作者D「暑い上に眠くなってきたぞ・・・・(ちなみに現在8月17日午前5時22分)」
???「そりゃこんな時間に起きていればそうでしょうね?」
作者D「むうっ!?この場にはいつもかおりんが居るのに今回は違う!?誰だ、貴様!?」
???「誰だとは失礼な奴ね・・・(じろりと睨み付けて何故か木刀を取り出す)」
作者D「すいません。出来ましたら是非お名前をお伺いさせて頂きたいのですが?」
???「いきなり卑屈になったわね。まぁいいわ・・・あたしこそ究極の乙女を目指して日夜努力を怠らない乙女中の乙女、七瀬留・・・」
作者D「ああ、何だ、ななぴーか」
ななぴー「そう言う呼び方をするなぁっ!!!(そう言って木刀を振り上げる)」
作者D「イヤ、ここはSS部分じゃないからみんなあだ名で呼んで居るんですけど・・・」
ななぴー「・・それで彼女も『かおりん』な訳ね・・・」
作者D「納得していただけましたか?」
ななぴー「それとこれとは話が別じゃいっ!!」
作者D「はうう・・・折角初めてのONESSなのに・・・」


ぴんぽーん。
ドアチャイムの音というものは大抵何処も似たようなものである。
たまにはもっと違った音でも良いような気もするが。
たとえば・・・。
押した瞬間爆発音が鳴るようなものとか。
・・・何か激しく焦りそうな気がする。
そう言う意味のあまりないことを考えながら彼、折原浩平は相手が出てくるのを待っていた。
正確にはこんな事でも考えていないと緊張してやりきれなかったからだ。
(やっぱり来るんじゃなかった・・・のかもしれない)
ふと気がつくと後ろ向きな気分になっている自分が居る。
こんな気分の俺は「らしくない」のかもしれない。
そう思って苦笑を浮かべてみる。
しかし、それで緊張が特にほぐれるわけでもないので、彼は改めてため息をついた。
(長森の家だったらそれほど緊張しないで済んだんだろうな・・・)
不意に頭の中に毎朝起こしに来てくれている幼なじみの顔が浮かんだ。
今この場で彼女のことを思い出すのは少々不謹慎のような気もするが、それでも何となく落ち着いてしまう。
意外とあの幼なじみ、心の中でそれなりにウエイトを占めているようだ。
しかし、これから彼がもっと心の中でウエイトを置くべき女性がいる。
そんなことを考えているとドアが開いた。
長かったようで、実はほんの数秒のこと。
浩平にはドアチャイムを鳴らしてから何分もたったような気がしていたが実際にはほんの数秒のようだ。
『いらっしゃいませなの』
笑顔を満面に浮かべて彼を出迎えたのは少し背の低い少女。
手にはそう書いたスケッチブックを持って、頭には大きなリボンが嬉しそうに揺れている。
少し頬が赤いのは照れているからなのか?
それは浩平も同じであったが。
少女の名は上月澪。
浩平にとって、学校の後輩であり、決して忘れることの出来ない絆を持つ少女であり、恋人・・・でもある。


スケッチブックの思い出


「あら〜、浩平君。いらっしゃい!」
玄関にはいるとやけに嬉しそうな女性の声が浩平を出迎えた。
「は、はぁ・・おじゃまします・・・」
少し遠慮気味にそう言って靴を脱ぐ浩平。
この女性、どことなく澪にそっくりである。違うところと言えば澪はそこそこ短い髪なのだがこの女性はきれいに伸ばしている。リボンも付けていない。何より胸が澪より遙かにでかい。
しかし、その笑顔は澪と全く同じである。
「遠慮しなくて良いのよ、浩平君。ここ、自分の家だと思ってくれて良いからね」
そう言って浩平に顔を近づけ、にこっと笑う。
それを見た澪がぶすっとした顔になり、スケッチブックでその女性を叩いた。
「あらあら、澪ちゃん、ヤキモチ?」
スケッチブックで叩かれながらも(対して痛くないのだろう、澪の力を考えれば)その女性は澪に向かっても笑みを見せる。
『おかーさんはあっち行っててなの!』
素早くスケッチブックにそう書き込み、澪がその女性、要するに母親を廊下の奥に押し込んでいる。しかし貧力な彼女では母親を押すどころが自分の方がズリズリと動いてしまっていた。それでも必死になって母親を押している澪。
それを見ていた浩平の顔に笑みが浮かぶ。
彼にはあまり母親とのいい思い出が残っていない。だからこうして仲のいい親子の様子を見て少し羨ましかったのと同時にほほえましい思いにとらわれたのだ。
「あら?そんなにおかしい?」
澪の母親が澪に押されながらも浩平を見て尋ねた。
「あ、いえ・・・そう言う訳じゃ・・・」
ちょっと困ったような顔をする浩平。
そんな浩平に気がついた澪はそっと母親から離れて浩平の側に寄る。
浩平の上着の袖を掴むと自分の部屋がある二階へと連れて行こうとする。
「あ、それじゃまた後で・・・」
まだ困ったような顔をしている浩平がそう言って澪に引っ張られるままに二階に向かって歩き出す。
「・・・避妊はちゃんとするのよ、澪ちゃん、浩平君」
澪の母親が笑顔を浮かべてそう言う。
階段の方から豪快にこける音が聞こえてきた。
それを聞きながら澪の母親は笑顔のまま、奥の部屋へと去っていった。

