前書き
作者D「去年もやったんだけどね」
かおりん「例のザッピングSS?」
作者D「肯定だ、かおりん」
かおりん「肯定だって・・・またやるの?」
作者D「前の時は偶然だったけど、今回はちゃんと考えてやっています」
かおりん「本当に?」
作者D「・・・多分」
かおりん「はぁぁぁぁ・・・・」


結局去年は夜になるまで会えなかったんだよ。
でもね、わざわざ手作りのケーキくれたし、その夜一緒に寝てくれたり・・ちょっと、何言わせるんだよっ!!
その時のお礼はちゃんとしたよ。誕生日にプレゼントあげたもん。
それだけって・・・それじゃダメかなぁ?
あ、後ね、やっぱりその日の夜一緒に寝ちゃった。
・・・避妊はちゃんとやってるよ〜。子供出来たら・・・それはそれで嬉しいけど、祐一、きっと自分だけで抱え込んじゃいそうだし。
それに学生じゃ子供育てるの大変だと思うから。
お母さんは協力してくれそうだけどね。
もう、何でそんな話になるんだよっ!!
今話しているのは明日の事でしょ?
で、何時に集合するの?
・・・うん、大丈夫だよ。いくら何でもその時間には起きているから。
祐一は・・・多分バイトだと思うし、別にいいよ。それに明後日はうちでもパーティやる予定だしね。
まぁ、祐一とは毎日一緒だからたまにはいいと思うよ。
いくら何時も側にいるって約束していてもたまには別行動して自分の友達と遊びたいしね。
・・・そう、女は女同士でね。
うん、それじゃまた明日ね。
駅で良いから。
それじゃ今日はお母さんのお手伝いしないといけないから、もう帰るね。

(某年12月22日 某大学内喫茶店にて水瀬名雪と記録者の会話より)


らぶらぶはっぴねすDays
HAPPY!HAPPY!!
〜彼氏の思惑と彼女の気持ち〜編


<12月22日19:31PM>
ふんふんふ〜ん♪と何か嬉しそうに鼻歌を歌いながら名雪はバスタオルと着替えのパジャマを持って二階から降りてきていた。これからお風呂タイムのようだ。
お風呂に続く洗面所のドアを開けようとした時、リビングからこの家の居候1号、名雪の従兄弟、幼なじみ、大学の同級生、そして恋人まで兼任している相沢祐一が顔を見せた。
どことなく疲れたような顔をしているのは彼がここ数日毎日のようにバイトに勤しんでいるからに違いない。それにあわせて・・・彼と同じくこの家に居候している(と言っても祐一も彼女たちも家族同然なのだが)沢渡真琴と月宮あゆの二人の勉強も夜遅くまで見てやっているからであろう。
この二人が突然勉強すると言い出した理由を名雪自身はよく解ってない。だが、折角やる気を起こした二人の為に名雪も協力を買って出たのだ。しかし、彼女の持っている悪い癖(本人がそう認識しているかどうかは不明だが)・・・いわゆる眠り姫の病が未だ治っていず、その為に彼女は何時も早めに寝てしまうので結果的に二人の勉強は祐一が見る事になってしまっているのだ。
流石に祐一に悪いと思っているのか、名雪も休日などはこの二人の勉強を見ているのだが、その教え方は祐一とは違って容赦のないやり方だった。
真琴はやり出してもすぐに飽きてしまい、別の事をやろうとしたり、少しでもわからない問題があるとすぐに投げ出してしまったり。あゆはあゆですぐに「うぐぅ」と言って涙目になって人を頼ろうとしたり。
これが祐一ならばまだある程度怒ったりもするが、それなりに優しく対処したりもするのだが、名雪はその辺が容赦なかった。
普段の彼女からは考えられないが、容赦なく真琴の頭を丸めたノートで殴ったり、あゆには冷たい視線で答えたりと。その為に彼女たちは自然と名雪よりも祐一に勉強を見て貰うことが多くなってきたのだ。それがまた名雪にとっては面白くないらしく、二人が仕方なさそうに名雪に勉強を見てもらいに来るとついつい意地悪してしまう名雪なのであった。
「名雪、今から風呂入るのか?」
祐一がそう言ってきたので、名雪は大きく頷いた。
「・・・そうだ、祐一も一緒に入る?」
笑顔でそう言うと、祐一は真っ赤になって慌て手首を左右に振った。
「ば、ば、ば、馬鹿言うな!!秋子さんもあゆも真琴もいるんだぞ!!」
「え〜、でも〜・・・最近祐一、バイトとか忘年会とかでなかなか一緒にいてくれないでしょ?だ、か、ら」
そう言って名雪は祐一にすり寄っていく。
祐一の胸にぽんと額をくっつけすりすりと擦る。
「たまには一緒にお風呂とか良いかなって思うんだけど・・・」
「一緒にお風呂も良いけど避妊だけはきっちりとやるのよ、名雪、祐一さん」
そう言って二人のすぐ横を秋子さんが通り過ぎる。
「それと真琴とあゆちゃんに悪影響を与えるからあまり二人の側で変なことをしないこと。良いわね?」
何時もと同じくにこにこしながら通り過ぎ、リビングに入っていく秋子さんの背中を二人は呆然と見送っていた。
「・・・お母さん、何時外に出たのかな?」
「俺もリビングに居るんだとばかり思ってた・・・」
二人は顔を真っ赤にしたままそう言いあった。
「・・そうだ、忘れるところだった。話があるんだけど良いか?」
「良いよ?何?」
「イヤ、風呂上がってからでもいい。俺、リビングで待ってるから忘れるなよ?」
「どうせなら一緒に入ったらいいじゃない?中で話聞くよ?」
名雪が悪戯っぽくそう言うが、祐一はまた赤くなって首を左右にぶんぶんと振る。
「馬鹿、今秋子さんに言われただろ!!じゃ、待っているからな!」
祐一は慌てて名雪から離れるとリビングに戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら名雪はちょっと残念そうな顔をしながら脱衣所のドアを開けた。

