毎度おなじみ夜の学校である。
 そう、夜の学校と言えば彼女の出番である。
 さて今夜の彼女は・・・何故か何時も持っている西洋刀の代わりにダンベルを持って廊下を走っていた。
 何をやっているんだろう・・・?
「・・・ダイエット」
 ・・・納得・・・。

お暇な夜の過ごし方ぱーと2

 魔物が出ていた頃は毎晩かなりの運動量だったので特に問題など無かったようなのだが魔物がいなくなってからもあの佐祐理さんのお弁当を食べていたら流石に体重が増えてしまったらしい。
「何か凄く納得できてしまう話のような気がするぞ」
 俺がそう言うと舞は例によって俺にチョップを喰らわせてきた。
 ぽか。
「イヤ・・・佐祐理さんのお弁当、結構量あるだろ?あれを毎日食べていたらそりゃ太りもすると・・・」
 ぽかぽか。
 二連続チョップ。
「だから・・・あの量を食べてそれで運動をしなければ太ると言うことをだな」
 ぽかぽかぽか。
 三連続チョップ。
 どうやら「太る」という言葉を出すたびにチョップされていることに俺は今更ながら気がついた。
「わかった。もうこれ以上言わない。だが舞、お前の体重が増えたという事実に違いは・・・」
 しゅん。
 鋭い切っ先が俺の喉元に突きつけられている。
 どこから取り出したのか、それ以前に何処に隠し持っていたのかいつもの西洋刀を俺に向かって泣きそうな顔で突きつけている舞がそこにいた。
 よほど太・・・イヤ、体重が増えたことが気になるらしい。
「・・・俺にどうしろと言うんだ?」
 冷や汗をだらだら流しながら俺が聞くと舞はようやく西洋刀を下ろして
「付き合って欲しい」
「俺はお前の彼氏のつもりだったが?」
「そうじゃない・・・だいえっと・・」
 顔を赤くして舞が言う。
 こんな舞はとても可愛い、と俺は思う。もっとも本人を前にして言うと、突っ込みチョップか先程のように西洋刀を突きつけられるので言ったことはないが。
 一度二人きりの時に「可愛い」と言ったことがあったが舞は真っ赤になったまま黙り込んでしまい、その後佐祐理さんが出てきて弁解に苦労した記憶がある。
「よし、とりあえず何から始める?」
 俺がそう言うと、舞は先程まで手に持っていたダンベルを俺に渡した。
「・・・俺にこれを渡してどうするつもりだ?」
「祐一もやるの」
 ・・・そう言えば俺も最近体重が増えてきたような・・・お昼に佐祐理さんのお弁当、夜には秋子さんの手作り料理・・・運動らしい運動と言えば毎朝の遅刻寸前マラソンのみ・・・これは太っていても不思議はなさそうだ。
「よし、俺も付き合うぞ!!」
 この台詞を俺が後でどれほど後悔する羽目になるとは・・・神ならぬ俺にわかるわけがなかった。

 三十分も走った頃だろうか・・・いい加減両手がだるくなってきた俺が走るのをやめると少し前を走っていた舞も立ち止まり、こっちを振り返った。
「どうかした?」
「両手が疲れた・・・それにふと思ったのだが・・・ダンベルを持って走ることに意味があるのか?」
「・・・前に本で見た」
「それはダンベル体操じゃないのか?ダンベルを持って走るとは書いてなかったと思うぞ?」
 舞の言う本はおそらくこの間佐祐理さんが読んでいた雑誌のことだろう。俺も横から覗いただけだったが確かダンベル体操のことが載っていたような覚えがある。
「・・・佐祐理に聞いた」
「中途半端な知識だな・・・どう聞いたんだ?」
「ダンベルと走るのがダイエットにいいって聞いた・・・」
「体操が抜けてるっ!!!ついでに二つ一緒にするなぁっ!!!!」
 思わず大声で突っ込んでしまう。
「・・・どうして?」
「まず腕が非常に疲れる。おまけに体力の消耗が早い」
「祐一、体力無い」
 ぴしっと俺の方に指を突きつけて舞が言う。
「イヤ、お前がありすぎなんだ」
 俺が反論すると舞は
「祐一の体力がないだけ」
 とにべもなく言い切った。
「・・・とりあえずそれは置いておいて。このままダンベルを持って走っているだけだと何となく両手の筋肉が異常につくだけのような気がするぞ」
「・・・そうかもしれない」
 実際にそうなるかは俺も知らないが。
 とりあえず走るという行為自体は間違いではないが。
 舞が納得してくれたので俺はとりあえずその場に座り込んだ。
「しかし・・・疲れた・・・」
「やっぱり祐一、体力無い」
 座り込んだ俺を見て舞が笑みを浮かべてそう言った。
「アプローチを変えないか?とりあえずダイエットをするならもっといい方法があると思うぞ」
 何となく脳裏に昔見た深夜番組の通販番組が思い出された。
 あの本当に効くのかどうかわからない謎の運動器具達・・・何となく一度試してみたような気がするというのは内緒だが。
 何となくだが・・・誰か持っていそうな気がする。
 そう例えば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



