澪の部屋は年頃の女の子の部屋っぽい部屋であった。
ぬいぐるみとか可愛い小物とかがおかれてあり、浩平にとっては少々居心地が良くない・・・そんな空間である。
出された座布団に腰を下ろし、浩平は決まり悪そうに部屋の中を見回していた。
ちなみに澪本人は『お茶持ってくるから待ってて欲しいの』とスケッチブックに書いて下に降りていったきりだ。
「うーん・・・・どうしろと・・・?」
流石の浩平もこの状況ではとまどいをを隠せなかった。 
落ち着き無くそわそわしている。
何気なく本棚に目をやると演劇やらの本が並んでいる。流石は演劇部、と言ったところか。他には手話の本などもいくつか並んでいる。
(俺も少しは覚えた方がいいかもしれないな・・・)
手話の本を見ながらそう思う浩平。
おもむろに立ち上がり本棚に歩み寄ると手話の本を一冊手に取った。ぱらぱらとめくってみる。
「・・・・・・ふっ」
ぱたっと本を閉じ、元の場所に戻す浩平。
やたら爽やかな顔をして座布団の上に座る。
どうやら全く解らなかったらしい。おまけに覚える気力すらなくしてしまったようだ。
「しかし・・遅いな・・・まさかお湯から沸かしているなんて事は・・・」
充分に考えられることだった。
それはそれで澪なりの気遣いなんだろうが・・・待たされる方としてはあまり歓迎したいものでもない。
ハァ・・・とため息をついてまた部屋の中を見回す浩平。
それくらいしかやることがないのだ。
まさか押入とかタンスを開けて中身を物色するわけにもいかないし、かといって本棚は先程見たばかり。ぬいぐるみにいたずらをしたらまたスケッチブックの角で殴られそうな気もする。
「身動きがとれないじゃないか・・・」
ややあきらめたように呟く浩平。
と、その視線がベッドの頭側にある棚で止まった。
そこには何冊ものスケッチブックが並べられている。
浩平の好奇心がうずき出した。
澪が会話用に使用しているスケッチブックとは少し柄の違うスケッチブックが何冊も並べられている。中に一体何が書き込まれているのか。わざわざベッドの頭側にいつもの会話用とはより分けておいてあるのが彼の興味をそそったのである。
そうっと手を伸ばし、そのうちの一番自分に近い側の一冊を抜き取ろうとした時、がちゃっとドアが開いて澪が入ってきた。
わざわざちゃんと『お待たせなの』と描いたスケッチブックを持っているところが彼女らしいと言えば彼女らしい。
へ?と言う感じで浩平が振り返る。
澪はドアを開けたまま硬直していた。
浩平はわざわざベッドの上にのぼって並べられてあるスケッチブックの手をかけている。
澪は手にお盆を持っていることも忘れて浩平に飛びかかっていた。
ご丁寧にちゃんと『ダメなの!!』と描いたスケッチブックを持って。
「お、おい、澪ッ!!」
浩平が慌てた声を上げるがもう遅い。
彼女が持ってきたお茶は見事二人の頭の上から落ちてきたのであった。