<12月23日19:47PM>
お風呂から上がってほかほかの状態の名雪はかなりご機嫌だった。
このままベッドに入ればいい気分で明日の朝までぐっすりと眠れるだろう・・・もっとも、何時もそうなのだが。
階段を上がりかけて、ふと祐一に呼ばれていた事を思い出す。
「何の話かな?明日の事だったら別にいいのに・・・」
そう呟きながら登りかけた階段を下り、リビングに向かう。
ドアを開けると祐一はソファにぐったりともたれかけて今にも寝てしまいそうな顔をしていた。その側には真琴もあゆもいない。いつもならまだここでテレビを見ているはずなのだが、今日に限って二人ともその場にいなかった。それに安心したのか、名雪は眠たそうな祐一の隣にちょこんと腰を下ろした。そして祐一の顔を覗き込み、口を開く。
「祐一、話って何かな?」
「・・・ああ、明日なんだけどな・・・」
少しの沈黙の後祐一が切り出した。おそらく眠たいのとあまりいい話じゃない事の、両方の所為だろう。名雪は勝手にそう結論づけると出来る限り祐一に気を遣わせないよう、自分から話を持っていく事にした。
「明日?」
そう言って小首を傾げて見せ、それからぽんと手を打った。
「あ、忘れてたよ。明日、私も用事があるから気にしなくてもいいから」
「は?」
祐一がぽかんと口を開けたが名雪はそれに気付かずに続ける。一方の祐一は完全にあっけにとられて何も言えない。
「ほら、去年は祐一がいなくって色々とあったから・・・ゴメンね、祐一が何時も一緒にいてくれるって言ってくれたからちょっと甘え過ぎちゃってたよ。祐一には祐一の都合ってものがあるのにそれを無視して自分の事ばっかり言って・・・お母さんに怒られちゃったんだよ」
これは名雪の本心であった。
確かに祐一はずっと側にいてやると宣言してくれたし、その時の言葉を記録した例の目覚まし時計も大切に保管している。だからといって祐一の自由を束縛しても良いわけではない。
事実祐一は名雪の側にいると言ってもそれなりの節度を持って接している。名雪のプライベートな部分にはある程度間をおくし、彼女が大学でまた陸上を始めた事についても何も言うことなく、それ以上に応援すらしている。
なのに、名雪は祐一が側にいないとすねたり、不機嫌になったりと彼を束縛するような事ばかりやっている。それで周りを困らせた事だって少なくない。そのことを秋子さんから何度となく注意されていたのだ。
「そ、そうだったのか・・・」
感心したように呟く祐一。実際には呆然としているだけなのだが。
「今年も祐一、ずいぶん前からバイトとかで忙しそうだったでしょ?だから、今年の誕生日は香里とか大学の陸上部の子達と一緒にパーティやろうって話になってたんだ。ゴメンね、言うの忘れてて」
それを聞いた祐一はいささか呆然としながら頷くばかりである。
名雪は未だ祐一の様子に気付いた様子もなく続けていた。
「24日は毎年恒例のクリスマスパーティだし、その日は一日いるから。ゴメンね、祐一。だから今年もバイト、頑張ってね」
名雪は笑顔を浮かべて祐一にそう言った。
祐一にはちゃんと理由を言ったし、私の気持ちもこれならわかってくれたはず、と名雪は信じ切っていた。
その祐一はただただ頷いているだけであった。
「それじゃ、お休み、祐一」
名雪はそう言うと、祐一の頬に口づけをしてから自分の頬をやや赤らめながら立ち上がった。こんな事が出来るのも真琴やあゆがいないからである。
だが、口づけをされた方の祐一は何故か真っ白に燃え尽きていたのであった。