・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・香里あたりが。



























「で、こんな時間にわざわざうちに来た、と?」
 いかにも不機嫌そうに香里が言う。
 上のわざとらしいくらい長い沈黙は移動を表しているのだった。
 どーだ、参ったか。
「あのね・・・今何時だと思っているの?」
 香里が目を閉じて、いかにも怒りをこらえてますって顔で俺に言う。
「もうそろそろ午前0時になろうとしているな」
「普通、こんな時間に来る?」
「普通は来ないだろう」
「だったら・・・」
 なんか香里のこめかみの辺りがぴくぴくしているのがわかる。
 これはもしかすると相当怒っているかもしれない。
「もしかしなくてもそうだと思う・・・」
 俺の後ろに立って居る舞が小さい声でそう言った。
 あの舞が俺の後ろに隠れている・・・それだけで今の香里が放っているオーラがわかっていただけるだろう。
 はっきり言おう、俺も怖い。
 しかし、ここで挫けるわけにはいかない。
「香里に頼みがあって来たんだ。そう怒らないでくれ」
 俺がそう言うと、香里はやや怒りのボルテージを下げて俺をじっと睨みつけた。
「こんな時間に来たんだからくだらない頼みだったら承知しないわよ」
「実は・・・」
「実は?」
「香里・・・」
「何よ?」
「お前の持っているダイエット用器具を是非貸して欲しい」
 俺がそう言った次の瞬間。
 すっと香里の顔に笑みが浮かび、そして・・・その右手が光よりも早く電光のように走った。
 強烈なアッパーカット。
 その一撃を食らった俺が吹っ飛ばされる。
 俺が地面に倒れるのと同時に香里がドアをばんっと叩きつけるように閉めた。
「・・・祐一、生きてる?」
 何時の間に待避したのか、舞は美坂家の門柱の影に隠れていた。
「フッ・・・やはり自分のダイエットの秘密を明かす気にはならないか・・・」
 俺が夜空を見上げながら(倒れたままだったので)そう呟くと、二階の窓が開き、香里が重たそうな辞書を投げつけてきた。
 その辞書が俺の腹にまともに直撃する。
「ぐはっ・・・」