浩平はタオルで頭を拭きながら、ちょっとむすっとしていた。
その隣では澪がしゅんとなっている。
「あらあら・・・」
澪の母親はそんな二人を見比べて微笑んでいる。
「とりあえず浩平君、お風呂沸かしてあるから入っていってちょうだい。その間に服乾かしておくから」
「はぁ・・・」
所変わって上月家の居間である。
あの後、入れ立てのお茶(文字通りお茶だった)を頭からかぶった二人のはその熱さに大騒ぎし、その余りものうるささに様子を見に来た澪の母親によってとりあえず居間まで連れて来られたのである。
「それだったら俺よりも澪を先に・・・」
自分の隣でしゅんと小さくなっている澪をちらりと見て浩平が言う。
「あ、大丈夫よ。この子、見た目より頑丈だから」
それを聞いて澪がちょっとむっとした顔を母親に見せる。
「さぁさぁ、早く入ってきて。浩平君が風邪なんか引いたら大変だから」
娘を無視して、浩平を浴室へと案内する澪の母親。
澪はぶすっとふくれたまま、二人を見送っていた。
少しして向こうの方からシャワーの音が聞こえてくるのとほぼ同時に母親が戻って来、澪の前に座る。
それを見た澪の手が複雑な動きを見せた。
いわゆる手話、と言うものである。学校や浩平の前では使わないが家の中では家族の誰もが手話を理解しているため、こちらの方がメインで会話に使われているのだ。
『お母さん、酷いの』
「何言ってるの。浩平君はお客様なのよ?お客様とあんたとならどっちを優先するか解るでしょ?」
澪の手話に対して彼女の母親は普通に口で喋って返す。
特に手話が面倒、と言うことはないだろうが、澪はちゃんと耳が聞こえるからこちらの方が早い。
『でも、折角優しくしてくれたのに・・・』
まるで普段優しくしてないみたいじゃないか、と浩平がいたらそう言ったであろう事を澪は手話で母親に伝える。
「浩平君の気遣いよ。・・・それより、一体何でああいうことになったの?」
そう言った澪の母親の目は好奇心で一杯だった。
どうやら浩平を先に風呂に入れさせたのも事の顛末を澪から聞き出したかったらしい。
それが解った澪に動揺が走る。
あたふたと左右の手を動かすが手話になっていない。
「澪ちゃん、解らないわよ、それじゃ。落ち着いて」
最後の落ち着いての部分のみ、手話でやってみせる。
それを見た澪はようやく落ち着きを取り戻したのか、こくりと小さく頷いた。
『実は・・・』
「実は?」
母親の目が期待に輝いている。
『あのスケッチブックを見られそうになって、慌てて止めようとして、それで・・・』
「・・・何だ、期待して損しちゃった」
理由をちゃんと手話で説明した澪に向かって、本当に落胆したかのようにそう言う澪の母親。
『期待って・・?』
やや引きつった顔で聞いてみる澪。
「浩平君にいきなり抱きつかれたとか襲われそうになったとか、そう言うのだったら面白かったのに・・・」
心底残念そうに言う澪の母親。
それを聞いて澪はかなり引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
「それにしても・・・別に見られてもいいじゃないの。見られて困るようなものなの、あれ?」
『恥ずかしいの』
母親の言葉にそう返して澪は真っ赤になって俯いた。
「だったら何で後生大事に持っているのよ。見られるのがイヤなら捨てちゃえばいいのに」
『それはダメなの!あれは・・・大切なものだから・・・』
せわしなく動く澪の小さい手。
『浩平さんと会えなかった時の心の支えだったから・・・絶対に捨てられないの』
澪はまた俯いてしまった。
それを見て、母親は大きく頷いた。
「うん、我が娘が立派に青春してくれていてお母さんは嬉しいわ」
何か違った方向で納得しているような気がしないでもなかった。
そこに頭からタオルをかぶった浩平が戻ってきた。彼が来ているのは澪の父親のものらしいTシャツである。
「すいません、着替えまで貸して貰って」
そう言って浩平が澪の母親に頭を下げる。
「いいのよ。旦那のとサイズが同じでよかったわ」
浩平を見て笑みを浮かべる澪の母親。
「じゃ、澪ちゃんもお風呂入ってきなさい。いくら頑丈でもそのままじゃ気持ち悪いでしょ?」
母の言葉に頷いて澪が立ち上がる。
そして浩平を見るとスケッチブックを見せた。
『本当にごめんなさいなの』
「いいって。あれは俺も悪かったし、気にするなよ」
浩平はそう言って可愛い後輩の頭を撫でてやった。
それだけで満面の笑みを見せる澪。
「あらあら、本当に仲がいいのね。何なら一緒にお風呂、入ってくる?」
『お母さん!!』
「おばさん!!」
二人が同時に困ったような、それでいて照れたような真っ赤な顔を澪の母親に向け、非難の声を上げた。

