・・・はっ!ここは・・・前書きのスペース?と言うことは・・・
かおりん「今まで何やってたぁぁぁぁぁっ!!」
すぱこーーーーんっ!!!(SE)
あうう・・・お久しぶりです、かおりん様。お願いですからその竹箒で殴るのはやめてくださいませ。
かおりん「前編を書いてから何カ月経っていると思っているのよ!!」
・・・8月ですね、前編がアップしたの。
かおりん「今は12月よ・・・4ヶ月も何やっていたの?」(作注:書き始めたのが、です)
え〜・・・とりあえず胸ぐらつかんでにっこり微笑まれても困りますが。
かおりん「なにやっていたのかしら?」
すいません、別のSS書いていました。おまけにかおりん様が主役のSSが中途半端で止まっております。
かおりん「これ以外にもあるのかぁっ!!!!」
どかばきぐしゃ(SE)
ぐあああぁぁぁぁぁぁ・・・・・。

魔法少女ろじかるかおりん−激闘編−
第二話「商店街に走る白い影」後編

前回の騒ぎから数日後のことである。ある朝、美坂香里が登校すると珍しいことに校門のところで親友の水瀬名雪とその従兄弟の相沢祐一の姿を見つけたので駆け寄って声をかけてみた。
「おはよう、名雪。ついでに相沢君」
「俺はおまけか?」
そう言って苦笑する祐一。その隣に並んでいる名雪は眠たそうな顔をして香里を見ていたが、いきなりガクッと首を下に落としてしまう。
「・・・またか」
そんな名雪の様子を見て、祐一は苦笑を浮かべると彼女の頭に手を置いた。
「お〜い、名雪〜、起きろ〜」
言いながら少々手荒に名雪の頭を前後左右に揺する。
「うにゅ〜・・・地震だお〜」
名雪がそう言うが、まだ目は開かない。居眠りしているときと同じ、糸目になったままだ。
「・・・・ねぇ、相沢君」
「聞くな」
「名雪の操縦方法、心得ているのね・・・」
「長い付き合いだからな。とりあえずこの状態でも学校まで来ることが出来るというのは新発見だ。今度から起きないときはこうしよう」
そう言って一人納得した祐一が頷いているのを香里はため息をつきつつ見ていた。後で聞いた話だがこの日、何故か名雪の方が先に起きだしていたらしく、しかし、頭の方はまだ寝ていたので何とか着替えさせて連れ出してきたそうな。
「勿論着替えは自分でやったんだよ」
「当たり前だ」
お昼休みにいつもの面々が集まってそんなことを教室で話していた。
「本当か、相沢?お前、水瀬さんが寝ぼけているのを良いことにあんな事とかこんな事とか・・・」
「殴るぞ、北川」
そう言いながら祐一がクラスメイトの北川潤の頭を殴る。
「殴りながら言うのは反則だ!」
「ところで北川君。あんな事とかこんな事って?」
北川の祐一に対する抗議をあっさりと遮り、名雪がきょとんとした顔で聞く。
「い?」
一瞬にして表情が強ばる北川。
こういう事にはかなり鈍感な名雪の前であの発言は明らかに失言であった。
「私も聞きたいわね、北川君」
香里も笑顔で名雪に追随する。彼女はただ単に北川が困っているのを見て面白がっているだけだが。
「俺もちゃんとした説明が欲しいぞ、北川君」
わざとらしく祐一が言う。にやにや笑いながら、だ。北川が何を言いたいのかわかっているらしい。わかってないのは名雪だけ。
「く・・・・」
流石に言葉に詰まる北川。当の本人の前でまさか言うわけにもいかないだろう。
「北川君、今なら百花屋のフルーツパフェ一個で許して上げるわよ」
笑みを噛み殺しながら香里が言う。
「じゃ、俺はコーヒーセットで手を打とう」
「相沢〜何でお前まで?」
泣きそうな北川ににやにや笑いのままの祐一。名雪はまだきょとんとした顔で北川を見ているだけだった。
「とりあえず・・・わたしはいちごサンデーかな?」
それでもそう付け加えるのを忘れなかった。

放課後・・・商店街に続く道である。
結局香里達の言う条件を受け入れることで追及をかわす事が出来た北川が泣きそうな顔をして財布の中身を見ていた。
「あきらめろ。あれはお前のミスだ」
「だからといってお前まで便乗する必要があったとは思えないぞ」
「俺はチャンスを逃さないだけだ。あきらめろって」
そう言って祐一が北川の肩を叩く。
そんな二人の少し前を香里と名雪が歩いていた。名雪は今日も部活がないらしい。
「ところで・・・実際のところ相沢君とはどうなの?」
