような気がしないでもない。前もってその話に対する予測は出来ない物だろう、普通は。
 そう言うわけでここは下級生の教室である。一応説明しておくとあくまで祐一や名雪、香里にとって、である。
「・・・えと・・・どういうことでしょうか?」
 いきなり話しかけられた相手はとまどいの表情を隠せなかった。
「あなたに是非協力して欲しいんです」
「・・・あ、あの・・・」
「あなたが一番適任なんです。お願いします」
 畳みかけるように言い、頭を下げる。ここまでやって断る人間はそうはいない。特に相手があまり気の強い方でなければ特に、だ。もっとも彼女の姉はかなり気の強い方であろう。何せこの学校で一般に不良と呼ばれる生徒がみんな恐れているらしいから。
 今、目の前にいる人は病弱で長い間学校にきていなかったという話であるが、何故か一緒の学年である。出席日数は足りないはずなのだが・・・。どういう裏技を使ったのか?勉強のほうは何とかついてきているようだが。そんなことを考えながら相手の返事を待つ。
「・・・あの・・・私でよければお手伝いしますけど・・・だから頭、あげてください」
 少々慌てたように相手が言うのを聞いて、内心にやっと笑う。作戦成功。もっともあくまで第一段階だが。
「ありがとうございます。詳しい話は放課後にでも」
 そう言ってまた頭を下げ、その教室内にある自分の席に戻る。作戦の第二段階を開始しなければならない。今、協力してくれると言った彼女にも真の目的を話すわけにはいかない。あくまでこれは極秘にやらなければいけないのだ。
 彼女の名は天野美汐。今回の主人公である。

act.2 教室 15:54

「と言うことです」
「わかりませんっ!」
 相手の反応は予想の他早かった。
「・・・流石です。だてに病弱じゃないですね」
「関係ないです」
「一応誉めているつもりですが?」
「誉めてないです」
「そんな事言う人嫌いです」
「それは私の台詞です」
「それは酷というものでしょう」
「だからどうして?」
 そろそろ相手もじれてきたようだ。表情にやや怒りがにじみ出てきている。
「冗談はこの辺にして、そろそろ本題に入りましょう」
「冗談だったんですか?」
「冗談以外のなんだと思ったんです?」
 疑問に対して疑問で返され相手の少女は困ったような顔をした。
「話を進めましょう」
「進まないのは誰のせいですか」
「気にしたら負けです」
「・・・・・・」
 相手の少女は遂に黙り込んだ。何かあきらめの境地に達したのかもしれない。小さくため息をついている。
「それでは話を・・・」
「・・・お願いします」
「お願いしたいことはいくつかあります。まず第一に・・・その前に一応確認しておきますが相沢さんを知っていますよね?」
「・・・祐一さんのことですか?」
「おそらくそれであっていると思います。なら・・・まず相沢さんの家の詳しい間取りを教えてください」
「・・・は?」
「だから相沢さんの家の詳しい間取りを知りたいんです」
「・・・あ、あの、どうして私に」
 聞くんですか、と言い書けて少女は口を閉ざした。正面にいる美汐がニヤリと笑ったからだ。その笑みは・・・とても邪悪なものを彼女に感じさせた。
「あなたが相沢さんと親しいからに決まっているじゃないですか」
 黒いオーラを背負って美汐が言う。
「少なくてもこの私よりあなたのほうが相沢さんと親しいんですから家くらい行ったことあるでしょう?だから詳しい家の間取りを知りたいんです」
「そ、それを知ってどうする気なんですか?」
 少女の言うことはもっともであった。
「・・・・それは秘密です」
「・・・・そう言うと思っていました。でも教えてくれないんじゃこっちも教えることは出来ないですよ。何するかわかりませんから」
「・・・・美坂さん、これは余り言いたくなかったんですが・・・」
 そう言って美汐は美坂、と呼んだ少女に何か耳打ちした。次の瞬間、少女の顔が真っ赤になる。まるで瞬間的に沸騰したかのように。
「な、な、な、な、何で、そ、そ、そ、そんなことを、し、し、し、知っているんですかっ!?」
 思い切り慌てている少女を見て、美汐はにっこりと笑った。
「確かあなたのお姉さんはあなたのこと可愛がってましたね。このことを教えたら一体どうなるでしょうか?」
「脅迫するんですか?」
「交渉です。どうしましょうか?」
「・・・・・・・・・・悪いことはしないんですよね?」
「ハイ。勿論です。泥棒とか強盗とかそう言う気は一切ありません」
「本当ですね」
 念を押す。実はこれでも心配なのだが美汐が握っている秘密を姉にばらされるよりはましだ。もし、ばれたらその被害は自分だけでなく彼にもいくことは確実なのである。
「私の目的は一つだけですから」
「・・・わかりました。信じます」
「ありがとうございます。では次のお願いですが・・・・これを用意して欲しいんです」
 美汐がそう言って一枚の折り畳んだ紙を少女に渡す。
「美坂さんはお薬に詳しいと聞きましたのでこれくらい持っているのではないか、と思いまして」
 少女が紙に書かれた内容を見て青くなっていくのも構わずに美汐は続ける。
「それに何度か自殺まで決意したそうですから用意はしているのではないか、とも思いまして」
「い、いやぁぁぁぁ!!!!」
 いきなり泣き出す少女。何かイヤなことを思い出したのかもしれない。
「・・・・・泣きやむまで待ちますよ」
 かなり冷静な美汐の一言。情けも容赦もない。血も涙もないと言った方がいいのだろうか?
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 睨まれたのでやめておこう。
 それより美汐のその一言を聞いた少女はぴたっと鳴き声をやめ、美汐を見上げた。その顔には涙の跡すらない。
「・・・嘘泣きだってわかっていたんですか?」
「得意そうでしたから」
 あっさりと言われて少女は本当に泣きたくなってきていた。
「とりあえず嘘泣きで誤魔化そうとしたと言うことは持っているんですね?」
「・・・・・・・・」
「否定しないところを見ると持っているんですね?」
「うう・・・・」
 流石にたじろいでしまう少女。今、彼女が相手にしているのはかなりの強者だ。彼女が知る限り今までで最強の相手と言っても差し支えないほどの。
「何に使うんですか、こんなもの?」
「騒がれたくないだけです」
「本当に危ないこと、犯罪に関わることには使わないんですよね?」
「当然です。何ならものみの丘の妖弧に誓っても良いですよ」
「よくわかりませんが、わかりました」
「ありがとうございます。出来れば早いほうが良いのでよろしくお願いしますね」
 美汐はそう言うと、自分のカバンを手に取った。
「それでは今日の所はこれで。ごきげんよう」
 少女をその場に残し、一人さっさと教室を出ていく美汐。その後ろ姿を呆然と見送ってから少女は自分がかなりやばいことを約束したような気がすることに気がついていた。全ては後の祭り・・・・そんな言葉が彼女の頭の中を巡っていたに違いない。