シャワーを浴び、ちゃんと着替えた澪が居間に戻ってくるとそこに二人の姿はなかった。
首を傾げていると二階の方から声が聞こえてくる。
何となくイヤな予感を覚えた澪は慌てて二階へと駆け上がっていった。
彼女の予想通り、二人は澪の部屋にいた。しかも、イヤな予感は的中、澪が先程必死になって守ったあのスケッチブックが部屋の中央にあるテーブルの上に全部広げられている。
それを見た澪は真っ赤になって部屋の中に飛び込んできた。
そしてテーブルの角で躓き、豪快にテーブルの上に転倒する。
「わわっ!!」
驚きの声を上げたのは浩平。
しかし、澪はもう気を失っていた。

ふと目を覚ますとベッドの上。
先程こけた時にぶつけたらしい額がズキズキと痛い。
「お、目を覚ましたな」
そんな声がしたので振り返ると、そこには浩平の顔があった。
何やらニヤニヤ笑っている。
ずっと自分の寝顔を見ていたのだろうか、そう思って澪はまた真っ赤になる。
何か言おうと慌ててスケッチブックを探すが手元にはない。
「落ち着けよ。俺はただ澪の可愛い寝顔をじっと見ていただけだから」
それが彼女にとって一番恥ずかしかったのだが浩平はそのことに気がついていない。
澪は真っ赤になったまま俯いてしまう。
そんな澪の頭に手をやって撫でてやりながら浩平は優しい笑みを浮かべた。
「・・・俺がいない間、随分寂しい思いをさせてたみたいだな」
浩平の言葉に顔を上げる澪。
「あの1年、お前がずっと寂しそうなのを耐えるようにしていたっておばさんが言ってた。全部俺のせいなんだよな。悪い」
そう言って頭を下げる浩平。
澪はふるふると首を振った。
手を動かそうとして、浩平には手話が通じないことを思い出す。スケッチブックも側にない。伝えたいことがあるのに伝えられない。それが悲しくて、急に目に涙が浮かんでくる。
(そんなこと無いの。浩平さんが悪いんじゃないの)
そう言いたかったのに。
口をぱくぱくと動かすが声は出ない。
そんな澪を見て、浩平は小さく頷いた。
「少しの間聞いていて欲しいんだ。・・あのスケッチブック、悪いとは思ったんだが見せて貰った。お前がずっと、どうやって寂しさに耐えていたかよく解った。だからここで約束する。俺はもうずっとお前の側にいる。あんな寂しい思いはさせない」
そう言って浩平は澪の身体を抱き寄せる。
「お前は俺をこっちの世界に繋ぎ止めてくれたんだ。そのお礼もまだだし・・・それに何より、俺がお前の側にずっと居たい。お前をずっと見守っていたい。この先も。出来るなら一生」
抱きしめられている澪から浩平の顔は見えなかったがあれだけ恥ずかしい台詞を言ったのだ、真っ赤になっているに違いない。
普段こういう事を言わない浩平だから澪は素直にその言葉を信じることが出来た。
そっと自分も浩平の背中に手を回そうとして、ふとあることに気付く。
(お母さんが居ないの・・・)
背中に回そうとした手を浩平の肩に乗せ、浩平の身体を押しのける。
「澪?」
怪訝そうな、悲しそうな顔をした浩平が澪を見る。
澪は浩平に向かってしーっと人差し指を口に当てて見せ、部屋の中をぐるりと見回した。
そしてベッドから静かに降り、そっとタンスに近寄り、一気にタンスのドアを開いた。
「あら・・?」
そこには何故かビデオカメラを構えた澪の母親の姿があった。
「おばさん・・・?」
引きつった顔を澪の母親に向ける浩平。
「まさか、ずっとそれで・・・・」
「浩平君、澪をよろしくね。この子、結構頑張りやさんだからきっと浩平君のいいお嫁さんになるわよ。この私が保証するわ」
「は、はぁ・・・」
明らかに問題をずらしている澪の母親。
流石の浩平も何も言えなかった。あの恥ずかしい告白シーンをずっと撮られていたのだ、気が動転していてもおかしくはない。
しかし、無言で怒りをこらえている者が一人いた。
澪である。
無言で肩を震わせながら俯いている。
「・・あら・・澪ちゃんもしかして怒ってる?」
澪は答えない。
黙ってゆっくりと顔を上げていく。
真っ赤な顔、目には涙すらたまっている。
流石に澪の母親も可哀想に思ったのかそのまますごすごと澪の部屋から出ていった。
ドアを閉める直前、浩平の方を見、ウインクして見せたのは彼女なりの愛嬌だったのか。
母親が出ていったのを確認すると、澪は浩平の背中にダイブしてきた。
「うわっ!!」
いきなりダイブされて浩平はベッドに押し倒される。
澪は嬉しそうに浩平の背に頬擦りしていた。
「いきなり飛びかかるな!!」
浩平が文句を言うが、澪はそのまま嬉しそうに何時までも頬擦りを続けていた。