<12月22日21:42PM>
ぷるるるるるる・・・ぷるるるるるるる・・・がちゃ。
はい・・・名雪だお〜。
・・・にゅう・・・寝てた・・・。
ん・・・大丈夫だお〜・・・。
元々こういう声だよ〜。
酷い事言うんだね。
で、何?
・・・不機嫌そう?
うん、確かに不機嫌かも知れないね。だって寝ていたところを無理矢理起こされたんだもん。不機嫌にもなるよ。
・・・え?
違うよ〜、ケンカなんかしてないよ。する理由がないもん。
・・・明日の事で?大丈夫だよ、ちゃんと話したから。それに祐一は優しいからきっと許してくれるし。
・・・それが甘えてるって?
うん、そうかもね。でも少しくらいいいと思うけど。
・・・別にのろけている訳じゃなくて〜。
だから違うって〜。
で、何なの?
この時間に私がもう寝ている事が多いって知っているじゃない。その上で電話してきたんだよね?
・・・忘れてた?
もう、睡眠不足になっちゃうよ。
・・・ほっといて。寝る子は育つって言うでしょ?
ん・・・確かに。
そんな酷い事言うならもうノートとか見せてあげないよ?
・・・確かにそうだね、あははっ。
うん、大丈夫。
駅前に12時だよね?
・・・寝坊なんかしないよ〜。
・・・祐一?多分バイトだと思う。ちょっと疲れてるみたいだけど。
・・そんなことしてないってば〜。
もう。
用はそれだけ?
じゃ、切るよ?
うん、お休み。
がちゃ。

(水瀬家 名雪の部屋にて記録者との携帯電話での会話より)