歩きながら香里が名雪にそう問いかける。
「え?」
「だから相沢君とはどういう関係なのかなって」
「わ、わたしと祐一は従兄弟同士なだけだよ〜」
明らかに焦った様子を見せ、顔を真っ赤にして名雪が言う。それを見た香里はここぞとばかりに追求を開始する。
「その反応からすると・・・ただの従兄弟同士って訳じゃなさそうね」
ニヤリと笑って香里が言う。
「い、従兄弟だってば〜」
名雪は必死に誤魔化そうとしているが香里には通じない。
「確か昔はよくこの街に来ていたって言ってたわね。だったらもしかして・・・」
そう言って香里はまじまじと名雪を見る。
見られている名雪はかなり動揺しているようだ。
「な、なんでもないってば〜」
「お〜い、何やってんだ?」
二人の様子が気になった祐一が声をかけてきた。
それに救われたかのように名雪が振り返る。
「な、何でもないよ」
それでも祐一と顔を合わせると途端に真っ赤になる名雪。どうやら香里の言いたいことがその時点で瞬間的に頭の中を駆けめぐったらしい。
「どうしたんだ?いちごみたいに真っ赤だぞ、名雪」
何も知らない祐一がそう言って名雪をからかう。
「う〜・・・祐一〜」
名雪が上目遣いに祐一を睨む。
「はいはい、仲のよろしいことで」
香里がそう言って微笑みを浮かべる。
そうこうしているうちにいつの間にか四人は商店街に入ってきていた。
「そう言えば今日もあゆちゃんいるのかな?」
ようやく回復したらしい名雪が祐一の方を振り返って聞く。
「さぁ・・・どうだろうな。この前、こわ〜い香里おねーさんにさんざんな目に遭わされていたからな。大人しくしているんじゃないか?」
そう言う祐一を香里は半眼で見つめて
「何か私が悪いみたいな言い方ね、相沢君」
「食い逃げはあゆのアイデンティティみたいなもんだからなぁ」
ギロリと祐一を睨みつけて、
「・・・私が悪いと・・・」
「・・・・・・香里は悪くないと思うぞ、うん。なぁ、名雪?」
だんだんと増す香里の迫力に負けてか、祐一がかなり焦ったように言い、名雪を見る。
「そ、そうだね、香里が正しいと思うよ、私も」
名雪も何か凄いオーラを漂わし始めた香里に恐れを抱いたのか大慌てでそう言った。
「まぁ、いいわ。そのあゆちゃんとやらもあれで少しは反省してくれたでしょうし」
香里は焦りまくっている二人を見ながらそう言うと、ため息をついた。
と、その時だ。
「うぐぅ〜、どいてどいて〜」
と言う声が聞こえてきたのは。
思わず頭を抱える祐一と香里。
「あ、あゆちゃんだ」
やけに冷静な名雪の声。と、同時に何かがその三人の間を猛スピードで走り抜けた。しかし、その何かはやや後方に立っていた北川に正面からぶつかってしまう。
「ぐあっ!!」
「うぐぅっ!!」
思わずもんどり打って転がる二人。
「ふむ・・・今日はぶつかってこなかっただけましだな」
祐一はそう言うと、倒れている二人の方に歩み寄った。
「大丈夫か、あゆ?」
「俺の心配はせんのかい!?」
すかさず顔を上げて文句を言う北川だが、祐一はそれをあっさりと無視して、更にとどめの一撃を北川に喰らわせて置いてから倒れているあゆのそばに膝をつく。
ふと、そこで祐一は何かの違和感をあゆに感じ、顔を少しだけしかめた。
「大丈夫か、あゆ?」
「うぐぅ・・・どいてって言ったのに・・・」
涙目の顔を上げるあゆ。
「前を向いて走ると良いと思うよ」
「少なくてもそうすれば前にいる人にぶつかることはないわね」
「そう言う問題でもないと思うが」
祐一は後ろでやや的の外れたことを言っている少女達に苦笑しつつ目の前で半泣きになっているあゆを見た。
「で、今日もやったのか?」
「違うよっ!今日も財布を・・・」
「同じじゃいっ!!」
思わずあゆの頭を殴る祐一。
「うぐぅ・・・」
涙目で祐一を見上げるあゆ。
その時だ、あゆの背中が光を放ったのは。
その光は徐々に白い翼へと変貌し、大きく羽ばたいて、その場に風を起こした。
起こされた風に思わずスカートを押さえる名雪と香里、そして、思いも寄らぬ光景に目を輝かす男二人。
ばきっばきっ。
小気味いい音を立てて香里の拳が二人の頭に落とされる。
「何処見てんのよっ!!」
「男の性だ」
敢然とそう言う北川。
ばきぃっ!!!!
