魔法少女ろじかるかおりん−誕生編−


雪・・・が降りそうで、降らない、そんな日のことだった。
その日、彼女は暗い気分で商店街を歩いていた。
(全く・・・身体のことも考えないであの子は・・・!)
はっきり言って彼女は怒っていた。昔からあまり体の丈夫ではない妹のことが、彼女はいつも心配だった。妹のことが好きだからこそ、しかし、今、彼女は妹の存在そのものを否定していた。もうじき、いなくなる妹。これ以上、悲しみたくなかった彼女はそうすることで自分を保とうとしていたのだ。
(本当に・・・・何考えているのかしら・・・)
最近、中庭に制服を着ていない少女が来ている。そして、その子と頻繁にあっている、クラスメイトのこともよく知っている。
(私への当てつけかしら?)
妹がそう言うことをする子じゃないことはよく知っている。
家へと向かう足が何となく重い。家に帰ればまたあの子が待っている。今、あの子にあうのは何ともつらかった。
「はぁ・・・・」
小さくため息を一つ・・・。
その時、いきなり彼女は誰かに突き飛ばされた。
「きゃっ!」
「うぐぅ・・・ごめんなさ〜い!」
彼女を突き飛ばしたらしい、白い羽付リュックを背負った少女が慌ててこちらを振り返り、頭を下げる。そして、またすぐさま走り去っていった。
その場に残された彼女は、呆然とその後ろ姿を見送っていたが、やがて立ち上がるとまたため息をつこうとして・・・また突き飛ばされた。しかも今度はかなり強い力で・・・。
「ひえっ!?」
今度は顔面から地面に倒れてしまう。
どうにもついていない日らしい。倒れながら彼女はそう思った。
「く・・・見失ったか・・・流石は・・・」
彼女を突き飛ばしたらしい男の声がするが、どうやら彼女のことには気がついていないようだ。
彼女は自分の力で立ち上がると、自分を突き飛ばした男をきっと睨みつけようとしたが・・・既にそこには誰も居ず、ただ泥だらけになった彼女を買い物帰りらしい人々が遠巻きに囲んでいるだけだった。
「・・・・・」
彼女は、スカートに付いた埃を手でぽんぽんと払うと何事もないかのように歩き出した。しかし、内心は顔が真っ赤になるほど恥ずかしかった。走って逃げ出さないのは彼女の見栄だったのか?
(何で・・・・私がこんな目に遭わないといけないのよ・・・・)
本当は泣き出したかった。それほど・・・悔しかった。
(あの子がぶつかってこなければ・・・このままシリアスに続けられたのに・・・)
何を言っている?
(そうよ・・・私は学校でもかなりの美人として評判なんだから。頭も良く、美人で聡明、それが私なんだから)
自分でそこまで言うのも・・・凄い自信だ。
彼女の名は、美坂香里。
この物語の主人公・・・である。