<12月23日11:12AM>
「名雪〜、そろそろ時間だよ〜」
リビングから真琴の声が聞こえてくる。
当の名雪は洗面所で慣れない化粧に悪戦苦闘中だった。祐一もあまり何も言わないし、秋子も特に何を言うわけでもないので名雪はあまり化粧などはしない方である。もっともそんな時間がないから、と言う説の方が濃厚だが。とにかく、この日は珍しく先程からずっと洗面所にこもって慣れない化粧に挑戦中の名雪だった。
「う〜、上手く出来ないよ〜」
やっぱり親友である美坂香里に手伝って貰うべきだったか。それとも祐一を起こして見て貰うべきだったか。香里には何となく頼めなかったし、祐一はどうした事か今日はまだ起き出してきていない。いつもならとっくに起きていて、名雪を起こすのが祐一なのに。つまり今日は起こしてもくれなかった、と言うわけで、何となく寂しい名雪であったが祐一もここ最近お疲れのようだったからたまには仕方ないか、と思って諦めていた。
「もう、これでいいや。後は口紅口紅・・・」
とりあえずは納得出来たらしい(もっとも半分以上あきらめが入っていたような感じもするが)ので最後の仕上げとばかりに口紅を取り出す名雪。
名雪だって年頃の女性だ、こういうものを持っていても不思議ではない。
「これで良し、と」
口紅を綺麗にひきおえると名雪は洗面所からリビングに移動した。
リビングでは部屋の中央にあるテーブルに何かを広げてあゆがしきりにうんうん唸っている。その横で真琴は折り紙を使って輪っかを大量にこしらえていた。
「二人とも、大丈夫?」
名雪が声をかけるとあゆも真琴も名雪の方を見た。
基本的に名雪はいつものおっとりとした優しい性格である。祐一さえ絡んでこなければ二人に対してもそれは変わりない。そう、祐一さえ絡んでこなければ、の話だが。
その辺はこの二人もわかっているらしく、普段は仲がいい。
「ン〜、大丈夫・・・だと思う」
あゆは名雪を見ずにそう言う。
この二人、実は明日行われる予定の水瀬家クリスマスパーティの飾り付け係を秋子さんから任じられているのである。もっぱら何をどうするかを考えているのはあゆだけで真琴は先程からせっせと飾りを作っているのだが。
「名雪〜、時間〜」
真琴が作業を続けながら言う。
「いけない!!じゃ、二人とも、頑張ってね!」
名雪は時計を見て時間を確認してからそう言うと慌ててリビングを飛び出していった。
玄関で靴に履き替え、ドアに手をかけながら振り返る。
「それじゃ行ってきま〜す」
時間が危ないというのに余り緊張感のないのんびりとした声でそう言うと名雪は約束してある場所へと駆け出していった。

<12月23日19:37PM>
既に陸上部主催のクリスマスパーティは二次会に突入していた。
女性ばかりだからと言う事で比較的早い時間から始められた所為である。
中には陸上部と関係のないものも多少いたが、誰もその辺の所を気にしてはいなかった。
「それでは我が陸上部期待のホープ!水瀬名雪の誕生日を祝って、7度目のカンパーイッ!!!」
すっかり出来上がってしまっている陸上部の部長(勿論女性)がそう言って手に持っているジョッキを一気に煽る。
次々と巻き起こる拍手。
皆、かなり出来上がっているようだ。
「ね、ねぇ、名雪、あの人大丈夫なの?」
小声でそう耳打ちしてきたのは美坂香里だった。
名雪の親友である彼女は特に陸上部に関係があるわけではなかったが、名雪に誘われてこのパーティに参加しているのだった。
「大丈夫だと思うけど・・・新歓コンパの時もかなり飲んでいたけど次の日、平然と部活していたから」
「いわゆる酒豪って訳ね」
香里はやや呆れたような、驚いたような顔をして呟く。
と、そこにその部長さんがやってきて、二人の肩を抱いた。
「おー、水瀬に水瀬の親友!!飲んでるかー!?」
「部、部長、一応私達未成年なんですけど・・・」
少し困ったように言う名雪。
「かまわんかまわん!!この部長のあたしがそう言っているのだから飲んでも問題なーしっ!!」
むちゃくちゃな理屈である。
香里はそう思ったがあえて口に出す事はなかった。
「さぁさぁ、そこに君!美坂君と言ったかな?君ももっと飲みたまえっ!!」
部長さんがそう言って香里の手にあるグラスに盛っていたビール瓶からビールを豪快に注ぎ込む。
「あ、あの、私も未成年・・・」
香里が言いかけるが部長さんは物凄く期待した目で香里をじっと見ている。
仕方なく香里はグラスに口を付け、一気に飲み込んだ。
「わわっ」
横にいた名雪が驚いている。
「おおっ、いい飲みっぷり♪ささ、もういっぱい」
空になったグラスに再び注ぎ込む部長。
豪快に煽る香里。どうも半ばやけになっているようである。

「香里〜、大丈夫〜?」
ベンチに横になっている香里を心配そうに見下ろしている名雪。
二次会も終わり、これから三次会に向かうという連中と別れ、名雪は香里と共に近くの駅前にいた。
あれから香里は本当にやけになったようで部長さんが注ぐビールをひたすら飲み続けていたらしい。そのあげく、今現在彼女はダウンしているのだ。
「あ〜・・・きもちわるい・・・」
呻くように香里が言う。
そこに一台の車がやってきた。
「お待たせ〜。で、美坂さん、大丈夫?」
ドアを開けて顔を覗かせたのは名雪と同じ陸上部の先輩であった。
彼女も三次会まで参加する気はなく、たまたま車で来ていたので部長さんの無理なペースに付き合ったあげくダウンした香里を車で送ってくれるというので今先程まで車を取りに行っていたのだった。
「はい〜、何とか大丈夫です〜」
弱々しい声で答える香里。
それを見た先輩が苦笑を浮かべて名雪を見る。
「こりゃかなり重傷ね。名雪は時間大丈夫?」
「あ、はい、今日は特に用事はないですから」 
「じゃ、もうちょっと休憩してから帰ろっか」
先輩にそう言われて名雪は香里を見た。
先程から明らかに様子がおかしい。酔っぱらっている事はほぼ間違いないだろう。このまま車に乗せるより、少し休憩していった方がいいかも知れない。
「そうですね」
そう言って頷く。
どうせ家に帰っても祐一はバイトで今日も遅いだろうし、少しくらい遅くなってもいいと思っての事だった。
「とりあえずコーヒーでも買ってくるわ」
「すいません」
「良いって。部長が悪いんだし、後で何か驕って貰うわよ」
先輩はそう言って自動販売機の方へと歩いていった。

<12月23日22:06PM>
「ただいま〜」
名雪はすっかり疲れ切った、と言う様子でドアを開けて中にそう言った。
「あら、名雪、一人?」
リビングから迎えに出てきた秋子さんが名雪を見てそう言い、首を傾げた。
「一人って?」
「祐一さんと一緒かと思って。まだ帰ってきてないから」
少し心配そうな顔をする秋子さん。
「かなり前からいないから・・・大丈夫かしら?」
「かなり前からって・・・何時頃?」
「晩ご飯食べてから姿を見てないから・・・4時間位かしら?」
「4時間って・・・もう大分前から雪降ってるんだよ?」
驚いたように名雪が言う。
それから慌てたようにまた出ていく。
「・・・若いっていいわね〜」
にこにこしながら秋子さんがそう言った。
そんな事はつゆ知らず、名雪は必死に走っていた。
祐一が何処にいるのかだいたい見当がつく。待ち合わせているわけでもないが彼が待っているところと言えばあそこしかない。そう、駅前のあのベンチ。
そこに向かって名雪は走り続けた。

駅前にまでたどり着くと、名雪は目的のベンチに人影があるのにすぐ気がついた。
その人影は手に携帯電話を持っていたが何か諦めたようにそれを上着のポケットの中に直し、ベンチの背もたれに身体を預けた。そして空を見上げる。この調子だと名雪が来るまで何時までも待っていそうだ。
そう思うと名雪は嬉しくなって、息を整えてから一気に駆け出し、人影に向かってその勢いそのままに飛びついた。
その人影、祐一はいきなりの事に驚き、何も出来ずに飛びついた名雪に押し倒されるようにベンチからひっくり返ってしまう。そのまま地面に頭を打ち、その痛みに思わず涙をこぼす祐一。
「いってぇぇっ!!!」
大声でそう言うと祐一は飛びついてきた名雪を押しのけ、打った頭を手で押さえた。
「だ、大丈夫?」
心配そうに名雪が聞くが祐一はまだ頭を押さえたままだ。
「大丈夫じゃないっ!死ぬかと思った!!」
祐一がそう言ったので名雪は思わず泣きそうになってしまう。
「ご、ゴメン・・・その・・・」
思わず項垂れてしまう名雪。
と、その肩に祐一の手が置かれた。
「・・・悪い、そこまで責めるつもりはなかったんだ。痛いのはマジだが」
祐一がそう言ってから名雪の頬を両手で挟んだ。
冷たい手の感触に驚く名雪。
そのまま祐一は名雪の顔を自分の方に向けた。
「今回はお前が遅刻だぞ、名雪?」
にやりと笑ってそう言う祐一だが、名雪はその目の端に涙が浮かんでいる事に気付いていた。
「・・・待っててくれるなんて聞いてなかったよ、祐一」
そう言いながらも嬉しくて名雪の目にも涙が浮かぶ。
「馬鹿、お前の誕生日に俺が居ないわけないだろ。お前がイヤだって言っても俺はずっと側に居続けてやるよ」
ちょっと照れながら祐一が言う。
「そんな事言うわけないよ。私は祐一の事、大好きだもん」
名雪は微笑みながらそう言った。
それを見た祐一は何も言わず名雪の顔を自分の方に引き寄せ、その唇に自分の唇を重ね合わせる。
少しの間重ね合わせていた唇を離すと名雪は心配そうな目で祐一を見た。
「祐一の唇、物凄く冷たかった・・・もしかして何時間もここにいたの?」
それを聞いた祐一は照れたような笑みを浮かべる。
「たいしたことじゃない。ここで待つのにはもう慣れた」
そう言うと、祐一は再び名雪の唇を奪った。
名雪は祐一の唇を奪われながらもその肩に手を回し、彼の身体をぎゅっと抱きしめた。


後書き
作者D「本当は年内に仕上げたかったんだけどね」
かおりん「無理だったと?」
作者D「冬の戦場のダメージが想像以上に大きかったもので」
かおりん「物凄く個人的な理由よね?」
作者D「反省しております」
かおりん「反省するだけならただだし、猿でも出来るわね」
作者D「ううう・・・相変わらず容赦の欠片も御座いませんね、かおりん様は」
かおりん「あんたにかける容赦とか情けとかは既に残ってないわ」
作者D「・・・始めから無かったのでは?」
かおりん「そうとも言うわね」
作者D「うううっ、容赦無さ過ぎです、マジで(涙)」
かおりん「ところで今日の日付は?」
作者D「・・・・1月6日です、はい」
かおりん「何か申し開きがあれば聞くわよ?」
作者D「まこぴーに萌える事が出来なかったと言えばそれまでですが、あゆにも萌える事が出来なかったのです」
かおりん「死ぬ準備はOK?」
作者D「死、ですか!?今回はただ殴り飛ばされるだけじゃなくて”死”ですか!?(汗)」
かおりん「神への祈りは終わった?ガタガタ震えながら命乞いをする準備は出来た?じゃ、いくわよ・・・」
作者D「せめて今回の解説をさせていただければ幸いかと・・・」
かおりん「安心して、私がやっておいてあげるから。じゃ、サヨナラ」
作者D「ひいいいいいいいっ!!!」
(作者D退場)
かおりん「悪は滅んだわ・・・さて、今回の作品は馬鹿作者が妙に気に入っているザッピング形式を使用したものらしいけど」
あゆあゆ「でも妙な感じで失敗しているよね」
かおりん「・・・作者Dの代わりがあんた?」
あゆあゆ「みたいだね。あ、これ、かおりんにおみやげ」
かおりん「たい焼き・・・何時も何時も好きね」
あゆあゆ「話を戻そうよ、かおりん」
かおりん「はぐはぐ・・そうね。で、今回は失敗したあげく前の奴より短い、と」
あゆあゆ「それについては作者Dから伝言があるよ。この先は前の奴とほとんど展開が変わらないと言うか変えようがないからここで切るのも良いかな、だって」
かおりん「言い訳ね。素直に書くのがイヤになったって言えばいいのに」
あゆあゆ「かおりん、本当に容赦ないね・・・」
かおりん「まぁ、事実はそっち半分、こっち半分でしょうけどね。他にも書かないといけないものが山のようにあるみたいだし」
あゆあゆ「そう言う事だから許してあげようよ」
かおりん「あんたが主役のSSがおざなりにされているんだけどね、その分」
あゆあゆ「さくしゃD〜〜〜〜〜!!!!」
(あゆあゆ退場)
かおりん「あーあ、益々次のSS,遅れそうねぇ・・・・はぐはぐ。結構いけるわね、このたい焼き(笑)」

戻っておこう 

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