北川の顔面に香里に拳が突き刺さる。
完全に沈黙する北川。
「そうじゃなくって・・・一体何が?」
そう言って祐一があゆの方を見ると・・・背中から白い翼をはやしたあゆがその翼を羽ばたかせてふわふわ浮いていた。
「・・・・おう?」
一瞬硬直する祐一達。
風があゆと祐一達の間を吹き過ぎていく。
ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
沈黙が通り過ぎていく。
「こぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!まぁぁぁぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
永遠に続くかと思われた沈黙を破ったのは昨日のたい焼き屋の親父の声であった。
商店街の遙か向こう側から聞こえてきたその怒鳴り声に、はっとなったあゆが
「ご免ね、また今度っ!!」
そう言って翼を羽ばたかせて、上空へと舞い上がる。
「・・・・・・何、あれ?」
呆然としつつ名雪が祐一に尋ねる。
「・・・・・知るか」
同じく呆然としつつも飛んでいったあゆを見送る祐一。
その横で香里はひくひくと片眉を震わせていた。
「非常識よ・・・非常識にも程があるわ・・・たかが・・・たかが食い逃げのためにそこまで進化するなんて!!!!」
バックにどどーんと言う大波が岩にうち寄せる、そんな感じのオーラを漂わせながら香里が言う。
ほぼ同時に祐一が地面に向かって顔面から突っ込んでいた。
「あゆちゃんって・・すごいね・・」
名雪がどこかうっとりとしたように言う。
「違う・・・それは絶対に違う・・・」
地面から顔を上げた祐一がやけに冷静につっこみを入れる。
「とにかく!」
香里が祐一と名雪の方を振り返ってびしっと人差し指を突きつけた。
「追いかけるわっ!!」
「何でっ!?」
「昨日も言ったわ!食い逃げは悪いことだって!それを徹底的に叩き込んであげるのよ!!」
そう言った香里の目は燃えていた。
バックにも炎が見えているような気さえしてしまう。
「香里〜、ふぁいとだよ」
「がんばれよ〜」
無責任に応援する二人。
何となくこれ以上関わりたくないような気がしていたのだ。
「行ってくるわっ!!」
言うなり猛ダッシュで走り去る香里。
それを見送りながら祐一はため息をついていた。
「流石は正義の味方、かおりんだ・・・」
「祐一、とりあえず北川君起こして百花屋行こうよ」
「お前も結構容赦ないな・・・」
まるで当然のように言う名雪を見て祐一は苦笑した。
まだあの約束は有効だろう。
とりあえず、この場で死んでいる北川を起こすことにする祐一だった。

空をふわふわと飛んでいるあゆは想像以上に見つけやすかった。
意外なほど遅いのだ。
人が歩いているのと同じくらいの早さでふわふわと頼りなく飛んでいる。
しかし、空を飛んでいるので流石に足を引っかけることも出来ないし、ジャンプしても手が届かない。
「や、やるわね・・・」
あゆはまだ何もやっていない。
「どうしようかしら・・・?」
香里がそう呟いたとき、何かがふわりと彼女の目の前を舞った。
「・・・だよもん!?」
「お待たせだよ〜」
大体体長30pほどの妖精、だよもんが香里の肩にちょこんと座る。
「変な気配を感じたんで出てきたんだけど・・・?」
「変な気配・・・もしかして、あれ?」
香里は空を飛んでいるあゆを指差した。
それを見ただよもんが目を丸くする。
「わ〜、おおきな妖精さんだね〜」
「そんなわけないでしょ!!あれはただの食い逃げ常習犯で食い逃げのためにあそこまで進化したとんでもない子なの!」
どっちかというと、そっちの方が無茶があると思っただよもんだが、香里が怖かったので何も言わなかった。
「とにかく、何とかしないと!」
「うう、そうだね。じゃ、ロジカル魔法で」
「・・・!そうね、その手があったわね!」
「じゃ、まず変身して・・・」
「ちょっと待ちなさい」
そう言って香里は肩の上にいるだよもんを両手でがしっと掴んだ。
「何よ、それ、聞いてないわよ」
ぎろっとだよもんを睨みつける香里。
半端じゃなく怖い顔をしている。
「大体あの時は何も無しで使えたじゃない」
「始めの一回目だからサービス」
「・・・あのねぇ・・・」
「変身しないとロジカル魔法は使えないんだよ〜。だから」
「・・・・・・・わかったわ。七千五百八十三万九千二百四十一歩譲って・・・変身でも何でもやってあげるわよ」
あきらめたように香里は言い、だよもんを放した。
「うう、何かやな譲られ方だよ・・・・とにかく隠れよう。見られると余り嬉しくないでしょ?」
「そ、そうね」
だよもんに言われて、香里は物陰へと入っていく。
「はい、これ。渡しておくの、忘れていたから」
そう言ってだよもんが小さな棒状のものを香里に渡す。
「これは?」
「魔法の杖。これがないと何も出来ないんだよ」
もっと早くに渡しておきなさいよ、と心の中で呟く香里。
とりあえずその棒状のものを受け取り、香里はそれを手のひらの上に載せ、目を閉じた。
「で、変身の仕方は?」
「お約束だよ」
にっこり微笑むだよもん。
「・・・・・キーワードね。はぁぁ・・・」
その笑顔を見て、大きなため息をつく香里。
あまり気が進まないらしい。
「変身のキーワードは『マジカルラジカルロジカル、ブライトエターナルシャイニング、マジカルワンドでろじかるかおりん、へ〜んしん』・・・」
だよもんが必死に笑いをこらえながら言う。
「ほ、ほ、ほ、本当に!?」
真っ赤になりながら香里が言うと、笑いをこらえているだよもんが大きく頷いた。
「ほ、本当にこれがキーワードだもん」
「・・・・・・・・・仕方ないわ・・・・何で私がこんな事しなきゃなんないのかしら」
泣きそうな気分でそう言い、手のひらに載せたマジカルワンドを握りしめる。
「マジカルラジカルロジカル、ブライトエターナルシャイニング、マジカルワンドでろじかるかおりん、へ〜んしんっ!!!」
かなり恥ずかしいキーワードである。
それを一言も間違えることなく言い切った香里の手の中でマジカルワンドが光を放った。
その光が香里の全身を包み込んでいく。

ふわふわ飛んでいるあゆは自分を怖い形相で追いかけてきていた香里が居ないことに気がつくとようやく胸をなで下ろし、ほっと息をついた。
「香里さん、怖かった・・・今度捕まったら生きて帰れないかも知れないよ・・・」
酷い言われようである。
もっとも彼女の言う通りではあるが。
「とにかく・・・たい焼きは焼きたてが一番!」
そう言って手にしっかりと持っていた焼きたてのたい焼きの入った紙袋の中に手を伸ばす。
と、その時!
「お待ちなさぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!!」
前方からものすごい声が聞こえてきた。
はっとしてあゆが声のした方を見ると、ちょうど彼女が飛んでいるのと同じ高さにある電柱の上に誰かが立っている。
「・・・一体誰?」
あゆがそう言って、不安げな視線を相手に向ける。
「この世の悪は例え天が許してもこの私が許さない!ご町内の平和と安全を守るため!誰かの声に答えて今参上!魔法少女!ろじかるかおりんとは!この私のことよ!!」
何故かびしっとポーズまで取っている香里ことろじかるかおりん。
変身したことによって何かが吹っ切れたようだ。
ちなみに服装もそれまでの制服と違ってフリルのたくさんついたミニスカートに、ブルーのベスト、白いかわいらしいブラウスになっている。
「魔法少女・・・?」
あゆはかおりんを見て首を傾げた。
「少女って歳でもないような・・・」
その一言を聞いたかおりんのこめかみがぴくっと痙攣した。
「ちょっとそこの食い逃げ娘!一体何がどういうことになって空を飛べるようになったか知らないけど、この私が来たからにはもう観念してさっさとそこに降りて反省しなさい!」
そう言ってかおりんが地面を指で示す。
「うぐぅ・・・」
途端に困ったような顔をするあゆ。
「・・どうしたのよ?」
何となくその不安げな顔が気になったかおりんが尋ねると、あゆは涙目になって
「うぐぅ・・・降りられない」
その一言を聞いて思わずずっこけるかおりん。更に電柱の上から落ちそうになって慌ててバランスをとる。
「今だ!」
そう言ってクルリと反転し、来た方へと逃げ出すあゆ。
「あ、こら!待ちなさいよ!!」
かおりんが慌ててそう言うが、あゆは聞く耳持たずふわふわと遠ざかっていく。
それに対してかおりんは電柱の上にいるだけなので動けない。
「ちょっと、何か無いの?」
かおりんの頭の後ろで隠れていただよもんに聞いてみる。
「何かって?」
「空を飛ぶ魔法とか何か無いの?」
「そんなときこそ、ロジカル魔法だよ」
さらっと言い切るだよもん。
かおりんはうっと押し黙ったがすぐに逃げていくあゆを見て、頷いた。
「やるしかないようね・・・出来ればやりたくなかったけど」
そう呟くと、かおりんはマジックワンドをぎゅっと握りしめた。
目を閉じ、マジックワンドを前に出す。
(この場合・・・あの子を捕まえることが出来ればいいのよね・・・だったら空を飛ぶ必要はないし・・・この距離なら・・・)
「跳べる・・・とすると・・・」
いつの間にか口に出していることも気付かずにかおりんは考え続ける。
「・・・そうね、これしかないわね・・・全身の筋肉、とりあえず足に集中!ジャンプ力を倍増させなさい!!」
次の瞬間、かおりんのからだが光に包まれ、その光が徐々に下半身に集中する。
「いっくわよぉっ!!」
かおりんがそう言って、一度身体をかがめ、ジャンプした。
一瞬、かおりんの身体、特に下半身が異常なまでに筋肉で発達していたのだが誰一人気付くものはなかった・・・・彼女の名誉に関わるので。
あゆは後ろから聞こえてきた大声に振り返ってみた。
すると、かおりんが宙を舞って自分の方に向かってきているではないか!
「うぐぅ!?」
びくっと身を縮めるあゆだが、かおりんはあゆには後一歩届かず地面へと落ちていく。
ずどーんと言う音と共に地面に激突するかおりん。
もうもうと立ちこめる土煙。
「だ、大丈夫・・・?」
ゆっくりと降下して、あゆが問う。
すると、土煙の中からにゅっと手が伸び、あゆの足を掴んだ。
「つ〜か〜ま〜え〜た〜」
土煙の中から顔を真っ赤にしたかおりんが壮絶な笑みを浮かべて出てきた。
顔が真っ赤なのはきっと地面に激突したからであろう。
「もう逃がさないわよ・・・今度こそ、食い逃げが悪いことだってちゃんとわからせてあげるから・・・」
ものすごい笑顔でそう言うかおりん。
「うぐぅ・・・」
ぱたぱたと背中の翼をはためかせるあゆ。
それに伴い、また少しずつ高度が上がっていく。
「逃がさないって言ったでしょ!」
がしっとあゆの足にしがみつくかおりん。
だが、それでもあゆは徐々に上昇していく。
「こ、この子はぁッ!!」