「とりあえずアプローチの方法を変えよう」
 再び学校である。
 俺と舞は命からがら美坂家からの離脱に成功していた。
「祐一が余計なことを言うから・・・」
「ううむ・・・香里ならばきっとあのボディを維持するのに色々とダイエット器具を使っているような気がしたのだが。まぁ、いい。で、今度は、だが」
 俺がそう言うと舞が少しだけイヤそうな顔をした。
「まだやるの?」
「お前が誘ったんだ。意地でもやるぞ」
 俺は決意も新たにそう言うと、何かいい方法がないか考え始めた。
 何となく脳裏に秋子さんと名雪の姿が浮かんだ。
(よく考えれば名雪はともかく秋子さん、名雪を産んでいてあの身体だよな・・・もしかしたら何か・・・・)
 そこまで考えて、唐突にものすごくイヤな予感がしたのでやめる。
 何となく聞きに行ったらオレンジ色の甘くないあのジャムを勧められるような気がしてならない。
「残念」
 不意に秋子さんの声が聞こえたような気がして、びくっと俺が振り返る。
「祐一、どうかした?」
 急に後ろを振り返った俺を不審に思ったのか舞が首を傾げている。
「・・イヤ、なんでもない・・」
 俺は何となくげっそりとした面もちで答えた。
「誰か何か良いダイエット用器具を持ってないかな・・・」
「お任せ下さい〜」
 いきなりどこかで聞いたことのある声が聞こえてきたので、俺が声のした方を振り返ると、そこにはなんと佐祐理さんが居た。
「どわわっ!!」
「はへ〜〜〜」
 俺と同時に驚いたような声を出す佐祐理さん。
「ど、どうしてここにっ!?」
 俺が聞くと、佐祐理さんはすぐに笑顔になって、
「何か舞と一緒に佐祐理に内緒で面白そうなことをやっているようでしたから」
「別に面白い事じゃない」
 そう言ったのは舞だ。
 確かにダイエットなど面白いことでもないだろう。
 すると佐祐理さんは泣きそうな顔になってこう言った。
「ふえ・・・もしかして佐祐理、お邪魔かな・・・?」
「と言うか何時の間に?」
 俺がそう聞くと佐祐理さんは今にも泣きそうだった顔をぱっといつもの笑顔に変えて
「はい、つい先程です。舞と祐一さんの姿が家から見えましたので」
「家から見えた・・・」
 俺と舞は顔をつきあわせた。
 佐祐理さんの家から見えるようなところを歩いていたつもりはない。香里の家と佐祐理さんの家はかなり離れているはずだ。
 どう考えてもおかしい。
「佐祐理さん・・・もしかして・・・?」
「はい?」
 笑顔のまま佐祐理さんが俺をじっと見る。
 まさか・・・そんなことはないと思うが・・・でもそうとしか考えられない。
「佐祐理さん・・・まさか、何時も舞を監視しているんですか?」
 恐る恐る俺が聞いてみる。
「あははー、そんなことはありませんよ〜」
 笑って佐祐理さんが否定してくれたので俺は少し安心した。
 もし、本当に監視しているならストーカーではないか。
 そんなことを思っていると佐祐理さんが笑顔のまま、
「佐祐理がしていることは舞に発信器をつけて何時も居場所を確認しているだけですから〜」
 それを聞いた俺が豪快にその場にすっころぶ。
 その一方で舞はキョトンとした顔で自分の首から提げているペンダントを見ていた。
「あ、舞、それが発信器になってるから肌身離さず持っていてくださいね〜」
「わかった」
 納得するな、舞。
 それに佐祐理さん、あなたがしていることは立派なストーカーです。
 何か俺はもう泣きたい気分になってきていた。
「ところでダイエットの話ですよね?」
「そうです」
 泣きたい気分をこらえながら俺が答える。
 舞はしげしげと発信器となっているペンダントを見ていた。
「佐祐理の家に色々とダイエット用の器具がありますからどうですか?」
「本当ですか!?」
「はい」
 それを聞いた俺は今までの泣きたい気分が一気に吹き飛んだような気がしていた。
「よかったな、舞!これでお前のダイエットも完璧だ!!」
 俺がそう言って舞を振り返ると・・・舞はいつの間にか広げられていたビニールシートの上に正座してほんのりと湯気の出ているコップを両手で持っていた。
「・・・・・・」
 思わずまぬけな顔をして俺は舞を見た。
「祐一さんも一緒にどうですか?」
 いつの間にか舞の横に佐祐理さんが座っている。
「・・・えと・・・いったいなんなのでせうか?」
「佐祐理が用意したお夜食です〜。お腹空いてると思って用意してきました〜」
 佐祐理さんが満面の笑顔で言う。
 その横では舞が早くもお箸を持って例によって重箱に詰められている夜食を食べ始めていた。
「祐一さんの分もありますよ〜」
 そう言って佐祐理さんが俺を手招きする。
 佐祐理さん、今俺、ダイエットの話しましたよね?
 あなたの笑顔が・・・今はとても・・・邪悪に見えてなりません。
 でも・・・俺もその夜食の誘惑に勝てなかったのだった・・・。

 後日・・・。
「あはは〜。何か祐一さん、ぷっくりしてきましたね〜。あ、舞も同じだ〜。一緒ですね〜」
 佐祐理さんが何が嬉しいのか凄く笑顔を浮かべて言う。
 俺と舞は・・・あれから佐祐理さんの家でダイエット器具を試したのだが、その後に佐祐理さんの用意してくれる料理を食べて更に体重を増やしていた。
 佐祐理さんに悪意はないと思う・・・思いたい・・・そうですよね?

「祐一、またやるから」
「今度は佐祐理さん抜きでやろうな・・・」
 また夜の学校で俺達の戦い(?)が始まる・・・。


後書き

作者D「またやってしまいました・・・書かないだろうと思った舞SS第二段」
かおりん「確信犯的に書いていたくせに」
作者D「何となくネタが浮かんだんだもん。と言うことで第二段だ」
かおりん「と言うことはネタが出来たらまた書く、と?」
作者D「まぁ、そう言うことになりますね。と言うことでまたネタを探しに行こう」
かおりん「何処へ?」
作者D「えいえんの世界へ」
かおりん「いってらっしゃい。二度と帰ってこなくていいわ」
作者D「止めてくれないのか!?」
かおりん「止める理由がないもの」
作者D「ひ、ひどいわ・・・(涙)」
かおりん「とりあえずダイエットしなさいよ、あんたも」
作者D「真剣に命の危険を感じたらする事にします。では今回はこの辺で」
かおりん「読んでくれた皆様、ありがとうございました・・・って落ちはないの!?」
作者D「SSもそうだが、落ちなどないっ!!!!」

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