act.3 NextDay 屋上 12:49

「まさかあなたのほうから呼び出してくるとは思っていませんでした」
「思い切り無視してたじゃないですか!」
「普段余り親交のない私たちが話をしていますと誤解されてしまいます」
「一体誰に!?」
「教室にいる全ての人に。私は近寄りがたい雰囲気を持った謎の美少女で通していたいんです。それなら卒業したときにみんなの印象も強いでしょうから」
「そう言うこと訳の分からないことやらないでください!!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい」
「誰が興奮させているんですかっ!!」
「とりあえずお昼ご飯がまだですのでよろしければ一緒にどうですか?」
 徹頭徹尾マイペースを崩さない美汐であった。相手をしている少女のほうが荒い息をしている。とりあえず二人は並んで座り、持っていたお弁当を広げはじめた。
「・・・手作りですか?」
 美汐が相手の少女のお弁当をのぞき込んで聞く。少女らしい小さめのお弁当箱には色とりどりのおかずが入っている。
「今日はお母さんが作ってくれたんです。余裕があれば私が、たまにお姉ちゃんが作ってくれたりしますけど」
 それを聞いた美汐の顔がふっと翳りを帯びる。
「ど、どうしたんです?」
 慌てて少女が美汐の顔をのぞき込む。
「いえ・・何でもありません」
 見られまいと顔を背ける美汐。
 それを見て何か悪いことを言ってしまったのか、と不安になる少女。と、その視線が彼女のお弁当箱に注がれた。そこには・・・一面真っ白なご飯だけ。
「・・・・・・・・手抜き?」
「実は寝坊しました・・・・」
 美汐はそう言うと顔を背けた。流石に恥ずかしいのかもしれない。とりあえず気まずいので少女のほうも顔を背け、自分のお弁当箱に箸を延ばす。そこでふと、少女は思った。
「あの・・・・・いりますか?」
「是非」
 その間一秒。
 次の瞬間美汐のお箸が少女のお弁当箱の中のおかずを捕らえていた。そして素早く自分の口に運んでいき、更に次のおかずに箸を延ばす。更に。更に。どんどん減っていく少女のお弁当。
 今、少女は余計なことを言うんじゃなかったと後悔していた。
「ところで・・・頼んでいたものはどうなりました?」
 いきなり箸を止め、少女の顔をのぞき込んで聞く美汐。
「・・・・・・・・」
 一応こっちもお弁当を食べる手を止めて制服のスカートのポケットから錠剤の入った小さな瓶を取り出した。
「言っておきますがこれは本当はしちゃいけないことですから」
「わかっています。大丈夫、そんな怪しいことに使用したりはしませんから」
「普通、一人当たり二錠で充分効くはずです。余り飲ませすぎると大変なことになりますから気をつけて使ってくださいね」
(さて・・・問題はどうやって飲ませるか、ですね・・・)
 瓶を受け取り、美汐が考え込む。
 その横で少女は再びお弁当を食べはじめた。
「・・・・・・・・・・」
 美汐が何気なく少女の方を見る。それに気がついた少女がお箸を持つ手を止める。しばらく無言の時が過ぎていく。
「良いことを思いつきました」
「イヤです」
「それはあなたの台詞じゃないでしょう」
「ここまで協力したからもう良いじゃないですか!」
「ここまで協力したのなら最後まで協力してくれても良いでしょう?それに・・・」
そう言われて少女はうっと押し黙った。よく考えれば美汐にかなり弱みを握られている。昨日言われたこともそうだし、この睡眠薬のこともそう。充分犯罪だ。
「毒喰らわば皿まで、と言う言葉もありますし」
 少女の葛藤を知ってかにやりと笑って言う美汐。事ここにいたって彼女に主導権があることを少女は完全に認識してしまった。
「ううう・・・分かりました。協力しますぅ・・・」
 半ば泣きたい心境で少女がうなずく。しかしその反面、「不条理な運命に流されていく不幸な少女・・・なんかドラマみたいで格好いいかも」などと不謹慎なことを考えていたりもする少女だった。


続く。

戻ります

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