そう言ったとき、またあゆの背中が光を放ち、翼が更に大きくなった。がくんっと上昇するスピードが上がり、かおりんはあっさり振り落とされてしまう。
「な、何?」
あっという間に空高く舞い上がったあゆを見上げてかおりんが呆然と呟いた。
「何・・・今度は・・・私から逃げるために進化したって言うの?」
「ち、違うと思うけど・・・」
だよもんが困ったような顔で言う。
「しかも・・・早い!?」
あゆはびゅんびゅんと風を切りながらかおりんの上空を右へ左へと飛んでいる。
・・・まるで制御不能の飛行機のように。
「かおりん・・・あれ・・・」
「もしかして・・・自分で制御できないのかしら?」
だよもんとかおりんの不安が的中したことを証明するかのように。
あゆは彼女達を目指して突っ込んできた。
しかもかなりの猛スピードで。
「とぉぉぉぉぉめぇぇぇぇぇてぇぇぇぇぇ!!!」
あゆの叫びが聞こえる。
「ひぃぃっ!!」
必死になってかわすかおりん。
だよもんはあゆが通り抜けたときに発生した衝撃波で吹っ飛ばされていた。
「はうう〜〜〜」
かおりんはとりあえず地面に落ちただよもんを拾い上げると、すぐにあゆを追い始めた。

「全くいい出費だぜ」
そう言って百花屋の入り口のドアが開き、中から北川が出てくる。
後ろにはいちごサンデーを食べて満足したらしい名雪と、おごって貰って満足げな祐一がいる。
「まぁ、自業自得とあきらめるんだな」
「水瀬さんはともかく何でお前にまでおごらなきゃならないのかとっても不思議だぞ、俺は」
そう言って北川は後ろに続く祐一を睨んだ。
と、その時、横から猛スピードで飛んできた物体・・・高速機動モードのあゆが北川の背中に直撃した。
吹っ飛ばされ、宙を舞い、地面に激突してぴくぴくと震える北川。
一瞬の出来事に祐一も名雪も言葉が出ない。
一方、ぶつかったあゆは止まることなくそのまま通り過ぎていく。
「おーい、北川、死んだか〜?」
「死んだ・・・」
祐一の声にそう答える北川。
「せ、せめて・・・美坂に・・俺の気持ちを・・」
北川がそこまで言いかけたとき、今度は猛然と走ってきたかおりんが彼の背中を踏みつける。
「ちょっと、今羽根のついた非常識な女の子が通り過ぎなかった?」
そう言ってからかおりんは今声をかけたのが親友の名雪とその従兄弟である祐一だと気付く。
(し、しまったわ!よりにもよってこの二人に会うなんて・・・この私の今まで作り上げてきた冷静沈着、純情可憐、容姿典麗なイメージが・・・)
すぐに二人に背を向けてそんなことを考え出すかおりん。
「え・・・と、あゆちゃんなら多分あっちに行ったと思うけど?」
名雪があゆの飛び去った方向を指差して言う。
祐一は呆然とかおりんの姿を見ているだけであった。
「あ、あの・・・」
名雪がおずおずと言った感じで話しかけてくる。
仕方なくかおりんは振り返って引きつり気味の笑みを浮かべた。
「な、何かしら?」
「あなた・・・誰?」
その名雪の質問にかおりんは一瞬凍りついた。
だが、すぐに引きつった笑みが普通の笑みになり、更ににやけた笑顔になってくる。
(どうやら・・・気がついてないようね!これなら美坂香里のイメージに傷が付かないわ!)
「私は・・・ご町内の平和と安全を守るため!誰かの声に答えて今参上!魔法少女!ろじかるかおりんよ!」
わざわざポーズまで取って答えるかおりん。
相変わらず北川を踏みつけたままではあるが。
それを見た名雪の顔に満面の笑みが浮かぶ。
「わあ・・・祐一、本物だよ!本物の魔法少女だよ!ほら、ほら!」
そう言って隣に立っている祐一の腕を掴む。
「あ、ああ・・・」
何故か呆然としている祐一。
「ね、ね、どんな魔法が使えるの?ろじかるかおりん?」
名雪はとっても嬉しそうにはしゃいでいる。
「凄いよ凄いよ、本物だよ〜。本物の魔法少女だよ〜」
だんだんはしゃぎ方が怪しくなってきている。
猫を見つけたときのように。
「そうだ!折角だから一緒に写真撮ろうよ!祐一、カメラ買ってきて!」
かなり本気そうである。
一方祐一はと言うと、何故か引いていた。
引きつった笑みを浮かべてかおりんを見ている。
そこへ、一度飛び去ったはずのあゆが戻ってきた。
「たぁぁぁぁぁすぅぅぅぅけぇぇぇぇぇてぇぇぇぇ」