商店街を抜け、並木道にはいると、彼女は大きくため息をついた。
「全く・・・ついていない日だわ・・・」
そう呟くと、また歩き出した。
すると・・・ついてない日は何処までもついていないらしい、頭の上に何かが落ちてきた。
見ると・・・真っ白い雪。
どうやら木に上に積もっていた雪が何かの拍子に落ちてきたらしい。
さすがに・・・彼女もキレた。
「何よ!もう、みんなして馬鹿にしてっ!!」
思わず、その木に八つ当たりとばかりに蹴りをかましてしまう。そんなことをすると勿論・・・木の上に積もっている雪がまた落ちてくる。今度もまた雪まみれになる香里。しかし、今度は別のものも一緒に落ちてきたようだった。彼女の頭の上の落ちてきたそれはしっかりと彼女を地面に押さえつけていた。
「いった〜い・・・」
雪と泥にまみれ、顔面から倒れている香里は動かない。
「全く、乱暴だよ〜。これじゃ、ちゃんとした人が居ないと心配だよ〜」
香里の頭の上でそんな声・・・一応、ちゃんと心配そうな声がしている。当の、心配されているであろう彼女はまだ倒れたまま動かない。
「あれ?あれれ?ちょっと、生きてる?」
「生きてるに決まっているでしょ!!さっさとどきなさいよ!!」
いきなりがばっと起きあがった香里がそう言う。その衝撃で彼女の頭の上にいたものはひっくり返ってしまったようだ。
「あら・・・?」
起きあがった香里には、その自分の頭に上に落ちてきたものが何処に倒れているか見えなかった。実際には彼女に後ろ側の雪の中に埋まっているのだが・・・。
「全く・・・これはもうクリーニングするしかないわね・・・」
そう呟くと立ち上がり、身体に積もった雪を払いのける。そして大きくため息をつこうとして・・・・。
「ひどいよ〜。だしてよ〜。」
そんな声が足下からした。
香里は振り返ると、足元を見てみた。何かが・・・雪の中に埋まっているのがわかる。
無視・・・した方がいいかも知れない。そう何かが警告している。しかし、今雪の中に埋まっているものが何かという好奇心もあった。
そっと・・・手を伸ばして・・・その何かをつかんでみる。そして、一気に雪の中から引き出すと・・・・それは・・・身長30センチほどの・・・・背中に透き通った羽をはやした女の子だった。
「・・・・何なの、あんた?」
「それより足持たないで〜。恥ずかしいよ〜。頭に血が上っちゃうよ〜」
その女の子がそう言うので香里は手を離してやった。
すると、その女の子は一生懸命羽を動かそうとしたのだが、雪で濡れてしまっているらしく上手く動かなかった。そのままぼとりと落ちて、また雪の中に埋もれてしまう。
「何やってんのよ、あんた?」
かなり冷たい口調で香里が言う。
「う〜ん、飛べなくなってるよ〜」
泣きそうな声で女の子が言う。
それを見た香里は仕方なさそうに女の子を拾い上げると、またため息をついた。
「ため息ばかりしてると幸せを逃すっていうよ〜」
「悪かったわね」
思わずきっと女の子を睨みつけてしまう。
「ってみんなよく言っているもん・・・」
何となくしゅんとした感じで女の子が言ったので香里は笑みを浮かべて、
「で、あんたは何者なのよ?」
「私は・・・妖精だよ」
「・・・・・・もう一度聞くわね?あなたは何者なの?」
「だから、妖精だもん」
「・・・・・・・・・・・・・もう一度聞くわよ。あなたは」
「だから妖精・・・」
黙り込む香里。妖精と自分のことを言った女の子(身長30センチほど)も黙り込んでいる。お互いに相手の顔をじっと見ている。
それから、二人は同時に大きくため息をついた。
香里は、一体今自分が手に持っているのが何かを把握しかねていた。実際、今目の前にいるのだから、どうにも信じがたいが、それが存在していることは百歩譲って認めよう。しかし・・・妖精と自ら名乗るというのは・・・どうにも信じがたい。と言うか怪しい。
はっきり言って香里はそんなものを一切信じていない。信じることが出来ないのだ。
一方、自ら妖精と名乗った女の子はどうすれば自分のことを信じて貰えるか考えていた。信じてもらわないことには自分がここに来た意味がない。自分の与えられた使命を果たすには、とにかく信じてもらわないと。そして、一緒に使命を果たしてもらわないと。
「あ、あの・・・・」
おずおずと女の子が話しかける。
「ところで・・・あなたの名前は?」
「あ、私はみず・・・じゃなくって・・・だよ・・だよもん。だよもんでいいよ」
「・・・・・だよもん・・・・ねぇ・・・・」
かなり冷たい視線でだよもんと名乗った身長30センチほどの女の子を見る。
「で、そのだよもんさんは一体何者なの?」
「私は・・・だから妖精だよ」
また二人に間に沈黙が訪れる。かなりイヤな沈黙だ。
「・・・え〜と・・・私が聞き違えてなければ妖精って聞こえたんだけど?」
「そう言ったんだよ」
またまた沈黙。
「このままだと話が進まないわ。とりあえず、二億三千五百六十一万八千七百四十九歩譲ってあなたの話を信じることにするわ」
香里がやけに冷静な声で言う。
「ううっ、それって嬉しくないような気がするよ〜」
半泣きになっているだよもん。
「とりあえず信じてあげたんだから感謝して欲しいわね」
「・・・・・ホントにこの子でいいのかなぁ・・・不安だよ〜」
香里から視線をそらせて、小さい声で呟くだよもん。それをしっかり聞きとがめた香里はだよもんをつかむ手にぎゅっと力を込めた。
「ちょっと、今の、どう言うこと?」
「く、苦しいよ〜。手、放して〜」
顔を真っ赤にしてもがくだよもん。それに気付いた香里が手の力を緩めるとようやく解放されただよもんはふうっと大きく息をつくと、香里を見上げた。
「あなたの名前・・・美坂香里って言うんでしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
いきなり自分の名前を呼ばれた香里は警戒心をあらわにした。眉をひそめてだよもんを睨みつける。
「え〜と、あなたに魔法の力を授けます」
かなり棒読みなだよもんだったが香里は全く気付いていなかった。
「・・・・・・・・ええ〜〜〜〜〜!!!」

つづく。


と言うことで後書きみたいなもの

えー、随分長いことかかってしまいました。とりあえず、かなり初期から温めていた「魔法少女(?)ろじかるかおりん−誕生編−」第一章がようやく完成しました。
かおりん「ちょっと!どうして魔法少女の後ろに(?)が入っているのよ!」
・・・少女という年でも無かろうに・・・(ぼそっ)
かおりん「聞こえているわよ」
えー・・・次回につづく伏線です。お許し下さいませ、かおりん様。
かおりん「それに第一章ってホントはこれで終わる予定じゃなかったの?」
長くなりそうな気がしましたのでやめにしました。
かおりん「いつもむやみやたらと長いくせに」
ほっといてくれ。気合いの入れ方が違うんだ。
かおりん「じゃ、私のはどうでもいいと・・・?(怒)」
そう言うわけでもないんですが(あわあわ)
かおりん「まぁ、今回は私が完全主役のようだし、許してあげるわ」
でもきっと他のキャラに食われるんだろうな・・・(ぼそっ)
かおりん「そこっ!ぼそぼそ言ってないでさっさと続き書く!」
は、はいぃ〜!すぐに第二章にかかります〜。
かおりん「だったらよろしい」
ううう・・・かおりん、怖い(涙)



戻るわよ

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース