前書き

・・・はっ!?12月23日じゃないかっ!?
かおりん「そう言えばそうね」
12月23日というと・・・彼女の誕生日っ!!
かおりん「彼女?」
親友だろ?
かおりん「ああ、名雪のこと?」
その通りッ!!と言うことで今日から年内一杯は名雪嬢ご生誕感謝感激キャンペーンを勝手に開催だっ!
かおりん「・・・(汗)」
キャンペーンの第一回目は、こいつだっ!!
かおりん「・・・勝手にしなさい・・・」


名雪嬢ご生誕感謝感激キャンペーン(笑)
「たまにはこんな夜も〜誕生日Ver.〜」

 今日は12月23日。
 私の十八回目のバースデー。
 でも・・・一番一緒にいて、お祝いして欲しい人は朝からいない。そう言えばここ最近バイトしてるって言ってたけど、今日もだなんて・・・ちょっと悔しい。わざわざ私が寝ている間にでていくんだもん。文句も言えないし・・・。
 と言うわけで私は今かなり不機嫌だった。
 明日やることになっている私の誕生パーティ兼クリスマスパーティの準備にも余り身が入らない。
 全部祐一がいてくれないからだ。一緒にいるって約束してくれたのに。そばにいてくれるって約束したのに。今日は起こしてもくれなかったし。思わず香里に電話してそのことを話してしまったけど・・・。
「名雪、怪我するわよ」
 不意にお母さんにそう言われて私は我に返った。
 今、私は台所で明日のパーティ用の料理の下ごしらえをやっていたんだった。手に包丁を持っているのにぼうっとしているなんて・・・やっぱりこれも祐一のせいに違いない。今度ばっかりはいちごサンデーだけじゃ許してあげないんだから。
「名雪・・・今日はもういいから」
 心配そうな声をかけてくれるお母さんだけど私は笑顔を見せて、
「大丈夫。後もうちょっとでしょ?ちゃんと手伝うよ」
「・・・そんなに気になるなら見に行けば?」
「いいんだよ。祐一には後でちゃんと謝ってもらうから」
 少しむっとしたように私は言ってしまう。
「名雪・・・」
 お母さんがやけに真剣な顔をして私を見る。
「あなたと祐一さんがどういう約束をしたかは大体知っています。けれど、祐一さんには祐一さんの事情というものもあるということを忘れちゃダメよ」
「わかってるよ・・・」
 そうは言ったものの私は今一つ納得できてない。お母さんはいつもの表情でまた自分の仕事を再開していた。

「それじゃ行ってきま〜すっ!」
 お昼もだいぶんと過ぎた後、玄関から元気のいい声が聞こえてくる。多分、真琴だろう。そう言えばさっき、同じ学校の後輩(と言ってもそれ程面識があるわけでもないけど)の天野さんから電話があったっけ。真琴は天野さんとは仲がいいから多分遊びにでも行ってくるんだろうな。そんなことを考えながらソファにもたれかかる。 
 明日のパーティの準備もほとんど終わってしまった。このままこうしているとだんだんうとうとしてくる。
「真琴、天野さんにご迷惑をかけちゃダメよ。天野さん、真琴をよろしくお願いしますね?」
「はい・・・わかりました」
 玄関の方からまた声が聞こえてくる。今度はお母さんと天野さんの声。どうやら天野さんは真琴を迎えに来ていたようだ。
「それと真琴、明日はうちでもパーティやるから」
「あう、わかってるよ〜。それまでに帰ってくる」
「いってらっしゃい」
「行って来ま〜すっ!!」
 やたらと元気な真琴の声が聞こえてくる。私は立ち上げると自分の部屋に行こうと歩き出した。
「あら・・・何処行くの、名雪?」
 階段のところでお母さんと会い、そう声をかけられる。
「うん・・・二階。ちょっと寝てくるよ」
 そう返した私の声はもうかなり眠たそうなものだったに違いない。事実、お母さんが微笑んだような気がしたし、その後に
「寝るのはいいけど、明日の朝まで寝るというのはやめてね、名雪」
「ん・・・努力するよ〜」
 たんたんと二階への階段を上がりながら私の意識はだんだんと遠のいていく。せめて部屋にまで辿り着かないと、と思うけど・・・眠りの誘惑にはかなわないかも。
 どうにか二階まで辿り着き、私の部屋のドアの前にまでやってきたとき、何となく隣の部屋のドアを見やってしまった。
「・・・いないから・・・いいよね?」
 一人、そう呟いて私は自分の部屋でなく、祐一の部屋に入っていく。部屋の中は予想以上に整っていた。お母さんが毎日掃除しているせいかもしれないけど、整理整頓されているように見えなくもない。
 そっとベッドに腰を下ろし、横になって祐一が使っている枕に顔をうずめる。なんか祐一の匂いに包まれているような気になって私は少し頬が熱くなるのを感じた。今でも時々、この部屋で一緒に寝たりすることもあるけど、いつも恥ずかしくてなかなか寝付かない。でも今は・・・祐一がいないからか、私は安心してすぐに眠りに落ちてしまった・・・。

 駅前のベンチ・・・七年前、絶望の淵にいた祐一が私を拒絶したベンチ。この街に帰ってきてくれた祐一が私を雪の中二時間も待っていてくれたあのベンチ。お母さんが事故にあって私が絶望の淵にいたとき、それでもそんな私を信じて一日中待っていてくれたベンチ。私と祐一はよくよくこのベンチと縁があるのかも知れない。
 私と祐一が恋人同士になってからもよくこのベンチで待ち合わせをしている。もっとも祐一には私以外の人の思い出もあるようだったけど、それはいつか話してくれると信じているし、祐一は約束を破るような人じゃないことを私もよく知っている。
「あれ・・・?」
 いつの間にかベンチに誰か座っていた。まだ幼い子供・・・髪の毛をおさげにして左右から垂らしている。その手には小さな雪ウサギ。
「・・・・・・」
 私はその子の隣に腰を下ろすと、その子の方を向いてにっこりと微笑みかけた。
「誰か・・・待っているのかな?」
「うん・・・でもきっと来ないよ」
 小さい声でその子が答える。
「どうして?」
「この街とか雪とか、きっと嫌いになっちゃったから」
「誰が?」
「従兄弟の男の子。何か悲しいことがあったんだ。私が支えてあげられると思ったけど・・・やっぱり無理だったみたい」
「・・・そんなこと無いよ」
 私はある確信を持ってそう答えていた。
「多分その男の子は・・・来てくれるよ。あなたがそう信じることが出来るなら」
「・・・・・・出来るかな?」
「出来るよ。きっと、その男の子は遅れることがあっても約束は破らないと思うから」
「うん、・・・そうだね」
 その子はそう言ってようやく笑顔を見せてくれた。
「ありがとうお姉ちゃん」
「ううん、どういたしまして、だよ」
 私もつられたように笑顔を見せる。
「私、待ってみるね。今日は来てくれなくても、いつかきっと来てくれると信じて」
「うん、ふぁいと、だよ」
 そう言って小さくガッツポーズを取ってみせると、その子も私と同じようにガッツポーズを取って見せた。
「ふぁいと、だね」
 その子がそう言って笑顔を浮かべる。
 あの子は私。きっと七年前の私。今の私がいるのは七年前の約束を信じて待ち続けたから。だから・・・あの子もきっと大丈夫。

 ぱっと目が覚めた。薄暗い部屋。自分の部屋じゃない・・・ああ、祐一の部屋で寝てたんだっけ?
 私はベッドから起きあがると目覚まし時計を手に取った。針は午後七時四十五分を指している。ちょっと寝過ごしたかも知れない。
 とにかく起きあがると、一度大きく伸びをしてから祐一の部屋を出る。それから下の階に降りるとお母さんが夕食の準備を終えて、ソファに座ってテレビを眺めていた。降りてきた私に気がつくと、私を振り返り、にっこりと笑って
「おはよう、名雪」
「おはよう」
 私は少し苦笑を浮かべながらそう返した。多分夕食の準備自体はだいぶんと前に終わっていたんだろう。私が起きてくるのを待っていたのに違いない。
「祐一さんは少し遅くなるそうですから先に頂きましょうか?」
「そうだね」
 お母さんがそう言うのに頷いて私はリビングからダイニングに入っていく。
「あれ?」
 テーブルの上には夕食の他に商店街にあるとあるケーキ屋さんの箱が置いてあった。
「お母さん、これは?」
「買い物に行ったときに祐一さんと会ったの。それで折角だから買ってきたのよ」
「祐一ってケーキ屋さんでバイトしてたんだ」
 バイトしている先すら教えてくれないんだもん、祐一って意地悪だよ。そう思いながら箱に手を伸ばす。
「祐一さん、そのケーキ作るお手伝いしていたそうよ。今日は販売をしていたけど」
 お母さんが夕食を温め直しながら言う。箱の中身はいちごのケーキ。それに小さなカードが一枚。この時期ならクリスマスカードが入っているはずなのに、それには「お誕生日おめでとう」と書かれている。そのカードを手にしたまま、私はお母さんの背中に向かって声をかける。
「・・・・お母さん、もうちょっと待ってもらってもいい?」
「どうして?」
「祐一、迎えに行ってくる」
「了承」
 いつもと同じく一秒ででるお母さんの了承。
 私は笑顔で頷くと、すぐに自分の部屋に駆け戻り、コートをつかむと大急ぎで玄関からでていった。
「気をつけてね、名雪」
「うん!行って来ますっ!」
 玄関をでると私はまっすぐ駅前のベンチに向かった。きっと祐一はそこに来てくれる。その確信が何故か私にはあった。

 駅前のベンチには誰も居なかった。
 白い息を吐きながら、そのベンチに腰を下ろして空を見上げる。雪の降り出しそうな厚い雲に覆われた空。月さえも隠してしまっているようだ。寒さに肩をすくめながらしばらく待っていると向こうの方から人影が見えてきて、私の座っているベンチの前で立ち止まりため息をついた。
「また・・・遅れたか?」
 ため息まじりの声。でも私は嬉しかった。やっぱりここで会えたから。
「随分と遅刻だよ、祐一」
 そう言って私がその人影を見上げる。ベンチからじゃ逆光になっててよくわからないけど何となく頬が赤いみたい。
「約束はしてなかったと思うんだけどな」
 いいながら私の横に腰を下ろす。ちょうど、吹いている風から私をかばうように。
「それでも待たせたのは俺か」
「そうだよ。随分と待ったんだよ〜」
 そう、今日は一日中祐一を待っていたんだから。何時もそばにいてくれるって言ったのは祐一なんだから。約束はちゃんと守って欲しいな。
「俺は雪の降る中もっと待たされた記憶があるぞ」
 いつのことを言っているのだろう?ここに帰ってきたとき?それとも、私を絶望の淵から助けてくれたあの時?どちらの時も雪が降っていた。どっちか判断できなかった私はごまかすようにこう続ける。
「それはそれ、これはこれだよ〜」
 ちょっとすねたような言い方。すると祐一は今まで手に持っていた箱を私の方に差し出し、私の膝の上に置いた。
「それじゃ、お詫びだ」
 そう言いながら。
 私の膝の上にある箱は家でお母さんが買ってきたというケーキ屋さんの箱と同じものだった。
「ケーキならお母さんが買ってきたのを・・・」
 私がそう言いかけるのを制して祐一は箱に目をやりこう言った。
「開けて見ろよ」
 私は少し首を傾げながらも祐一の言葉に従って箱のラッピングをといていく。箱の中には少し形の歪んだいちごのケーキが入っていた。
「これ・・・もしかして?」
 ケーキ屋さんでこんな形の歪んだものが販売されるわけがない。私はある種の期待を含んだ目で祐一を見た。
「大変だったんだぞ。バイトが終わってから作り方を教えてもらって、俺一人で作ったんだから」
 そう言って祐一は照れているのか私から顔を背けて頬を指でかいていた。
「少し変な形になったけど、これで勘弁してくれ」
「・・・ううん、充分だよ、祐一」
 祐一がこのケーキを作るのにどれだけ苦労したか目に浮かぶような気がする。元々料理の苦手な祐一がここまでのものを作るのは並大抵の事じゃなかっただろう。だから私は極上の笑顔で祐一を見る。
「あと・・・忘れていたわけじゃないぞ。どうしても空かなかったんだ、予定が」
 またぶっきらぼうに祐一が言う。でも、その言葉の端々に「ご免」と謝っている祐一の感情が見え隠れしている。
「わかっているよ。祐一のこと、信じているから」
 私はそう言うと祐一が私のためにだけ作ってくれたケーキを膝の上からおろして祐一のそばに寄り添った。触れ合った場所から祐一の体温が伝わってくる。それだけで私は幸せだ。
「それと・・・これを言っておかないといけないんだよな」
 祐一はそう言うと、ちゃんと私の方に向き直り、じっと私を見た。そしてゆっくりと微笑んで
「名雪、誕生日、おめでとう」
 その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中は真っ白になった。そして次の瞬間、祐一に飛びついて祐一の唇に自分の唇を重ねていた。
「ありがとう・・・祐一。・・・好きだよっ!」
 
 そんな私たちをまるで祝福するかのように白い雪が降り始めていた・・・というのは言い過ぎかな?

 ちなみにカードに書かれていた内容は、
「HappyBirthday dear NAYUKI and I Love You Forever By YUICHI」

FIN

後書き

あ〜、一気に書き終わりました。時間にして約三時間ほどでしょうか?
かおりん「なんかどこかで見た文章があちこちで見られるけど?」
気にしない、気にしない。世の中気にしちゃ負けと言うことも多々あることだ。
かおりん「それにしても書いてて恥ずかしくなかった?」
ちょっと・・・。
かおりん「今回の目的は何よ?」
とにかく名雪を書きたかった。以上!
かおりん「もう一つのバージョンとリンクしているのは?」
ある意味実験だね。こういうやり方もあるのではないかと。ちなみにあっちは祐一編、こっちは名雪編と言う見方が正解だ。
かおりん「タイトルに偽りがありまくるのはどういう事かしら?」
それも気にしちゃいけないことだと思います・・・うぐぅ。
かおりん「まだまだ、と言う事ね」
そんな事言う人、嫌いです。
かおりん「お前が言うなぁっ!!!!」
どかばきぐしゃ(SE)
終わり方まで同じ・・・?(涙)


戻るんだよ

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