半分泣いているような声であゆが言うがドップラー効果のせいで上手く聞き取れなかった。かおりんの後ろを通り過ぎたあゆは、今度は道端の街灯にぶつかって停止した。
ゴキーーーーーーンッ!!と言う大きな音を立てて、ぶつかったあゆはその場にぽてっと落ちる。
よく見ると、背中の更に巨大化した翼が身体全身を覆うようになっており、直接頭を街灯にぶつけたわけではなさそうだ。
「だ、大丈夫か、あゆ?」
恐る恐る祐一があゆに近付いていく。
と、いきなりどこかからかメキメキという音が聞こえてきた。その音は徐々に大きくなり、やがて・・・あゆがぶつかった街灯がぽっきりと折れ、地面にどーんという重い音と立てて倒れてしまった。
それを見て、青くなるかおりん達。
「な、な、な、何よ!非常識よ!!そんなの無しよ!!!」
明らかにパニックに陥っているかおりん。
体当たりで街灯を倒すのを見たら無理もないだろう。
「かおりん、今のうちに・・・」
だよもんがそう言う。
その声を聞いてはっと自分を取り戻したかおりんがさっとマジックワンドを振り上げた。
「光に・・・」
「違う違う」
冷静につっこみを入れるだよもん。
「・・じゃ、どうすればいいのよ?」
「かおりんにしかわからないよ・・・」
肩をすくめるだよもん。
確かにロジカル魔法はかおりんのみが使える魔法で、だよもんにもその詳細はわからない。
どのような力が隠されているか不明なのだ。
「・・・・」
じっとかおりんがだよもんを睨みつける。
その間に気を失っていたあゆがふらりと立ち上がった。
背中の羽根が再び羽ばたき始めるのを見たかおりんはすかさずマジックワンドであゆを思い切り殴り倒していた。

ばきーーーーーーーーーーんっ!!!

思い切り吹っ飛ばされるあゆ。
その姿が空の彼方へと消えていくのを周りにいた人々は呆然と見ていることしかできなかった。
「今度こそ・・・悪は滅んだわ」
しみじみと言うかおりん。
「いいのかなぁ、あれで?」
だよもんがそう言ったがとりあえず無視である。
「わ〜〜〜、凄いよ凄いよ、祐一、見た?凄かったね〜」
何故か大はしゃぎの名雪。
その祐一は名雪に飛びつかれたままで困ったような顔をしていたが、やがてかおりんをじっと見つめる。
そして半眼になって恐る恐る口を開く。
「・・・香里・・・?」
「じゃあ、私はこれで!!!」
祐一が呟くように言った言葉をうち消すように大きな声で言い、かおりんはその場から逃げ出すかのように走り去っていった。
その場に残された祐一は呆然とかおりんの後ろ姿を見送ることしかできなかった・・・。
「あ〜〜〜、写真撮れなかったよ・・」
名雪がそう、かなり残念そうに呟いていた。
「・・・お・・・俺の立場は・・・?」
地面に倒れ、ぼろ雑巾のようになっている北川が呻く・・・が誰も聞いていなかった。

第二話 完
次回に続く

後書き
作者D「実は前編から後編まで書き上げるのに異様なまでの時間がかかっております」
かおりん「前編が書き終わったのが8月。後編を書き始めたのが12月。書き終わったのが4月。何をやっていたのかしら?」
作者D「えと・・・他のものを書いておりました」
かおりん「私のことはどうでもいいと・・・?」
作者D「そう言うつもりはないけどね・・・え〜と・・・とりあえず胸ぐら掴むのをやめて欲しいんですが?」
かおりん「とりあえずそれは置いておいて」
作者D「置いておいて欲しくないなぁ・・・(涙)」
かおりん「今回の魔法について解説して欲しいんだけど?」
作者D「・・・論理的にあれで合っているのかはわからないがとりあえず簡単にイメージして貰うなら『ハイスクール奇面組』にでてきた『筋肉大移動』を参照」
かおりん「・・・・・・」
作者D「ビジュアル的には・・・想像したく無いなぁ、やっぱり」
かおりん「・・・さぁ、死ぬ準備はいいかしら?」
作者D「ああ、何故!?」
かおりん「当然じゃぁっ!!!!」
作者D「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」


戻るわよ 一つ戻るの?

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース