「彼女の思いは複雑に・・・


雪・・・今日も外は雪が降っている・・・。
あの日、彼が泣いていた日と同じように白い雪が降っている。
約束の時間はとっくに過ぎている。でも、どんな顔をすればいいかわからない。
7年ぶりにこの街に帰ってきた従兄弟・・・7年前のあの日、私は彼に拒絶された。
彼に何かあったらしいことは知っている。慰めようとした私は・・・彼がどれだけ深
く傷ついているかも知らずに慰めようとした私は・・・彼に拒絶されてしまった。そ
れでも私は彼のことが好きだった。でも彼は・・・。

「今度、祐一さんがうちに来ますからね」
唐突にお母さんがそんなことを言った。
「うにゅ?」
まだ半分寝ぼけていた私は間抜けな返事をしてしまう。
お母さんはそんな私を見ていつものようににこにこしている。
「祐一さん。名雪の従兄弟の。憶えているでしょ?」
「祐一・・・・?」
「そう。7年前まではよくうちに遊びに来ていたでしょう?」
焼きたてのトーストにジャムを塗りながらお母さんが言う。
従兄弟の祐一のことを私が忘れるはずがない。だって祐一は私の・・・。
「その祐一さんが、年明けからうちに居候することになりましたから」
「えっ・・・・?」
お母さんのその一言で私は一気に目が覚めた。
「ど、どうして、そんな、急に・・・?」
とても慌てたような口調になる。
7年前のあの冬以来、手紙を出しても一切返事すら寄越さなかったあの祐一が何故今
になって戻って来るというのか?嬉しいと思う反面とまどいもあった。
「今度、祐一さんのご両親、名雪にとっては伯父さん伯母さんになるわね、その伯父
さんが海外に赴任することになったの。それで祐一さんはうちで預かることになりま
したから」
「・・・ついていかないんだ・・・」
何となくぼそっと呟いてみる。あの祐一のことだから何となくそう言う気がする。
きっと初めは一人暮らしをしたいとか言ったはず。それをきっと伯母さんに一蹴され
たのだろう。
7年前の祐一の性格を考えるときっとそんなところのはずだ。
「祐一さんは一人暮らしをしたいって言ったそうだけど、姉さんが心配して・・・
で、うちで預かることにしました」
何故かお母さんはにこにこしている。
いつも笑顔を絶やさないお母さんだけど、今日は特に機嫌がいいみたい。
「名雪も嬉しいでしょう?」
「えっ・・・」
思わず顔が真っ赤になるのを感じる。
私が祐一のことが好きだと言うことをどうしてお母さんが知っているの?
でも、何となく知っていても不思議はないような気もする。だってあの日、雪の中で
待ちぼうけていた私を迎えに来てくれたんだから・・・。
「名雪の隣の部屋が空いていたわね。祐一さんの部屋はそこで良いかしら?」
「う、うんっ、良いと思うよっ」
「じゃ、お掃除、手伝ってね?」
・・・しまった・・・お母さんにはめられた・・・。今日から部活がないからのんび
りしようと思っていたのに・・・。
結局その日は使ってない部屋の掃除に一日を費やすことになってしまった。
夕ご飯の後、眠たくなる前に私は親友の香里に電話をしていた。
何となく誰かに相談したくなったのだ。そうなると考えられる相手は香里しかいな
かった。
美坂香里・・・私の中学以来の親友・・・香里には何度となく色々な相談事を持ちか
けたものだった。
今日のことも・・・やはり香里に話したかった。
「ハイ、美坂ですけど・・・」
「あ、香里?」
「あら・・名雪?珍しいわね。まだ起きていたなんて」
「何かひどいこといってる?」
「そんなことないわよ。いつもなら寝ててもおかしくない時間じゃない」
そう言った香里の声はどことなくおかしそうだ。
確かに私は何時もかなり早い時間から寝てしまうことがある。でも、いくら何でもこ
んな時間から寝るなんて事は・・・あるかも・・・。うぅ〜、だって眠いんだもん・・・。
「で、何か用なの?」
私が一人でうなっているのを聞きかねたように香里が聞いてくる。
「あ、そうだ。えっと、今度ね・・・」
私が今日の朝、お母さんから聞いた話を香里に伝える。
「ふ〜ん、そうなの・・・」
香里の反応はいつもと同じでよくわからなかった。
「まぁ、秋子さんのことだからきっと話がでたら一発で『了承』だったんでしょう
ねぇ・・・」
どことなくあきれたような、あきらめたような声・・・。
香里が何が言いたいのか私にはよくわからなかった。
「で、名雪はどうなの?」
「え?」
「え?じゃなくて、名雪自身はどうなのよ?その・・・従兄弟の彼が来ることについ
てどう思ってるの?」
「私は・・・」
何となく口を濁してしまう。
「私はどうのこうの言う権利はないわ。あなた自身の問題でしょ?」
「う〜、そうなんだけど・・・」
「だったら自分で考えなさい」
「う〜・・・香里〜」
「情けない声出さないの。じゃあね」
がちゃん。
香里の方が先に電話を切ったらしく、ツーツーとむなしい音が残る。
う〜、かおり〜、いじわるだよ〜。
そう思いながら私は受話器を電話に戻した。
大きくはぁ、と息をつく。
私は・・・どうしたいんだろう?
あのとき、私を拒絶した祐一は私のことをどう思っているんだろう?

自分の部屋に戻った私はベッドにごろんと寝転ぶとお気に入りのぬいぐるみ「けろ
ぴ〜」を抱き寄せた。
「ねぇ、けろぴ〜、どうしたらいいのかな?」
けろぴ〜に問いかけてみるけど、当然答えはない。
「私・・・まだ祐一のこと・・・」
天井を見上げながら、そのうち私は・・・結局眠ってしまった・・・。まだ9時にも
なってないんだけど・・・。


後編に続く

と言うことでこれが二作目です。
かおりん「本格的に名雪ものとなってしまったのね」
元々それが狙いだし。
かおりん「実はこれも微妙に前の作品とつながっているのよね?」
ザッピングシリーズの走りだと思う。「たまには・・・」ほどでもないが。
かおりん「こっちじゃちゃんと私の名前もでているのね」
嬉しいですか?
かおりん「名前がでてないと誰かわからないじゃないの」
それもそうだ。まだ語り口だけでキャラが判断できるほど上手くはないからな。
かおりん「威張って言うことか!」
とりあえず反省・・・。


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