陽がだいぶんと傾き、空はすっかり夕焼けで赤く染まっている。
澪に見送られながら玄関まで出てきた浩平は外に出たところで振り返った。
「まぁ、色々あったけど今日言ったことは本当だからな。だからもう少し待ってろよ?」
そう言って浩平は思いだしたように手を動かした。
それを見た澪がまた真っ赤になる。そして、何かを決意したかのように浩平を見上げると素早く両手を彼の肩に回すように飛びついてきた。
「お、おい!」
慌てて受け止める浩平。
澪は自分が受け止められたのを知るとすっと浩平の唇に自分の唇を重ね合わせた。
少しの間互いの唇を重ねていたがやがて浩平のほうから唇を離した。
「澪・・お前なぁ・・・誰が見てるか解らないのに・・・」
照れたようにそう言う浩平だが、澪はにこにこしている。
諦めたかのように浩平はため息をつくと、澪を降ろした。
その澪の手が動く。先程の浩平と同じように。
それを見た浩平が今度は真っ赤になった。
「お前・・・このっ」
浩平はそう言うと、澪を引き寄せ、その頭をくしゃくしゃとやや乱暴に撫でてやった。
嬉しそうな澪の笑顔。
浩平も同じように、嬉しそうな顔を浮かべていた。
それから二人は向かい合わせになって同時に手を動かした。
まるでそれが約束事のように。
当たり前のように。
音声で発せられる言葉ではなく、それはこう語っていた。
『私は、貴方を、愛しています』


後書き
作者D「えー・・何と言いましょうか、オチが弱いのは私のSSではよくあることでして」
ななぴー「(無言で殴る)」
作者D「ぐはっ!・・いきなり殴るなんて酷いと思われますが?」
ななぴー「あんたの場合特に酷くないってかおりんが言っていたわよ」
作者D「何時知り合いになったんだ、お前ら?」
ななぴー「乙女の情報力を甘く見て貰いたくないわね」
作者D「全く関係ないと思うが・・・・」
ななぴー「とにかく!何よ、この甘い展開は!!」
作者D「そう言うのを目的に書いたSSですが?」
ななぴー「だいたいあの折原がこんなにいい性格なわけないじゃない!!」
作者D「・・・ああ、そう言うことか。解りました。次はななぴーの番って事で」
ななぴー「は?」
作者D「イヤ、だから羨ましいんでしょ?」
ななぴー「な・・・・・そんな訳無いじゃない!!!」
作者D(明らかに動揺しているじゃないか。うむ、これはもしかするとかおりんよりやりやすいかも)
ななぴー「(ぴしっと木刀を作者Dに突きつける)今何か不遜なこと考えたでしょ?」
作者D「い、いえ、そんなことは全く、何処にもそう言う考えが存在したという形跡はなきにしもあらずって事で・・・」
ななぴー「どっちかはっきりしろぉぉぉぉぉっ!!」
作者D「やっぱりこういうオチかぁぁぁぁぁ!?」

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